PLAYISMは何を目指し、どこへ向かうのか。PLAYISM水谷俊次氏インタビュー [前編]

PCゲームを遊んでいれば一度はPLAYISMという名前を目にしたことがあるだろう。世界中のインディーゲームを日本語にローカライズして販売するプラットフォームだ。今年の5月で5年目を迎えるPLAYISMの水谷俊次氏に、創立のきっかけや沿革など、さまざまなお話をうかがった。

 
――PLAYISMの創立の沿革を教えていただけますか。

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水谷氏:
アクティブゲーミングメディアはもともとローカライズをやっている会社なんですが、5年ぐらい前のタイミングで、広告制作するクリエイティブの会社と一緒になったんです。それで、ローカライズと広告宣伝が会社としてできるようになりました。じゃあ世界中のエンターテイメントコンテンツをローカライズしてそのまま販売までできるんじゃないかという話になって、新しいビジネスとしてゲーム販売をしてみよう、という流れになりました。

インディーを扱うことになったのは、当時ソーシャルゲームが全盛期で、日本のゲームは映画のように巨大な予算とボリュームのトリプルエータイトルか、ポチポチボタンを押すだけのソシャゲか、という状況が背景にありました。このままだと斬新なゲームが出て来なくなって、ゲーム市場がつまらなくなっていくと危機感を覚えていました。一方そのころ海外ではインディーゲームがすごいブームになっていたんですね。見たこともないようなゲームがどんどん出てきて、新しいゲームの可能性が広がってきていたので、この流れを日本にも伝えて日本のゲーム文化を応援していくためにインディーを扱っていくというのは、業界にとってもすごく意義があるんじゃないかということでスタートした形になります。

 
――PLAYISMができた時は、ほかにインディーゲームを販売するというようなサービスはあまりなかったのでは?

水谷氏:
まったくなかったです。多分日本でインディーゲームというのを看板に販売しますといったのはうちが初めてですね。

 
――前例がないことへの不安はなかったんですか。

水谷氏:
あんまり何も考えてなかったのかもしれません。そもそも僕らの中に販売の経験者がいなかったんです。翻訳できる人間と広告作れる人間しかいなかったので、これでどれだけ売れるのかとかいうのは、わからなかったですね。多分わからなかったからやったと思うんですけど(笑)ちゃんと市場を調査していたらやらなかったと思います。

 
――それでも、サービスを開始されて5年経った今でもまだ続いているということは、事業としてうまくいっていると考えてもよいでしょうか。

水谷氏:
そうですね。お金という点でいえば、年々倍々になって、事業としてはちゃんと黒字化しています。ただ、最初は洋ゲーのローカライズを自社で販売していたんですけど、なかなかそれだけだと大変なので、やっぱり日本のインディーを世界へ持っていくというのもやらなきゃいけないと。とにかく上手くいかないことが多かったので、常に違うことをしなければこのまま終わってしまうと必要に迫られて、Steamに行ったりとか、PlayStationに行ったりしましたね。好調というより、どうにか好調にしているだけというか(笑)

 
――そんなPLAYISMも現在では洋ゲーのローカライズから美少女系まで幅広いタイトルが販売されていますよね。どれを扱うのかといったタイトルの選定基準などはあるのでしょうか。

水谷氏:
ひとつの基準としては「新しい」かどうかです。ゲームシステムとして、インディーなので大手がやらないことをやらないと目立たないし、有り体に言えば売れないわけです。話題にならない。なので、「このゲームは今までになかった」というのをなるべく選ぶようにしてます。あるいは『LA-MULANA』とか『ケロブラスター』とか『洞窟物語』のように、昔からあるゲームだけれども、完成度が異常に高いというものですね。大手では逆にあそこまで作り込めないというところまで作り込まれてますよね。なので、新規性か完成度かで見ています。『Papers, Please』のように、両方を満たしていると世界中で爆発的にヒットしますね。なるべくそのふたつを軸に選んでいます。

 

『メゾン・ド・魔王』は、モンスターをアパートに住ませて勇者を撃退する一風変わったタワーディフェンスゲーム。
『メゾン・ド・魔王』は、モンスターをアパートに住ませて勇者を撃退する一風変わったタワーディフェンスゲーム。
――インディータイトルをパブリッシングする際にはPLAYISMさん側からオファーすることが多いでしょうか。PLAYISMにはインディーデベロッパー用の応募フォームもあるのですが、そこから生まれたタイトルもあるのでしょうか。

