『ファイナルファンタジーVII リバース』PC版開発者インタビュー。「PCゲーマーの遊び方」をできるだけ尊重する、新しい『FFVII』リメイクシリーズの届け方

スクウェア・エニックスは1月23日、『ファイナルファンタジーVII リバース』のPC版をSteamおよびEpic Gamesストアで発売する。気合いが入っているよう見えるPC移植に関して、プロデューサーの北瀬佳範氏と、ディレクターの浜口直樹氏に話を訊いた。

スクウェア・エニックスは1月23日、『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、FF7リバース)のPC版をSteamおよびEpic Gamesストアで発売する。『FFVII リバース』は人気作『FFVII』をフルリメイクする『FFVII』リメイク三部作シリーズの第二作目だ。昨年2月にPS5で発売され、レビュー集積型サイトMetacriticのメタスコアでは94を獲得。2024年の各アワードでもノミネートおよびアワードを獲得した作品。同作がついにPCで発売されるわけだ。

前作『FFVIIリメイク』よりも早いタイミングでPC展開されるほか、さまざまなPC向けオプションや高グラフィックを収録するなど、傍目から見てもかなり気合いが入っているよう見えるPC移植。キーマンであるプロデューサーの北瀬佳範氏と、ディレクターの浜口直樹氏に話を訊いた。


―― 自己紹介をお願いします。オリジナル版ではディレクター・プロデューサーという立ち位置でしたが、お二方はPC版にはどのように携わっていますか。

北瀬氏:
プロデューサーの北瀬です。基本的にはオリジナル版と同じ立ち位置で携わっておりますが、浜口をはじめとした主力メンバーが育ってきたところなので、全体を俯瞰しつつ、大枠の部分での監修を行っています。共同プロデュースもしてもらっているので、最終的な全体の舵取りが正しい方向に向かっているかを見ているような感じですね。


浜口氏:
ディレクターの浜口です。PCへの移植は同じチームのなかで、3部作目の制作と並行して進行していました。私は現場のディレクターとして両タイトルの開発リソースを見て、人員の采配や作り込みのディレクションを担当しています。


――『FFVIIリバース』は、数々のアワードにノミネートされたりアワードをとったりなど評価面で結果が出ています。発売前の期待や不安と、実際出た評判にはギャップはありましたか。

浜口氏:
おおよそ想定どおりでした。開発作業が形になっていったときに、手応えが非常に大きかったので、良い評価はいただけるだろうと感じていました。リリース時に想定外の反応はほとんどなく、狙ったとおりのものがユーザーに届いたと思っています。

The Game Awardsでも多くの部門にノミネートしていただいて、それが最多ノミネーションゲームとして話題にもしていただいて、本当に喜ばしいことだと感じています。作ったものが評価されるのは嬉しいことですからね。受賞できるかどうかというのはタイミングもあるのですが、三部作が出揃ったときにさらにもう一歩進んでいけたらいいなと思っています。


――北瀬さんはいかがでしたか。長いことゲームの発売や開発を見てきたと思いますが、『FFVIIリバース』に対してはどんな感触だったのでしょうか。

北瀬氏:
『ファイナルファンタジー』の歴史はファミリーコンピューターから始まりましたが、当時のハードスペックの限界があったゆえに、絵的な表現を記号化することで世界全体を冒険するゲームが成立していました。近年になってマシン性能が上がり、グラフィックが緻密になってくると、むしろ広い世界が作りきれなくなってきていました。『FFX』からは世界全体を旅することを諦めて、個別の地域にフォーカスして描くようになっていたんですね。

ですが、『FFVIIリバース』では世界全体をリアルに旅するところに戻ってきた。それがとても良かったですね。それでいて、オープンワールド的なタイトルでありがちな「広いフィールドに投げ出されて、どうしたらいいかわからない」というところがなく、迷わないように設計されている。コンテンツの密度がしっかりと揃っているかつ、間延びしないように作られている。自由度の高さと目的の明確さが両立しているところが良いな、と感じています。


――お二人とも評判は予想どおりだったとのことですが、発売後のユーザー反応のなかで、意外に感じられたものはありましたか。

浜口氏:
原作自体が非常にミニゲームが多いタイトルなので、『FFVIIリバース』においてもミニゲームは比較的多く取り入れてきました。そうするとコンテンツが多くなるので、ユーザーによって合う合わないが出てくると思います。その点について、作り手としては「自分が楽しいと思うものを、楽しいと思う深さまでプレイしてもらえればいいかな」と考えていたんです。全部をしっかりコンプリートしたいというユーザーにとっては大変だったのかなと感じる意見もありました。ミニゲームが多いということは、その都度思考を変えないといけないということなので……。

