「理不尽な難しさではなく、学んで攻略する2Dアクションを作れた」『Momodora 月下のレクイエム』開発スタッフインタビュー


近年、『オリとくらやみの森』や『Salt and Sanctuary』がヒットするなど、まだまだ手強い難易度の2Dアクションは人気を誇っている。2016年3月に発売された『Momodora 月下のレクイエム』も同ジャンル作品で、かわいい見た目とは裏腹に、敵の攻撃やトラップを受けるとすぐに死んでしまう歯応えのあるシビアさが特徴だ。シリーズ4作目となる同作は、過去の3作と比べてもよりダークでハードな内容となっている。

今回、『Momodora 月下のレクイエム』のデベロッパーBombserviceがBitSummitのために来日しているということで、AUTOMATONと運営元が同じであるPLAYISMの協力もあり、Guilherme “rdein” Martinsを中心とした開発メンバーに話をうかがうことができたので、その内容をお伝えする。

 

左からディレクターのGuilherme "rdein" Martins氏、プログラマーのSteven "PKBT" Chai 氏、左から3人目がアニメーターのHernan "hammu" Zhou氏、4人目が作曲の"Gav"氏。黄色いTシャツはPLAYISMスタッフ。
左からディレクターのGuilherme “rdein” Martins氏、プログラマーのSteven “PKBT” Chai 氏、左から3人目がアニメーターのHernan “hammu” Zhou氏、4人目が作曲の”Gav”氏。黄色いTシャツはPLAYISMスタッフ。

――まずは『Momodora 月下のレクイエム』(以下、Momodora 4)の発売おめでとうございます。Steamレビュー欄も高評価ばかりで日本も含めて世界中で高い評価を集めていますが手ごたえはどうですか?

高評価をいただけるゲームを出したということだけですごく満足しています。高評価自体が次回作の開発のモチベーションにも繋がるし達成感が大きいです。
――今作は高い難易度で有名です。回復の仕様なども似ていて『DARK SOULS』的だという声もあります。難しさへのこだわりというものはあるのでしょうか。

難しいというよりは、初めコントロールがわからないところから、徐々に慣れさせていくんです。アイテムも数は限られていますがセーブポイントに行けば全回復しますし理不尽な難しさではないですね。何度もやり直してボスや敵の場所を覚えていける。ただ単に難しいといわれるのはちょっと違うかなと思います。ユーザーに、学んで攻略する体験を与えたかった。
――『Momodora 4』はセーブポイントがそう頻繁にあるゲームではありません。こういったデザインでありながら、棘に当たると一発で死ぬゲームは最近では珍しいと思うのですが、中々思い切ったデザインだと感じました。

まあ、それはロックマンがやってますからね(笑)

 

BitSummitでは子どもから大人まで、幅広い層のユーザーが赤い棘の苦しみを味わっていた。
BitSummitでは子どもから大人まで、幅広い層のユーザーが赤い棘の苦しみを味わっていた。

――(笑)そういった点で、Momodoraはさまざまな作品のエッセンスが感じられますが、他の作品からの影響は強いのでしょうか。

まず、『洞窟物語』が一人で作られたということが信じられなかったんです。遊んでみたら面白くて完成度も高くて、やっぱり信じられない。でも、本当に一人で作ったのなら自分にでもできるんじゃないかと考えると嬉しくなって、そういった喜びからゲームを作り始めました。今まで遊んできた『メトロイド』だったり『悪魔城ドラキュラ』とか、最近だと『ダークソウル』も面白かったので、エッセンスが入っています。あと、『Momodora』シリーズは作品ごとにすべて違うチームで作っているので、チームごとの特徴が出る場合がありますね。
――これまでの『Momodora』3作品はゲームスピードが速かったですが、今作は戦闘テンポがゆっくりになって緊張感が生まれました。どういった経緯でこうなったのでしょうか。

『Momodora 4』では「攻撃している感覚」というのを大事にしています。ひとつひとつの攻撃を慎重に繰り出すようになっていくと、それが結果的に面白くなっていくんです。ボタンの連打というのはなるべくしないようにした方がいいと感じました。『ダークソウル』を遊んでからは、緊急回避も加えました。敵のタイミングを図る必要がある緊張感が『Momodora 4』の特徴ですね。
――テンポがゆっくりになったとはいえ、のんびりしていると後ろから急に敵に攻撃されるというメリハリがありますよね。ゲームテンポの工夫はされたのでしょうか?

