発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第288回目は『ISLANDS』を紹介する。
『ISLANDS』はありふれた日常の風景をシュールに描いたゲームである。ゲームプレイは『Myst』のようなポイント&クリックのアドベンチャーとなるようだ。観葉植物のヤシの木や自動販売機が並ぶラウンジ、あるいは夜の駐車場といったどこでも見かける風景の中を探索していく。オブジェクトで気になる部分をクリックしていくことで、ヤシの木がエスカレーターを登っていったり、奇妙なオブジェクトが円陣を組んでウェーブするなど、風景のなかに潜んでいる不気味な秘密が露わになっていくのだ。
『ISLANDS』はおよそ45分間で終わる短編作品で、全編に渡って奇妙な世界を描くことを徹底する構成だ。ゲーム性に捉われないアート系の作品で、ピクセルアートの3D空間を自由に歩き回り、四季の移り変わりを1時間強で体験できるアーティスティックな作品『Proteus』に近い雰囲気がある。また、霧の中に包まれた日常風景という不気味なビジュアルは、PlayStationの初代『サイレントヒル』も思い起こさせる。
本作のアーティスティックなアプローチには、クリエイターが別のジャンル出身であることが関係している。本作を製作しているCarl Burton氏はGIFアニメーションのクリエイターなのだ。普段はTumblr やTwitterで作品を発表しており、ありふれた日常を淡く奇妙なものとして描いてみせる。『ISLANDS』の原点がどんなものなのかがわかるだろう。
GIFによる表現を特集するウェブサイトCREMによるインタビューでは、Burton氏はこの表現手段を選んだ理由を「インターネット上で簡単にシェアできますし、ムードのある瞬間を伝える目的にも使いやすいもの」と発言しており、 制作する作品のヒントには「自然や建築、ありふれた日常の環境やニュースなどから影響を受けています」と伝えている。今回の『ISLANDS』はそんなGIFアートの延長として制作している。
『ISLANDS』はPC/Mac/iOSでのリリースを予定している。現在Steam Greenlightに登録中だ。日常の風景をまったくの奇妙なものに作り変えてしまった世界に興味があれば、ぜひチェックしてほしい。