2年間24タイトルにおよぶARG長編に終幕。伝説のブラウザゲーム『Frog Fractions』の続編が発見される

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Frog Fractions』、それはカエルと一緒に分数の素晴らしさを学ぶ学習ゲーム……を装ったユーモラスな無料ブラウザゲームである。この異色作を生み出したのはTwinbeard StudiosのJim Crawford氏。彼の暴走したユーモアは一部の海外ゲーマーを魅了し、2012年に公開されてから瞬く間にバイラルヒットとなった。そして2016年12月25日、ついに待望の続編が姿を現した。ブラウザゲームでもスタンドアロンのゲームでもなく、Adult Swim Gamesがパブリッシュした『Glittermitten Grove』というPCタイトルの「ゲーム内ゲーム」として(参考記事:Kotaku)。なぜそうなったのか。続編の公開に至るまでの経緯を押さえておこう。

24のインディーゲームを横断するARG

まず前作『Frog Fractions』は「果物を集めるカエル」という健全でやさしい世界観のカジュアルゲームかと思いきや、「虫ポルノ」を販売する経済シミュレータや、ドラゴンに乗ったカエルの宇宙STGといった想像の斜め上を突き進むミニゲームが入り乱れている。さらには一国の大統領としてふさわしい人材、もといカエルであることを証明するため何故か『ダンス・ダンス・レボリューション』風のリズムゲームで踊り狂うという、理路整然としない滑稽な笑いを届ける作品である。

前作『Frog Fractions』。その奇天烈な作風を弊誌では『ボボボーボ・ボーボボ』の精神と称えていた
前作『Frog Fractions』。その奇天烈な作風を弊誌では『ボボボーボ・ボーボボ』の精神と称えていた

『Frog Fractions』の好評につき、続編『Frog Fractions 2』のKickstarterキャンペーンが2014年に実施された。実のところ作者であるCrawford氏はKickstarterキャンペーンの時点で続編が『Frog Fractions 2』という名前では登場しないと明記していた。タイトルが不明であることと、Crawford氏が意図的に情報発信を制限していたこともあり、「このゲームが『Frog Fractions 2』なのでは」という数々の憶測が生まれ、海外フォーラムでは「is this Frog Fraction 2」というミームが誕生した。

また続編に関連したARG(=Alternate Reality Gameまたは代替現実ゲーム)がKickstarterキャンペーン実施後2年間におよび展開された。ゲーム関連のARGというと、近年でいえば『Overwatch』のSombra ARGが有名だが、それでも解明までの期間は約半年である。2年間継続するARGというのはかなり長い部類に入るだろう。単に長編であるだけでなく、内容も複雑さを極めていた。『Frog Fractions 2』関連のARGは大きく「Frog Fraction 2 ARG」と、当初別物と考えられていた「Eye Sigil ARG」の2つに分けられており、最後に2つのARGがひとつの解答へと繋がっていく。いずれもARGの解読を目的とした団体「Game Detectives」を中心に調査が進められていた。

「Eye Sigil ARG」では、計24個のインディーゲーム内に隠された印(Sigil)をつなぎ合わせることで、「Frog Fractions 2 ARG」で登場する謎のサイト「time-travel.club」のパスワードが浮かび上がる仕組みとなっていた。「Eye Sigil ARG」に関わったタイトルには『Crypt of the NecroDancer』『You Have to Win the Game』『Moon Hunter』『Quadrilateral Cowboy』さらには『Firewatch』といった有名作品が含まれている。単一ではなく複数の開発スタジオに協力を求めた大掛かりな仕掛けである。謎を解き「time-travel.club」の隠しページにアクセスすると、二人の白人男性がのんびりとスープを食す動画が現れる。そのうちの一人が『Frog Fractions』の作者Jim Crawford氏である。この時点ではじめて2つのARGが『Frog Fractions 2』を示唆していることが明らかになった。

ARGのヒントはゲーム内だけでなく、現実世界の脱出ゲームや図書館内の書物に挟まれたメモ用紙にもおよんだ。長期に渡る調査の末Game Detectivesが辿り着いたのが「Launch FF2」という付箋と赤いボタンが設置されたボックスであった。下記の動画はGame Detectivesのメンバーがローンチボタンを押す瞬間を撮影したものである。

6時間におよぶゲーム内ゲームのミニゲーム

ここでようやく本稿冒頭で触れた『Glittermitten Grove』が登場する。Game Detectivesが12月25日に上記のローンチボタンを押してから間もなくして『Glittermitten Grove』の大型アップデートが配信された。パッチノートには「Frog Fractions 2 ARG」に関連したキーワードが散りばめられていたことからも、『Glittermitten Grove』と『Frog Fractions 2』が関連しているという信ぴょう性が高まった。『Glittermitten Grove』自体は12月14日に発売された、妖精の巣をつくるビルダー系のPCゲームである。一見すると『Frog Fractions』とは何の関連性もないタイトルのように見えるが、実のところパブリッシャーのAdult Swim GamesはTwinbeard Studiosを資金面でサポートしていたことが後に明らかになっている(参考記事:Waypoint)。『Glittermitten Grove』は有料タイトル(定価1980円)ということで、話題性の強い『Frog Fractions』の続編を「ゲーム内ゲーム」として含むことはパブリッシャーとしても旨味がある。

『Glittermitten Grove』内から『Frog Fractions』の続編をプレイする方法は複数存在する。そのひとつが地下深くに埋まった隠し扉を探し出すルートだ。発見されて間もないが、ゲーム内容はすでに一部のゲーム実況者がストリーミング配信している。クリアまでに要する時間は約6時間という「ゲーム内ゲーム」としてはかなりの長編だ。前作よりもエッジの効いたミニゲームが詰まっており、空飛ぶトースターに燃料を投下することで飛行する『Flappy Bird』風のミニゲーム、任期終了間近となった某国大統領のヒゲを剃るヒゲ剃りシミュレータなど、その独特のユーモアは前作から進化している。

『Mass Effect 2』のセーブデータをインポートすることで作動する仕掛けも。Image Credit: NitroRad
『Mass Effect 2』のセーブデータをインポートすることで作動する仕掛けも。Image Credit: NitroRad

なおゲームのクレジットでは『Frog Fractions 2』ならぬ『Frog Fractions 3』と表記されている。つまりは、これまでのARGが単なるマーケティングの一環ではなく、それ自体が『Frog Fractions 2』であったということだろうか。とにもかくにも、かくして都市伝説じみたARG長編と「is this Frog Fractions 2」ミームに終止符が打たれたというわけだ。

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