プロデューサーが語る『Hearthstone』の魅力、Blizzardが重視するプレイヤーの“体験”、そして日本に対する想いとは

Blizzard Entertainmentが手がける『Hearthstone(ハースストーン)』日本語版の発表から数日後、同作のエグゼクティブ・プロデューサー、ハミルトン・チュー(Hamilton Chu)氏にインタビューをおこなった。イベントの感想から、日本で流れるあの噂まで、さまざまな話をうかがった。

Blizzard Entertainmentが手がける『Hearthstone(ハースストーン)』日本語版の発表から数日後、同作のエグゼクティブ・プロデューサー、ハミルトン・チュー(Hamilton Chu)氏にインタビューをおこなった。イベントの感想から、日本で流れるあの噂まで、さまざまな話をうかがった。

 

――10月3日(土)のイベントの感触はいかがでしたか。

ハミルトン・チュー(Hamilton Chu)氏:
とても反応はよかったと思ってます。来てくれた人たちは、わたしたちが日本に本格的に入っていくということでとてもエキサイトしてくれましたし、カードに関してもゲームに関しても、評価は非常に良かったと思っています。あとイベントの開始前に、Kno選手が非常にいいゲームプレイをしてくれたので、それによってイベントも勢いが出てきたかなと思ってます。

特に、すでに『Hearthstone』を遊んでいるプレイヤーが、友達を誘って一緒に遊びやすくなるということを本当に喜んでくれていました。

ハミルトン・チュー(Hamilton Chu)氏。日本語版が発表された『Hearthstone』だけでなく、『World of Warcraft』のマネジメントも手がけている。
ハミルトン・チュー(Hamilton Chu)氏。日本語版が発表された『Hearthstone』だけでなく、『World of Warcraft』のマネジメントも手がけている。

――『Hearthstone』の日本語化はいつごろから計画されていたのでしょうか?また、日本でサービスを開始しようと思ったきっかけとは?

チュー氏:
いつから日本語版の計画を開始したかという具体的な日付けは覚えてないですね。ただ、ずいぶん前から、日本向けのものを出していきたいというアイデアを持って進めていました。そのなかで、どうせ日本語バージョンを出すのであれば、ただ単に直訳ということではなく、しっかりと日本の文化も考慮した上で、日本の人たちに合うようなものを出さなければならないと考えていたんです。すでに『Hearthstone』をプレイしている方はご存知だと思うんですけども、独特のユーモアというのもありますし、そういうものを日本語でもしっかりと反映するということが必要になると考えてました。とくにこの部分に関しては、十分な時間を取って進めてきました。

やはり日本の市場というのは、わたしたちは非常に重要な市場だと考えています。ゲームも盛んですし、文化的にもそうです。特にわたしたちのようなギーク(オタク)のような人間にとってとても面白い国だということもありますので。

 

――日本語吹き替えは正直ビックリしました。すごいクオリティだなと。声優さんはどうやって選んだのでしょうか。とても苦労されたんじゃないですか?

チュー氏:
すごいと言ってもらえて、とても嬉しいです。日本語だけではなく英語でもそうなんですが、やっぱりベースが重要なんです。それぞれのキャラクターの個性を考えて、ぴったりと当てはまる人選というのを心がけています。幸運なことに、日本のローカライゼーションのチームや素晴らしいパートナーの方と一緒に仕事をできたので、その点に関しては問題なく達成できたかなと。すごいと言ってもらえて、本当に嬉しいです。

 

――日本の『Hearthstone』プレイヤーは数十万人いるとのことですが、これは世界で何番目に多いですか?

チュー氏:
ローカライズする前からたくさんのプレイヤーに遊んでもらって、本当にとても嬉しく思ってます。申し訳ないですけど、日本の(プレイヤー数の)順位に関する情報は共有できません。これから日本語版が登場するということで、どんどん日本のコミュニティが成長するということを楽しみにしています。

 

――『Hearthstone』はPCとiOSとAndroid、複数のプラットフォームで遊べますよね。どのプラットフォームが一番多いですか?

チュー氏:
地域によって違うということもあると思いますが、これも申し訳ないですけど、どのプラットフォームが一番使われているかに関してのデータは共有できません。わたしたちが重視しているのは、どのプラットフォームを使うにしても、プレイヤーの“体験”に一貫性を持たせることです。『Hearthstone』のプレイヤー同士で話をすることがあると思いますが、そのときに、「君はモバイルでやってるの?PCでやってるの?」というような話は出てこないですよね。それは、“体験”に違いがないからだと思っています。プレイヤーがなにを使っているかにかかわらずゲームを楽しんでいくということを重視しているんです。

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――いま、日本語版『Hearthstone』の事前予約キャンペーンがおこなわれています。すでに現在『Hearthstone』をプレイしている人でも、事前予約キャンペーンに参加してカードパックを貰えるのでしょうか?