水谷氏:
基本はやはりオファーすることが多いです。パブリッシングを申し込むフォームもあるんですけど、ここの打率は1割切ってますね。10本きて1本とるかどうかっていうところですね。人員リソースの問題もあり、本当に申し訳ないのですが、ほとんど断っているのが現状です。応募フォームから生まれたヒット作というと『メゾン・ド・魔王』があります。普通に「うち、これ出したいんだけど」という感じで応募してくれました。あと『東方輝針城』も東方の権利元からメールがきて、ビックリしましたね(笑)なので、そういうパターンもなくはないです。

 
――少し話が変わりますが、PLAYISMさんはニコニコのチャンネルの方で平日21時からほぼ毎日長時間にわたってやられていますよね。あれはどういうきっかけで始まったのでしょうか。

水谷氏:
(笑)あれは五年前からああいうことをやりたいなってずっと思っていたんですけど、今までいたスタッフがそういうのに疎くて、やりたいけどやり方がわからないし、しゃべりも特にうまくない、という感じだったのでやらなかったんです。でも、去年の4月に入った新人の子が「趣味でやってます!」と言っていたので、「9月から毎日やりなさい」という流れになりました。毎日(動画配信)やっているパブリッシャーってなかなかいないので……。「誰もやらないことをやる」というのも大事にしてます。僕らお金のない弱小なので、目立とうとすると、他のところがやってないことをやるしかない。なので、新人君が毎日やってますね。

 
――ところで、PlayStation VRの参入メーカーの一覧にPLAYISMの名がありました。あの中では少し異色でしたが、どのような展開をしていくのでしょうか。

水谷氏:
実はVRは、本腰に入れてやりますというわけではないんです。むしろインディーデベロッパーさんの方で「VRをやってみたいんですけどどうしたらいいんですか?」という問い合わせをうちにいただいて、それをソニーさんに聞いたら「やってみてはどうですか?」という話になったので、じゃあ参入しますという感じになりました(笑)

だから、実際リリースまでいくかというのもまだわからない状態ですが、まずは何よりインディークリエイターさんでもVRにチャレンジできる道をつくるのが大事かなと思い参入した形ですね。

 
――今ゲームクライアントというか、ゲームの販売サービスに、どんどん(他の分野での)大手が参入してきて、もちろんSteamもそうですし、GMG、GOGなどいろんなサービスがあると思います。その中でPLAYISMがどのような独自色というか、差別化をしていくんでしょうか。

水谷氏:
これは非常に悩んでいるところです。さきほども言いましたが、5年前はインディーゲームの専門店みたいなものがなかったので、それだけで目立ったんです。海外へPC版のゲームを出すっていうのもすごくハードルが高くて、Steamなんかも日本から出しようがなかったような状態でした。なので、5年前は、インディーゲームを全世界へリリースするプラットフォーム、というだけで価値があったんですけど、今はSteamもGreenlightさえ通しちゃえば誰でも出せる状態になりましたよね。そうなると、「僕らはインディーゲームを売ってるサイトですよ」だけでは弱いんです。今の機能では差別化はまったくできていません。現状のプラットフォームとしてのPLAYISMは正直、劣化Steam、劣化GOGですよね。なので多分、販売サイトとしての機能というよりは、インディークリエイターが集まって情報交換できるとか、インディーさんのためになるサイトにしていくのがいいのかなとも考えています。弊社にはAUTOMATONがあるのでアレですけど、インディーゲームのニュース系のコンテンツをつくるとか、そういうところで差別化をしていくしかないのかなと思っています。

 
――インディーのコミュニティーを広げていくと。

水谷氏:
はい。作り手を増やさないといけないというのを僕はすごく思っています。やっぱり日本でインディーを作っている人ってまだまだ少ないと思うので、その土壌を広げるためのサイトにしていきたいなという気持ちがありますね。

 
――PLAYISMさんは、一昔前までは小粒なタイトルを扱う印象が強かったのですが、最近では『NightCry』を中心に大きなタイトルを扱うようになってきています。どういう経緯でこういう方向性になったのでしょうか。

水谷氏:
うーん、難しいなあ(笑)別に大きいタイトルをとっていきたいというわけではないんです。先ほども言った、「今までになかった」とか「つくり込まれてる」とかっていうところで選んだ時に『NightCry』が上がってきただけでですね。あのシザーウォーカーに追いかけられる恐怖というのは唯一無二の魅力だと思います。そこはあまり崩さずにいきたいというのはPLAYISMとしてはありますね。僕らが力を貸したらもっと世界中に広げられるようなタイトルがあれば、規模にかかわらず協力していきたいです。

『Nightcry』は、『クロックタワー』シリーズの生みの親、河野一二三氏が手がけるホラーアドベンチャー。
『Nightcry』は、『クロックタワー』シリーズの生みの親、河野一二三氏が手がけるホラーアドベンチャー。

 
――最近はKickstarterのサポートも手厚くされていますよね。そういった流れは今後も続きますか?

