『VA-11 Hall-A』開発者、巨大少女シム『SAEKO』は「巨女フェチじゃないが、“わかる”」、『SAEKO』開発者は『VA-11 Hall-A』を「正直かなり参考にした」とファン目線。ヘキだけじゃない信念の対談
SAFE HAVN STUDIOの『SAEKO: Giantess Dating Sim』と、Sukeban Gamesが開発中の『.45 パラベラム ブラッドハウンド』がどんなゲームなのか。

ゲームレーベルHYPER REALは5月29日、『SAEKO: Giantess Dating Sim』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam/DLsite/Stove)。本作は、クリエイター集団SAFE HAVN STUDIOが開発を手掛ける。
『SAEKO: Giantess Dating Sim』は、2000年代の日本を舞台とするアドベンチャーゲームだ。主人公のリンは、ある日目を覚ますと小人になっていた。そして目の前にいるのは冴子。リンはほかの 小人 たちと共に、冴子の机の引き出しの中で生活をすることとなる。
冴子から管理人を任されたリンは、昼はほかの小人たちをまとめ、夜は冴子の独り言の聞き相手を務めることになる。昼は小人たちのパラメーターに気を配りながら過ごすポイント&クリック型のパート、夜は巨大な冴子との会話パートとなり、自他共に命を左右する選択の一つ一つを下していく。
弊誌は、本作を手掛けたSAFE HAVN STUDIOのkyp氏と、ピクセルアートを用いたビジュアルノベルの中で未だに第一線の人気を誇る『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』を手がけたSukeban GamesのChristopher Ortiz氏に呼びかけ、Sukeban Gameの山中琢氏が通訳するかたちで、それぞれの新作ゲームについての対談を実施した。
SAFE HAVN STUDIOの『SAEKO: Giantess Dating Sim』と、Sukeban Gamesが開発中の『.45 パラベラム ブラッドハウンド』がどんなゲームなのか。そして、kyp氏とChristopher Ortiz氏の作家性やお互いの作品への印象などを訊いた模様をお届けする。
『VA-11 Hall-A』から大きな影響を受けて生まれた『SAEKO』
――自己紹介をお願いします。
kyp氏:
SAFE HAVN STUDIOという3人のチームでゲーム制作をしているkypと申します。元々はプログラマーでしたが、音楽を作ったり絵を描いたり、あと文章を書くことも好きで、『SAEKO: Giantess Dating Sim』(以下、SAEKO)では、プログラムとシナリオと音楽、あと一部のグラフィックと、いろいろ広く担当しています。
Christopher Ortiz(以下、Chris)氏:
Sukeban GamesのChristopher Ortizです。ネット上ではChris、あるいはkiririn51と呼ばれています。『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』(以下、VA-11 Hall-A)ではアートワークとシナリオ、ディレクションを担当しました。今は昨年発表した『.45 パラベラム ブラッドハウンド』(以下、.45PB)に取り掛かっていて……、思ったより大きなタイトルになっていますが、全力で頑張っているところです。

――kypさんとChrisさんは、それぞれお互いのゲームを知っていらっしゃいましたか。
Chris氏:
最初に『SAEKO』を見たのはTokyo Indiesで、そのときにデモ版をプレイしました。ゲームの中の冴子はちょっと話すと怒られて、でも話さなくても怒られて、というのがとても現実的で、そういう意味でも怖かったですね。説明は難しいけれど、『SAEKO』は人を引きつける、特殊な魅力をもっているゲームだという第一印象でしたね。
――『SAEKO』は冴子自身の魅力とホラー的な印象を受ける作品ですが、Chrisさんはキャラクターのかわいらしさと怖さ、どちらを強く感じましたか。
Chris氏:
まずはパンク精神の方を感じました。『SAEKO』ではトラディショナルなドット絵に対する反抗心みたいなものがあるのかなと。もちろん僕もプレイさせてもらったんですが、遊んでいるうちに自分の中の“ドット絵警察”がモヤモヤし始めて、そのまま遊んでいると「ああ、こういう表現なんだ。だったらむしろこの手法が良いんだ」と納得しました。
テキストの表示の仕方とか、冴子はしっかりと描き込まれているのにほかのキャラクターはお絵描き感のあるテイストが違うものであることとか、いろいろな表現が混ざっていて、パッと見るとごちゃごちゃに混ざっていて変な感じがするけど、良い意味での反抗心みたいなものが感じられたのが良かったですね。

