期待の島生活シム『スターサンドアイランド』は、「ストレス社会から逃避して隠居田舎生活できる」ゲームを目指して作っている。だからのんびり要素がいっぱいある

本作は、実はストレス社会から逃避できるような体験を目指しているという。開発者に話を訊いた。

『Starsand Island(スターサンドアイランド)』は、のどかな田舎の島で暮らしながら、農業や冒険をおこなうライフシミュレーションゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)。本作は、ソロプレイおよびオンライン協力プレイに対応。プレイヤーは、都会からとある島に移住した主人公となり、新たな生活を始めることになる。自分の家を作ったり、農作物を育てたりしながら、NPCの住民との交流も深めていくことができるゲームとなっている。

本作はKickstarterにてクラウドファンディングキャンペーンが開始された。同キャンペーンは3500万円以上を集めるなど、大成功を収めている(なお同キャンペーンは6月中旬まで実施中)。日本語対応もするなど日本向けのアピールもしているようだ。そんな本作は、実はストレス社会から逃避できるような体験を目指しているという。開発者に話を訊いた。

話者は開発チームとしているが、以下の2名が答えてくれた:

Richardo Wang(リチャード・ワン)|SEED LAB『スターサンドアイランド』ゲームプロデューサー & クリエイティブディレクター

Golton Gao(ゴルトン・ガオ)|SEED LAB『スターサンドアイランド』ゲームプロデューサー & テクニカルディレクター

――ゲーム紹介をお願いします。

開発チーム:
『スターサンドアイランド』は、癒し系の田園生活シミュレーション型サンドボックスゲームです。プレイヤーは主人公となり、大都市での仕事を辞めて、のんびりとした島に移り住み、新たな田舎暮らしを始めます。この島では、浜辺で貝を採ったり釣りをしたり、作物を育てたり動物を飼ったりすることができます。

また、町の住人たちと親しくなって友情や恋愛関係を築くこともでき、彼らから得意料理や設備の作り方を学ぶことも可能です。完全に自由なクラフトシステム(DIY)によって、自分だけの世界を創り上げることができ、さらに他のプレイヤーを招待してこの体験を共有することもできます。

――ゲームのサイクルはどのようになりますか。具体的に教えてください。

開発チーム:
ゲームの主な目的は、自分の理想とする田園生活を築き、それを楽しむことにあります。そのため、島の中で自由に職業を選ぶことができ、自分の興味に応じて成長の道を選ぶことができます。どの職業でも、自分のペースでプレイすることが可能です。

たとえば、一人で複数の職をこなし、努力して早く億万長者を目指すこともできますし、目的を持たずにのんびりと島を散策し、風景や物語をじっくり味わうこともできます。メインストーリーの中では、いくつかの土地がプレイヤーによって解放されるのを待っています。海辺の土地、湖畔の土地、そして最後には無人島の土地もあります。この過程は、「小さな島のライフスタイル」システムとともに進行していきます。

ストーリーが進むにつれて、プレイヤーは順にこれらの土地を解放していきます。土地を解放し、自分だけの田園生活を築くために、プレイヤーは様々な家具、乗り物、設計図、素材などを購入・収集することができます。

これらのアイテムを購入するには、各職業のメインクエストを進めてお金を稼ぐ必要があります。職業の主線では、得たスキルポイントを使ってさまざまなスキルを習得し、生産効率を上げ、さらなる生産の拡大が可能になります。また、物語を重視するプレイヤーは、NPCとの関係を深めることでアイテムや贈り物を得ることもでき、それらの道具や経験は島での生活をより豊かにしてくれるでしょう。

――1日はだいたいどれくらいの長さになりますか。1日の長さは調整できますか?

開発チーム:
ゲーム内の1日は、現実の約40分に相当します。現在のところ、1日の長さを調整する機能はありませんが、プレイヤーは「寝る」ことで1日を素早くスキップすることができます。

――なるほど。正直、1日は忙しいですか?のんびりですか?