ただ、『FFVIIリバース』のコンセプトとしてはワールドマップにいろんなものがあって、次から次へと何がやってくるだろう、とワクワクしてほしいなという狙いがあったので、そういう意味ではいろんな声があがるのは狙いどおりだったのかもしれません。

――原作の色を踏まえると、ミニゲームの量のちょうどよさの塩梅を探るのは難しそうですが、賛否出たことも踏まえて納得されてるんですね。


PC展開は精鋭チームでギアを上げて進めた

―― ここからは『FFVIIリバース』のPC展開について詳細を教えてください。今回のPC移植はスピード感もあり、追加要素など含めて技術的な挑戦もある認識です。社内に特化したPC移植チームがいるのでしょうか?

浜口氏:
基本的にはPS5版『FFVIIリバース』を開発したチームと同じメンバーで移植作業をしているので、社内に移植チームのようなものが別にいるわけではありません。なので、チーム内でPC版の移植を担当してもらったり、三部作目の開発を担当してもらったり、兼務してもらったりを采配していました。

―― なるほど。PC版展開がスムーズそうに見えるのは、PS5版にも携わったスタッフが投入されているからであると。

浜口氏:
『FFVII』リメイク三部作の開発チームはノウハウの蓄積もあって経験値が高いチームで、だからこそ開発と兼任しながら移植作業もすることができている部分はあるかもしれませんね。このシリーズに限らず、今後のゲーム市場では特定のハードに絞って開発していくのはビジネス的に非常に難しくなっていくと思います。開発チーム全体として、ひとつのハードだけを見て開発するのではなく、さまざまなハードを意識してものづくりをしていかないといけない。その感覚をチームに根づかせたかったという気持ちもありますね。


―― The Game Awardsでアワードを獲って話題になったところでの発表で、時期もちょうどよい感じでしたよね。このタイミングは狙っていましたか?(笑)

北瀬氏:
プロデュースサイドとしては、開発の着地が見えたあたりからは少し狙っていました(笑)

浜口氏:
そうですね、少し狙っていました(笑) ただ、『FFVIIリバース』のPS5版をリリース時点ではもう少し違ったスケジュールではありました。ですが、その前に『FFXVI』のPC版がリリースされていたこともあり、いろいろな兼ね合いを考えるとThe Game Awardsで発表して、その後はこれくらいのタイミングでリリースするのが一番いいだろうという結論になりましたね。

―― ユーザー視点でも「いろいろノミネートされてるし遊んでみようかな」という取っかかりがありますよね。

浜口氏:
賞が取れるかどうかというのは時の運もあるのですが、ノミネートされたことで話題性が出たなと思っています。


――お二人は『FFVIIリバース』のPC版展開について、開発チームにはどのようなディレクションをされましたか。

北瀬氏:
個人的な希望としては、なるべくPS5版からの間を開けずにリリースしたい気持ちがありましたね。それもあってか、今回は『FFVIIリメイク』よりも早くPC版に対応することができました。

浜口氏:
『FFVIIリメイク』では追加DLCを発売したので、今回も検討していた時期がありました。ですが、DLCとセットでPC版をリリースしようとすると、どうしてもスケジュールが後ろ倒しになってしまいます。開発と移植を同じチームでやっている都合上、そうなると最新作の開発も遅れてしまう。一番重要なのは三部作目を、二部作目の熱が冷めないうちにリリースすることだと思っていたので、今回はPC版のリリースを優先しました。DLCを開発しないぶん、速度感を持って三部作目の開発とPC版対応をしていこうという方針で現場の指揮をしています。


―― 浜口さんと北瀬さんは、PCでゲームを遊ぶにあたって重要な要素は何だとお考えでしょうか。

浜口氏:

PCはユーザーによって持っているスペックが異なってきます。PCゲーマーと言えど、最先端のゲーミングPCだけを追い続けているだけ人たちばかりではありませんからね。なるべく最適化して幅広いスペックで動作させることを、開発チーム全体で重要視しています。一方で、最先端のPCを使っている方にもご満足いただけるような体験も提供したいという考えもあります。そのため、PS5以上のグラフィックやパフォーマンスをお楽しみいただけるよう、オプション的な調整ができるようにもしています。

―― PCユーザーの幅広いニーズを満たすのはなかなか大変ですよね。試遊させていただいたのですが、自分のミドルスペックなPCで高設定で動かしても、いい感じに動いて嬉しかったです。

