『龍の国 ルーンファクトリー』は「ルーンファクトリーの当たり前」をみっちり見直した、だから遊びやすくなった。開発者に『龍ファク』の超進化の裏側を訊いた
弊誌はこのたび、本作を手掛けたマーベラスの藤井宙氏と前川司郎氏にインタビューを実施。これまでの『ルーンファクトリー』シリーズと比べてがらりと変化した本作を開発するにあたっての苦労や工夫について伺った。

マーベラスは6月5日、『龍の国 ルーンファクトリー』を発売した。対応プラットフォームは、PC(Steam)およびNintendo Switch 2/ Nintendo Switch。現在Nintendo Switch 2/Nintendo Switch版にてセールが実施されており、9月28日23時59分まで20%オフで購入可能だ。
本作は『ルーンファクトリー』シリーズの最新作だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch 2/ Nintendo Switch。舞台となるのは「龍星崩落」という厄災に襲われた東の国「アズマ」。大地の崩壊によりルーン(活力)は途絶え、自然を司る神たちの消失により山野は枯れ、人々は滅びの時を待つばかりとなっていた。竜と契約を交わした主人公は大地の舞手として、アズマを救うべく神々を探す旅に出る。
ゲームプレイでは多彩な武器を用いるバトルのほか、農業・釣り・料理などを通して生活しつつ、恋愛・結婚して家族をもつことも可能。シリーズお馴染みのゲームシステムもある一方で、従来のシリーズ作品とは異なり自分だけの里をつくり、生活をおくるなど和風の世界観で展開される点が特徴だ。
本稿執筆時点で、本作はSteamストアページでは1935件のすべてのレビューで88%の好評を得て、「非常に好評」のステータスを獲得。さらに、8月18日に同社が発表した情報によると、全世界累計出荷本数50万本を突破したという。
弊誌はこのたび、本作を手掛けたマーベラスの藤井宙氏と前川司郎氏にインタビューを実施。これまでの『ルーンファクトリー』シリーズと比べてがらりと変化した本作を開発するにあたっての苦労や工夫について伺った。好評を受けている本作がどういった方針のもと開発されたのかを紐解いていく。
『龍ファク』はシリーズのマンネリ化を避けるための挑戦作

――自己紹介をお願いします。
藤井宙(以下、藤井)氏:
『龍の国 ルーンファクトリー』(以下、龍ファク)でプロデューサーを担当している藤井宙と申します。元々、他社で品質管理というかデバッグのバイトからゲーム業界に足を踏み入れました。その後は縁があって後にマーベラスと合併することになるキャビアにスクリプターとして参加し、企画も経験させてもらい、プロジェクトマネージャー、アシスタントプロデューサーを経て、現在はプロデュースの仕事をしています。マーベラスに入社後は『Fate/EXTELLA』シリーズや『幕末Rock』、『DEADCRAFT』を手掛けております。ちなみに、『ルーンファクトリー』(以下、ルンファク)シリーズは本作で初参加となりました。
前川司郎(以下、前川)氏:
本作のディレクターとメインシナリオの執筆、そして設定周りを担当している前川司郎と申します。元々はセガで『ソニック』シリーズに携わっておりました。
『ルンファク』シリーズは、『ルーンファクトリー4スペシャル』からの参加で、『ルーンファクトリー4スペシャル』ではおもに制作管理を、『ルーンファクトリー5』ではプロジェクトマネージャーから最終的には演出など、開発の方にも携わりました。その後は『ルーンファクトリー3スペシャル』にも設定監修などでかかわっていまして、『龍ファク』に本格的に参加しました。
――そもそも『龍ファク』開発のきっかけはどういった経緯だったのでしょうか。
前川氏:
『ルンファク5』の開発が終わったときに首脳陣に説明をしたんですが、『ルンファク5』は『ルンファク4』のシステムを、3Dにしてそのまま移植したような作品だったんですよ。なので、遊んだ印象が割と『ルンファク4』に近くて、ゲームの体験としてはそんなに変わっていない気がしたんです。実は私は『ルンファク4』で遊んだときも、これって『ルンファク3』でやっていることとあまり変わらないな、と思ったことがありまして。
――たしかに……。
前川氏:
そんな体験がこのまま続くとさすがにマンネリ化するだろうと思っていたんです。何かしら新しい体験を作らないといけないと考えました。ただ、いきなり今までとまったく違う路線のものを『ルンファク6』に入れるのかというと、それはかなりリスキーなわけです。そこで『ルンファク』には『ルーンファクトリー フロンティア』や『ルーンファクトリー オーシャンズ』といった外伝的作品があったので、その流れで新しいことに挑戦してみようというのがきっかけですね。
