約9年もの開発期間を経て、ついに今年11月に発売された2Dアクションゲーム『Owlboy』。美しいドット絵が高評価を得た同作は、インディーゲームとして見事に羽ばたいたといえるだろう。そんな『Owlboy』を手がけたD-Pad Studiosの面々がredditのAMAにてユーザーからのさまざまな疑問に答えている。
AMAにはきわどい質問が多く寄せられたが、特にきわどかったのは海賊版についての話題だろう。発端となったのは、とあるredditユーザーが「Steamと比較してGOGについてどう思う?GOGの(DRMフリーであるがゆえに)海賊版の影響はどう?」と問いかけた。この発言に回答したのはD-Pad Studioの共同設立者でありプログラマーをつとめるJo-Remi Madsen氏。氏はこの質問に対して、ユーザーの海賊版の使用に対して一定の理解を示す発言をしている。
僕らは小さなインディーだし多くのものはいらないよ、だから海賊行為はそれほど心配になるようなものじゃないんだ。(中略)海賊版の数はかぞえていない。でも、海賊版をプレイして根っからのファンになり、ゲームを他のユーザーに薦めてゲームの売り上げを促進したプレイヤーを知っているのさ。僕自身は海賊行為をしたことはないが、国ごとに状況は異なっているし、経済が苦しい国もある。僕らの願いは、どんな手段だったとしても、ユーザーにゲームを遊んでもらう、楽しんでもらうことなんだ。
またMadsen氏は、今後も海賊版の対策をする予定がないことを明かしている。氏が海賊版を取り締まらない理由はユーザーの経済的な事情を汲むという以外にも、クレジットカードを持っておらず、Torrentなどでしかゲームを入手できないユーザーへの考慮なども含まれているのだという。一方、こういった姿勢をとる理由については「自分たちが大きな会社ではないから」であることも強調している。
また氏はSteamの影響力を認めながらも、GOGの姿勢を好んでいると語る。特にプロモーションに関しては、Steamでは発売されればトップに表示され、次なるタイトルがリリースされるとすぐに消えてしまうなど、サイトのメカニズムに任せた宣伝活動を取っていることに対し、GOGはスタッフ自身がプロモーションを手伝ったことも含めて全面的なサポートを得られたと明かしている。
そして、もっとも多く関心が寄せられた質問は「開発中はどのように生計を立てていたの?」という質問だ。Madsen氏は「両親の支え」が重要であったと語る。チームのメンバーは、開発期間の半分は氏の両親の家に泊まり込んでゲーム作りをおこなっていた。家賃は無料という経済的な部分だけでなく多くの部分で助けを得られたことで開発に専念でき、ゲームのクオリティを上げることができたのだという。
また開発スタッフの全員がフルタイムで働いていたわけではなく、作曲を担当したJonathan Geer氏は他のプロジェクトのかたわら『Owlboy』に携わっており、レベルエディターであるAdrian Bauer氏は、開発初期は大学生でありアルバイトとして『Owlboy』の開発に携わっていたという。2年前からD-Pad Studioの一員となり、これからもスタジオのメンバーとしてゲーム作りにかかわっていくようだ。
開発の主要メンバーに関しても、D-Pad Studiosが2013年に『Savant – Ascent』をリリースしていたことを考えると、9年間をずっと『Owlboy』の開発に捧げていたというわけではないだろう。しかしいずれにせよ、長期間の開発であったことには変わりなく、アートディレクターをつとめたSimon S. Andersen氏は精神的に芳しくない時期もあったと語っている。パートナーと結婚したこと、そして何よりリリースしたことに安堵したようだ。『Owlboy』の開発を支えたのはやはり周囲の人々の存在だったのだろう。
D-Pad Studioの次なる動きが気になるところだが、「『Owlboy』のあとにリリースする」と宣言している『Vikings On Trampolines』の開発をおこなっているのではないかと推測されている。同作は2011年にすでにゲームプレイ映像がYouTubeに投稿されている。実際にどのようなタイトルが開発されているかは明らかではないが、D-Pad Studiosの動向を気長に見守っていこう。
弊誌では『Owlboy』のレビューも掲載しているので、気になった方はそちらもチェックしてみてほしい。