浜口氏:
『FFVIIリバース』PC版は、動作可能としているなかでは一番低い、RTX2060あたりのスペックでも安定して動くように最適化しています。PCゲームユーザーのなかでもそれなりにシェアのある動作環境でプレイできると思っておりますので、『FFVII』がリメイクされたことは知っていたけど前作含めて遊んでいない、という方にもぜひ遊んでいただきたいです。実際にツインパック(『FFVIIリメイク』と『FFVIIリバース』のセット)の予約数も好調なので、多くの方の目に留めていただいたんだなと感じています。ここからさらに、もう一声広がってもらえると嬉しいです。


―― PCユーザーについては、他ハードユーザーと比べてどのような傾向があると感じますか。

北瀬氏:
スペック以外の方向でいうと、自分なりにカスタマイズができることを重視している方が多い印象ですね。『FFXIII』のPC版をリリースしたとき、当時はPS3のコンソール版をベースに比較的そのまま移植をしたんです。そうしたらPCユーザーの方からは、自分の環境や好みに合わせてUIやキーコンフィグをカスタマイズできるようにしたいという意見が多くありました。

―― PCではさまざまなユーザーのニーズに応えなければならないという部分で、スペックの話とも重なるところですね。特に北瀬さんは『FF』シリーズのPC展開について長く見守られていたと思います。そうした展開を経て、PC移植に関してのノウハウは蓄積されていて、それが今回出ていると感じますか。

北瀬氏:
あの時代のPC移植と今とでは、かなりフェーズが違うと感じます。『FFXIII』のときはスマホ版に移植をして、PS4版をやって、という流れからのPC移植だったのと、内製ではなく外部の開発会社に委託してという部分があったので、最近の『FF』シリーズのPC版移植とは少し状況は違うんです。

そういう意味では、コンソールからPCへと移植していくという流れも、今と当時とはまた違うと感じます。弊社は今、マルチプラットフォーム対応を全社的な方針として掲げているので、その辺りは加速していくんじゃないかと考えています。

―― なるほど。『メビウス ファイナルファンタジー』なども外注移植だったのでしょうか。あのタイトルはPC向けにも最適化がしっかりされていた印象です。

北瀬氏:
そういえば。『メビウスFF』は社内で取り組んでいましたね。

浜口氏:
あそこからPC版開発が多くなっていったので、変換点があるとしたらあのあたりですね。

※『メビウス ファイナルファンタジー』は当時のスマホゲームとしては珍しくSteam版も展開するなど、意欲的なタイトルだった。北瀬氏・浜口氏も開発に携わっていた。


遠景も近距離も、より精細な絵を用意

―― PC版の要素について、ゲーム体験に関わる部分で特徴を改めて端的に教えていただけますでしょうか。

浜口氏:
テクスチャ解像度やポリゴンの密度については、標準設定にしたときにほぼPS5と同等になるようバランスをとっています。オプションでそれより上の設定をしていただくことで、より高解像度のテクスチャやLOD段階が設定されるので、画面密度はかなり変わってきます。

『FFVIIリメイク』から『FFVIIリバース』にかけて、描画設計を変更しているんです。これまでは主人公のクラウドが立っているところから360度のアセットをローディングするという一般的な作り方だったのですが、『FFVIIリバース』は画面に見えている範囲だけのアセットを読み込むような設計になっているんです。この方式だと見えないところの余計なものを読み込まなくていいので、より高密度な画面を構成することができます。

それでもメモリの限界値は来てしまうので、遠いモデルが少しぼんやりしてしまうこともありました。そこがハイスペックなPCであれば、遠景にもよりリッチなアセットを出すことができるので、遠い木や建物も消えたりせず、わかりやすく差が出るんじゃないかと。


――遠くのオブジェクトもきれいに絵が出やすくなっていると。

浜口氏:
モデルのLOD段階としては、すでにかなりリッチなものがPS5版の時点で実装されていました。カメラを至近距離まで寄せないかぎり使われていなかったアセットなんかもあったんです。それが多少距離があっても表示されるようになるので、モデル自体も綺麗に見えるようになると思います。

テクスチャについては新たに高解像度化したものをパッケージングしているので、その部分でも綺麗になりますね。パッケーズサイズとしても10数ギガくらいは大きくなっています。RTXの4070や4080くらいであれば、重めのアセットを引っ張り出しても耐えられるのではないかと。


―― スペック関連で面白いなと思ったのが、Steam Deckでのプレイにも対応できるように最適化を鋭意進行中だというアナウンスをされていたことです。こちらの進行状況はいかがですか。

