チェルノブイリ原発事故に対処するストラテジー『Chernobyl 1986』開発中。 未曾有の人災を前にして、あなたなら何ができるか

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie pick」。第633回は『Chernobyl 1986』を紹介する。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie pick」。第633回は『Chernobyl 1986』を紹介する。

1986年4月5日、現ウクライナ、キエフ州にて可動していたチェルノブイリ原子力発電所にて発生してしまった史上未曾有の大事故、通称「チェルノブイリ事故」。原子炉運用の乱雑さにより発生した人災は、政府による事態の隠蔽や、放射性物質及び放射線に対する知識の不足によって瞬く間にその規模を拡大。北の大地と人類史に対し、決して消えぬ傷跡を刻み込んだのであった。

「チェルノブイリ事故」の真実はインタビュー集や回顧録をはじめ、映画、音楽、漫画などさまざまなメディアに乗り、忘れ得ぬ教訓として事故発生から30年余りが過ぎた今もなお、我々に向け伝えられ続けている。今回紹介するSteam向け『Chernobyl 1986』もまた、事故から生まれた教訓を伝えるメディアの一つであり、未来に向けた祈りの一つでもある。

本作は事故発生までのカウントダウンから始まり、事故の収束まで如何に多くの人命を救うか、被害規模を抑えられるかを目標とするアドベンチャー・ストラテジーゲームである。被害状況の確認から救助の要請、消防隊の誘導から清掃人による除染作業まで、プレイヤーはその場の状況に応じ、適切な選択肢を随時採り続けなければならない。

また、場所によって異なる放射線レベルや他の炉における誘爆の危険性、人員の心理状態には常に気を配る必要がある。たとえば恐慌状態ある集団に対し避難勧告を行ったとしても素直に指示に従う可能性は低いだろうし、放射線レベルによって使うべき放射線抑制のための手段は異なる。間違った方法を使った結果、無駄に終わるどころか人命が失われてしまえば最悪と言えよう。PV中では作業中のヘリが高すぎる放射線レベルによってあろうことか墜落してしまっている。

プレイ中には時に残酷とも言える状況に直面することもあるだろう。しかし、事態はリアルタイムに進行していく。少しでも判断に時間や迷いが生じれば、救えたはずの命は次々と消えていくことになる。自らの命を優先するのか、眼の前のけが人を救助するのか、自らを犠牲にその先にある災禍を鎮めるのかはプレイヤー次第だ。

もし、あなたが事件の現場にいたら、一体何が出来たのだろうか。どれだけの人を助けることが出来たのだろうか。当時を克明に描き届ける作品は数あれど、いち当事者として最善の行動をシミュレーションさせる作品の存在は珍しい。そしてこのことは、ゲームという媒体だからこそなし得た表現なのではないかと筆者は考えている。

本作を手がけるのはポーランドに拠点を構えるインディースタジオCreativeForge Games S.A.。同社は冷戦期における工作員達の暗躍を描いた『Phantom Doctrine』をはじめ、意欲的なストラテジーゲームを世へ送り出し続けていることで知られており。本作もまたストラテジーゲームということでその品質には期待が持てる。発売日は現在明らかになっていないが、(一応、ストアページ右下には来年9月25日発売と記載されている)気になる方はぜひチェックしてみてほしい。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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