『首都高バトル』新作ゲームの売上が絶好調、好調理由は「首都高バトル」だから?開発者に訊いたロケットスタートの舞台裏
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-header.jpg)
元気は1月23日、レースゲーム『首都高バトル』の早期アクセス配信を開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)。早期アクセス版の価格は税込3960円。
『首都高バトル』は、同名レースゲームシリーズの最新作だ。舞台は封鎖された未来の東京。プレイヤーは夜の首都環状でカスタムした愛車を走らせ、公道やパーキングエリアなどで出会うライバルと最速の座を争ってバトルを繰り広げる。本作では、実在する高速道路が忠実に再現されている。また、公道レースであるため、コースが複雑に入り組んでいたり高低差があったりと一筋縄ではいかない。さらに、一般車両(アザーカー)も走る中で、レースをおこなうことになる。
また、レースにおいてはシリーズの特徴である「SPバトル」システムを引き続き採用。ドライバーの精神を数値化したSP(スピリットポイント)を削り合う仕組みになっており、相手を大きく引き離すほどSPを早く減少させることができる。車両のカスタマイズの妙とドライビングテクニックで差をつけて、ライバルの心を打ちのめすことが勝利となるレースゲームだ。
『首都高バトル』シリーズは2006年、『首都高バトルX』がXbox 360向けに発売されて以来、スマートフォン向け作品を除けば約18年もの間新展開がなく、ファンたちの間で新作が待ち望まれていたタイトルだ。そんな同シリーズが、『首都高バトル』としてSteamストアに早期アクセス配信として登場した。Steamユーザーレビューでは本稿執筆時点で7310件のすべてのレビューにおいて95%の好評を得て「圧倒的に好評」のステータスを獲得し、最大同時接続プレイヤー数は1万5824人を記録している(SteamDB)。
『首都高バトル』のプロデューサーを務める野口健太郎氏にインタビューを実施し、新作開発の経緯を訊いた前編に続き、インタビュー後編ではマーケティングを担当している佐藤孝年氏も交えて、セールス面について伺っていく。
最高のスタートを切るも、まだまだ上を目指す
――自己紹介をお願いします。
野口健太郎(以下、野口)氏:
本タイトルのプロデューサーを務めている野口健太郎と申します。
佐藤孝年(以下、佐藤)氏:
マーケティングを担当している佐藤孝年と申します。よろしくお願いします。
――早期アクセス配信は、かなり好評な印象です。早期アクセス配信で、しかも18年のブランクがあるタイトルで、最大同接人数が1万5000人以上という数字に度肝を抜かれました。これは御社としてはヒットという認識をしているのでしょうか。
佐藤氏:
具体的にどれくらい売れているのかについては……差し控えさせていただきます(笑)『首都高バトル』が弊社的にヒットかと言われると、マーケティングを担当している身としては最高のスタートは切れたかなという風には考えています。ただ、まだまだ伸びしろはあると思っています。
――野心的だ。
一同:
(笑)
佐藤氏:
知名度はあるタイトルなので、今でも好調ではありますが、もっと伸ばせるのではないかなと。プレイいただいた方からの評価に関しては、好評な数値をいただいているので、そこを考えると今後の伸びについても期待値があるのではないかと思っています。
――配信開始前のウィッシュリスト登録から好調だったのでしょうか。ウィッシュリストに対する売り上げの割合はどのような感じですか。
佐藤氏:
自分の中ではほぼ計算どおりですね。やや上振れてはいるんですが、大体想定くらいに収まっていますね。
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-001.jpg)
――熱心なファンが存在するシリーズですが、発売前の段階から「いける」という感触はあったんでしょうか。
佐藤氏:
期待半分、不安半分といったところでしょうか。やはり18年ぶりというブランクがあったので、その辺りも加味すると……よくよく考えてみると正直、やっぱり不安の方が多かったですね。
野口氏:
特にゲーミングPCをみんな持っているかどうかという不安もありましたね。これまでの『首都高バトル』シリーズを楽しんでくれていたコア世代の年齢層が今となっては結構高いので、その人たちがゲーミングPCを持っているのかどうかということは常に会社の中で議論になっていました。
佐藤氏:
そんな中で、Xでは「ゲーミングPCを買ったからもう後戻りできない」みたいなポストもあって……。そういった声には身が引き締まる思いはありましたね。
