『TES V: Skyrim』住人をちびキャラ化するMod「SDrim」が可愛い、超デフォルメでゆるい世界観に

 

純真かつ無邪気で幼げな対象を可愛いと表現する価値観の起源は、平安時代中期に書かれた清少納言の「枕草子」にまでさかのぼる。現代には、スーパーデフォルメ(通称SD)した極端に頭身の低いキャラクター全般を指すちびキャラという表現手法がある。バンダイのSDガンダムやグッドスマイルカンパニーのねんどろいどなど、いまやちびキャラは日本のみならず世界へ進出した“かわいい産業”の一部といえる。そんなちびキャラの愛くるしさで『The Elder Scrolls V: Skyrim』の世界観と硬派な雰囲気を一新してくれるMod「SDrim」を紹介したい。

 

頭身が変わるだけで世界観がガラっと変わる

『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)は、2011年にBethesda SoftworksからPlayStation 3/Xbox 360/Microsoft Windows向けに発売されたロールプレイングゲーム。『The Elder Scrolls III: Morrowind』『The Elder Scrolls IV: Oblivion』に続くシリーズ5作目で、『Fallout 3』や『Fallout 4』と並んでオープンワールドRPGの金字塔と言える。特にPC版では、コミュニティサイトNexusやSteam WorkshopをとおしてModサポートに対応しており、今もなお根強いユーザー層に支持されている。昨年10月には、PlayStation 4/Xbox One/PC向けのリマスター版『Skyrim Special Edition』が発売され、限定的ではあるがコンソール版のModサポートにも対応した。

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「SDrim」(Super Deformer Skyrim)は、『Skyrim』のスケルトンファイル(キャラクターの骨格を構成する3Dデータ、メッシュやテクスチャと組み合わせてキャラクターを表現する)を書き換えることで、ほぼ全てのキャラクターを3頭身ほどのちびキャラに変えてくれるModだ。ノルドやエルフ族はもちろん、アルゴニアンやカジートといったデミヒューマンもドワーフを彷彿とさせる頭身に変貌する。また、後述する種族Mod「ElinRace」にも対応している。プラグインファイルを必要としないシンプルなModなので、そのまま『Skyrim Special Edition』にインストールしても特に問題はない。なお、Modで追加したキャラクターの場合も、既存スケルトンが使われていれば同様にちびキャラ化する。

バニラのエディット画面ではカメラに収まらない
バニラのエディット画面ではカメラに収まらない

ちびキャラ化といっても、「SDrim」はメッシュフォルダ内の“Skeleton.nif”を書き換えて頭部に対する胴体や四肢の比率を変更しているだけなので、プレイヤーキャラクターやNPCの顔面はそのままだ。バニラ(Modを使用していない状態のこと)の顔面のまま導入すると激しく違和感を覚えるかもしれない。筆者の場合は「これなしでは生きていけないベストMod 5選 Skyrim SE編」の記事でも紹介した美人シリーズのModを併用しているため、スカイリム地方は極端に美化されたドワーフの世界に生まれ変わってしまった。ねんどろいどみたいな愛くるしいキャラクターを表現したい場合は、「ElinRace」という種族Modを別途導入する必要がある。

「ElinRace」とは、韓国産オンラインゲーム『TERA』(The Exiled Realm of Arborea)に登場する種族「エリーン」によく似た種族を、『Skyrim』のキャラクターエディットに選択肢として追加するModである。元々は、匿名掲示板2ちゃんねるの「SKYRIM ロリSS/MOD」スレッドで有志たちによって制作された。ウサギやネコを模したケモノ耳と丸みを帯びた大きな目が特徴で、アニメ調のキャラクターに特有の幼げな雰囲気を見事に表現できる。「SDrim」のスケルトンデータが「ElinRace」のファイルをベースにしていることからも、同種族の愛くるしさを前提にしたModであることがうかがえる。「SDrim」制作者のネコミミprpr氏によると、ねんどろいどのような可愛いキャラクターを作るには、アゴをぷっくり丸くして、目鼻口のパーツは顔面下部に配置するなど、子供っぽさを意識して造形するのがコツとのこと。ちなみにバニラのインターフェースでは頭部がデカ過ぎてカメラに収まりきらないので注意しよう。

子供と並ぶと着ぐるみのマスコットみたい
子供と並ぶと着ぐるみのマスコットみたい

このほか導入に際して注意すべきは、ゲーム内のオブジェクトサイズにフィットするように、ちびキャラ化したNPCが若干大きめに調整されている点だ。言葉どおりのちびキャラにしてしまったら、身長が低すぎて武器屋や酒場の店主とカウンター越しに会話すらできないからだ。また、Mod管理ツール「Nexus Mod Manager」を使って導入した場合、子供NPCだけは自動でSD体型にならないので、並んだ際にちびキャラのデフォルトサイズに恐怖するかもしれない。ちびキャラをホビットサイズにしたいなら、デバッグ用のコンソールコマンド“setscale x”(x部分に数値)で適当なスケールに調整するといいだろう。既定値の半分(0.5)くらいに設定するとホビットらしい雰囲気が出る。

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既知の問題点としては、ゲーム内でキャラクターが椅子に座ったりクラフト用の作業台を使ったりすると、身体がオブジェクトに埋まってしまう。椅子に座る位置に関しては、「Skyrim Script Extender」(通称SKSE、Mod制作者がゲームエンジンへ自由にアクセスできるようスクリプトを拡張するためのツール)用のプラグイン「HDT Sitting Height Fix」を導入すれば解決する。このプラグインは、どんなスケルトンや身長でキャラクターを作っても、椅子に座った際に浮いたりめり込んだりするのを防いでくれるというもの。しかし、現状「SKSE」が64ビット環境に対応していないため、『Skyrim Special Edition』では今年3月に「SKSE64」がベータリリースされるまではどうしようもない。また、ベッドロールや処刑台に横たわっても地面にめり込んでしまうようだ。

このように住人をちびキャラにするだけで、ゲーム世界観の雰囲気をガラっと変えてくれる。愛くるしいキャラクターたちによるシリアスな演出という、ちょっとシュールな『Skyrim』を楽しめるのが「SDrim」の魅力である。このMod単体だけでも十分愉快な世界観を味わえるので、興味があれば放り込んでニューゲームで始めてみて欲しい。主人公たちがインペリアル軍によって処刑台へ護送されていくオープニングから早速ほっこりできるに違いない。ボブルヘッドのようなキャラクターたちは、N64タイトル『ゴールデンアイ 007』のDKモード(クリア後のお楽しみモードの一つでキャラクターの頭部や手足が巨大化する、名前は開発元が同じのドンキーコングに由来)を彷彿とさせる。髭面男の巨大な顔面を背景にゲームタイトルが仰々しく表示された時、筆者は思わずPCディスプレイにコーヒーを吹き出しそうになった。ぜひお試しあれ。