『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』異色の「リマスターx新作の2本セット」の理由などを開発者に訊いた。高評価原作を伸ばして活かす

セガは『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』を、10月25日に発売する。対応プラットフォームはPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/Epic Gamesストア)。本作のプロデューサーの中村俊氏と、ディレクターの鴫原克幸氏に話をうかがった。

セガは『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』を、10月25日に発売する。対応プラットフォームはPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/Epic Gamesストア)で、デジタルおよびパッケージにて販売する。価格はデジタル版が6589円で、シーズンパスなどが収録されたデジタルデラックス版も発売される。

東京ゲームショウ2024でも、セガ/アトラスブースで大きなバルーンを備え存在感を放っていた同作。東京ゲームショウ2024にて、プロデューサーの中村俊氏と、ディレクターの鴫原克幸氏に話をうかがった。そもそも、なぜ「リマスターx新作の2本セット」は生まれたのか?

──自己紹介をお願いします。お二人のこれまでのキャリアをお聞かせください。

鴫原氏:
ディレクターの鴫原です。私は入社してから『ソニック カラーズ』と『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』のリマスター元である『ソニック ジェネレーションズ』にレベルデザイナーとして関わっておりました。その後は『ソニック』ではない別のゲームに携わり、『ソニックオリジンズ』でディレクターとして『ソニック』シリーズに戻ってきました。引き続き『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』でもディレクターをさせて頂いております。


──いわゆる、モダンとクラシックの両方の『ソニック』をご存知であると。

鴫原氏:
そのはずです!(笑)

中村氏:
プロデューサーの中村です。私はゲーム業界にすごく長くいるのですが、会社に入って最初に携わったタイトルは『ソニックR』で、次に『ソニックアドベンチャー』を作りました。そのあとは比較的自由にさまざまなタイトルをやらせていただいて、『リズム怪盗R』や『マリオ&ソニック』などに携わりました。『ソニック』シリーズも何本かやらせていただいたなかで、今回は『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』のプロデューサーを務めさせていただいております。


リマスターと新作のセットという異色のパッケージ発売の理由

──改めまして、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』の紹介をお願いいたします。

鴫原氏:
本作は『ソニック ジェネレーションズ』と『シャドウ ジェネレーションズ』の2本がセットになったタイトルです。『ソニック ジェネレーションズ』は先ほど少し述べた通り13年前のゲームのリマスターなのですが、ただの移植ではなく、ACTの中に散らばったチャオを集める「チャオレスキュー」であったり、昨今の『ソニック』シリーズでは標準搭載されているアクションである「ドロップダッシュ」であったりといった新規要素を追加しております。13年前には行かなかった場所を「チャオレスキュー」で探索してもらったり、「ドロップダッシュ」で今までになかった攻略方法を楽しんでもらえたらなと思っております。

『シャドウ ジェネレーションズ』は『ソニック ジェネーションズ』のハイスピードなテイストを引き継いだ完全新作です。「カオスコントロール」や「カオススピア」、今作シャドウに新しく追加される「ドゥームパワー」といったシャドウならではのアクションをハイスピードのなかで用いてルートを開拓していくゲーム体験を用意しております。

──『ソニック ジェネーションズ』はハイエンド向けの『白の時空』と3DS向けの『青の冒険』の2バージョンが出ていますが、『青の冒険』の要素はあるのでしょうか。

鴫原氏:
『青の冒険』の要素はありません。


──ありがとうございます。『シャドウ ジェネレーションズ』のトレイラーから、過去作のステージが今風にアレンジされて登場しているものがいくつか見受けられました。

中村氏:
そもそも『ソニック ジェネーションズ』は『ソニック』シリーズ20周年記念タイトルとして、これまでのソニックの歴史を辿っていくことをテーマとしていました。『シャドウ ジェネレーションズ』も同様のテーマの下、これまでシャドウが登場した各タイトルから1ステージずつを冒険の舞台として選んでいます。ただ、『ソニックフロンティア』に登場したカオス島に関してはシャドウとは元々関係ないのですが、時空をバラバラにしてしまう「タイムイーター」の影響によってカオス島も冒険の舞台の一つとして登場します。イレギュラーな形ですが、もしシャドウがカオス島にいたら、という視点でファンの皆様に楽しんでいただきたいです。

──『シャドウ ジェネレーションズ』は、ソニックの視点ではなくシャドウの視点でこれまでの『ソニック』シリーズを振り返っていくことになるんですね。

中村氏:
そうですね、基本的にはそれが作品のベースになっています。『ソニック』シリーズの特徴的なギミックなどはシリーズおなじみのものを使っていますが、デザインという面ではほとんどすべて作り直しているので、ゲームとしては完全に新しいものとして遊んでいただけると思います。

