警察署長となり、犯罪はびこる街を立て直す『Keep the Peace』開発中。構想20年の超力作シミュレーション

まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第581回目は『Keep the Peace』を紹介する。『Keep the Peace』は、警察署長となり、街に平和をもたらすべく奔走するシミュレーションゲーム。20年にもわたり構想が練られているという、超力作だ。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第581回目は『Keep the Peace』を紹介する。

『Keep the Peace』は、警察署長となり、街に平和をもたらすべく奔走するシミュレーションゲームだ。都市や村などさまざまな場所を舞台となるが、どの場所でも住民は警察を一切信用していない。起き続ける犯罪、問われる責任、文句を言い続ける市長。そんな環境で、警官たちは疲れ果てている。プレイヤーは過酷な環境下で、警官を指揮し治安を守ることになる。

治安を守るために何よりも必要なのは人手だ。それぞれ能力の細かい警官たちを雇い、任務に就かせる。警官が揃ったら、街で起こる事件に対応しよう。泥棒、銀行強盗、通り魔、カーチェイス、爆破予告、捜索救助、自動車事故、自然災害など100種類以上の事件が用意されている。彼らに部品まで細く設定できる車を割り当て、事件現場へと送り込もう。

プレイヤーの仕事は、単に警官を派遣することだけではない。重大な事件においては、現場へと向かい直接指示をおくることになる。どのように事件にアプローチするかは、プレイヤー次第。武力的な解決を優先してもいいし、平和的な方法を貫くのもいい。事件ごとに具体的なアプローチが存在し、たとえば立てこもり事件では、催涙ガスを投げ込むか、長期戦で弱らせるか、さっさと突撃して終わらせるかなどさまざまな選択肢から方法を選ぶことができる。アプローチや成否によって事件の結末が変わるという。そして結末によって、住民の幸福度や警察への信頼感も変わるとのこと。武力的な解決に頼りすぎた場合、住民の信頼は低下していくほか、場合によっては高額請求をされるリスクもあるようだ。

事件は、単なる犯罪行為だけでなく、暴動の鎮圧や自殺の防止といったものまであるようだ

また留意しておきたいのは、人のリソースは限られている点。街には事件が起こり続ける。ひとつの事件に人員をすべて送り込めば、直後起こった事件には対応できなくなる。どの警官を、どの程度の人数を現場に送り込むかが、重要になるようだ。また警官の状態の管理も必須。任務をこなせばどんどん成長するが、一方でストレス疲労を溜め込んでいく。負傷すれば療養が必要で、一定以上幸福でなければパフォーマンスは発揮できない。スタッフをうまくマネージメントする必要があるわけだ。

そしてもうひとつ重要なのが、事件の事後分析。犯罪にはひとつひとつ動機が設定されており、動機や傾向、手段などの分析を進めて、対策を立てていくことになる。エリアの強化か、スタッフの増員か。調査費用をもっとかけるか。防犯グッズを配るか。対策の立て方もさまざま。事件の再発を目指すために、その後の分析が重要になるだろう。

こうした説明を聞くだけで非常に壮大なコンセプトのゲームであることが、わかるのではないか。それもそのはず、本作は20年にもわたり構想が練られていたのだという。開発者であるNick Morris氏は、物心のついた時からこの『Keep the Peace』を作りたいと考えていたようだ。小さな頃から経営シミュレーションを好んでいた氏は、なぜ「警察を指揮し街を守る」という題材のシミュレーションがないのか疑問に思っていたとのこと。そして高校時代にVisual Basicにて『Keep the Peace』の開発を始め、最初のバージョンができたという。そのまま趣味の時間を使い、開発を続けた。

開発が進むほどゲームは複雑になっていき、現在ではUnityを使用して制作を進めているという。就職したMorris氏は広告代理店マンとして成功を収めるかたわら、夜中や週末にゲーム制作を続ける。そして2017年後半に『Keep the Peace』を完成させるために、仕事をやめてDeliberative Entertainmentを立ち上げ、専業のゲーム開発者となった。近年には警察シミュレーションゲームが数々リリースされているが、氏はリアリスティックであり、深みのあるゲームを求めるユーザーが存在すると信じており、他作品を意識せずに『Keep the Peace』の開発を続けているとのこと。2018年5月には、42万カナダドルを目指してKickstarterのクラウドファンディングキャンペーンを実施したが、目標が高すぎたせいか、5万カナダドルを集めたものの失敗。それでも前を向き、2019年後半の早期アクセスを目指し開発中だ。

ひとつひとつの要素が掘り下げられており、ゲームシステムはよく練られている一方で、掘り下げすぎるあまりゲームとして成立させられるのか、また完成させられるのかという不安もまた感じさせる『Keep the Peace』。20年もの構想が練られた魂の一作が、ユーザーのもとへ届けられることに期待したい。

『Keep the Peace』は、2019年後半にSteamにて早期アクセス販売予定だ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

記事本文: 5198