発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第274回目は『MEGALOMANIAC』をピックアップする。
『MEGALOMANIAC』は、大富豪となり資産を増やしていくシミュレーションゲームだ。経済がテーマの一般的なシミュレーションゲームならば、いかに資産を効率よく増やしていくかをシミュレートすることが目的である。しかし本作がシミュレートするのは大富豪の資産運用ではない。一部の富裕層が富を独占することで世界が悪化していくありさまである。
プレイヤーはグローバルメディアを運営し莫大な資産を持つ父親の息子Rich Savageとなり、会社の傘下にある雑誌や新聞、TVといったメディアを利用していく。序盤には父親からいかに資産を巻き上げるかという交渉を行ったり、タブロイド誌などのメディアの買収を行うことができる。富裕層が不利になるような問題が起きたときには、買収したメディアを使ってマイノリティへの差別的なスキャンダルを報道させることで世論からの批判の矛先をそらしていく。やがて政界の人間に関わることで、マーケットを独占する足がかりとし、世界の富豪ランキングのトップを目指していくのだ。
ここ数年では、100人に満たないわずかな大富豪が世界人口の半分の富を持っていると言われており、貧富の差があまりにも広がっている。一般家庭に生まれながらパーソナルコンピューター市場で成功したマイクロソフトのビル・ゲイツや、SNS市場でFacebookを成功させたマーク・ザッカ―バーグのように新しいものを生み出して富豪になったのはまだいい。すでに富豪である親からの相続によってそのまま富を得るケースが少なくはなく、経営者としての実績もなく富を得ている不公平さが問題となっている。経済学者たちは格差が広がっていく状況で、一部の富裕層が世界のルールを作り、貧しい人は貧しいままの社会が続くことを危惧している。問題の解決のために富の再分配が叫ばれているのだが、答えは出ていない。
『MEGALOMANIAC』は一部の富裕層が富を独占し、世界を動かしている現実を極端に皮肉って描いて見せる。本作のプレスリリースには「どんなふうに今の世界が動いていて、どんなふうに世界が終わる時を迎えるのだろうかというミニチュアモデルを作りたかった。(主人公の)Rich Savageは特権的で支配的な富裕層のパロディなんだ」と記されている。
本作の特徴のひとつに「リアルタイムで地球が死にゆくのを見届けよう!」という過激な一文さえある。親から資産を受け継ぎ、メディアを支配する富豪Rich Savageが富を独占していくことで世界が悪くなっていくのである。資産を得るように動くほど貧富の差は広がり、地球資源は使いつくされ、世界各地で紛争が起きるのである。
『MEGALOMANIAC』はPC/iOS/Androidでのリリースを予定している。2016年の3Qの発売に向けて開発中だ。現在Steam Greenlightにも登録されているので、チェックしてみてほしい。