――kypさん、らしいです!『SAEKO』チーム内にパンク精神的なものはありましたか。
kyp氏:
そうですね。グラフィックはふたりで担当していて、しっかりとしたドット絵を友人のイラストレーターkohくんが、Chrisさんの仰った“oekaki っぽい絵”が、僕の描いているものなんです。kohくんも「今までにないピクセルアートを描くんだ」と意気込んでいて、ドット絵のルールを結構無視していて、わざと荒く描いたり線を残したりして、それが良い方向に働いたのかもしれません。
Chris氏:
あと『SAEKO』は、会話パートと生贄パート、夜のまったりパートと見せかけた一番怖い部分に分かれているところとか、『VA-11 Hall-A』の作りと似たような印象を受けました。
ひとつの区切りが短いので、区切りの良いところまで遊ぼうという進め方がしやすいのも良いですね。
あと、それぞれの場面で冴子がいつも見ていることにゾクゾクしましたね。ちなみに、寝る前にメールを見ようとして冴子にボタンを押されて閉じられるのが一番怖かったです。
――Chrisさんの感想は、kypさんとしては狙いどおりなんでしょうか。
kyp氏:
『SAEKO』が『VA-11 Hall-A』の作りと似たような印象を受けたと仰っていましたが、……実はかなり影響を受けています。『VA-11 Hall-A』は、ゲーム内の1日がふたつのパートに分かれていてそれぞれが短めで、なぜこんなに飽きずに最後まで一気にプレイできたのかなと考えたときにそれが理由かなと思ったんです。なので、細かい要素を積み重ねて、ひとつのゲームにするというような『SAEKO』の作り方は、かなり『VA-11 Hall-A』の影響を受けていますね。
冴子がいつも見ているという要素に関しては、そもそも僕はプログラムを書いているうちにアイデアが浮かんでくるタイプで、『SAEKO』はいわゆる“巨女”の恐怖とどうやって付き合うのかをテーマにしようと思って、そのアイデアに合う要素を入れた結果のひとつですね。
Chris氏:
そのおかげか、『バイオハザード』や『サイレントヒル』のような、ずっと怖い感じがうまく演出できていると思います。巨女好きな人にはハッピーで、自分みたいにその属性がない人には常に怖いゲームですね。
――kypさんが初めてSukeban Gamesのゲームを知ったとき、どう感じましたか。
kyp氏:
『VA-11 Hall-A』は、僕がインディーゲームのことをあまり知らない頃にプレイして、そのときに感情をすごく揺さぶられたんです。実は、それでインディーゲームを作ってみたいと思って、今実際作っているきっかけなんですね。
『.45PB』は、Tokyo Indiesでプレイさせていただきました。ただ、実はその前からChrisさんが月に一度くらいのペースで書かれている開発blogで「Project D」という名前で紹介されていたときから見ていて、スクリーンショットを見たときにどんなゲームかわからないけどとにかく格好良い、と思いました。

