『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、試練の祠の仕掛けを「解かず」に突破する猛者たちが現れる
任天堂から発売されている『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)』のフィールドは、オープンエアーと呼ばれる構造になっており、定められた手順や限られたマップに縛られることなく、自由に動きまわることができる。この広大なフィールドにおいて、アクセントになっているのが「試練の祠」だ。フィールドの各所に配置されている試練の祠は、ミニダンジョンのような形式になっており、プレイヤーの発想力を問う仕掛けがいくつか用意されている。
これまでの3Dの『ゼルダの伝説』作品の謎解きは、解法が決まっており、その解法をいかに思いつくか、いかに見つけるかというのが仕掛けを解く鍵になっていた。しかし『ブレス オブ ザ ワイルド』の試練の祠には、その解法に幅がもたされている。スイッチを押した状態で扉を通る必要がある場合には、そばに落ちているタルを使ってもいいし、水中に沈んでいる金属の立方体を使ってもいい。手持ちのリンゴをおもむろに並べて重さを確保し、強引に突破することさえできる。正攻法とされる解法は用意されているが、プレイヤーは自由に仕掛けを解く楽しみがある。『ブレス オブ ザ ワイルド』のプレイヤーのなかには、SNSなどで他プレイヤーのやり方を見て、柔軟な発想力に感心したことがある人もいるだろう。
しかし、あまりに柔軟すぎる発想力を持て余し、さらなる挑戦に挑む猛者たちが現れ始めている。その挑戦の名は「Puzzle Skip」。なんと彼らは、試練の祠の仕掛けを“解かず”に突破することを試みているのだ。
豊かすぎた発想力
「Puzzle Skip」はあくまで少数の酔狂なプレイヤーにより繰り広げられているチャレンジなので、明確なルールなどは定められていない。しかし、確かに彼らは正面からは謎を解いていない。祠内に用意されているギミックを利用するシーンもあるが、明らかに常人には思いつかないようで方法でクリアしていくのが彼らのプレイの特徴だといえる。(参考動画)
Puzzle Skipが盛り上がりを見せている場所は、動画投稿サイトYouTube。YouTubeで「Puzzle Skip」、もしくは「Shrine Skip」で検索すれば多くの動画が日々投稿されていることがわかる。Puzzle Skipを試みるプレイヤーは、しばしば「盾サーフィンジャンプ」と「ボムジャンプ」を併用した「盾サーフィンボムジャンプ」を使用する。盾サーフィンジャンプとは、盾サーフィンを使用する時に飛び上がるモーションを利用したテクニック。ジャンプした後にさらに上昇することができるので、実質的に二段ジャンプできるというわけだ。盾サーフィンの入力コマンド自体が若干複雑で慣れを要するものの、盾ジャンプをすれば、ちょっとしたレーザーを飛び越えるなどさまざま場面で利用できる。一方、「ボムジャンプ」はその名のとおり、爆弾を利用したジャンプだ。爆弾の爆風をリンクにヒットさせることで、飛んでいく。これらはどちらも単独で活用できるテクニックであるが、ふたつを組み合わせると、通常のジャンプでは届かないような高さに到達することが可能になる。
もちろん、すべての仕掛けが盾サーフィンボムジャンプで解けるわけではない。球体をビタロックで遠くに飛ばすといったオーソドックスなものや、オクタ風船を利用するものなど、とにかく幅広い解法が存在している。中には真面目に謎を解いているといえるものもあるが、彼らがPuzzle Skipと主張するならばそれはPuzzle Skipなのだろう。このチャレンジに特に熱心なのはAdrylek氏とKitty氏だ。まだ自分が解いていない謎解きを見てしまうと楽しさが半減するのでオススメできないが、クリアした祠がどのように変態的に突破されているかぜひ見てみてほしい。
人に見せたい謎解き
静かではあるが盛り上がりを見せるPuzzle Skip。こうしたやりこみが人気を呼んでいるのは、SNSの発達の影響もあることながら、解き方に自由があることに他ならない。『ブレス オブ ザ ワイルド』は、シナリオ進行が自由であるだけでなく、謎解きすらも自由だ。ユーザーに「ひとつ」の解法を求めてきた従来の『ゼルダの伝説』とは大きく異なり、幅広い解き方を想定し、歓迎しているようにも思える。人それぞれに謎の解き方が違うので、他人の手段を知りたくなり、他人に自分のやり方を知ってほしくもなる。つい人と共有したくなる、見せたくなる謎解きを見事に実現しているといえるだろう。
『ブレス オブ ザ ワイルド』がまだその名を持たぬ時代から長きにわたって、プロデューサーである青沼英二氏は「ゼルダのアタリマエを見直す」ことを目標として掲げていた。その言葉がまさに有言実行されたことが、こうした謎解きからもわかるだろう。