Nintendo Switchのゲームカードが苦い理由、海外メディアの相次ぐ“食レポ”に任天堂が説明する

 

いよいよ発売日をむかえた任天堂の新型家庭用ゲーム機Nintendo Switchが、ゲームとは関係のない部分で大いに脚光を浴びている。先日、何を思ったかNintendo Switchのゲームカードを味見するジャーナリストが現れ、想像を絶する苦さがソーシャルメディアで話題になった。これを受けて好奇心の虜になった業界内の食レポ記者が任天堂の歴代ハードでゲームカートリッジの舐め比べを敢行。柑橘類のエキスから風味を取り除いたような独特の苦味を表現した。後日、想定外の味レビューに任天堂が公式に回答。Nintendo Switchのゲームカードを苦く作っている理由を説明している。

 

幅広いユーザー層がターゲットだからこその配慮

事の発端は先月25日。業界メディアGiant BombのゲームジャーナリストJeff Gerstmann氏が、Nintendo Switchのカートリッジを口に入れたことがきっかけだった。自身のTwitterアカウントに、ゲームカードの味が舌から離れないから絶対に真似しないようにと警告文を投稿。この発言がソーシャルメディアで大いに脚光を浴び、ここぞとばかりに食レポへ乗り出す者が続出した。KotakuのシニアリポーターMike Fahey氏は、自身が担当するお菓子の食レポコーナーSnacktakuにて、任天堂の歴代ハードやPlayStation Vitaを対象にゲームソフトを舐め比べ、それぞれの特徴や違いを考察するという一風変わった企画を実施。柑橘類の皮からにじみ出るエキスから風味を取り除いたような荒々しい苦味が、味蕾全体へ山火事のように広がり舌を蹂躙する様子に悶絶している。

Fahey氏の問い合わせに対して、任天堂は幼児による誤飲を防止するためにゲームカードにはあえて苦味物質が塗布されていると説明。もちろん人間が口に入れる可能性を想定しているので、健康に害を及ぼすことはない。また、公式サイトのサポートページでも、「ゲームカードをさわった手をなめたら、苦い変な味がしました。健康に害はありませんか?」という質問に対して、「健康に害はありませんのでご安心ください。Nintendo Switchのゲームカードには、苦み成分デナトニウムベンゾエイトが塗られています」と回答している。ちなみにこうした処置は決して珍しいことではない。

デナトニウムベンゾエイトとは芳香族化合物の1種で、最も苦味の強い物質としてギネス世界記録にも登録されている。日本では食品添加物として認可されており、人体に悪影響を及ぼすことはない。極めて低い濃度でも苦味を感じさせる特性から、主に殺虫剤や食器用洗剤、シャンプーなどに誤飲防止の目的で用いられる。また、幼児向けの玩具や小型の電子製品などに塗布されることも少なくない。Fahey氏がファミコンやN64のゲームソフトを舐めた時にNintendo Switchほどの刺激を感じなかったのは、サイズが大き過ぎて口に入らないからだ。

一方で、Nintendo Switchと同等に小さいPlayStation Vitaのゲームカードにはほとんど苦味を感じていない。これは対象年齢の違いによるものだと思われる。任天堂ハードは子供から大人まで幅広いユーザー層をターゲットにしているため、幼児向け玩具と同様の処置が施されているというわけだ。ちなみに任天堂はN64が発売された際も、子供が乱暴に扱っても絶対に壊れないようデザインされた本体強度を前面にアピールしていた。元々は花札を販売していた玩具メーカーだっただけに、子供への配慮を常に怠らないという企業理念が垣間見える。