水谷氏:
LA-MULANA 2』や『NightCry』もそうですけど、僕らがサポートできる範囲のなかで、僕らが力を貸せば大きくなれるようなタイトルに関しては、なんでも積極的にやっていきたいです。

 
――ちなみに『NightCry』は何がきっかけで始まったのでしょうか。

水谷氏:
もともとは、ソニーのインディー担当の窓口をされていた方が紹介してくださいました。『クロックタワー』の河野さんがインディーでやりたいということを話されていたようで。そこで「インディーならPLAYISMっていうのがあるから、紹介するよ」と言われていたようで、そこからつながった話ですね。僕の世代だと『クロックタワー』は伝説的なゲームなんで、そりゃもちろん手伝いますよっていう感じでした(笑)

 
――そういうお話を聞くと、業界の中で「インディーならPLAYISM」といった地盤はこの5年の結果として確立しつつあるのでは。

水谷氏:
そうですね。最初僕らしかいなかったですからね。先駆者としての認知度はある程度あるかもしれません。インディーといえばPLAYISMというふうに思ってくれる方がいくらかはいるのかなと。ソニーさんやマイクロソフトさんとは仲良くさせてもらってるんで、そのへんはありがたいですね。Valveさんとかもそうですが。

 
――海外の話題作が日本で出る時は、PLAYISMでローカライズされることが多いように感じます。海外でもPLAYISMというブランドが築かれつつあるのか、それともオファーのフットワークが軽いのか、どちらでしょうか。

水谷氏:
両方でしょうね。海外の開発者さんの中でも僕らのことを知ってくれている人が結構いるみたいです。海外でも「『LA-MULANA』やったとこだな」とか、「『ケロブラスター』やっているとこだな」とか言ってくれたりもするんです。翻訳はゲーム好きがやっていて、それなりにいいものを出し続けている自負もあります。でも、やっぱりDevolver Digitalさんとかすさまじく優秀なパブリッシャーはいますからね。デジカさんもそうですし。負けないように切磋琢磨しながらやりたいなというのを純粋に思ってます。

 
――PLAYISMとしてプッシュしていきたいものはありますか。

水谷氏:
今は『NightCry』ですね。『NightCry』っていうプロジェクトはAUTOMATONでも記事になったんですけど、河野さんが借金して作った、みたいなのが出てましたよね。(笑)

 
――ありましたね(笑)

水谷氏:
僕も河野さんからそのお話をよく聞きますが、本当に借金してるかどうかはまあさておき(笑)、河野さんが大変な思いをして踏ん張って進めてこられたプロジェクトなんです。本当に『クロックタワー』ファンやバッカーさん、パトロンさんのことを考えて作ったゲームなので、そういう方にはぜひ遊んでほしいですね。インディー魂があるなと思いました。Kickstarterは頓挫するプロジェクトが山程あるんで……AUTOMATONでもよくでますけど(笑)

 
――(笑)

水谷氏:
でも頓挫するのもわかります。あれだけお金が急に集まったら、舞い上がる人もでるでしょうし、マネジメントできる人がいなければあっという間にお金を使いきってしまうこともあると思うので。そういう状況の中でリリースまで持って行けたのは、僕らも頑張りましたけど、ヌードメーカーさんはよくやったなと感じます。まあ、そういう苦労話は抜きにしても『NightCry』は『クロックタワー』ファンにはたまらないものになったと思うので、遊んでほしいです。

 

『MOMODORA -月下のレクイエム-』は、かわいい見た目とは裏腹な難易度を誇る本格2Dアクション。
『MOMODORA -月下のレクイエム-』は、かわいい見た目とは裏腹な難易度を誇る本格2Dアクション。
――2016年に入ってからリリースされたタイトルのイチオシなどを教えていただけますか。

水谷氏:
おそらく一番売れたのは『MOMODORA -月下のレクイエム-』ですね。僕はアクションがヘタなので全然楽しめないので残念ですが(笑)うーん、なんだろうなあ。