――開発blogまで読んでいるとは……めちゃめちゃ『VA-11 Hall-A』およびSukebanのファンじゃないですか!
kyp氏:
実は大ファンなんです。だから、話しながら本当にドキドキしています(笑)
――(笑)『VA-11 Hall-A』はリリース以来、非常に強い影響力のある作品ですが、Chrisさんは自分の作品の影響を受けたという開発者や作品と出会ったときはどんな気持ちなんですか。
Chris氏:
僕も高校生ぐらいのときにゲームを遊びながら、自分も作りたい、でもどうやって作るのかわからないと思っていた人間でした。そんなときに須田剛一さんの『Killer7』や『ノーモア★ヒーローズ』を遊んで、よりゲームを作りたいという気持ちが強まって、真剣にゲーム開発に挑もうと思ったんです。そういうきっかけでゲーム開発を始めたからこそ、自分の作ったゲームきっかけでゲームを作り始めたという話はすごく嬉しいですね。
「巨大な女の子から大変な目に遭わされる」テーマを先行したゲーム作り
――『SAEKO』には元々タイトルに「Giantess Dating Sim」と入っていますが、Chrisさんがゲームジャンルを付けるとしたら、ホラーにしますか。それとも『アドベンチャー』にしますか。
kyp氏:
ちなみに、『SAEKO: Giantess Dating Sim』のタイトルも『VA-11 Hall-A』の「Cyberpunk Bartender Action」というサブタイトルに完全に影響を受けています(笑)
Chris氏:
個人的にサブタイトルの付いているゲームが大好きで、『VA-11 Hall-A』の「Cyberpunk Bartender Action」は、『メタルギアソリッド』の「タクティカル・エスピオナージ・アクション」から来ているものなんです。『.45PB』も似たような長いサブタイトルとして、「サイバーパンクアクティブタイムアクション」と付けているわけですね。なので、『SAEKO』だったら「Giantess Dating Action」とかどうでしょう。
kyp氏:
改名しましょうかね(笑)1日限定、4月1日だけとか。
Chris氏:
4月1日に『メタルギアソリッド』的な、リンが段ボールに隠れるっていうミニゲームを作りましょう(笑)
――面白そうですね(笑)kypさんはSukeban Gamesのゲームをプレイして、どういうことを感じていたんですか。
kyp氏:
『VA-11 Hall-A』は、自分はそもそもドット絵が好きですし、シティポップっぽい音楽やノスタルジックな雰囲気まで、すごい好きな作品ですね。作品自体は、明確に敵を倒したり悪を倒したりという王道的なシナリオではなくて、今ある状況の中でとにかく生きていくみたいなテーマで作品が成り立っているところにすごい衝撃を受けました。

――何かいろいろ解決しないですもんね。
kyp氏:
そうですね。実際自分があの世界に生きていても解決しないだろうなと思うので(笑)ああ、そうだなという衝撃を受けたというか、新鮮でびっくりしましたね。
Chris氏:
『VA-11 Hall-A』を作ったときは元々そういう意図で作っていたので、それが伝わって嬉しいですね。当時、ベネズエラの日々がとにかくしんどくて、生きていくだけでも結構大変というその感覚を元に『VA-11 Hall-A』を作り始めたんです。それがプレイヤーにも何とか伝われば、と。
そのつらさを伝えたいわけではないんですけど、こういう日々だったんだよ、そんな日々をただ生きるため、幸せに生きるためには、とにかく毎日を過ごしていかなければいけないと。その感じを伝えたかったのが『VA-11 Hall-A』でした。なので事件解決に尽力することもないし、サブタイトルにアクションとはいっているけどアクション要素は皆無だし、狙ったとおりの作り方で狙ったとおりに届いたので嬉しいです。
kyp氏:
『.45PB』の方は、最初に見たとき元々『VA-11 Hall-A』の2Dのゲームというイメージがあったので、いきなり3Dのゲームが出てきて「どうしたんだ」って驚きましたね。ただ、実際プレイしてみると同じ人が作っているなというのが感じられて、作品に対する信念みたいなものが似ているのかなという印象を受けて、遊べて良かったなと思います。

Chris氏:
同じような信念があるっていう風に捉えてくれたのは驚きましたが嬉しいですね。自分はどちらかというと信念をもって作っているというよりも、そのときに作りたいものを作っているタイプなので、その中でスタイルを見つけてくれるというのは嬉しい驚きです。
――『SAEKO』もSukeban Gamesの作品も、こういうゲームを作ろうというモデルとなる作品があるわけではなくて、オリジナリティのある作品ですが、ゲームのペース配分やゲームデザインなど、どうやって決めていったのでしょうか。
kyp氏:
『SAEKO』は、巨大な女の子が出てきて大変な目に遭うというテーマは一貫してあったので、そこからじゃあどうすれば良いんだろうということをシナリオの前にゲームシステムを考えて、実際何パターンか考えてパブリッシャーさんにも見せたりしましたね。最終的に、一番シナリオを書きやすかったというか、テーマに合っていて制約も少なくて作りやすいルールを決めて、そこからシナリオを作っていきました。
――完成型をイメージして作っていったわけではなくて、いろいろなアイデアを積み重ねていったと。
kyp氏:
そうですね。プレイしてどんな気持ちになってほしいか、とかは考えていたんですが、実際どういうゲームシステムにしようとかは、作り始めてしばらくたっても決まっていなかったですね。
――現在のバージョンじゃないものはどういったものだったんですか。
kyp氏:
実はさらに『VA-11 Hall-A』をリスペクトしたバージョンが元々ありました。引き出しの中にアイテムがいくつもあって、アイテムを組み合わせて新しいアイテムを作って、それを小人に与えるというのを考えていました。たぶん、探せばそのときのUIとかもあるんですが、全然シナリオが書けなかったので今のスタイルに落ち着きました。
ちなみにSukeban Gamesがblogで『VA-11 Hall-A』のプロトタイプの画像を出してくれているんですけど、僕も開発が終わったら似たようなblogを書きたいなと思っています。いつになるかわからないですけど(笑)