チュー氏:
はい。わたしたちはすべてのプレイヤーが重要だという風に考えているので、既存のプレイヤーもここで事前に登録していただき、ぜひ無料カードパックを手に入れてもらえればと思っています。

 

――日本語版はいままでの英語版とはクライアントが別になるのでしょうか?それともアップデートで対応して、プレイヤー自身が日本語と英語を切り替えられるという形になるのでしょうか?

チュー氏:
同じクライアントですね。なので、プレイヤー自身が切り替えできます。日本語にするか英語にするか、韓国語にしてもいいんですけども、切り替えできますよ。

 

――たとえば日本語を選んだ場合、いままでと同様にアメリカ・ヨーロッパ・アジアからサーバーを選択できますか?

チュー氏:
はい。言語とサーバーの地域も自由に選択が可能です。

 

――アメリカサーバーでプレイしていたプレイヤーも、日本語版をプレイする場合にはアジアサーバーを選ばなければならないという噂を耳に挟んだのですが、そうではなく自由なんですね。

チュー氏:
ええ、その噂は違いますね。既存のプレイヤーは引き続き今まで使ってきた北米のサーバーをそのまま選択できます。

 

――日本語版のリリース時期は今月の後半のようですが、これはiOS/Android/PCすべて同時にリリースされますか?

チュー氏:
はい、同時にリリースしますよ。わたしたちは『Hearthstone』のコミュニティを重要視していて、そのなかにはいろいろなプラットフォームを使うプレイヤーがいますので、同時にリリースするんです。なにか新しい試みをするとき、たとえば「酒場の喧嘩」に関しても、時差が数時間あったとしても世界中で同時に展開をします。

 
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――声優吹き替えは素晴らしかったです。ただ、日本人のなかには、映画などで英語音声・日本語字幕を好む人も多いのではないでしょうか。日本語版『Hearthstone』は音声のみを英語にして、テキストを日本語という組み合わせはできますか?

チュー氏:
おっしゃっていることはわかります。わたしも日本の番組や映画を見るときは、日本語音声と英語字幕で見るので、その気持ちはわかりますよ(笑)でも、いまのところは日本語の吹き替えと日本語の翻訳ということになります。

わたしたちが常に考えているのは、「いかにシンプルにするか」ということなんです。なにかを提供する場合、まず、多くの方にとって良いものであるかを重要視しています。そうなると、やはりユーザーインターフェイス自体をすっきりさせるということも重要になります。それをベースに考えて進めました。

 

――ゲーム自体は日本語に対応しますが、パッチノート・カスタマーサポート・公式フォーラムなども日本語に対応するのでしょうか?

チュー氏:
パッチノートは対応していこうと考えています。コミュニティフォーラムに関しては、日本市場担当のコミュニティマネージャーを置きますので、この方が日本のフォーラム自体を管理していきます。公式の英語フォーラム自体をすべて日本語に翻訳するということではなくて、日本語のコミュニティマネージャーが、ユーザーが必要な内容を日本語で提供するということになります。あとカスタマーサポートに関しても、日本語で対応する方を用意します。電話ではなく、eメールでの対応になります。

 

――公式フォーラムへの投稿では「ブルーポスト(Blizzard社員による公式投稿)」も人気で情報も有意義ですが、これも日本語で伝えられるでしょうか?

チュー氏:
「ブルーポスト」に関しても、その国に関連しているものであれば、その国の言語で対応していきます。

 

――日本はカードゲーム大国であり、『MAGIC: THE GATHERING』や『遊戯王』などが人気です。それらの作品と比較して、『Hearthstone』ならではの魅力はどこにあるのでしょうか?

チュー氏:
わたしたち『Hearthstone』のプロジェクトに関わったメンバーは、本当にもう小さいころから『MAGIC: THE GATHERING』や「遊戯王」などを何十年間もプレイしてきたメンバーで、カードゲームに対する思いが強いです。なのでわたしたちが『Hearthstone』を作るにあたって、まずはそういう自分たちが今まで楽しんできたカードゲームの醍醐味を入れようと考えました。そして、より多くのプレイヤーにカードゲームを楽しんでもらうためにはどうすればいいかを考えました。というのも、カードゲームによってはルールが複雑なものもあり、ハードルが高いものもありますよね。なので、「より多くの人が楽しめる」ように考えました。

わたしたちがゲームを作るときに、たとえば競合タイトルと違う点を4つ作ろうじゃないかという考え方はしていません。カードゲームのコアとなっている楽しい部分、その楽しいところを自分たちの作るものにも取り入れて、今までの既存のカードゲームのプレイヤーだけではなく、やったことがない人でもとっつきやすいゲームを作りたいという思いから始まりました。

 

――Battle.netの表記が一部日本語になっていたり、今年の夏には日本語ローカライズのアソシエイトマネージャーの募集があったり、Blizzardのタイトルが日本で展開される可能性を感じていました。これは『Hearthstone』にあわせた動きだったのでしょうか?