 
――2015年を含めるとどうでしょうか。

水谷氏:
2015年を含めると、やっぱり印象深いのは『D4: Dark Dreams Don’t Die』でしたね。(開発会社のACCESS GAMESは)すぐ近所の会社なんですけど、あんなものを日本の大阪の会社がつくってると思うと、すごいなと思います。遊んでほしいのでいうと『LiEat』ですね。フリーゲームですけど、才能ある人は日本にもまだまだいるんだなっていうのはすごく感じましたね。海外作品でいうと『Mini Metro』かな。『Mini Metro』はいいですね。センスがあるなと感じました。

 
――『D4』は現在シーズン1ですよね。その後どうなっていますか。

水谷氏:
今は軽々にファンの方にも楽しみにお待ち下さいとは言えないんですけど……。ちょっと今ディレクターのSWERYさんが療養中というのもありますが、僕個人としてもシーズン2を遊びたいのでなんとか良いニュースを届けたいという気持ちではあります。

 
playism-interview-part-1-001――最近は精力的にコンシューマーでリリースされていますよね。それは何がきっかけだったんですか。

水谷氏:
ピグミースタジオの社長さんがPLAYISMをえらく気に入ってくれまして、ソニーさんに紹介してくれました。今はなきPSモバイルっていうサービスがあったじゃないですか。あれで『僕は森世界の神になる』と『ユーフロリア』をやりたいということになって、それらはピグミースタジオさんからリリースさせていただいたんですが、そこからソニーさんとのつながりができました。そのリリース前後辺りにソニーの部長クラスの方がわざわざうちの大阪本社まできてくださって。海外ではすでにソニーはインディーを取り込み始めていたので日本でも同じようにやりたいんだけど、日本のインディーがどこにいるのかわからないと。そこで調べてみた結果、PLAYISMを見つけて「ここに全部いるじゃないか!」ってなったみたいで。何か協力できたらいいですねという話をしていました。

最初のきっかけは『Machinarium』と『TorqueL』というゲームです。『Machinarium』はデベロッパーさんが「日本で出したいんだけど、お前んとこに言えばなんとかなるのか」みたいな話をされて、それをソニーさんに言ったらなんとかしましょうと言ってくださり契約するようになりました。『TorqueL』の方は「なんもさん」という個人で制作されてる方なんですが普通にソニーに電話して「『TorqueL』っていうゲーム出したいんですけど」って話をして断られたみたいで、それからうちに電話がかかってきて、なんとかしてよという話をされました。(笑)

それでインディーさんでもゲームを出せる体制を整えるにはどうしたらいいんでしょうかという話になりました。会社的に個人ではゲームは出せなくて法人同士じゃないとそもそも契約ができないということでしたので、じゃあうちが代わりに契約したらいいですか?と聞くと、それならいけますよと言っていただきました。そのときに「ではPLAYISMさんは、パブリッシャーになりますね」と言われたんですが、僕その時パブリッシャーって何なのかがよくわからなくて(笑)。なので、よく5年やったなと自分でも思います。

だから、思えばこの5年間は僕らが何かをやったというよりも、インディーの人がやりたいと言ったことを「じゃあ1回やってみましょうか」という感じでしたね。

 
――サポートに徹していたんですね。

水谷氏:
あなたがそこまで言うならやってみましょうという精神ですね。Kickstarterもそうですし。有名でも無名でも、おもしろいゲームをつくる才能がある人にご飯をちゃんと食べてもらうための環境を整えるのが僕らの仕事だと思っていますし。

 
――その時のご縁からコンシューマー展開がはじまったんですね。

水谷氏:
そうですね。コンシューマーでゲーム出したいというのは勿論あったので。やっぱり僕らは家庭用ゲーム機で育ったので、PlayStationで出せたら嬉しいですよね(笑)

 
――アクティブゲーミングメディアは、最近はモバイルでもゲームを出していますよね。PLAYISMもそれらのタイトルにかかわっていて、モバイル展開の方も視野に入れているんですか。

水谷氏:
モバイルはやりたいなとは思っているんですが、勝手が違いすぎるのと、競争が激しすぎるので勝てる自信が全然ないんです(笑)今の体制と知識ではなかなか難しいだろうなというのはありますね。でも、うちは『ブレイクアーツ』というタイトルをスマホでリリースさせていただいています。それはデベロッパーの方から海外でも出したいっていうオファーがあったので「じゃあ僕らモバイルあまりわかってないんですが頑張ってみます」という流れでやりました(笑)もしデベロッパーさんからのオファーがあればモバイルもやるかもしれません。でも今はあまり乗り気ではないですね。売り方がわからないので(笑)

 
――(笑)

 


 

後編へ続きます。

 

[聞き手: Minoru Umise]

[写真: Mon Gonzalez]

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