──過去作品のリマスターと完全新作のセットという、あまり見ない形での発売に至った経緯を教えてください。

中村氏:
今年の12月に3作目の映画『ソニック×シャドウ TOKYO MISSION』が公開されるのですが、2作目の『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』の最後でシャドウの登場が予告されていたんです。映画とゲームのシナジー効果を生めるといいよね、という話は前からしていたので、映画のタイミングに合わせてシャドウのこれまでの活躍を振り返るようなゲームを作りましょうということになりました。さらに『ソニック ジェネーションズ』のリマスターと合わせて遊んでいただくことで、『ソニック』シリーズを知らない方にも楽しんでいただき、『ソニック』シリーズのファンの方には懐かしんでいただきたいという狙いがあります。


リマスターと新作を並行して作る難しさ

──シャドウを主役としたこれまでのタイトルのリマスターは検討されていたのでしょうか。

中村氏:
企画の最初の段階では検討しましたが、今回は『ジェネレーションズ』として作品のテイストの統一化を図ることで、『ソニック』シリーズについてより多くのことを知っていただけると判断しました。まったく違う作品をセットにすると、『ソニック』シリーズを初めて遊ぶお客様にとってよりよくわからなくなってしまうかな、と。

──リマスターを監修しながら新作を作るという仕事について、並行して別のゲームを同時に作るようなものだと思うのですが、大変だったのでは。

鴫原氏:
仕事量は多かったのですが、優秀な開発メンバーにたくさんアイデアをいただいて、僕の方でジャッジするといった形での作業分担でなんとか作り上げました。

中村氏:
開発チームが実際2つ別にあるようなものなのに、そこから上がってくる情報の宛先は鴫原氏などのコアメンバー数人だったので、実際かなりのハードワークだったと思います。さまざまなハードルや課題が掛け算になって襲ってくる、独特の大変さがありました。

鴫原氏:
原作の『ソニック ジェネーションズ』に携わっていたこともあり、責任感とよくしたいという気持ちが強かったので、頑張ってさまざまなところに手を加えました。

──想定プレイ時間はどの程度でしょうか。

中村氏:
『ソニック ジェネーションズ』を長く遊んでいただいた方にもリマスターで新たな発見をしていただいたり、追加要素を楽しんだりしていただけると思います。『シャドウ ジェネレーションズ』は「ホワイトスペース」という空間での遊び方次第にはなりますが、『ソニック ジェネーションズ』よりはやや短めのプレイ時間になるかなと思います。両方合わせれば結構な時間遊んでいただけるようになっています。

※ 参考としては、クリア時間計測サイトHow Long to Beatでは、『ソニック ジェネレーションズ 白の時空』はメイン+サブコンテンツクリアは平均12時間程度となっている。

──リマスター作品である『ソニック ジェネーションズ』と完全新作である『シャドウ ジェネレーションズ』の間で、グラフィックの面やゲームプレイの面での違いはあるのでしょうか。開発時期が違うとギャップが生まれるのでは。

鴫原氏:
『ソニック ジェネーションズ』は当時のお客様に楽しんでいただくという点を重視しているので、ライティングの調整などはしていますが大きくグラフィックを変えているような部分はないです。『シャドウ ジェネレーションズ』に関しては、王道ヒーローのソニックと対比させる意味で、ダークヒーローのシャドウを強調するためにデザインの面には力を入れています。

中村氏:
2つのゲームには『ジェネレーションズ』として同じテイストを持たせているので、グラフィックやデザインの面での違いはあっても、ゲームプレイの面ではどちらも『ジェネレーションズ』である、と感じていただけると思います。


──最近ソニックとシャドウの関係性が話題ですが、本作でその関係性が垣間見えるような展開はありますか。

鴫原氏:
ソニックとシャドウの、同等の力を持つライバルとしての関係性はそのままにストーリーは展開します。

中村氏:
『シャドウ ジェネーションズ』は『ソニック ジェネーションズ』の裏でシャドウが何をしていたのかを描く作品なので、直接的な交流はあまりありません。今まで語られなかったシャドウの活躍を知っていただけると思います。

愛された『ソニック ジェネーションズ』の良さを活かすために

──『ソニック ジェネーションズ』のリマスターに際して、当時達成できなかったことで今回できるようになったことはありますか。

鴫原氏:
ハードの進化によってロード時間の短縮は感じていただけると思います。また、任天堂のハードで『白の時空』を遊んでいただけるようになったことも魅力だと感じています。

──ちなみに、『ソニック ジェネーションズ』は、レビュー集積サイトのMetacriticでモダンソニックの中ではトップを争うほど人気です(メタスコアは77、ユーザースコアは8.4)。高評価の要因はどのように捉えられていますか。また、『シャドウ ジェネーションズ』ではそれらの要素をどのように盛り込んでいますか。


