『プロジェクト・ニンバス』国内パブリッシャーGameTomo。日本に惚れたアメリカ人CEO、世界のインディーゲームを日本へ運ぶ

BitSummit 4thの会場で、『プロジェクト・ニンバス(Project Nimbus)』の日本国内パブリッシャー株式会社GameTomoに、短時間ながらお話をうかがった。CEOはアメリカ人のReece Scott氏。日本に住んで4年が経過する氏は、日本のアニメやゲームといったコンテンツと、日本人に惚れたという。

『プロジェクト・ニンバス(Project Nimbus)』は2014年11月6日に早期アクセスとしてSteamでリリースされたロボットアクションゲーム。日本のロボットアニメやロボットゲームの影響を強く受けており、それらを好きな人であれば、トレイラーを見ただけでも親近感がわくだろう。長い間英語のみの対応だったが、2016年6月28日に待望の日本語が追加された。なおAUTOMATONではプレビューを掲載済。

BitSummit 4thでは、残念ながら開発元であるGameCrafterTeamは来日していなかったのだが、日本国内でのパブリッシングをつとめる株式会社GameTomoがブースをかまえ、『プロジェクト・ニンバス』を出展していた。早期アクセス開始から1年半が経過しているということもあってか、ブースではつねに誰かがプレイしているという状況だった。

短い時間ではあったが、『プロジェクト・ニンバス』のパブリッシングについてGameTomoにお話をうかがった。


――GameTomoさんはいつ設立されたのでしょうか。

GameTomo CEO Reece Scott氏:
立ち上げたのは去年の8月です。
――もうすぐ1年ですね。Scottさんはそれまで日本にお住まいだったんですか?

Scott氏:
はい。今で4年間日本に住んでいまして、その前にも1年間の日本留学を経験しています。
――ということはScottさんは日本が好き?日本の何が好きですか?

Scott氏:
もちろん好きです。アニメとかゲームとか、あとは日本人ですかね。
――Scottさんが一番好きな日本のアニメ、そしてゲームを教えてください。

Scott氏:
アニメはロボット系ではないんですけど「ヨルムンガンド」が好きです。ゲームだと『エースコンバット』が大好きですね。あと最近は『艦これ』もやってますよ。

 

印象的だったワンシーン。CEOみずからビンゴシートにパンチで穴を開ける。日本人の「思いやり」に惚れたScott氏は、「思いやり」を忘れない。
印象的だったワンシーン。CEOみずからビンゴシートにパンチで穴を開ける。日本人の「思いやり」に惚れたScott氏は、「思いやり」を忘れない。

――Scottさんが『艦これ』を遊んでいる姿はイメージできないです(笑)。日本人のどういうところが好きなんですか?

Scott氏:
いろいろあるんですけど、一番はやっぱり「思いやり」ですかね。
――Scottさんの母国アメリカの人たちとは「思いやり」が違いますか?

Scott氏:
人にもよりますけど、アメリカは多民族国家です。日本は日本人が圧倒的に多いじゃないですか。だから「思いやり」がある人がとても多く感じられます。また、日本人は完璧を目指そうとする考え方が素晴らしいと思います。
――Scottさんは今までゲーム関連のお仕事をされてきたんですか?

Scott氏:
いえ、GameTomoが初めてです。GameTomo設立の前は、愛知県の自動車関連の会社で働いていました。あとはイギリスにも留学もしましたし、大学で働いたこともあります。
――『Project Nimbus』の海外パブリッシャーであるKISS.ltdはイギリスでしたよね。Scottさんがイギリスに留学されたときに交流が生まれたんですか?

Scott氏:
留学のときではないです。わたしたちが『Project Nimbus』に惚れてからKISS.ltdに連絡をしました。
――ゲームと離れたお仕事をされていたんですね。それなのにGameTomoを設立した理由は?

Scott氏:
ずばり「ゲームが好き」だからですね。
――なるほど、好きという気持ちは大事ですからね。ではなぜGameTomoにとって最初のパブリッシングタイトルに『Project Nimbus』を選ばれたのでしょうか?

Scott氏:
『Project Nimbus』はゲームプレイを見ていただくとわかると思うんですが、タイに住んでいる開発者(GameCrafterTeam)は、日本のロボットアニメやロボットゲームのことが大好きで、日本に対する愛を感じることができます。この作品は日本のユーザーに合うだろうと感じ、こちらからコンタクトをとりました。

 

プレイ画面を凝視するScott氏。プレイヤーの反応はもちろんのこと、不具合がないかもしっかりチェック。
プレイ画面を凝視するScott氏。プレイヤーの反応はもちろんのこと、不具合がないかもしっかりチェック。

――タイの開発者さんとは頻繁に連絡をとられるんですか?

Scott氏:
そうですね。Skypeでよく会話をしますし、提案をすることもあります。
――早期アクセス開始から約2年が経ちますが、積極的にアップデートされていますね。何人ぐらいで開発されているんですか?