――『首都高バトル』は3960円で早期アクセス配信を開始しましたが、Steamを頻繁にチェックする自分としては結構強気な価格設定だと感じました。ただ、一方で「安すぎ」というコメントも結構寄せられていて、ファンの熱も感じて興味深かったです。どういった意図で現在の価格設定に決定されたのでしょうか。
佐藤氏:
社内でも同じように賛否がかなり分かれていたんですよ。3960円という価格は、やっぱり早期アクセス配信で販売する場合、やっぱりかなり高いという認識なんですよね。ただ、現状のボリュームに加えて、弊社としては製品版まで無料アップデートがついてくるという明確なゴールをちゃんと示していて、フルリリース版になったらもっと高くなるから今のうちに買っておいてね、という内容であれば、ある程度バリューは取れるのかなとも思って、結構ギリギリを攻めたという感じも正直ありますね。フルパッケージの製品版とのギャップを大きくしたくないとも思っていたので。
――Steamでたとえば19.99ドルや24.99ドルぐらいが売れやすいなど、そういったマーケティング通説的な話がありますが、元気の会社としての信念を押し通したわけですね。
佐藤氏:
本作もXで値段について周知していたのもありつつ、日本円で見るとゲームが4000円弱というのが少し安めに映るということもあったのも良かったのかもしれません。ただ、逆に厳しいレビューでは「30ドルの価値がない」みたいなことも書かれているので(笑)その辺りは一長一短かなというところではありましたね。
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-002-1920x1080.jpg)
売上はやはり日本が強かったが、意外な国も
――『首都高バトル』は国内の熱が強い作品ですが、Steamのレビューを見ると日本語以外のいろいろな言語も多く見受けられ、海外プレイヤーの熱も強く感じられました。売上の言語比率はどういった割合なんでしょうか。
佐藤氏:
1位はやはり日本ですね。日本4、そのほかの言語が6の、4:6くらいの割合で、やはり圧倒的に日本が強いですね。
――国外でこの国で人気だったのは意外、という地域はありますか。
佐藤氏:
自分としては、イギリスで売上が高かったのが意外でしたね。ヨーロッパの方ではあまりプロモーションをおこなっていなかったんですよ。海外のプロモーションはおもにアメリカ本土に注力していて、アメリカで売上が伸びていたのは納得なんですが、イギリスとか、あとはアジア圏にも少しずつ波及していったのが意外でした。アジア圏に関してはVTuberさんのおかげでもあると思うんですが、
特に中国とか台湾とかでも少しずつ伸びているので、とてもありがたいと思っています。
――インフルエンサーからばんばん配信があったのも意外でした。元気というメーカーは良いものを作る老舗というイメージが強かったんですけど、本作のマーケティングはなんというか、かなりモダンというか、イケイケな感じでした。これらは佐藤さまがいろいろ練った施策だったんでしょうか。
佐藤氏:
そうですね。実は僕と野口の間でマーケティング施策について喧嘩していたんですよ。
――(笑)
野口氏:
僕がモダンを信じていなかったんですよ。
佐藤氏:
自分はこの会社には転職組として入社したんですが、ちゃんと物を売るというところにフォーカスして最適解を考えないといけないよね、と。結構ドライに考えていたんですよ。で、もちろんタイトルがもつ力というのは100%あると思うんですが、それ以外の何らかの方法でも新しいユーザーの循環をさせていかなくちゃいけないとも考えたんです。
そこで若年層を取り入れようとなったとき、SNSを使おう、YouTubeを使おう、VTuberさんにも頼ろうという話に昇華していったというかたちです。今回のVTuberさんに関しては本当にありがたいお話で、いろいろな方が『首都高バトル』という名前を知っていてくれたおかげでプレイしてくださりましたね。配信でVTuberの皆さんが「案件じゃない」と仰っていたと思うんですけど、直接事務所さんとなどともお話をさせていたいたりもしておりましたが、案件としてお願いしている方はいらっしゃらないんですよ。
――そうなんですか。本当にいろいろな方がプレイされていて、てっきりご依頼されていたものかと思っていました。
佐藤氏:
なので、お礼にせめてこちらからコードを提供させていただいています。ありがたいですね。本当にラッキーが重なったという風に自分では思っています。
――元々は佐藤さまの施策だったけど、プロダクトのもつ力がインフルエンサーを繋げて、そこからさらに一般層に広まっていったと。
佐藤氏:
そんな認識ですね。これまで『首都高バトル』という名前が独り歩きしていて。その名前の力が広めてくれたという実感があり、IPの力ってすごいんだなと改めて思いました。過去作を知らない世代でも「『首都高バトル』ってなんか話題になっている」という話で調べてくれて、「レースゲームなんだ」となったところにみんなが食いついてきてくれたのはすごくありがたいことでしたね。