鴫原氏:
『ソニック ジェネーションズ』に関してはハイスピードプラットフォームアクションという部分がお客様に評価していただいていると感じていて、『シャドウ ジェネーションズ』ではシャドウでそれに挑戦したらどうなるんだろうというところからスタートしています。

ただ、先ほど話した「カオスコントロール」などの技を早いスピードの中で要求すると難しくなりすぎてしまうと思い、コースをクリアするだけなら最小限の技だけでゴールに辿り着けるように作りました。スピードを求めるお客様には、「ドゥームパワー」を駆使してさまざまなルートを開拓することでゴールに最短で到達することを目指す遊びも用意してあります。今回TGSにプレイいただける「キングダムバレー」というコースにも、特定の敵に対して「ドゥームパワー」を用いることで行けるようになるルートが存在します。

中村氏:
『シャドウ ジェネーションズ』は『ソニック』シリーズの中でも分岐ルートを多めに作ってあります。最初は見えていないけど、シャドウが技を使うことで初めて見えるようになるルートもあり、『ソニック』シリーズをやりこんだお客様にさらなるやりこみを提供できると思っています。製品のリリース後に、「こんな解き方があるんだ!」とお客様のプレイに驚かされることが多いのですが、今作はそこがよりすごいことになるのではないかと予想しています。

鴫原氏:
『シャドウ ジェネーションズ』はシャドウが主人公のゲームということで、時間を止める能力である「カオスコントロール」を使うとタイマーも止まるギミックを搭載しています。どこで「カオスコントロール」を使うかでゴールタイムも変わってくので、うまく駆使して最短のクリアタイムを出していただきたいです。


──モダンソニックは類似の大型タイトルがほぼ存在しないゲームジャンルだと思うのですが、レベルデザインの参考にしているものはありますか。また、『ソニック』シリーズを作る上で開発陣の中で共有していることはありますか。

鴫原氏:
『シャドウ ジェネーションズ』に限って言えば『ソニック ジェネーションズ』がベースになっています。そこにシャドウという要素を加えてどのように成立させるかに気を使いました。

『ソニック』シリーズは、どのコースにおいてもユーザーが気持ちいいと思えなければいけないと考えています。難しいプラットフォームアクションをプレイさせるというよりは、負荷をかけたあとの解放感からくる抑揚を重視しています。また背景、キャラクター、プレイ、音楽などのすべてを使ってスピード感を出すことを大事にするように伝えています。『シャドウ ジェネーションズ』においても、すべての要素を使ってシャドウのカッコよさを前面に出せたと感じています。

中村氏:
新しく開発に入った方によくあることで、『ソニック』を普通のアクションゲームの手法で作ってしまうことがあるのですが、そうすると『ソニック』としてはあまり気持ちよくないものになってしまいます。『ソニック』の面白さは言語化が難しく、クリエイターのセンスに依存する部分が大きいのですが、特定の何かを参考にするというよりは、企画の方向性に沿ってチャレンジを重ねながら細かくバランスを調整する形を取っています。

『シャドウ ジェネーションズ』は安定した評価をいただいている『ソニック ジェネーションズ』にさまざまな面から磨きをかけたタイトルとして作ることができたと感じているので、ぜひ皆様に楽しんでいただきたいです。

──近年の『ソニック』シリーズは新作のリリースのペースが早い印象がありますが、開発側からの視点でここ数年忙しいといったようなことは感じていますか。

中村氏:
昔は会社に泊まって仕事をするようなこともありましたが今はだいぶホワイトになりましした(笑)

映画含めて今勢いがありますし、IPをしっかりと育てていこうという視点の下、それぞれのチームが共通のテーマ、今年で言えばシャドウの年ですね、に向かって協力していくような展開がここ数年でできるようになりました。忙しいは忙しいですけど、目標に向かってチームごとの分業ができているので、すべてを自分たちでやらなければ、というようなことはなくなりました。


──かつては作品が出てもコンセプトも見えづらく、評価も安定していませんでした。ただ最近の作品は、少なくともタイトルごとのコンセプトや狙いが見えるものが増えている印象です。

中村氏:
いろいろ難しい時期もあったのですが、得た経験で今後もより洗練されたコンセプトのタイトルを提供することができると思いますので、今後もご期待いただければと思います。

IP展開のお話で言えば、『シャドウ ジェネーションズ』の前日譚となるプロローグアニメの第一話も公開中で、『シャドウ ジェネーションズ』の発売までに全3話が公開される予定です。また、映画バージョンのシャドウで映画の舞台となる東京を冒険できる「ソニック × シャドウ TOKYO MISSION ムービーパック」を映画の公開に合わせて実装することもSIEさんのState of Playにて発表させていただきました。シャドウの年である今年、シャドウというキャラクターをさまざまな面から楽しんでいただきたいです。

──ありがとうございました。

『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』は、10月25日にPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/Epic Gamesストア)向けに発売予定だ。

[執筆・編集:Daijiro Akiyama]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]

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