開発チーム:
私たちは、この選択の自由をプレイヤーに委ねたいと考えています。個人的には、1日の流れはゆったりしている方が好ましいと思っており、それが他の牧場系ゲームと比べて、私たちのゲームでは1日の時間が比較的長めに設定されている理由です。

ゲーム内の1日で、おおよそ半日くらいを使って必要な経営関連の作業を終え、残りの時間は自由に探索したり、田園生活を楽しんだりしてほしいと考えています。もちろん、その半日を使ってメインストーリーを進めたり、より多くの作物を育てたり、新たな住人と出会ったりすることもできます。すべてはプレイヤーの選択次第です。

――開発チームは、牧場ゲームが好きですか?影響を受けているタイトルを教えてください。

開発チーム:
はい。私たちはライフシミュレーションや牧場系のゲームが大好きで、多くの作品が開発チームのゲーム人生において強い印象を残しています。そういった作品は、ある意味で私たちの“啓蒙の師”とも言える存在です。

まずは『シムズ』です。ゲーム内のあらゆるオブジェクトに豊富なインタラクションがあり、キャラクターには欲求や感情があって、非常にリアルにシミュレートされています。建築システムも自由度が高く、とてもパワフルです。従来の農場系シミュレーションゲームはやや似通っている印象がありましたので、私たちはこの『シムズ』の魅力を新しいゲームに取り入れたいと考えました。

次に『あつまれ どうぶつの森』です。あの世界の動物たちはプレイヤーに対して人間味あふれる優しさを見せてくれます。私たちのゲームでも、町のNPCたちがプレイヤーに“コミュニティへの帰属感”や“人間的な温かさ”を感じてもらえるような存在になることを目指しています。

最後に『Stardew Valley(スターデューバレー)』です。このゲームはプレイヤーに自由な生活と探索を与え、常に新しい驚きを提供してくれます。私たちもまた、プレイヤーが自分のペースでゲーム体験を築けるように、過度な制限を設けずに自由なプレイを重視しています。

――本作がほかの牧場ゲームと大きく違う点はどこだと思いますか。

開発チーム:
主に3つの側面で他の作品と異なります。

まず第一に、高品質で大人向けの、温かく癒されるアニメ調のグラフィックです。

私たちは幼い頃から日本のアニメを見て育ち、このスタイルに親しんできました。これまでの同ジャンルの作品では、『Stardew Valley』のように2Dドット絵のものや、『きみのまち ポルティア』や『サンドロック』などのアメリカンアニメ風、また『あつまれ どうぶつの森』のような子ども向けの絵本的タッチが主流でした。

私たちは「人と人」、「人と自然」、「人と動物」との関係といった、あらゆる“やさしい感情”をプレイヤーに届けたいと考えており、そうした調和のある雰囲気を表現するには、日本アニメ風のビジュアルが最もふさわしいと感じています。このスタイルは、”大人になった子どもたち”へ贈る田園ファンタジーを描くうえで最適な手段であり、より感情移入しやすくなると考えています。

第二に、多彩で豊富なライフシミュレーション要素です。

これは私たちのビジョンに直結しています。本作で描きたいのは、プレイヤーが自由にのびのびと生きられる「理想の田園生活」。努力を重ねることで、その風景を自分のホームエリアに再現することができます。プレイヤーがどんな生活スタイルを選ぶかは完全に自由です。

農業、建築、地形編集、水槽DIY、ペット、騎乗、写真撮影、料理、釣り、ダイビング、牧畜、冒険、バトル、ビークル、ハウスボート、海上テーマパーク、アーケードゲーム、果樹園、着せ替え、占い、マルチプレイ、NPCとの交流や恋愛、虫捕りなど、現実世界から取り入れた多くの要素を詰め込みました。

私たちは、このゲームが心を癒し、プレイヤーがここでのびのびとした暮らしを楽しむ中で、現実でも「人生って案外うまくやれるかも」と思える勇気を持てるような体験になればと願っています。

最後に、高い自由度を誇る建築・DIYシステムです。

理想の暮らしは人それぞれであり、「一万人の理想には一万通りのハムレットがいる」と考えています。だからこそ、DIYにおいては一切の制限を設けず、最大限の自由度を提供したいと思いました。

開発メンバーの多くはサンドボックスゲームのヘビーユーザーであり、建築の自由度には強いこだわりがあります。そのため、私たちは技術面でも多くの積み重ねを行い、プレイヤーの創造体験を支える準備をしてきました。現時点で、本作のDIY建築の自由度は、田園ライフ系シミュレーションゲームの中でもトップクラスだと自負しています。さらに、自由度だけでなく、ゲームパッドでの操作性にも配慮し、快適なインターフェース設計と最適化も行っています。

――なるほど。こだわりがあるんですね。そんな本作の開発のきっかけを教えてください。

開発チーム:
このゲームを開発するきっかけは、大きく分けて2つあります。
まずはジャンルに関する動機です。

私たちの中心的な開発メンバーは、いわゆる“牧場ゲーム”の熱心なファンであり、『Stardew Valley』や『きみのまち ポルティア』『サンドロック』などの作品をとても愛しています。そのため、「自分たちが誇れるような“牧場ゲーム”を自らの手でつくりたい」という強い想いが出発点となりました。

