『モンスターハンターワイルズ』開発者合同インタビュー。あえて「群れ」との戦闘を押し出す理由や、防具の“男性用・女性用の制限撤廃”の裏側などを訊いた

『モンスターハンターワイルズ』のプロデューサーの辻本良三氏、本作ディレクターの徳田優也氏、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏に、複数メディアでの合同インタビューが行われた。本稿では、その模様をお届けする。

カプコンは来年2月28日、『モンスターハンターワイルズ』を発売予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|Sで、それぞれのストアページにて予約受付も開始。価格はダウンロード通常版が税込み9900円となっている。

本作は、『モンスターハンター』シリーズ最新作だ。本作にてプレイヤーは、リードハンターとして「禁足地」なる荒野の探険に繰り出すことになる。フィールドでは気候が移り変わり、変化を繰り返すという。またさまざまな生物が生態系を形作っており、従来シリーズのような小型モンスターの群れだけでなく、大型モンスターも群れをなすそうだ。


発売に先駆けて、本作のプロデューサーの辻本良三氏、本作ディレクターの徳田優也氏、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏に、複数メディアでの合同インタビューが行われた。本稿では、そちらの模様をお届けする。

──開発がスタートした時期と開発期間を教えてください。

辻本 良三(以下、辻本)氏:
『モンスターハンター:ワールド』(以下、ワールド)の、最後のタイトルアップデートのあたりから構想と検証を始めているので……6年ぐらいかかっていると思います。裏でプログラマーが検証をして、たくさんモンスターを動かしてみたりといった、検証していた時期まで入れると、そのくらいです。

藤岡 要(以下、藤岡)氏:
構想入れて6年ですかね。実際の開発期間は5年と少しだと思います。

徳田 優也(以下、徳田)氏:
『ワールド』のアップデートしながら、僕が企画書を書いていたのが1番のスタートなので、それが2018年〜2019年あたりになりますね。


──開発のうち、どこに一番時間を割きましたか?

辻本氏:
試作(企画・構想のプロトタイプを制作して試す作業)だけでも1年半〜2年くらいかかりましたね。 そのぐらい時間をかけて、今回の『モンスターハンターワイルズ』の目指すものが感じ取れるようにしていきました。

──同時の複数狩猟は従来シリーズであれば好き嫌いが分かれていたと思います。あえて大型モンスターの群れとの戦いを特徴として押し出す狙いは何でしょうか。また魅力的にするためにどんな工夫が込められていますか?

徳田氏:
本作では、自然の脅威、豊かさと、人間との関わり合いなどをしっかり描いていきたいというのをゲーム全般のコンセプトに据えています。特に自然の厳しさを描くうえで、今まで以上の危険性ってなんだろうと考えたときに、群れというアイデアが浮かびました。群れを実現していくために、過去作のように同時に登場させるとか、好き勝手行動させるのではなく、ある程度個々に動きつつも、群れとして違和感ない挙動を作るために、モンスターのAI自体を見直すことも多々ありましたね。

群れ自体は安全に狩りたければ単体でいる時を狙ったり、ひと手間かけて1体を誘導したりもできます。しかし、もっと上達すれば、スリンガーこやし弾や、大こやし玉をうまく使いこなしてモンスターを流砂に落としたりなど、さまざまな自然環境を利用していくことで、群れをも一網打尽にするようなプレイングができたりもする。そのように、環境が変化する中での一要素として、群れは非常に効果的ではないかと考え、今回実装しています。

──ゲームが進んだらモンスターの群れをコントロールできる手段も増えるのでしょうか?

徳田氏:
そうですね。プレイヤーの選択肢をできるだけ多く持てることを意識してデザインしています。例えば、ドジャグマの群れは、最初は群れからはぐれて一匹になったところを狩猟するしかない。しかしゲームが上達すれば、レ・ダウを連れていくことで一気に一網打尽にし、たくさん身入りを得るようなプレイスタイルも取れるように設計しています。


──あえて、強いモンスターを群れに連れて行ってパニックを起こすようなこともできるのですね。

徳田氏:
そうですね。ヌシだったり、アルシュベルドのような強力なモンスターには、高い利用価値があって、効果的に使えるように意識しています。

──本作から追加された簡易キャンプは、マルチプレイでの仕様はどうなっているのでしょうか?

