『S.T.A.L.K.E.R. 2』開発者インタビューでは“信頼できる回答”がたくさん。「万人向けではない」ものの、新たな姿を見せるシリーズ最新作への意気込みを訊く


セガは11月21日、GSC Game Worldが開発する『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com/Microsoft Store)/Xbox Series X|Sで、Xbox Game Pass向けにも提供される。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、PCゲームファンからカルト的な人気を誇るサバイバルFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズのおよそ15年ぶりとなる最新作だ。チョルノービリ原発事故によってさまざまな怪奇現象やミュータントが現れるようになった立ち入り禁止区域を舞台に、プレイヤーはさまざまな派閥から危険な仕事を請け負う「ストーカー」となって生き延びる。

なお現在はチェコ・プラハに本拠地を移転済みであるものの、2022年からのロシアによる軍事侵攻で、ウクライナに所在していたGSC Game Worldは大きな影響を受け、開発は難航した。先日も11月21日への発売延期が伝えられた。そんな中、日本にてメディア向けの先行プレイと開発者へのインタビューがおこなわれた。本記事では、インタビューの内容をお届けする。

左からテクニカルプロデューサーのEugene Kulik氏、マーケティングプロデューサーのVlad Novikov氏。


――さまざまな事情で開発が難航していたかと思いますが、こうしてメディアに本作を見せるところまでたどり着いたことについて、感想をお願いします。

Vlad Novikov氏(以下、Vlad):
ファンの皆様に見ていただけるのはとてもエキサイティングなことだと思います。ただ、まだ本作は完成していません。ですので愛情やウクライナへの想いを抱えながら、高品質なものとしてかたちにしたいと考えています。

――ずばり、発売を延期するに至った一番大きな理由は何でしょうか。

Vlad:
我々のビジョンを完全な形で実現させたいという思いがあるからです。もちろんできるだけ早くそれを実現できるよう努力はしてきましたが、大きな規模のゲーム開発は時間がかかるものです。リリースが近づくにつれ、もう少し時間があればより良いものにできるということが見えてきたので、ファンからの期待にしっかり応えられるように延期を決定しました。


――シリーズ最初の三部作からかなり期間が空いた中での新作となるわけですが、本作の開発がスタートした理由は何だったのでしょうか。

Eugene Kulik氏(以下、Eugene):
実は、本作の開発は前作『S.T.A.L.K.E.R. Call of Pripyat』の発売から3年後となる2012年にはすでに検討していました。しかし、当時はまだ我々のニーズにテクノロジーが追いついておらず、実現しませんでした。そして今Unreal Engine 5.1によって必要なツールが出揃ったことで、非常に細やかな世界を描き、興味深いストーリーを構築できるようになったのです。

――本作はシリーズとしては4作目ですが、新たにナンバリングがつけられています。改めて“2”を付けた理由は何でしょうか。

Vlad:
これは非常にシンプルな理由です。最初の三部作はストーリーが地続きであり、それぞれの作品が大きな作品の一部という形でした。しかし、『S.T.A.L.K.E.R. 2』はまったく新しいストーリーで、まったく新しいテクノロジーを活用したものであることから、新たに“2”という数字をつけるにふさわしい作品であると判断しました。

Eugene:
舞台や一部キャラクターなどは三部作と共通なのですが、本作のメカニクスには新しいものが多数取り入れられていて、フィールド上に発生するアノマリーも新規のものが追加されています。

――本作は三部作から何年後の世界なのでしょうか。

Vlad:
現実世界で経過した年数とほぼ同じで、10年が経っています。ストーカーたちは現代のデバイスを使い、ラジオから音楽も聴くので、時間経過で廃墟となった場所と進歩したテクノロジーのコントラストをより見せることができると思います。大昔でもなく、遠い未来でもなく、ほどよい時の移り変わりとなるのではないでしょうか。

――シリーズのどこを伝統として守り、どこを最新作として改善するかの選択は非常に難しかったと思います。

Vlad:
最初の三部作は没入型サバイバルホラーFPSであることなど、明確な特徴がありました。そんな本シリーズに最新のテクノロジーやトレンドを取り入れるのは非常にチャレンジングではありましたが、我々としてはゴールや方向性は始めから明確でした。

テクノロジーが発展したおかげで、開発チームが構想していたゾーンを非常に正確に描くことができるようになり、我々としてはうまくできたと考えています。あとは、プレイヤーの皆様に判断していただきたいと思います。


――PCだけでなく、XboxコンソールやXbox Game Passでもリリースされることから、本作で初めてシリーズに触れるユーザーも多いと思います。『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズ初心者に向けて、何か配慮した部分はあるのでしょうか。

Vlad:
我々としてはできる限りプレイヤー層を広げたいという気持ちはあるのですが、前提として本作は万人向けではなく、リラックスして楽しめるようなゲームでもありません。とはいえ、それでも勇敢に挑戦する初心者に対しては難易度設定を用意しているほか、チュートリアルもこれまでになくしっかりしたものを用意しています。

本作は基本的にサバイバルFPSですが、プレイヤーが自分で探索し、自分でプレイスタイルを発見していくというかたちの作品です。ぜひそこも含めて楽しんでいただきたいですね。

