感情で前に進むアクション『MONOWAVE』開発者インタビュー。チーム揃って「就職・進学を蹴って起業」し、情熱を注ぐ本作の“感情哲学”とは

『MONOWAVE』は、感情をテーマにしたパズルアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは感情の守護精霊である主人公「モノ」として、感情がバラバラに飛び散って混乱した世界を救うため冒険することとなる。本作では、幸せ・悲しみ・怒り・不安の4つの感情がメインアクションやアビリティと連動しており、これらを自分の能力として活かすためには「共感」が鍵となる。横スクロールタイプのアクションをこなしながら、どのような感情を、どこでどう活かすかがクリアにとって重要だ。


このたび、3月20・21日に高円寺にて開催されたインディーゲームのイベント「Tokyo Indie Games Summit2026」において、本作のデベロッパーであるStudio BBBのCEOであり開発者のイム・グォンヨン氏にインタビューを行う機会に恵まれた。弊誌では、2025年8月にも「BitSummit the 13th」にて本作の開発者インタビューを行っている。(関連記事)今回は、前回のインタビュー内容も踏まえた上でさらに詳しく開発の道のりや哲学を聞くことができたので、本稿にて紹介したい。
責任を強く感じながらのスタートアップ
――まずは自己紹介をお願いします。
イム・グォンヨン(以下、イム)氏:
Studio BBBのCEOイム・グォンヨンです。よろしくお願いします。
――パブリッシャーがPhoenixxに決まったとのことですが、そうなるまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか。
イム氏:
最初の出会いは昨年1月の台北ゲームショーでした。その際にPhoenixxの重役の方とお会いして試遊してもらいました。その後、CEOの坂本和則さんともお会いし遊んでいただきまして、「すごく好感触だ」という感想をいただくことができました。そして、そこからPhoenixxさんを通して、いろいろなプロデューサーさんを紹介していただきました。日本のみならずほかの国のパブリッシャー様ともお話をさせていただきましたが、その中でPhoenixx様とお互いのビジョンを深く共有し合うことができ、最終的にPhoenixx様にパブリッシングをお願いすることに決めました。

――Studio BBBでは、チームとして『MONOWAVE』の前にはどのような作品を作ってきましたか。
イム氏:
Studio BBBは大学生のサークルとして始まったグループです。在学中に練習としていくつか小さなゲームを作っていましたが、その中で少し大きなプロジェクトとして『MONOWAVE』を作りました。なので本作が実質的なStudio BBBのデビュー作となります。
――大学を卒業されると同時に起業されましたが、そのときはどのような気持ちでしたか。
イム氏:
「これから自由に制作に打ち込めるぞ!」という気持ちよりは、責任感のようなものを強く感じました。私は実際に大学院の修士課程に進学し、1年間学んでいたのですが、本格的に起業とビジネスに挑戦するためには学業との並行は難しいと判断し、休学という道を選択しました。そしてほかのメンバーにも本来は就職予定だった者もいたんです。彼らも全員一旦その選択を取りやめて、一緒にスタートアップ起業としてStudio BBBをやることになったわけなので、自分だけの問題ではないという責任感を感じるところがありましたね。
とはいえ、そういう責任感や強い意思を持って取り組む姿勢が、投資家たちから資金を得るときのきっかけになった側面もあったのではないかと感じています。
――チームで一緒にゲームを作る中で、自分以外のメンバーがいて良かった、と思う場面はありますか。
イム氏:
Studio BBBは6人で構成されていますが、全員が異なる役割を担っています。そのため、誰ひとり欠けても『MONOWAVE』は生まれ得なかったと考えています 私は初期の頃こそプログラマやエンジニアとしての作業を担当していましたが、現在はCEOとしてビジネス側の業務に集中しています。ほかにサウンドデザイナーやグラフィックアーティスト、そしてディレクターなど、お互いの役割があります。『MONOWAVE』を生み出せたこと自体が、「みんなでやってきて良かった」と思うことですね。

――チームで開発を行う中で、人によって異なる意見を持っていてぶつかる場面もあると思います。どのように方向性を定めていくのでしょうか。
イム氏:
ストーリーやゲーム構成などについては、ディレクターを軸にしつつ、チーム全員で議論することが多いです。そこで、前提として共有している考え方は、「ここでお互いを説得することができないのであれば、ユーザーへの説得力も持ち得ない」というものです。そのうえで話し合いを進めていきますが、ユーザーに対して一番訴求力が高い意見はどれか、ということではなく「どのようにしたら、自分たちの見せたいものや表現したいことがユーザーに伝わりやすいか」ということに焦点を当てています。私たちは芸術分野を扱う学生の集まりでしたので、ゲームという媒体を通した場合に、どうすれば私たちのアートや伝えたいことが伝わるかにフォーカスしました。
「感情」というモチーフをどう表現するか
――本作を試遊した際に、絵本のような雰囲気も感じるところがありました。ゲーム以外の、たとえば絵本や映画などの作品の中にもインスピレーションを得たり、影響を受けたと感じるものはありますか。
イム氏:
PIXARやジブリなどの影響を受けていると感じています。特にPIXARの『インサイド・ヘッド』は、同じく感情をテーマにした作品ですよね。そういった点では、参考にした部分も多くあります。ストーリーの伝え方や構成に関しては、任天堂のゲームやジブリ作品なども参考になったと感じています。任天堂やジブリが日本の企業だからということではなく、自然とそれらの作品の構成が勉強になりました。
これも任天堂の哲学に近いところがあるかもしれませんが、子供だけでなくあらゆる人々に『MONOWAVE』を届けたいと考えており、あらゆる人々を想定するならば、結果的には子供たちにも伝わり、感銘を与えられるような作品になるのだと思います。『MONOWAVE』から絵本や子供向けのような雰囲気を感じるのも、そこに通じることだと思います。

