スウェーデンの田舎町に現れた巨大メカと恐竜。TRPG『Tales from the Loop』がKickstarterキャンペーン成功
スウェーデンの出版社Fria Liganによる最新テーブルトークRPG『Tales from the Loop』がKickstarterキャンペーンで大成功を収めている。11月24日にキャンペーンを開始してから約1時間で初期目標額の10万スウェーデン・クローナ(約125万円)を達成。12月14日時点ではキャンペーン終了まで2日を残して300万スウェーデン・クローナ(約3770万円)を突破、予定していたストレッチゴールのすべてをクリアしている。
Fria Ligan(英名:Free League)は2011年の設立から複数のテーブルトークRPGを世に送り出してきた出版社であり、Modiphius Entertainmentと共同出版した「Mutant: Year Zero」はファンからの好評を得ている。今回Kickstarterキャンペーンを行った『Tales from the Loop』については、スウェーデンのSFアーティストSimon Stålenhag氏が2014年に発表した同名のアートブックを原作としている。2015年には別のKickstarterキャンペーンにより英語版のアートブックが出版されている。
Stålenhag氏が『Tales from the Loop』で描いているのはフィクション上の1980年代スウェーデン。さらにピンポイントに言えば、首都ストックホルムの西部に位置する田舎町Mälaröarnaが物語の中心となっている。Mälaröarnaの地下には1950年代に政府機関Riksenergiが建設した謎の加速器(Particle Accelerator)が眠っており、地元の住民はこれを「The Loop」と呼んでいる。「The Loop」の影響なのか、町の周辺では現代に存在しているはずのない生物の目撃報告が相次いでいるという。
今回のKickstarterキャンペーンの成功により、プレイヤーたちはStålenhag氏が描いた世界観の中でテーブルトークRPGを堪能できるようになる。プレイヤー側は80年代スウェーデンの若者としてロールプレイし、「The Loop」にまつわる謎を解いていく。操作するキャラクターは職業ではなく、トラブルメーカー、人気者、変人といった若者らしい性質の差で分けられている点が変わっている。好奇心旺盛な学生として、「The Loop」の力で田舎町に送り込まれた奇妙な生物や、レトロなロボットと遭遇し対処していくのだ。大まかなルールの基礎については先述の「Mutant: Year Zero」を受け継いでいるが、争いや戦闘ではなく探索や人間関係に焦点を当てているという。
こうしたメインキャンペーンの舞台はアートブックと同じMälaröarnaとなるが、アメリカ・ネバダ州のボールダー・シティで展開される別キャンペーンも含まれている。メインキャンペーンについてはベテランのゲーム作家であるNils Hintze氏が、アメリカでのキャンペーンはベストセラー作家のMatt Forbeck氏が担当している。シナリオの大部分はアートブックのイラストレーションをベースにしているが、一部にはオリジナルのシナリオおよびイラストレーションが含まれているそうだ。
なおKickstarterキャンペーンでは、用意されていた18つのストレッチゴールすべてをクリアしたため、かなりのコンテンツが追加される見込みだ。まず印刷版のルールブックはハードカバー、マップはフルカラーになる。ゲーム内容と関わる部分ではキャラクターアート、シナリオ、エリアが追加される。高額出資者にはオリジナルのダイスセットとStålenhag氏によるサウンドトラックが送られる。さらには拡張パックとしてStålenhag氏のアートブック第2弾「Things from the Flood」をベースにしたTRPGにも取り組むという。
そうはいってもテーブルトークRPGをプレイするには人数と場所の確保が必要なため、コンテンツが詰まっていても実際に触れられる機会は少なかったりもする。今回のKickstarterキャンペーンはその点も考慮されており、家族や友人が集まりやすいクリスマス前に出資者向けのベータ版PDFファイルが送付される。印刷版については2017年2月に発送される見込みだ。テーブルトークRPGのファンはぜひともKickstarterキャンペーンへの出資を。……と言いたいところだが、ルールブックは英語およびスウェーデン語限定である。まずは英和訳のできるゲームマスターを探すところから冒険は始まりそうだ。