Scott氏:
タイのプログラマーひとりと、数人のデザイナーです。
――プログラマーさんはひとりですか。インディーらしいですね。GameTomoさんが感じるインディーの魅力を教えてください。

Scott氏:
ひとりでもふたりでもそれ以上でも、少人数でゲームを完成させるために努力する、夢がかなうように突き進むというのは、まさにインディー魂だと思います。インディー魂は、いわゆるアメリカンドリームに近いです。そこに魅力を感じますね。

GameTomoマーケティング部長 高谷翔平氏:
インディーは少人数なので、フィードバックをダイレクトに取り入れやすいです。大規模なプロジェクトだと、ひとりひとりに声が行き渡りにくいですよね。声が届きやすいからこそ、消費者の声も大事にできる。それもインディーならではの魅力だと思います。
――さきほど日本の好きなところをお聞きしましたが、逆に日本の好きになれないところを教えていただけますか?

Scott氏:
この質問に回答するのはとてもプレッシャーを感じますね(笑)。
――(笑)。よく聞くのは、「満員電車が苦手」でしょうか。

Scott氏:
(笑)。決まりごとが多いということですかね。「こうしなければダメ、なぜなら決まりごとがあるから」というような。そういうのは苦手ですね……。でも、私の考えでは、決まりごとがあるからこそ、日本には安全で平和な社会があるんだと思います。
――なるほど、やけに納得してしまいました。GameTomo第一弾として『Project Nimbus』をパブリッシングされましたが、次のタイトルはもう決まっているんですか?

Scott氏:
いろいろ出したいというのはあるんですけど、まだまだこれからですね。まずは『Project Nimbus』に集中したいです。
――パブリッシャーとしてのGameTomoさんの強みとは?

Scott氏:
弊社は複数の国籍のスタッフがいますので、複数の文化に理解がありますし、複数の考え方を持っています。普通だとバラバラになってしまいがちですが、わたしたちは「調和」を大切にしながら働いていますので、複数の文化や考え方がうまくまとまっています。
――パブリッシャーとして働いていてよかったと感じるのは、どういうときですか?

高谷氏:
これは僕の意見なんですけど、今日(BitSummit)みたいに、実際に『Project Nimbus』をプレイしてくれる人、興味を持ってくれる人の生の声を聞けるときですかね。
――Scottさんはどうですか?

Scott氏:
わたしも同じで、BitSummitの来場者のみなさんが『Project Nimbus』を遊んでくれて、そして笑顔を見れたとき、よかったと感じました。
――パブリッシングにはお金がかかります。タイトルを決めるときに、「本当にこのタイトルに懸けていいのか」といった迷いや不安もあると思います。『Project Nimbus』を決めたときはどうでしたか?

Scott氏:
開発者の日本に対する愛が、ちゃんと日本のユーザーに伝わるのかどうかといった不安はありました。でも、今日のみなさんの反応を見て安心しました。
――BitSummit出展の収穫は大きそうですね。アニメ化などマルチな展開をしても面白いかもしれませんね。

Scott氏:
いいですね。できればやってみたいです。

高谷氏:
なんとも壮大な夢ですね(笑)。
――(笑)。でも、トレイラーの評判がすごく良かったじゃないですか。日本のアニメっぽくて。あれはどこで作られたんですか?

Scott氏:
(GameTomoのプログラマー渋谷氏を指して)じつは、この方が作りました。


――社内でおひとりで作られたんですか?

GameTomoプログラマー 渋谷啓太氏:
はい。前職がVFXアーティストだったので、その経験を活かして作りました。「やってみる?」「やってみます」というようなノリで。小規模なパブリッシャーなので、インディーならではといいますか。
――てっきり外注されたんだと思っていました。渋谷さんをうちに引き抜いていいですか?

Scott氏:
ダメです(笑)。
――ですよね(笑)。

渋谷氏:
『Project Nimbus』を日本のユーザーにどのようにして伝えればいいかを考えたときに、似た作品などの特徴などを調べ、参考にしながらトレイラーを作りました。おかげさまで再生回数も大きく伸びて、ユーザーさまのニーズに合ったものが出来上がったと思います。
――日本語版をリリースされましたが、日本のプレイヤーの割合はいかがですか?

Scott氏:
日本のユーザーは平均で全体の15%前後を占めているので、インディーゲームにしては高い数字かと思います。第1章・2章のリリース直後にいただいたフィードバックに感謝しています。
――日本のユーザーに受け入れられているようですね。最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。

Scott氏:
『Project Nimbus』を購入していただき、まことにありがとうございます。今後リリースされる第3章に期待してください。もしフィードバックがあれば、遠慮なくわたしたちのTwitterに連絡してください。

今日のBitSummitで遊んでくれたお客さんの中には、『アーマードコア』や『エースコンバット』などのファンの方が多かったんです。でも、それらの最新作は最近だとなかなか出てこない状況です。それもあってか、『Project Nimbus』はタイのゲームなんですけど、日本のアニメやゲームが持つ要素をうまくとらえていると言ってもらえて、とても好評でした。

こう言うと失礼かもしれないですが、海外のゲームだと、なかなかそういう日本のロボットゲームのエッセンスを取り入れることがうまくいってない印象があります。でも『Project Nimbus』にかんしては、開発者がそういう要素をしっかり理解していて、デザインも日本のユーザーさんに気に入ってもらえるように考えています。タイだからという違和感はないですし、『アーマードコア』や『エースコンバット』のファンの方にも気に入ってもらえるんじゃないかなと思います。
――ありがとうございました。

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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