意図したというよりは自然になりました。プレイヤーを驚かせようと思ったら、たまたまそうなったという感じです。基本はゆっくりめですが、そういうシーンばかりでもないです。たとえば教会のボスバトルは全然スローではないですし、基本的に激しい攻撃の応酬も多く、素早い操作を求められる場面も多いですね。
――驚かせるといった点も含めてプレイヤーに刺激を与えることは常に意識されているように感じます。

刺激というのもゲームのコアとなるアイディアのひとつですね。それらに合わせて、難易度の上昇、イージーからクレイジーまでを徐々に考えてレベルデザインして、敵の攻撃や配置、セーブポイントなどもちゃんと考えてデザインしています。
――2Dアクションは歴史の古いジャンルですが、今でも人気がありますよね。さまざまな2Dアクションを遊ばれて研究されてきたように感じます。

ゲームが生まれた時期から、ファミコンにスーパーファミコン、PCエンジンととにかく色々なゲームをやってきました。2Dにかぎらず3Dアクションなど多くのゲームをプレイしてきましたね。
――最近でもたくさんの2Dアクション生まれてきています。他のタイトルとは違う『Momodora』のならではのポイントはなんでしょうか。

木の葉を武器にして戦うとか、色々なユニークな要素を考えて入れているところですね。すごく戦闘に力を入れている2Dゲームってあまり多くないので、その点もポイントになっていると感じます。あとはボス戦がすごく緊張感があると思います。音楽などでゲームを盛り上げる演出もそうですね。キャラクターひとりひとりも凝っているし。バックストーリーなどもあいまって、全体的にユニークさが際立っているゲームにできたんじゃないかなと思っています。

 

全体的に暗い雰囲気もあいまって、常に緊張感が生まれる。
全体的に暗い雰囲気もあいまって、常に緊張感が生まれる。

――『Momodora 4』では終末感があって暗い作品になっていると思うのですが、この世界観はどのようにして生まれたのでしょうか?

『Momodora 4』は123よりも前の話なので、今作で世界を救ったおかげで123では世界が終わっていないんです。
――なるほど。なぜ4では123以前の話にしようと思ったのでしょうか。

『Momodora』の123では4の主人公のカホが出てくるんですけど、石像として奉られているので、宗教みたいになってるんですよね。それでカホの活躍を描いてみたらどうだろうっていうのがきっかけでした。
――そういったことを聞くと、歴代シリーズを日本語で遊びたくなりますね。今のところ日本語があるのは4だけですが123のローカライズの計画はありますか?

1と2は特に古いのでエンジンも古いし、言語の追加を考えていなかったので作り直さないといけないことになる。やりたいけどちょっと難しいかな。
――反響も大きくモチベーションも上がったということを聞いて次回作を待ち望むユーザーも多いと思うのですが、次回作のアイディアなんかは生まれはじめていますか?

秘密です(笑)
――期待しています(笑)では最後に改めて日本のユーザーに『Momodora 4』の魅力を語ってください。

『Momodora 4』は2Dアクションゲームで、特にゲームだけではなくアニメや漫画といった日本文化に影響されたゲームです。なので、そういったものが好きで、ドラキュラやメトロイドのようなアクションが好きな方には特に楽しめるゲームだと思います。
――ありがとうございました。
『Momodora 月下のレクイエム』は今後PLAYISMから、コンシューマーゲーム機でも発売される予定とのこと。