オンライン・ゲームジャム「Resist Jam」が3月3日から開催。独裁主義への抵抗を掲げ世界中から参加者を募る


ゲームを含むインタラクティブメディア開発者を支援しているIndieCadeは2月9日、インディーデベロッパーのAdam Moore氏やTyler Coleman氏らと協力し、ゲームジャムイベント「Resist Jam」を3月3日から11日にかけて開催すると発表した。

メディアパートナーとしてIGDA(国際ゲーム開発者協会)やDevolver Digitalも名を連ねる本イベントは、itch.ioのゲームジャム・ホスティングシステムを利用してオンライン上でおこなわれる。期間中のジャムを実施する前にはオンラインのワークショップがおこなわれ、ゲーム開発に携わるあらゆるジャンルのベテランたちから24時間体制のサポートも提供される。発起人の一人であるRetora GamesのTyler Coleman氏は、「可能な限り多くのインディーデベロッパーに世界中から参加してもらい、その創造性を発揮してもらいたい」とコメントしている。

「Resist」とは「抵抗」という意味で、このResist Jamは、昨今の政治情勢の中で世界各国で広がりつつある独裁主義・非協調主義に対する抵抗運動のひとつとして、インタラクティブメディアの力を結集し世界規模でのポジティブな変化を生み出すことを目標としている。

Devolver DigitalはGDC 2017に際して、イスラム圏7か国から米国への入国を一時禁止する米国大統領令の影響を受ける開発者への支援を発表していた(関連記事

ここで真っ先に想起されるのは、ドナルド・トランプ米国大統領の言動に対する抵抗運動だが、今回の発表の中や公式サイトで具体的に名指しはされていない。しかし、反トランプ運動に関連して論争になっている、いわゆる「ナチス崇拝者への暴力」あるいは「暴力的な反ファシズム」といったものとは一線を画すとしており、参加者には平和的かつオープンな方法でゲーム開発に臨んでもらいたいとしている。また、実在の人物の名前や描写を本人の許可なくゲーム内に使用しないよう注意を促している。昨年はイギリスの欧州連合(EU)離脱もあり、保護主義的な動きの連鎖も懸念されている。世界の中には、これはいまに始まった問題ではない国もあり、「抵抗」する理由を持つのはアメリカ国民に限らない。

一方、Resist Jamのテーマは政治的な側面を多分に含むため、参加者の出身国・居住国によっては、今回開発するゲームを通じた“政治的意思表明”によって身に危険がおよぶ可能性も心配される。運営側は、何よりもまず自身の身の安全を第一に考えて欲しいとし、その上で本イベントに参加するのであれば、ソフトウェアエンジニアのNoah Kelley氏が作成したインターネット上でのセキュリティに関する自衛ガイドを利用することを強く推奨している。また、完全匿名での参加を受け付けることができないか現在模索しているとのことだ。

Image Credit: donaldjtrump.com

トランプ氏のアメリカ大統領選挙での当選が決まったその日、IGDAのエグゼクティブ・ディレクターKate Edwards氏は、ゲーム開発者に対して次のようなメッセージを自身のFacebookページに投稿している。

「みなさんは人の心に訴えかけることのできる、素晴らしい力を持っています。もしみなさんが異なる結果を望むのなら、そしてもしそれを自らの手で生み出したいと望むのなら、その力を根気強くふるい続けることでいつか実現するでしょう。それは一晩で起こることではありませんし、少なくとも今後4年の間にはかなわないかもしれません。しかしいつか実現します。勇気を持って、各々ができることをしましょう」

Resist Jamの目的とはやや異なるかもしれないが、ゲームの平和的な力をもって社会に訴えかけるという点では彼女の想いと共通しており、今回がその初めての大きな機会となるだろう。