――ナンバリングで伝統を壊してファンの期待を裏切らないためにも、まずは『龍ファク』で試してみたと。
前川氏:
別の場所で冒険しようと思ったわけですね。『龍ファク』で実験して、評判の良かった部分は次回のナンバリングに生かしたいと考えています(笑)
――Steamのレビューでも「非常に好評」になっているので聞かずともですが、『龍ファク』の調子はいかがでしょうか。
藤井氏:
日頃から応援してくれているみなさまのおかげで、順調に広がってくれているなと感じています。やはり国内が一番数字的には良い状態ですが、Steamも好調です。
――シリーズとしては国内外で同日リリースされたのは『龍ファク』が初めてでしたが、すでにグローバルで本作をプレイしたユーザーが多くいらっしゃる印象です。
前川氏:
『龍ファク』は日本語のほか、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・繁体字・簡体字と7か国語対応しています。このとおりイタリア語には対応していないんですが、なぜかイタリアの方からのファンメールもよくいただいているんですよね(笑)本当に広くいろいろな国の方々に遊んでいただけている実感があります。
――制作側としては評判が良い実感はありますか。
藤井氏:
ユーザーの反応をつぶさにチェックさせていただいていて、かなりの手応えを感じています。『ルーンファクトリー』が元々もっていたポテンシャルと、今回さらに遊びやすさを重視して開発したことで、より多くのお客さまに評価されたのかなと考えています。
――こういった高評価がされると、開発段階から予想されていましたか。
前川氏:
実は社内で評価してもらったときにも、方々から良いねと言われていて、内部的には割と手応えは感じていましたね。
――社内の評価で、ある程度手応えとかユーザーからの反応は予想できるものなのでしょうか。
藤井氏:
ある程度はわかります。ただ、社内のテストプレイは一度きりではなくて、全然完成していない段階からおこなっていて、人によっては厳しめの意見が出ることもあって、それに対応し続けた結果、最終的に良くなっていったというところですね。なので、果たして一般のユーザーさんに届けたときに「どう感じてもらえるんだろう」という不安はありました。それが良い反応を得られたので、本当に嬉しかったです。
“秘伝のたれ”のようにさまざまな要素を継ぎ足されてきた『ルンファク』シリーズ

――シリーズを初代からプレイしてきた一ファンの印象として、これまでの『ルンファク』シリーズはいろいろな要素がこれでもかと詰めこまれていて、複雑な部分も面白いけれど、複雑さゆえに不具合や遊びづらさもあった印象です。おふたりは『龍ファク』のプロジェクトを立ち上げる上で、過去作を踏まえて解決したい課題は考えていらっしゃいましたか。
藤井氏:
自分は『龍ファク』が『ルンファク』シリーズ初参加だったので、過去シリーズに対して言いにくい部分はありますが……。
一同:
(笑)
藤井氏:
とはいえ、やっぱり弊社からリリースするゲームとしてどうなのかを考えて、多くの課題があるなという認識はしていました。
前川氏:
実は私も『ルンファク』第1作目から遊んでいて、『ルンファク』がゲームとしてしっかりと形作られたのは『ルーンファクトリー3』からなんじゃないかなと感じています。当初、『ルンファク』は『牧場物語』にアクションRPGがついているというゲームがほかに存在しなくて、そのコンセプトの斬新さみたいなもので割と引っ張れていたところがあったと思うんですね。そこにいろいろなものを継ぎ足し継ぎ足ししていたかなと。
――「継ぎ足し継ぎ足し」、『ルンファク』ファンとして仰る意味はよくわかります。
前川氏:
それを継ぎ足していくことで、先鋭化していった部分があって、それと同時にいろいろな要素が増え過ぎたという部分もあったと思うんです。そこで今回『龍ファク』を作るときに、遊びやすくするために何を削るかということは相当考えました。ただ、それゆえに旧来のファンから『龍ファク』は『ルンファク』っぽくないねと言われることもありますが、今後は何を残して何を削っていくのかという部分が課題になっていくのではないでしょうか。
――前作『ルンファク5』はシリーズ初の3D作品だったり、いろいろなオブジェクトをほぼ全部投げることができたりとか、シリーズの殻を破ろうという挑戦が感じられて個人的に好きな作品でした。ただし不具合などもありました。そんな『ルンファク5』で感じた課題はなんでしたか。