――過去のバージョンも見てみたいので、お待ちしています。Chrisさんは『VA-11 Hall-A』の開発はどうやって進められましたか。
Chris氏:
『VA-11 Hall-A』はなるべく作りたくないものを作らなくて良いようにしようという、そういった作り方をしています。僕はアートワーク担当だったので、かわいい女の子を描きたかったんです。ただ、一般的なアドベンチャーゲームはシーンによって美麗な背景とかを用意しないといけなくて……。それが嫌だから舞台をバーにしたんですよ。
――合理的な発想ですね(笑)
Chris氏:
で、主人公であるジルの部屋もビジュアル的にリッチなものではなく、意図的に単純なものにしています。だから『SAEKO』を作る上で制約を少ないものを選んだというのもすごく理解できます。
ゲームデザイナーは「何がしたいか」と「何を避けなくてはいけないか」を自問しながら作っていくべきだと思います。これは自分への反省なんですが、パラメーターやUIの作成をしたくないのに、『.45PB』というRPGを作り始めてしまったんです。今はこのことを猛反省しているので、『.45PB』以降の作品にはパラメーターもUIも出てこないはずです(笑)
一同:
(笑)
プレイヤーの人生をこのゲームでぐちゃぐちゃにしたい
――kypさんはプレイヤーに味わってほしい体験があると仰っていましたが、どういう体験を伝えたくて『SAEKO』を作っているんでしょうか。
kyp氏:
元々小説を読むことがすごい好きで、分け隔てなく、特にエログロありの小説をたくさん読んできました。で、それをゲームでも体験してほしいなと。しかも、ただ過激なだけじゃなくて、プレイして良い作品だったなと感じられるものにしたいと思って作りましたね。
――もっとプレイヤーをぐちゃぐちゃな気持ちにしてやろうとか、そういう邪な気持ちがたくさんあると思っていたんですが……。
kyp氏:
それで言うと、元々『SAEKO』の原案って、2000年代にネットの個人サイトで掲載されていた官能小説なんです。僕はこの作品を若かりしときに読んで、そこから人生がかなりぐちゃぐちゃになったので、このゲームでみんなもそうなってほしいなっていう気持ちはあります(笑)

