VR対応のヴィジュアルノベル『Angels and Demigods』。未来の土星の衛星を舞台に、物語の可能性を追求する

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第313回目は『Angels and Demigods』を紹介する。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第313回目は『Angels and Demigods』を紹介する。

『Angels and Demigods』はVRヘッドマウントディスプレイに対応したビジュアルノベルゲームだ。基本的にビジュアルノベルは、主人公や複数のキャラクターの主観視点で、ほかの登場人物との会話やモノローグが繰り広げられ物語が進む構成である。本作はそれをVRによって拡張し、登場人物の一人として物語の中に入り込むゲームデザインを目指しているという。

本作の舞台は土星の衛星、エンケラドゥス。この衛星では生命に必要とされる熱源と水、有機物の3つが揃っていることが観測されており、地球外生命が存在する可能性のある星の有力な候補とされている。時代設定は190世紀の遠い未来で、衛星エンケラドゥスにはすでに人類が居住し、文明が発達している。ゲーム内では、遺伝子改良を施され休眠用ポッドの中で眠っている女性戦士「angel」という存在が登場し、そのひとりであるアシュリーが突如としてポッドから逃亡。プレイヤーは彼女を連れ戻す任務を与えられる。

物語は全5章の構成。事態を説明するドクター、武装したアンドロイドなど、アシュリーを追いかける中で出会うさまざまな登場人物との会話を通じ、事件の背景にある陰謀を明らかにしていく。

真ん中のエメラルド色の髪の女性が物語のカギを握る人物、アシュリー。
真ん中のエメラルド色の髪の女性が物語のカギを握る人物、アシュリー。


視点を移動させて登場人物との会話を選択していくゲームプレイの様子。公開されているデモ版で確認できる。

おもなゲームプレイはVRヘッドマウントディスプレイを通じて3D空間の中を見渡し、視点を登場人物などに合わせることで会話をしたり、イベントシーンを進行させていく形になる。VRならではの“バーチャルなゲームの世界そのものの中に入り込む”という感覚よりも、役者の一人として舞台に立っているかのような感覚に近いかもしれない。従来のビジュアルノベルが背景の書割りのなかで登場人物との会話を進めるという、ジャンルの名前通り小説を読んでいく体験なのに対し、『Angels and Demigods』は3Dで作られた舞台の上で、登場人物たちと会話を重ねていく演劇に近い体験となる。

今回のKickstaterのクラウドファンディングにて、制作を担当する7 Keys Studiosは来年4月17日のリリースを実現するための開発資金を募っている。 資金の使い道はおよそ20000ワードに及ぶボイスの追加をはじめとした演出の強化と、リリースまでの開発資金にあてるのこと。『Angels and Demigods』は現在デモ版が公開中。SteamGoogle Playoculusからダウンロードしてプレイ可能。ビジュアルノベルの物語をVRでどのように拡張することができるのか、その可能性を体験することができる。

Hajime Kasai
Hajime Kasai

ブログ「GAME SCOPE SIZE」を運営。その他のメディアにも寄稿しています。

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