藤井氏:
これは自分がまだ『ルンファク』に関わっていなかったので客観的に感じた部分の話なんですが……『龍ファク』を作って改めて感じたのが、前川が先ほど話した『ルンファク5』は『ルンファク4』を3Dで表現したゲームだということです。
2Dのゲームである『ルンファク4』を3Dにすることはすごく大変で、しかも『ルンファク4』自体いろいろなことができて物量が膨大なゲームでした。例えば、アイテムを投げられるということに関しても、投げられるものは全部3Dモデルを作らなきゃいけないということなので。
――たしかに。
藤井氏:
そこに工数を割くべきなのか、『龍ファク』は作品としてのクオリティを上げる方に力を入れるべきなのか、その辺りのバランスをどうするのかが課題でした。
前川氏:
2Dのゲームをそのまま素直に3Dにするのは本当に大変なんです。本当は何か削らなければいけなかったんですが……。おかげで『ルンファク』らしさは受け継がれていると思いますが、同時に粗っぽさも出てしまったかなと。
――『龍ファク』は3DアクションRPGとしてもフィールドがしっかり詰まっていると感じました。これまでの課題を経て、3Dゲームがどうあるべきか見据えて作られたのでしょうか。
前川氏:
そうですね。例えばジャンプで柵を飛び越えるとか、そういった3Dだったらやらなければいけないものは何なのかについて最初から考えていました。『ルンファク4』をいかに3D空間に落とし込むかに注力するのではなく、いかにして良い3Dの『ルンファク』を作るべきかを考えた結果、『龍ファク』が生まれました。
シリーズの複雑・不便な部分を改良して、新規ユーザーも入りやすく

――『龍ファク』になって、『ルンファク』における複雑な部分はある程度簡略化されている印象です。過去の『ルンファク』からどういった要素を取捨選択されましたか。
前川氏:
企画書の段階で、「もうこれはシンプルにしよう」と決めたものは、ずばりクラフトですね。あの奥深さが『ルンファク』らしさだったと思うんですが、実は開発の中でも何をどうしたらこうなるのか、そのメカニズムがだんだんわけがわからない状態になって、いわゆるガラパゴス化してしまっていたんです。
――過去作ではクラフトをするために「レシピパン」を食べて、そこから素材を集めて武器を作成していました。本作はそれも撤廃されましたね。
前川氏:
実は以前から、よく言われたんですよ。「何でパンを食べるとレシピを覚えるの」と。そう言われたらそうなんですけど……。「旧作から遊んでいる人には何となくわかる要素」ではありますが、そんな当たり前を初めて『ルンファク』に触れる人でも飲み込みやすいかたちに変えたかったというのがありますね。
元々、『ルンファク』はネバーランドカンパニーさんが手がけた作品で、現在のマーベラスにはその開発に関わっていた人間がほとんどいないんですよね。なので、ここで一旦そういったものをリセットして、新しくわかりやすいかたちに作り直そうと思ったわけです。
あとは、スキルシステムですね。元々は行動に応じてステータスが上がっていくというシステムで評判が良く、『龍ファク』を遊んだ一部のお客さまからも「あちらの方が良かった」というお声をいただいています。ただ、何をしてスキルアップしたのか明確ではないというか、どこを頑張れば上がるのか不明瞭だったので、『龍ファク』ではスキルツリーのようなかたちでわかりやすさを優先しました。あと、今までの『ルンファク』は別の武器に持ち替えたときに、1からその武器のスキルを上げていかないといけないという前提があったじゃないですか。
藤井氏:
『龍ファク』ではこういったスキルツリーシステムを採用してわかりやすくしましたが、今までのスキルシステムの良さもあると思うので、今後どうしていくかについての検討が必要かなとも感じています。
前川氏:
ええ、検討課題ですね。
藤井氏:
自分の方で一番直してほしいと伝えていたのが、「遊び心地」の部分ですね。過去作を遊んでみると、シリーズを通してちょっと不便に感じる部分が多かったという印象がありまして。たとえば、「お店の営業時間が何時から何時までと決まっているのに、その時間にご飯を食べているから買い物ができない」というようなものです。
――「お店に行ってもお店の人がいない」、『ルンファク』あるあるですね。生活ゲームらしくて好きでしたが、不便でもありました。
藤井氏:
なので、今回は「呼び出し看板」というものを設置するようにしました。あとは、とにかく今のユーザーさんに合うゲームを目指して作ったというところもあります。『ルンファク』シリーズは元々が『牧場物語』の派生作品で、仕様をそのままもってきたところが結構あるなと感じていました。それらが本当に『ルンファク』というシリーズにマッチしているのかは、考え直さなきゃいけないんじゃないかなと。
前川氏:
その例を挙げると、出荷箱自体は残っていますが、今回からお店でアイテムを売ることができるようになっています。過去作のようにお金が欲しかったらまず出荷箱に入れて、1日を終えて……という手順が不要になりましたね。
藤井氏:
『ルンファク』はアクションRPGという側面も持ちますし、本当にそれをやらないとダメなのか、というところがありましたよね。
――僕は『牧場物語』も好きなので、そこが愛らしさというか、不便さも含めて生活感っていう楽しみ方もしていましたけど、いま一度見直す意義はありそうですね。
前川氏:
そう、不便を楽しむっていう人も結構いらっしゃるんですよね。『龍ファク』では道具の持ち替えとかも自動化したんですが、それも自分で持ち替えてやりたかったという人もいらっしゃったんですよ。
――そういう不便さも含めて、『ルンファク』は、先人が作ってきた秘伝のたれみたいなものを引き継がれてきたんですね。その秘伝のたれにおふたりが手を加えるドキドキや、大変さもあるのでは。
藤井氏:
大変かというと……大変でした。ただ、『龍ファク』はマーベラスが初めて社内制作した『ルーンファクトリー』なので、その利点はかなりあったのかなと思います。今まではマーベラスがクライアントというかたちで外部の開発会社に制作をお願いしていた作品なので、開発会社側からすると「『ルンファク』はそういうものだから変えられないよね」みたいに思っていたところもあったんじゃないかなという気がしていて。その分『龍ファク』は社内で作っているからこそ、社内スタッフがここぞとばかりにずけずけと意見を言うんですよね。
前川氏:
自分がおなじみの要素を作っている時に、「なんでそんなのやってるの?」と言われるとか。
一同:
(笑)
藤井氏:
みんなどんどん意見するので、そこは今までの伝統を守ろうとする前川と、新しいものを望むスタッフみたいな、そんな構図がちょっとありましたよね。
前川氏:
そうですね。ホメオスタシスとトランジスタシスの、静と動の対決みたいなのがよくありましたね。ちなみに、モンスターの騎乗もやめようという話がよく上がるんですけど、私は絶対それだけはやると。自分の好きな部分だったので。
――なるほど、内製だからこそいろいろ手を加えやすかったんですね。ちなみに、開発スタッフは過去シリーズのファンが多かったんですか。
藤井氏:
いや、そんなこともなく……。
前川氏:
むしろ、知らないスタッフの方がほとんどで……。
――だからこそ前川さまが「これは伝統なんだ」と守る役目を果たしたと。
前川氏:
ミーティングのときに、私VS全員みたいな戦いになることがあって(笑)毎回胃が痛い思いをしました。とはいえ、私自身がシリーズを長く遊んでいて、不満だったところを一気に変えてしまいたいという野望もありました。肉食が解禁されたことに関してもその一つですね。
――別のインタビューを拝見したとき、前川さまがレガシーな要素を、藤井さまが新しいことに言及することが多かったイメージでしたが、やっと納得できました(笑)
藤井氏:
まさに縮図ですね。このふたりが(笑)
“ファンタジー生活ゲーム”から“ファンタジー冒険生活ゲーム”へ

――『龍ファク』の開発にあたって、チーム内で共有されたコンセプトやテーマはありましたか。
藤井氏:
和の『ルンファク』というところは一番こだわりました。西洋の今までの『ルンファク』と、和の『龍ファク』シリーズという方向性を目指しています。
前川氏:
あと、『ルンファク』のジャンルって対外的には“ファンタジー生活ゲーム”と謳っているんですね。そのファンタジー生活ゲームを“ファンタジー冒険生活ゲーム”にしようと話していました。それくらい冒険要素が強い、ちょっとアクションRPG寄りの作品にしたいと、常々みんなに話していましたね。
――そういったコンセプトやテーマは、最初から考えて作り始めたのでしょうか。それとも、作っていくうちに考えられたものなのでしょうか。
前川氏:
両方ですね。操作性やクラフトなどのシステムの整理については企画書の段階で私が書いていました。ただ、先に藤井が話した「お店が開いているうちはいつでも使えるようにしよう」とか、「物をお店に売ってお金にできるようにしよう」といったことは、開発の途中でどんどん変えていったところです。
――変えていった部分は、開発チーム内での議論によるものが多いのでしょうか。それともテストプレイのフィードバックの方が多いのでしょうか。