Chris氏:
その感じはプレイしていて伝わってきましたね。その界隈の人にウケるだろうし、好きじゃない人でも何かの扉を開かせてしまいそうでしたね。そういうクリエイターの意気込みがゲームを良くすると思っていて、『VA-11 Hall-A』でも一見かわいい女の子で「おっ」と思わせつつ、シナリオも面白くて、見た目と物語の両方でプレイヤーの心に刺さるようなものを作れたんじゃないかと思います。『SAEKO』もいろいろな人の扉を開いて、人気になってこういう界隈のいわゆる古典になってほしいですね。
kyp氏:
すごく嬉しいお言葉です。ありがとうございます。
――『SAEKO』はアーティスティックで、芸術的に見ても素晴らしいと思っていて、あんまり煩悩的に見てはいけないのかなと思っていたんですが、もしかしてそういう観点で見ても良いんですか。
kyp氏:
僕はたまに打ち合わせ中に興奮することがあるので、『SAEKO』を煩悩的に見るのも全然大丈夫です(笑)あと、官能小説の本当にエロい作品って、直接的な表現だけじゃなくて芸術的な表現も伴っているんです。何十回、何百回と読んで、より心に響くみたいな深さもあると思うので、性的なアピールと芸術性の高さは実は繋がっているんじゃないかなと思っていますね。
Chris氏:
性的なアピールと芸術性と言えば、たとえばSteamでBANされているようなわかりやすいエログロを目的とした作品と、『バルダーズ・ゲート3』や『ウィッチャー3 ワイルドハント』といったSEX描写やヌードがある作品で何が違うかというと、ストーリーに必要があるのかどうか、目的がどこにあるのかの違いで、バランスが大事なんだと思っています。
『SAEKO』に関しては、個人的には巨女は自分の性癖ではないんですが、それでも手が近づいてきて潰されそうになるときとか、手のひらの細かい書き込みを見ると「わかる」となりますね。一方で、そういうのがわからない人には別にやり過ぎな表現ではないし、普通に恐怖が伝わってくるという、上手い作り方だと思います。
kyp氏:
この対談がすごい変な方向に進んでいる気がしなくもないんですが……(笑)でも、仰るとおりで、僕はやっぱり巨大な女の子とかが好きなので、そういう方向にアピールするということはもちろん考えているんですけど、同時に普通にビジュアルノベルとしていろいろな人がプレイしたときに「この要素はちょっと必要ないな」と思われたくないんです。
『SAEKO』のXアカウントには、いろいろな方からリプライが届いていまして、たとえば口の中を描いてほしいとか、腹の中を描いてほしいとか、足で踏みつぶしてほしいとか……。そういった要望は嬉しいのですが、本作のシナリオの効果としては使えないんですね。逆に、Chrisさんが挙げてくれた手を使った演出は、ゲームのシステムにうまく組み込めたから使っているわけです。そこを評価してもらえたのは狙いどおりで嬉しいです。
――『.45PB』はどういう思いで作っていて、どういう体験をプレイヤーに味わってほしいですか。
Chris氏:
『VA-11 Hall-A』のときは、とにかく何があっても毎日生きていかなきゃならないというメッセージだったんですが、同じテーマを繰り返したくはなかったので、『.45PB』では、とにかく何をしようとも、どうなってしまっても、自分の幸福を目指すために生きていくというメッセージを届けたいと思っています。それが自分にどんな結果をもたらした場合でも、とにかく生きていこうと。たとえば戦争や経済問題とか、自分ではどうしようもない問題をもっている人たちに、このゲームを通して前に進む力というか、生きていく力を与えたいです。

それぞれの目から見た『SAEKO』と『.45PB』
――最後に、自分たちの作品ではなくて、おふたりそれぞれ、自分たちの目から見たお互いの作品を紹介していただけますでしょうか。
Chris氏:
おお、なるほど。変わった質問なので、ちょっと考えさせてください。
kyp氏:
『.45PB』の冒頭の部分がプレイできる体験版をプレイさせていただいて思ったのが、まず映像がずっと格好良いんです。あと、僕はアクションゲームが得意な方ではないんですが、『.45PB』はアクションの途中で止まって、行動を考える時間を与えてくれるというシステムで、反射神経がなくてもプレイしていて上達を感じられる楽しいゲームでした。
あと、雰囲気は全然『VA-11 Hall-A』とは違いますが、キャラクターはすごくかわいいですね(笑)死んだときにアメリカというキャラクターが出てきて、自分のことを罵ってくるんですけど、プレイしてすごい好きになりましたね。
『VA-11 Hall-A』を好きな人もプレイしたら同じ作家性を感じると思うし、3Dゲームとしても面白いと思うので、ぜひみんなにプレイしてほしいなと思います。……感想になっちゃいましたが、こんな感じでどうでしょう(笑)
――kypさんのヘキがちょっとはみ出ている、素敵な紹介だったと思います(笑)
Chris氏:
『SAEKO』を遊んだときに思ったのは、ノスタルジーですね。2008年を舞台にしていて、ノキアフォンでアダルトサイトを見ていたときの記憶が蘇るという、懐かしい思い出にまさかのヒットでした。それでいてゆったりとしていて、でも怖い冴子との会話とか、いきなり訪れる重大な選択肢で人がひとりずつ減っていくというゲーム性を含めて、ひとつのパッケージとしてすごいゲームになっています。多くの人はただのフェチなゲームだと思って買うと思うんですが、それを良い意味で裏切って、いろいろな人に刺さっていくゲームだと思います。
kyp氏:
ありがとうございます。とても嬉しいです。
――お互いの作品を理解したおふたりによる、リスペクトのある対談になったと思います。ありがとうございました。
『SAEKO: Giantess Dating Sim』は、PC(Steam/DLsite/Stove)向けに発売中。『.45 パラベラム ブラッドハウンド』は、現在開発中だ。
[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]
[編集協力・通訳:Taku Yamanaka]