徳田氏:
キャンプを置ける権利を持っているのはホストだけになります。なので、招かれたゲストのキャラクターはキャンプを置くことができません。 また、ホストが置くことができるキャンプの数にも限りがあるのですが、その個数自体はゲームを進行することで増えます。

また、個数上限に達すると、どこか別のキャンプを撤去しないと新しいキャンプを建てられないのですが、撤去自体はベースキャンプにそれらを取りまとめしているアイルーがいますので、そこから全体的なキャンプの管理を行うことができるようになっています。


──防具が男用・女用問わず装備できるようになった点は読者からも喜びの反応が多かったです(関連記事)。なぜこのタイミングで実装されたのでしょうか。また実装におけるエピソードなどあれば教えてください。

徳田氏:
これまでのように男性用、女性用で防具をデザインすると、「その装備パーツ好きなのに性別が違うから着られない」みたいなことが起こりますよね。そういうのをなくした方がどちらのデザインでもより有意義に活かせるだろうと考えました。両方のデザインをお互いが着ることができることで、ニーズも満たせるし、選択肢の幅も広がると思ったので本作にて実装しました。

今までは、内部デザインで男性の体系と女性の体系で骨格の作りが違ったので実装が難しかったんです。なので本作では、 最初から男女問わず装備できるような骨格の設計からスタートして、実装することができました。

──マルチプレイでモンスターに集中モードを使ってみんなで一斉に傷攻撃ができたら、一気に傷破壊できたりするのでしょうか。

徳田氏:
傷に関しては、たくさん破壊すると、傷破壊ボーナスというダメージ値自体は上がるボーナスがつきます。なので、傷ができ次第すぐに壊すというのもひとつのプレイングになりますし、いくつか傷を温存させて、一気に壊すことで大きな見返りを得るようなプレイスタイルもお好みで選べます。また、傷とは別にこれまでのような部位破壊も残しておりますので、尻尾を切って剥ぎ取ったりだとか、大きな角を破壊したりなども今まで通りできるようになっています。

部位破壊は、少し長めに攻撃して、狩猟の最後の方でやっと壊せたりするみたいなことが多いと思います。その爽快感や達成感を早く与えるために、傷という記号をつくって、短いサイクルで、今ここを狙うと良いですよというのをわかりやすくしました。これで狩猟自体を飽きにくく、ドラマティックに展開させていくことができるんではないかと考えて実装しています。


──集中モードのような難易度を下げるシステムはありながらも、本作の難易度をモンハンらしくしている工夫を教えてください。

徳田氏:
アクションゲームとしてのモンスターハンターの一番のキーポイントは、巨大で強大なモンスターの状態をちゃんと見極めながら攻撃を当てていって、最終的に協力しながら狩猟して達成感を感じていただくことだと思っています。しかし、難易度自体はカバーしたいので、何を難しいと感じるのか、 何は達成感と感じるのかみたいなところを分析していきました。例えば、集中モードでは、レティクルが出ることによってカメラの角度を合わせる操作の煩わしさが薄くなるところがすごく大きな利点かなと思っています。

アクションゲームを初めて遊ぶ方だと、角度も合わせ、位置関係も距離も合わせ、さらに自分の武器のレンジも合わせていくというのは、操作量も、考えることも多くなって難しくなる部分があるのかなと思いました。集中モードを実装することによって、 上級者は傷に対してより積極的なアプローチができ、初心者は角度を合わせることなく攻撃を当てられるような仕組みになるといいなと思って設計しています。

また、TPSやFPSを遊んでる方にとっても、レティクルが出ることによってより遊びやすくなるのではないかと思い実装しました。そういう遊びやすさの部分はしっかりフォローしつつ、難易度は『ワールド』をベースに、達成感を感じていただけるような難易度感を目指して、本作を制作しています。

──直近のトレイラーでイャンクックの復活が予告され、大きな反響を得ていましたが、感想を教えてください。

辻本氏:
やっぱり人気あるんだなと、僕たち自身も再確認したのと、日本だと先生という役回りが結構浸透してるんだなと思いました。ここまで浸透していたんだ……と(笑)いい反応がいただけたので、最後に入れてよかったなと思ってます。トレイラーを見てもらったらわかる通り、群れでの行動など、「本作ではどんな生態系をしているんだろう?」と、感じてもらえたと思います。


──イャンクックですが、過去作ではカラフルな色合いが特徴的でしたが、本作は落ち着いた色合いの印象を受けます。このように世界観に合うようなモンスターづくりで苦労したことはありますか?

徳田氏:
実はモンスターは、タイトルのコンセプトに合わせて色味を細かく変えています。 例えば『モンスターハンターライズ』はしっかり色を出していますね。逆に本作のモンスターは落ち着いた色味なんですけど、実は無印の方がもっと落ち着いた色味なんですよ。そのように各タイトルごと、どういった空気感で表現したいかに合わせ、いろいろ調整しております。

そのうえで本作は緻密に描いている部分が多いです。自然も緻密に描く分、モンスターも緻密に描かないといけないですよね。質感や、色味も、より自然に馴染むようにしています。とはいえ、イャンクックの印象的な色を感じてもらわないといけないので、 その辺りは注意して表現しています。

──ありがとうございました。

モンスターハンターワイルズ』はPC/PS5/Xbox Series X|S向けに2月28日に発売予定だ。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

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