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-003-1920x1080.jpg)
「首都高バトル」そのものがもつ力
――全体的に出足としては非常に調子が良いということですが、お二人はどうしてここまで良いスタートが切れたと考えていますか。
佐藤氏:
自分は先ほどお話ししたとおり、IPのもつ力とVTuberさんの影響力。これに尽きると思います。正直運もあったかなと(笑)
野口氏:
発売前にお参りに行ったしね。
佐藤氏:
弊社の代表に自分の方から、「マーケティング的にやれることは全部やりました。お金にももちろん限りがあるので、なので最後にほんのちょっとだけお金ください!」とだけ言って。それで「何するの」と聞かれたので「一緒にお参りに行って奉納しましょう!」と。それで役員とプロデューサーと自分でお参りしました(笑)
――(笑)
野口氏:
僕は、本当にIPをずっと望んでくれていたファンがいたというのが大きかったかなと思っています。根強いファンのアピールと、あとは佐藤が言うようにIPの力、VTuberさんたちの拡散力に尽きるかなと。
そういう意味では佐藤がXのポストのスケジューリングを入念に計画していましたね。Xに動画をどんどん投稿していくっていうのも、彼がデザイナーといっしょに取り組んでいてくれたというのもありまして、そういう施策がユーザーさんへの大きなアピールになった要因のひとつなのかなと思っています。
――Xの運用は、コミュニティと対話する雰囲気を出しつつも毅然としているというか、プロダクトやIPイメージを意識している印象があります。
佐藤氏:
ありがとうございます。基本的なスタンスとして、元気の会社としてのアカウントに関しては結構自由にやっているんですよ。中の人がいろいろと発言して、いろいろなことをやっていますよっていうことを発言しているんです。人格をちゃんと作っている感じですね。
そんな元気公式に対して、日本の『首都高バトル』のXはちゃんとプロダクトを紹介するようなアカウントになっています。ちゃんと運営が運用します、ということをイメージしたアカウントです。ただ、アメリカではそういうマーケティングはあまりよろしくないみたいなので、そちらは本当に自由にやっています(笑)
※日本語版と海外版でX運用のカラーが違う
ちなみに、ポストしている動画はデザイナーがめっちゃ頑張ってくれました。ただ、ポストする30分前に動画が出来上がりましたということも結構あったりして、あれには肝が冷えましたね(笑)
野口氏:
1月のパーツ紹介動画とか、危なかったよね。
佐藤氏:
危なかったですね。
――いろいろなセクションが連携して、ギリギリのところで何とか情報を出そうと奮闘されていたんですね。
一番好きなレビューは、「総評『首都高バトル』」
――早期アクセス配信でかなりいろいろなレビューが投稿されて盛り上がっておりますが、ユーザーの反応やフィードバックで面白かった、あるいは印象的だったものはありましたか。
野口氏:
まずリリース前だと「顔面首都高バトル」ってなんだろうというところから始まりましたね(笑)
補足:
顔面首都高バトルとは、『首都高バトル』がやりたすぎて、あるいはハマり、顔面が「首都高バトル」のロゴになってしまう……という謎のネットミーム
【UPDATE 2025/2/9 13:10】
流行範囲についての言及を削除
早期アクセス配信が開始した後だと、今までの『首都高バトル』では迅帝一強のキャラクター人気だったのが、今作では久遠のポラリスがすごい人気があって、ファンアートを描いてくれる方もいるんですよ。
佐藤氏:
これも時代の流れですよね。
野口氏:
昔は、そういう自分の妄想を発表する場がなかったじゃないですか。『首都高バトル』では、ユーザーが想像してくれるっていうのを狙って、キャラクターの顔を出さずシルエットで描いていますが、今の時代はシルエットから「自分のポラリスちゃんはこういう感じ」と想像して描いて、ポストまでしてくれる人がこんなにいるっていうのが面白いですし、嬉しいですね。
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-004-1920x1080.jpg)
佐藤氏:
自分は最初の方についていたレビューで面白くて腹を抱えて笑ったものがあって。グッド評価のレビューで……
ゲーム性『首都高バトル』
音楽『首都高バトル』
挙動『首都高バトル』
総評『首都高バトル』
というのがあって。
――(笑)
佐藤氏:
今回リリースした『首都高バトル』は、本当に『首都高バトル』を出そうとしてリリースしたんですよ。恐らくみんなが待ってくれていたであろうものを出せるように、開発が頑張ってくれて。なので、ラーメンを頼んで素ラーメンがちゃんと出てきましたみたいな感じの出来だと思っています。
なので、全部『首都高バトル』でまとめてくれたというレビューが、まさに目指していたところで。こういう風に待っていてくれたんだなという嬉しさもあり、コメントの秀逸さもあり、一番好きなレビューですね(笑)もちろんこれだけではなく、すべて本当にありがたく拝見しています。
――一方で『首都高バトル』では面白現象も発生しています。車が二段重ねになるとか、サウジドリフトのような稼ぎであるとか、面白めの現象や稼ぎをユーザーが発見しています。一方で正しい挙動ではないのでは、という懸念もあり、開発陣としてはこういった愛されてるけど不具合っぽい現象にどう向き合うのでしょうか。
野口氏:
……悩んでいます(笑)楽しんでもらえるものは残しつつ、怒られないようにしないとしたいなと。やりようによってはユーザーをがっかりさせてしまうので。
佐藤氏:
もちろんこれからもアップデートはいろいろ進めていきますので、影響が広くなり過ぎない範囲で、これはちょっと許容できないというものであれば直せるところは直して、良い塩梅を貫いていきたいなと思っています。
――「悩んでいます」というのは、遊ぶ側の楽しみ方をちゃんと見てくれている気がして、ユーザーとして嬉しいですね。
佐藤氏:
時間がある限り、ユーザーの動向を追っていますし、ありがたいレビューだったりお叱りの言葉だったり、ありがたくすべて承っています。可能な限りみんなで作り上げていくゲームにしたい、というところも含めての早期アクセス配信ですので。できることはやって、期待に沿ったゲームを製品版のときにリリースして、今後に繋がる架け橋になってくれるようなタイトルに育ってほしいなと思っています。
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-005-1920x1080.jpg)
『首都高バトル』というジャンルに挑戦してほしい
――ちなみに、コンソール版のリリースは検討されていますか。
野口氏:
……ノーコメントで!
佐藤氏:
……出せるように応援してください(笑)
――今後の盛り上がり次第ということですね!最後に、『首都高バトル』に興味があるという人に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
野口氏:
本作は、総評『首都高バトル』というゲームです(笑)レースゲームはハードルが高いと思われているかもしれませんが、もっと気軽に、カジュアルに独特の文化感を味わえる、そんな楽しいタイトルになっています。ぜひ手に取って遊んでもらいたいと思います。
佐藤氏:
『首都高バトル』は、なんかついついプレイしちゃうんですよね。気づいたら時間が経っているゲームって、すごい良いゲームだと思っていて、そういったところも含めて、レースゲームという括りで見ずに一度トライしてほしいと思っています。
――ジャンル『首都高バトル』に挑戦。
佐藤氏:
そうですね。レースゲームじゃないです。『首都高バトル』というジャンルなので、それで一度チャレンジしてくれませんか。何ならSteamなら条件はありますが返品もできるので(笑)
野口氏:
遊ばないと面白さはわからないしね。
佐藤氏:
そうですね。開発機とかで遊んでいても自然と街ブラじゃないですけど、ぐるぐると環状線をまわっちゃうので、とにかく楽しいゲームですね。
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2025/02/tokyoxtremeracer-20250209-327829-006-1920x1080.jpg)
野口氏:
要はドライブですよね。
佐藤氏:
本当にドライブしているような感覚ですね。あと、レースゲームはコースアウトすると走れないとか、良いタイムが出ないとか、どうしても遊びの制限が大きいはずなんです。ただ、『首都高バトル』は対戦レースゲームで、コースの横には壁がありますので、コースアウトの危険もないですし、ちゃんと走れなくても楽しめるレースゲームなのかなと思っています。なので、レースゲームということで苦手意識をもっている方も、ぜひ一度遊んでいただけると嬉しいです。
――ありがとうございました。
『首都高バトル』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中。
[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Hideaki Fujiwara]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]