――本作では、「歌を歌う」のほか、喜びの「ジャンプ」、悲しみの「溶ける」、怒りの「キック」、など感情に応じた能力があります。これ以外にも感情にまつわるアクションのアイデアはありますか。
イム氏:
実はゲームを進行することによって、試遊版では巡り会えない別の感情に触れられるような、まったく新しいアクションが解禁されるようになっています。ですので、ほかのアイデアについては製品版を楽しみにしていただければと思います。
――フィールドに登場するNPCには鳥やワニなどがいて、実在の動物をモチーフにしていることがわかります。「モノ」はパッと見ではモチーフがわかりませんが、何かモチーフがあるのか、それとも完全にオリジナルの生き物なのでしょうか。
イム氏:
多くのユーザーさんが「これは豚なんじゃないか」とか「ウサギなのでは?」とか、いろいろ推測するんですけど、実はモノはヒトからデザインがスタートしたキャラクターなのです。もともとはもっと人間っぽいデザインをしていましたが、磨き上げていく中で今のような単純化された見た目になりました。獣のように、耳のようなものが頭の上についていますが、顔のパーツをよく見ると、鼻や口などは人間によく似た作りになっていて面影を残していますね。

感情を哲学する
――感情をテーマにしたゲームを作ることは、結果的に自分の感情とも向き合う時間が増えることになると思うのですが、ゲームを作りながら自分の感情に対する向き合い方が変わったというようなことはありますか。
イム氏:
『MONOWAVE』の中で伝えようとしていることは、感情というのは、ネガティブなものも含めてすべて重要であり、そして扱い方も大事であるということです。認知療法というものがあるのですが、これはまさに自分のあらゆる感情と向き合うことなんですね。「今自分はこういうステータスなんだ」とか「こういう感情を持っているんだ」と客観的に認知することによって、自分の感情と素直に向き合いながら、今後それをどうやって扱っていくかを考える治療法です。自分にとって、ゲームの開発をしながら自分の感情とも向き合うということが、何か医学的に明確な効果があったという話ではないのですが、それに近いイメージで精神的に良い効果があったように感じています。
――抽象的な質問になりますが、ここまでのゲーム開発の道のりを本作のメインの4つの感情を用いて割合で示すとどのようになりますか。
イム氏:
うーん……怒りがビビーーっとこのくらいで……。
――多いですね(笑)
イム氏:
というのはもちろん冗談ですが(笑)ゲーム開発においてはさまざまな感情が渦巻いていますね。楽しいこともあれば、怒るようなこともありますし、今現在もいろいろな感情を同時にいだいている感じです。割合で表すのは難しいですね。すでに開発開始から3年くらいの長い時間も経っているので。

――本作は発売時期を2025年から2026年へと変更しており、開発の中での苦労もあったと思います。それも踏まえ、今ユーザーに伝えたいことはありますか。
イム氏:
『MONOWAVE』に関しては発売前のすべての準備は完了していますので、あとはリリースまで信じて待っていてもらえたらと思います。これからさらにいくつかのイベントにも出展参加しつつ、パブリッシャーさんと協力してひとつひとつ情報を公開していく段階に入ります。
また、『MONOWAVE』の開発を終えたことで、Studio BBBとしてはすでに次の作品の制作に取りかかっています。ぜひこれからのStudio BBBの動向にもご注目いただきたいです。
――日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
イム氏:
感情というものは、どこの国の人たちでも持っているボーダーレスなものだと思います。このゲームを通して、日本を含む世界中の人々が何か同じようなことを感じていただいて、共感するキッカケになればとても嬉しく思います。本作では、共感も大事なテーマになっています。感情は個々の内面にだけあるものでありながら、同時に他者にも少なからず影響をもたらすものですよね。そういったことを考えたり、感じたりする機会になれたら嬉しいですね。
――ありがとうございました。
なお、今回のインタビューにあたり、販売元・Phoenixxの代表取締役である坂本和則氏もコメントを寄せて、本作にかける思いを語ってくれた。
Phoenixxとして『MONOWAVE』をパブリッシングすることを決めた理由は、
「感情」という人間の根源的なテーマとゲーム体験が高いレベルで結びついている、非常に稀有な作品だと感じたからです。
喜びや悲しみといった感情をそのままアクションやパズルに落とし込んだ設計は、
シンプルでありながら奥行きがあり、プレイヤーの感覚に自然に訴えかけてきます。
インディーゲームにおいて、”何を表現したいのか”と”どう遊ばせるのか”がここまで一致しているタイトルは多くありません。
まだ発展途上の部分もありますが、だからこそPhoenixxが関わる意味があると考えています。
本作の魅力を最大限に引き出し、より多くのプレイヤーに届く形へと引き上げていきます。
また本作は、日本だけでなく海外市場においても評価されうるポテンシャルを持っています。
これまで培ってきた知見とネットワークを活かし、グローバルで戦えるタイトルへと育てていきます。
『MONOWAVE』がプレイヤー一人一人の感情に触れ、記憶に残る作品となるよう、チーム一丸となって取り組んでまいります。
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