次に理念に関する動機です。

私たちは東洋的な「田舎での隠居生活」に強い憧れを持っています。詩や酒に囲まれた静かな田園暮らしは、まさに私たちの理想であり、そうした“内面に向き合う”哲学こそが、農業ゲームというジャンルに非常に合っていると感じています。

現代社会は消費主義が蔓延し、多くの人が不安やプレッシャーに晒されています。だからこそ、温かくて癒される「心の拠り所となるバーチャルな家」を提供することで、そうした不安を和らげたいと考えました。

私たちは、スタジオジブリの作品や映画『リトル・フォレスト』のような、心にやさしいカルチャーコンテンツのように、ゲームという媒体にも“癒し”を込めることができると信じています。そして、プレイヤーの皆さんがこのゲームを通じて、少しでも心の安らぎを得られたなら、それが私たちにとって何よりの喜びです。

――「田舎での隠居生活」!いいですね。そうした体験をできるように、具体的にゲーム内で盛り込んだ要素を教えてください

開発チーム:
本作では、現実の生活における「人と自然」「人と動物」「人と人」の癒しのシーンを整理し、それらをゲームのプレイ体験に融合させています。プレイヤーの皆さんが、「和やかな癒し」を感じられるようにという思いで設計しています。

たとえば、「人と自然」に関しては、人が森に入ったときに、木の葉の隙間から光が差し込む「チンダル現象」を見ると、温かく癒される感覚があります。そこで、森の中にキノコの採集ポイントを配置する際に、そういった景色を再現しています。

また、水面がキラキラと輝き、アヒルが泳ぐ姿は、ゆったりとした気分にさせてくれます。こうした風景は、デートスポットとしてプレイヤーが体験できるように構成しています。

「人と動物」の癒しの瞬間については、幼少期にニワトリや子犬と過ごした日々の再現を目指しました。プレイヤーが餌を器に入れると、小さなニワトリたちが一斉に集まってきたり、犬が好きな食べ物をもらうと、嬉しそうにプレイヤーの周りを回るといった行動を取ります。こういった癒しの瞬間の再現はゲーム内に数多く存在しており、プレイヤーに本物の「癒しの感情体験」を届けたいと考えています。

「人と人」については、昔、祖母の家の田舎で過ごした近所同士の助け合いや励まし合いの雰囲気を再現したいと思いました。たとえば、誰かの家の子どもをみんなで面倒を見る時は、子どもたちを一つの家の庭に集めて一緒に遊ばせたり、収穫の時期には果物や野菜をお互いに贈り合ったり。年末年始には、町から帰ってきた人が友人の子どもに服やお菓子をお土産に持ってきたりしていました。

そういった体験は、私たち自身を本当に温かくしてくれたものです。ですので、ゲーム内のNPCにもそうした行動パターンを設けました。好感度が上がっていくことで、プレイヤーは他者からの温かさを実感することができるようになります。

すべては、プレイヤーがゲームの中で「愛を受け取る」体験をし、癒されると同時に、現実世界でも他人を温かくしたくなるような気持ちを持ってもらいたい、そんな思いで作っています。

――素敵ですね。ぜひ癒やしの生活を味わいたいです。ちなみに本作は日本ユーザーから人気とききました。どのくらい人気ですか?

開発チーム:
本作はSteamでウィッシュリストを開始した初期の段階で、日本のプレイヤーの割合が全体の30%を占めており、これはSteam上の他の多くのゲームと比べても非常に高い数字でした。

さらに、Steamのストアページ公開後、日本では特にプロモーションを一切行っていなかったにもかかわらず、最初の3ヶ月間にわたり日本地域でウィッシュリスト数が1位を維持し、最初の10ヶ月間も常に上位2位以内に入り続けました。

――すごい人気ですね。ゲーム自体も日本ユーザーが楽しめることを意識していますか。意識している点を教えてください。

開発チーム:
もちろん!まずは言語対応についてです。本作はリリース時から日本語に対応する予定であり、さらに日本の有名声優を起用したボイスも実装予定です。日本のプレイヤーの皆様に、よりスムーズで没入感のあるプレイ体験をお届けしたいと考えていますので、ぜひご期待ください。

次に対応プラットフォームについてです。日本にはコンソールゲームを好むユーザーが多いことを私たちも理解しています。そのため、今後は日本国内向けの家庭用ゲーム機での展開も計画しており、より多くの日本の皆様に本作を手軽に楽しんでいただけるよう準備を進めています。

――期待しています。ありがとうございました。

『スターサンドアイランド』はPC(Steam)向けに開発中。現在Kickstarterで支援を募っている。

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