レトロ風ホラー「FAITH: The Unholy Trinity」開発中。「悪魔崇拝への恐怖」をベースとしたホラー作品
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たこと無いような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第656回は「FAITH: The Unholy Trinity」を紹介する。
「FAITH: The Unholy Trinity」は、Airdorfが手がけるレトロ風ホラー『FAITH』シリーズ3作品をまとめたもの。クラシックなピクセルアート、不気味さを際立たせるサウンド、怪異と対決するゲームプレイが、悪魔崇拝の蔓延る架空の80年代へと誘う。
1980年代のアメリカで、悪魔的儀式虐待と呼ばれる、悪魔崇拝の儀式に子供たちが捧げられ虐待されているという噂が、広まった。発端となった保育園での事件は「職員によって子供が虐待されている」という園児の親による虚偽の主張から始まったもの。のちに冤罪であると明らかになったが、悪魔崇拝への恐怖だけは伝播し、やがて全米へ恐怖をもたらした。事件は偽物でも、「悪魔崇拝儀式虐待が行われているかもしれない」と感じた人々の恐怖は本物だったのだ。『FAITH』シリーズは、そんな80年代アメリカで起こった悪魔崇拝への恐怖に触発されて生み出されたレトロ風ホラーアクションADVである。
『FAITH』1作目の舞台は、アメリカ東部コネチカット州郊外の森にあるマーティン家。1年前、主人公の神父ともう1人の神父が共に悪魔憑き事件の調査に訪れ、しかし生きて帰ってきたのは2人だけだったという因縁の場所だ。1987年9月21日、再びマーティン家を訪れた若き神父は、十字架を片手に悪魔と相対し、悪夢を終わらせようと奮闘する。
ゲームプレイでは、見下ろし視点で神父を操作し、屋外や家の中を探索。周囲はすでに悪魔の領域と化しているため、探索中にもたびたび悪魔たちが姿を現し、神父へと迫ってくる。逃走するか、十字架を掲げると撃退もできるが、接触するとやられてしまうので油断は出来ない。節目ごとにチェックポイントが設けられいるので、もしやられてしまっても途中から再開可能だ。また、十字架は攻撃以外に怪しい場所が反応する場合もある。メモや手紙が出現することもあり、そうしたオブジェクトによって作中の状況が示されていく。プレイ中はとりあえず十字架を使うことになるので、あらゆるものに十字架を突きつけるゲームと言ってもいいだろう。シリーズをとおして複数のエンディングが用意されており、終盤に選んだ行動によって、エンディングが分岐する。
グラフィックは80年代頃のレトロゲームに影響を受けており、最新のゲームに比べると解像度が低く抽象的だ。しかし、黒一色で表現された空間は不安を掻き立て、ドットで構築された木々や屋内、怪物は不気味そのもの。レトロなグラフィックとサウンドによって80年代を表現することで、本作特有の恐怖体験が生み出されている。悪魔に襲われる死の恐怖、悪魔を崇拝するカルト教団の狂気、未知のものへの畏れが、プレイヤーを暗黒の80年代へと引き込んでいく。
「FAITH: The Unholy Trinity」には、上記の1作目に加えて、教会が舞台となるCapter2、強力な悪魔の召喚を停止するため戦うというChapter3を収録。Chapter1は有料版と無料版、Chapter2は有料版がIch.ioにて販売されている。また、Steamのストアページ上などで公開されているDemoでは、無料版の1作目と、農園をさまようChapter2Demo、7階の存在しない10階建てマンションをさまようChapter3Demoがプレイできる。Demo版にもエンディングが用意されており、本編とは少し違う恐怖体験が描かれている。ゲーム中には文書がそれなりに用意されており、現時点で日本語化は行われていないため、全容を知るには英語と向き合う覚悟が必要だ。
「FAITH: The Unholy Trinity」を開発中のAirdorfは、『FAITH』シリーズが初作品であり、他にもレトロなグラフィックを採用したホラーゲームをItch.ioで公開しているスタジオだ。メンバーは、テキサス州に住むMason Smith氏。『FAITH』Chapter3の開発にくわえて、映画スタジオEpic Picturesによるホラーとサスペンスをテーマにした、インディー開発者による10本のプレイ可能なトレイラー企画へ参加しており、近日中に詳細が明らかになるという。「FAITH: The Unholy Trinity」は、Steamにて発売予定だ。