米労働組合SAG-AFTRAのゲーム声優ストライキが96日目に突入、最長記録の次点を塗り替え続く膠着状態

ゲーム業界で活躍する声優および俳優の待遇改善を訴えるインタラクティブメディア協定ストライキが、依然として膠着状態にある。昨年10月に米国の労働組合SAG-AFTRAが協定見直しの交渉決裂から決行に踏み切ったもので、締結企業とのにらみ合いが続いたまま96日目に突入した。

ゲーム業界で活躍する声優および俳優の待遇改善を訴えるインタラクティブメディア協定ストライキが、依然として膠着状態にある。昨年10月に米国の労働組合SAG-AFTRAが協定見直しの交渉決裂から決行に踏み切ったもので、締結企業とのにらみ合いが続いたまま96日目に突入した。これにより同組合のストライキ史上で2番目の長い期間を記録したことになる。昨年11月にInsomniac Games本社前にてピケッティングを実施してから現状目立った動きはないが、来月2日に再びピケラインが張られる予定だ。

 

あと3か月続けば歴代最長を記録

SAG-AFTRA(Screen Actors Guild‐American Federation of Television and Radio Artistsの略)は、映画・テレビ・ゲーム業界に携わる俳優や声優、ジャーナリスト、ラジオ番組のパーソナリティを代表するアメリカの労働組合。2012年の発足以来、およそ16万人が加入している。今回のストライキのきっかけになったインタラクティブメディア協定は、まだゲーム業界がプロのパフォーマーを起用し始めたばかりだった20年以上も前に締結されたものであり、これまで組合は市場規模の成長に合わせた待遇の改善を長きにわたって訴え続けてきた。昨年10月、およそ18か月におよんだ改善交渉が最終的に決裂したことで、11社の締結企業を対象にストライキ状態へ突入した。

これまで同組合の歴史上で次点にあった最長記録は、1980年に実施された有料テレビ放送向け映画制作の報酬をめぐるストライキ。同年7月にSAG-AFTRAの前身である映画俳優組合のメンバー(元々SAGとAFTRAは別々の組織として独立していたが、2012年に合併して現在のSAG-AFTRAになった経緯がある)が、米国テレビ・ラジオ芸能人組合(略称、AFTRA)およびミュージシャン組合(略称、AFM=American Federation of Musicians)と共闘したストライキで、米国テレビ芸術科学アカデミーが主催するエミー賞のボイコット事件につながった。その後、同年10月に業界が待遇改善の契約に合意。空前絶後のストライキは95日目で幕を閉じた。

インタラクティブメディア協定ストライキ
インタラクティブメディア協定ストライキ

ちなみにSAG-AFTRA史上最長のストライキは、2000年にコマーシャルの報酬をめぐって勃発した衝突だ。ストライキの正当性や結果が成功と言えるものだったかについては賛否両論あるが、その継続期間は183日間と言われ群を抜いている。映画・エンターテイメント情報を扱うオンラインマガジンDeadlineによると、今回のインタラクティブメディア協定ストライキはゲーム業界では初。俳優によるストライキとしては17年ぶりだという。なお、映画俳優組合と米国テレビ・ラジオ芸能人組合が合併してから初めてのストライキとなる。現在、ゲーム作品にプロの俳優や声優を起用している締結企業を対象に、声の演出やモーションキャプチャーに携わる全ての組合メンバーが、新たなオーディションへの参加はもちろん、2015年2月17日以降に開発がスタートした新作への出演を一時的に中断している。

過去の経緯を振り返ると、対立が長期化している最大の争点は主にゲーム出演声優に対する二次報酬にある。組合側はボーナスの内訳をオプション制にすることで、企業側がセッションの回数に応じたボーナスを事前に上乗せするか、もしくはゲーム発売後のセールス本数に応じて追加報酬を支払うかを選べるような仕組みを要求しているが、企業側は前者のみの合意に留まっている。これまでSAG-AFTRAは、昨年10月にロサンゼルスのElectronic Arts関連施設で、同11月にバーバンクのWB Games本社とInsomniac Games本社前にてピケッティングを実施してきた。次回のピケラインは今年2月2日を予定。こうした組合側の強硬姿勢に対して、締結企業の内9社は昨年Video Game Companies名義で連立グループを発足。キャンペーンサイトを立ち上げることで組合側の運営方針を真っ向から批判した。

余談になるが、人気オンラインゲーム『Overwatch』のキャラクター「ウィンストン」を演じるCrispin Freeman氏も今回のストライキを支持しており、以前業界メディアGameSpotのインタビューに対して胸中を打ち明けていた。ほかにも、これまで「#PerformanceMatters」というハッシュタグを旗印にソーシャルメディアを通じた運動に賛同してきた声優には、『Deus Ex』シリーズの主人公「Adam Jensen」を演じるElias Toufexis氏や、『バイオハザード』シリーズで「アルバート・ウェスカー」役を務めるD.C. Douglas氏、『Mass Effect』シリーズの「Femshep」役で知られるJennifer Hale氏をはじめ、長年にわたり『METAL GEAR SOLID』シリーズで英語版「スネーク」を演じてきたDavid Hayter氏など、多くの著名人が名を連ねている。

Ritsuko Kawai
Ritsuko Kawai

カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。

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