藤井氏:
QAが始まる前からマイルストーンごとにチーム内外でプレイをしてもらっていて、そのときに出た意見を全部集めて、じゃあどこを直していこうか、ということをずっと繰り返していきました。
前川氏:
つらかったなぁ……、あれ。
一同:
(笑)
前川氏:
ゲームに関する何百という不平不満が方々から寄せられるんです。それをやるか、やらないか、やるならどういう風にやるのかということを、毎回私と藤井で頭を悩ませながら決めるんですけど……。それでうまくいくものもあれば、問題が持ち越されるものもあって、なかなか大変でしたね。
――フィードバックを伝える側はそれで終わりですが、作る方はその代替案を考えないといけないですからね。
前川氏:
そうなんですよ。「代わりにこうしてくれ」まで言ってくれる人はなかなかいないですからね。

――今作はお披露目から発売まで時間はかなり取られたと思いますが、そういったチューニングにしっかり時間をかけられたのでしょうか。
藤井氏:
時間はかなりかかりましたね。QAが始まっている時期にもいろいろ調整は続けていました。
前川氏:
キャラクターとの交流の際、コマンドごとに時間経過がありますが、あの仕組みを入れたのもほぼQAが始まってからでした。
――時間経過周りは初期段階から入っていないとデバッグを含め、諸々の部分で大変だったのではないですか。
前川氏:
そうです。かなりヤバいです。試しに入れて1週間くらいデバッグを回してみて、問題がなかったら時間経過も実装しようと。かなりギリギリのラインを攻めた感じですね。時間経過が入るまでは交流に縛りがなかったので、システムとして良くなったんじゃないかなと思っています。
――いろいろアクティビティをこなしたのにまだ昼前とかだと、生活感がないですからね。
藤井氏:
とはいえ、時間経過を入れたことで「口づけコマンドを選ぶと30分経過するけど、30分間ずっと口づけしているのか」みたいな話もありまして……。
一同:
(笑)
前川氏:
あと、時間に対する戦略性みたいなものも時間経過という要素を加えたことで生まれたんじゃないかなと思いますね。
――時間消費によって交流がより面白くなったのにも納得です。またキャラクターのモデルやアニメーションがリッチなことも今回のコミュニケーションの面白さを引き出している理由のひとつだと思っています。
藤井氏:
ありがとうございます。正直なところセルルックなキャラクターモデルという部分だけで言えば、もっとクオリティが高い作品はほかにもたくさんありますが、Nintendo Switch向けにも作っていたので、その点ではかなり頑張れたんじゃないかなと感じています。
あと、本作はこれまでと違って立ち絵がないので、それもあって開発スタッフがキャラクターのモデル・アニメーションも、より頑張ってくれました。おかげでイベントなどでの感情表現が豊かになったかと思います。
前川氏:
あと、アニメーターもベテランの力をたくさん投入したので、そのおかげもあるんじゃないかなと。モーションキャプチャーもたくさん使いましたから。
――カットシーンもリッチでびっくりしました。イントロとか、第一印象で気合いが感じられて、ユーザーとして嬉しくなりました。
藤井氏:
カットシーンで言えば、『龍ファク』で最初に発表した冒頭のスバルとカグヤが龍に乗って戦うシーンは、発表の2~3か月前に作ったんですよね。
前川氏:
そうなんですよ。「MARVELOUS GAME SHOWCASE 2023で発表するから何か出してほしい」と突然言われまして。まだそのときにゲーム内のデモシーケンスを動かすシステムがちゃんとできていなくて、何とか作ったという映像ですね。
藤井氏:
まず見せるならここだろうというので、急遽作りましたよね。急遽作ることにはなりましたが、あの映像を作った直後にボイス収録が始まったんです。声優さんに見てもらうことで世界観を把握してもらうための参考にしてもらえたと思うので、それは良かったですね。
後編では、ふたりに『龍ファク』の開発についてさらに深く振り返ってもらいつつ、次回作の展望についても踏み込んだ模様をお届けする。
『龍の国 ルーンファクトリー』は、PC(Steam)/Nintendo Switch 2/ Nintendo Switch向けに発売中だ。現在Nintendo Switch 2/Nintendo Switch版にてセールが実施されており、9月28日23時59分まで20%オフで購入可能だ。
[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]