先日発売されたばかりのシリーズ最新作『BIOHAZARD 7 resident evil』(以下、バイオハザード7)の海賊版がわずか5日で出回ってしまった件について、世界最強と名高いコピー防止技術「Denuvo Anti-Tamper」(以下、Denuvo)の提供元が、海外メディアに対してコメントした。極めて短期間で突破されたとはいえ同社は決して割られないとは保証しておらず、今後のアップデートでコピーガードの安全性をより一層強化していくと説明している。また、クライアントのカプコンに対する返金対応はあり得るかという質問に対しては、一定期間内にクラックされた場合の保証制度は存在しないと改めて言及した。
完全敗北を認めさらなる改良に努めていく
「Denuvo」は、オーストリアに拠点を置くソフトウェア会社Denuvo Software Solutions GmbH(以下、Denuvo社)が開発した改ざん防止技術。ゲームソフトを特定のユーザーアカウントと紐付けることでコンテンツの無制限な利用を規制するデジタル著作権管理(通称DRM=Digital Rights Management)とは異なり、SteamやOriginといった既存のDRMプラットフォーム自体を保護するようデザインされている。デバッグ作業や逆行分析、実行ファイルの改ざんを防ぐことで、DRMをバイパスできないようさらに強固な守りを提供するのが目的だ。そのため、DRMを組み込まれていないゲームに対しては何ら意味をなさない。これまで発売日を待たずして違法コピーがインターネット上に蔓延するPCゲームの“割れ”事情に革命を起こした実績から、世界最強のコピーガードと賞賛されてきた。
先日、「Denuvo」を搭載したカプコンのシリーズ最新作『バイオハザード7』が、発売からわずか5日でコピーガードを突破された。これまでにも「Denuvo」を導入したゲームタイトルが1か月ほどで割られた事例は複数報告されてきたが、初期セールスへ悪影響を及ぼしかねないケースは今回が初めて。難攻不落と名高いセキュリティをいともたやすく突破したのは、これまでPC版『Rise of the Tomb Raider』をはじめ、数々のトリプルA級タイトルの海賊版を流出させてきたクラッカー集団CONSPIR4CY。早速ファイル共有サイトに出回った海賊版『バイオハザード7』のダウンロード件数は、前回報道の時点ですでに数万回を超えていた。今回の敗北について、Denuvo社のマーケティングディレクターThomas Goebl氏は、業界メディアEurogamerに対して次のようにコメントしている。
「弊社の改ざん防止技術はクラックが難しいことを常に売りにしていますが、決して割られないわけではないことはご理解ください。いまのところバイパスに成功しているクラッカー集団はたった1つです」。確かに、絶対に破られないプロテクトは理論上存在しない。「Denuvo」に関しても、これまで幾度となくクラックされており、そのたびにループホールの修正や安全性の向上が施されてきた。そもそもPCゲームにコピーガードを施す真の意義は、クラッカーたちに破られるまでの時間を可能な限り引き延ばしてパブリッシャーの初期販売計画を守ることであり、セールスの数字にほとんど変動が見られなくなったタイトルをいつまでも死守し続けることにさほど意味はない。
しかし、今回は明らかに本来の役目を果たせていない。このことについてGoebl氏は、「これまでどおり弊社は、Denuvoの次回バージョンに向けたセキュリティアップデートに取り組み、引き続きソリューションの向上に努めてまいります。今回のバイパスから学んで同じことを実行するのみ。件のタイトルがリリースからわずか数日で割られてしまったことは事実です。コピーガードが施されていないタイトルが発売当日、もしくはゲームがアップデートされるたびに割られてしまうことを考えれば、今回の件に関しても弊社のソリューションに意味はあったでしょう」と説明。確かに発売当日ではないが、1週間以内に破られたとあってはカプコンへの影響は計り知れないだろう。
このほか、近いうちにカプコンが『バイオハザード7』のコピーガードを無効化する可能性については、個々のクライアントに関することにはコメントできないとしながらも、一定期間内に保護対象のゲームがクラックされたからといって返金に応じる制度は存在しないと改めて釘を差した。保証制度の噂については、以前『INSIDE』や『DOOM』から「Denuvo」が無効化される事例が相次いだことで、フォーラムサイトを中心に存在がささやかれていたが、直後にDenuvo社が完全に否定していた。なお、初期セールスを不正コピーから守りきった後や、DRMフリーでゲームを再リリースする際など、不要になった「Denuvo」を無効化するか否かはパブリッシャー側の判断に委ねられている。