チュー氏:
日本語版をリリースするためには、やはりいろいろな作業が必要です。『Hearthstone』を日本でリリースするためのプロセスの一環として、そういうことを進めてきたということですね。

 

――最近だと『Heroes of the Storm』がリリースされ、今後は『Overwatch』が予定されています。それらが日本語に対応する可能性はありますか?

チュー氏:
この件に関して、わたしの担当ではないのでコメントを差し控えさせてください。日本のコミュニティに対してよりよいものを提供し、積極的に相互関係を築けていけたらと思っています。

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――『Diablo』シリーズを除くと、長い間Blizzardは日本と薄い関係でした。日本国内では「Blizzardは日本のことが嫌い」というジョークもあるんです。実際どうですか?もしかして、僕たちの片思いなのかなって……。

チュー氏:
(笑)日本のことは本当に大好きですよ。アニメもゲームも日本で生まれるものは大好きです。Blizzard自体も日本のことが大好きですし、日本のみなさんの片思いってことはないです。Wii U、毎日プレイしていますよ(笑)

 

――Blizzardの社員や社内のあいだで、日本のゲームが話題になることってありますか?

チュー氏:
常にですね。常にゲームの話をしているので、当然ながら日本のゲームも話題にあがります。『牧場物語 つながる新天地(Story of Seasons)』とか、これとっても難しいゲームだと思うんですけどね。あと『マリオメーカー』とか……

Blizzard APAC&PR 担当者:
『チューチューロケット!』は……?

チュー氏:
(笑)『チューチューロケット!』はよくプレイしているよ。あれをやらないとゲーマーとは言えないと思うけど、彼ら(Blizzard APAC&PR 担当者)はプレイしたことがないんだよね(笑)

 

――CMもすごくよかったですよね(笑)

チュー氏:
CMは特にすごかったよね!ちょうどいま頭のなかであの曲が流れてるよ(笑)
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――Blizzardは、ほかのデベロッパー・パブリッシャーと少し違った社風がありそうなんですが、実際にはどうですか?たとえば毎朝「For the Horde!」って叫んだり、社員規則に「Time is Money」って書いてあるとか。

チュー氏:
(笑)これは個人的な意見だけど、おそらく「For the HORDE!」と言ってる回数はほかの会社と比べたら圧倒的に多いと思うよ(笑)毎朝言っているかどうかわからないけどね(笑)みんなで会うことも多いし、とくに好きなのは、Blizzardの社員みんながゲームプレイヤーでゲームを大好きだということだね。CEOのマイケル・モーハイム(Michael Morhaime)ですら、会えばまず10分か15分ぐらいは昨日の『Hearthstone』のプレイはどんな感じだったかということを話したり、あとはトーナメントの話をするよ。そういう社内の文化はとても気に入っているし、これからも大切にしたいと思ってる。

おっと、もちろんAlliance(注1)のプレイヤーとは話さないよ(笑)

 

――BlizzardはTroll(注2)に対して冷たいという印象があります。『World of Warcraft』でのTrollの家はすごくボロ屋で、『Hearthstone』や『Heroes of the Storm』にはヒーローとして登場しません。なぜTrollに冷たいんですか?

チュー氏:
(笑)Trollでも素晴らしいヒーローはいますよ。「Vol’jin」もかなり偉い立場だし……。

Blizzard APAC担当者:
『Hearthstone』に『Vol’jin』のカードがあるんですけど……すごくイイカードだと思いますよ……?

 

――でもヒーローじゃないですよね……

チュー氏:
たしかにそうですね……えっと……検討しておきます(笑)でも彼はレジェンダリーですけどね(笑)

 
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――日本では過去に『Warcraft III』の日本語版が発売されました。しかし今はもう販売が終了しており、簡単に手に入らない状態です。ですから「Warcraft」の世界を日本語で学ぶ手段がほとんどありません。日本人が「Warcraft」の物語を知るためのプランは考えられていますか?

チュー氏:
『Hearthstone』は、まったく新しいユーザーも、既存のカードゲームに慣れている人も楽しめるというコンセプトで設計されています。なので、『Hearthstone』をプレイしながら世界観を学ぶということも十分に可能だとは思いますね。Blizzard社としては、特になにか学べるような情報を出したりすることはないですが、知らない人でもプレイしながら十分学ぶことが可能だと思います。

あるいは『Hearthstone』のコミュニティからの情報がすごく活用できるんじゃないかと思っています。フォーラムでは定期的にいろいろな話をしていて、さまざまなユーザーが使える情報が投稿されています。カードの歴史とかもありますよ。そういったコミュニティ内の面白い話から、お互いに情報を共有しあうことができるんじゃないかなと思ってます。

 

――ありがとうございました

 

注1: 「Warcraft」シリーズでHordeと敵対する派閥
注2: 「Warcraft」シリーズに登場する種族

 

[聞き手: Shinji Sawa・Douglas Watt]

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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