――本作はかなり早い段階での日本語サポートが明言されていて安心しました。スムーズな日本語対応が実現した理由を教えてください。

Eugene:
本作は、世界で人気のある言語はすべて対応することを目指しました。音声に関しては英語に加えウクライナ語にも対応しており、よりリアリティある体験ができると思います。

Vlad:
対応言語を決めるにあたって、過去三部作のプレイヤーの属性も調べて、人気になりうるところは対象に含めました。日本では比較的知られていないシリーズではありますが、その分非常に忠誠心があり熱心なファンがいますので、その人たちの期待に応えられたら幸いです。

本作での大きな違いは、三部作と比べてよりシネマティックを重視したストーリーテリングを採用しているところです。ゲームプレイの面と同様に、物語も楽しんでみてください。

――三部作はメインストーリーだけであればそれほどクリアまで長くありませんでしたが、本作の想定クリア時間はどれくらいでしょうか。

Eugene:
本作のメインストーリーには多くの分岐があります。1周プレイするだけであれば20時間から40時間ほどを想定していますが、ゲームのすべての物語や会話を体験したい場合は100時間以上かかると思います。

――ゲームクリエイターは作品を作った後、まったく毛色が違う作品を手掛けることが多いと思います。しかしそんな中、『S.T.A.L.K.E.R.』の世界を描き続ける理由は何でしょうか。

Eugene:
我々もすっかりゾーンが大好きになっており、 チョルノービリの立ち入り禁止区域には実際に何度も訪れています。ゲームに使われているオブジェクトや動植物はすべて実際に現地で撮影した写真をスキャンしたものなんですよ。

Vlad:
もちろん将来的には本シリーズを拡大し、新たなメディアやジャンルで展開していきたいという野心はあります。しかし、三部作からかなり時間が経った今、(新たな展開を優先するよりは)最先端のテクノロジーを活用してしっかりとした基盤を改めて築くことが重要だと考えました。


――本作で遭遇するイベントの中には、幻聴が聞こえるというものがあるとうかがいました。幽霊的な存在であるとしたらファンは少しがっかりしてしまうと思うのですが、これはアノマリーの一種であると考えて良いのでしょうか。

Eugene:
はい、間違いなくアノマリーです。『S.T.A.L.K.E.R.』はファンタジーではなくサイエンスフィクションですから、起こることはすべて科学的に説明がつきます。

Vlad:
こうしたアノマリーにはすべて対処法がありますが、ガイドはまったくありません。ゾーン内で見つかるアーティファクトや、どこかで見つかる文章などを読み、手探りで解き明かしてほしいです。

――本作では、登れるハシゴが黄色く彩色されわかりやすくなっており、素晴らしい配慮だと思いました。一方で、こうしたいわゆる“ゲーム的”な誘導を嫌うユーザーも存在します。これを導入した理由を教えてください。また、オン/オフの切り替え機能を用意する予定はありますか。

Eugene:
現在さまざまなかたちでプレイテストを実施しており、プレイヤーがどのように遊ぶかを観察しています。オン/オフがあるのは良いアイデアだと思いますが、本作をできるだけアクセシブルにするという観点から、そうした迷い方をしないようにと設計しています。

Vlad:
ゲームの難しさはルールから来るべきものであり、インタラクションの部分で難しくすべきではないと考えています。

――UE5で描かれる美麗なグラフィックが特徴です。またプレイヤーの行動がインタラクティブに世界への影響を与えるA-Life 2.0など見どころはたくさんありますが、日本のゲーマーに向けて特に注目してほしい点があれば教えてください。

Eugene:
私のゲーマーとしての個人的な視点からになりますが、雰囲気や環境を楽しんでほしいです。本作の世界にはさまざまなストーリーラインがあります。そこを歩き回る中で、さまざまなキャラクターに出会ったり、出会わなかったりと一期一会の体験をするわけです。また、カッコいい武器もたくさん登場します。

Vlad
我々開発チームは、銃が本当に大好きです。銃声など武器に関する音は実際に射撃場で録音しているほどです。サバイバルホラーという点も魅力だと思います。リスクとリターンをしっかりと考えた上で持っていくリソースや武器などをしっかりと計画し、自信を持った上で出かけなければなりませんから。

――最後に、日本のユーザーに向けたメッセージをお願いします。

Eugene:
非常に大変な開発環境の中で情熱と魂を全力で注ぎ込んで開発しました。ユーザーの皆様をこの世界に喜んでお迎えしたいと思いますし、気に入っていただければ幸いです。

Vlad:
本作は非常に高い誇りを持っていて、夢のゲームと呼べる作品になるよう注力してきました。とても複雑で巨大で素晴らしい本作をぜひ皆様に楽しんでいただければと思います。
コミュニティの皆様からは多大なサポートを受けており、日本のファンからも暖かい声をいただきました。改めて、我々をサポートしてくださるファンの皆様にお礼申し上げます。

――ありがとうございました。

ゲームに限らずかつての作品が久しぶりに作られるとなると、ファンとしては「あの面白さをしっかり引き継いでくれるのだろうか」とどうしても期待半分不安半分になるものだ。筆者もこのインタビューを行うまでは本作がどのような仕上がりになるか見えてこなかったが、2人から語られた内容からは「期待せざるを得ない」と感じてしまうほど、信頼できる回答だった。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com/Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに11月21日発売予定。ゲームサブスクサービスXbox Game Passにも発売初日より対応する。