浜口氏:
Steam Deckへの対応は社内では完了しています。Steam Deckで安定して動作するかどうかの検証はQAもかけて完了しているので、あくまで弊社としては自信をもって「Steam Deckでも遊べます」と言える状態です(笑)Steamの基準で対応できるかどうかはValveの審査中なのですが、弊社社内の基準でしたら十分安定して遊べるよう最適化できています。

※1月16日、無事Steam Deck互換性「確認済み」タイトルとして認定された


―― 『FFVIIリメイク』もSteam Deckで遊んでいるユーザーは結構いる印象です。

浜口氏:
『FFVIIリメイク』のPC版をリリースしたときはちょうどSteam Deckの発売と時期が同じだったので、あちらのプロモーションにもご一緒させていただいてすごく盛り上げることができました。このクオリティのタイトルが携帯機で動くのか、という驚きを与えられたのではないかと思っています。『FFVIIリバース』でもその感動は健在なので、ぜひ皆さんにも味わっていただきたいです。

※Steam Deckで『FFVIIリメイク』を動かしている様子


――ところで、先日『FFVIIリメイク』『FFVIIリバース』の2作品で、カットシーンを1.5~2倍速ができる機能が実装されました。リッチに作ったカットシーンを倍速再生可能にするというのは結構大胆な実装に思いましたが、意図を教えてください。

浜口氏:
まず、最近は映像作品なんかでも倍速で見る人が多いですよね。私個人としても時間がない方なので、倍速機能を結構使う人間なんです。作り手側に立ったときは一番ベストだと思う速度のものを出していますが、それをどう体験するかはユーザーが自分で選ぶ時代なんだろうと思うんです。逆にそこが障害になってプレイされないぐらいなら、どんどんそういう機能を取り入れていくべきだと思うので、今後発売される三部作目への実装も検討しています。

今回、『FFVIIリバース』をリリースするにあたって前作が途中で留まっている方がいたら、「倍速機能も実装したからプレイしてみてください」とお伝えしたいですね。会話だけ飛ばせるスキップボタンは今までのゲームにもありましたが、倍速機能はHDゲームではあまりない試みだと思うので、これでトレンドになってくれたら嬉しいなと思います。

―― 機能を追加してみての反響はいかがでしたか。

浜口氏:
具体的な数字は言えないのですが、アップデートを入れたタイミングで『FFVIIリメイク』はPS5版もPC版もユーザーのゲーム起動率が上がりました。倍速機能をきっかけにゲームの続きを楽しもうと思ってくれるユーザーが増えたのなら、機能を追加した意味があったなと思います。


ユーザーと向き合うゲーム作りへ

―― Modについてのスタンスをお訊きしたいです。浜口さんは以前、Epic Gamesのインタビューで「Modコミュニティをリスペクトして作品を歓迎しているが、不適切あるいは不快なものは作成・インストールを控えてほしい」と仰られていました(関連記事)。会社スタンスはそうだと思いますが、浜口さんとしての考えをお聞きしたいです!

浜口氏:
(笑)あくまで個人的な話になるのですが、私自身がPCでもゲームを遊ぶユーザーなので、Modを使うこともあります。Modコミュニティというものが市民権を得て多くの人が楽しんでいるという事実も認識していて、それを前向きに受け入れています。インタビューでお話したのは「Modを使わないでほしい」というものではなくて、「作る側も使う側も、ゲーム体験に対してユーザーの意思を阻害しないようにだけ注意してほしい」ということです。

Modにはいろいろなものがありますよね。ユーザーがUIなどをカスタマイズできるようなものもあれば、衣装が過激なものになるものや、データを抜き出してリバースエンジニアリングをするようなものもあります。

――内容によっては、普通に遊んでいるユーザーがショックを受けるModもあるにはありますもんね。

浜口氏:
そうなんですよ。ユーザーはModがどんなものかをちゃんと自分で調べて選んで導入してほしいし、Modを作る側もそれを意識してほしい、という観点でのコメントです。私個人としてはModコミュニティ自体を否定する意図はないとお伝えしたいです。

――すべてのModを否定するわけではないと。

浜口氏:
リスペクトしていますよ。PC市場が盛り上がっているのはModがとても大きな役割を担っていると思うんです。『Fallout』シリーズにしても『TES』シリーズにしても、あんなに昔のゲームでも、新しいModが出たらそれをきっかけにもう一度遊んだりすることがあるじゃないですか。それがPC市場の良いところだと思うんです。企業が自分で公式のModを作るよりもずっと速度感があることを有志のコミュニティがやるからこそ盛り上がる空気感というものがあるので、個人的には非常に面白い市場だと思っています。

―― こうしたModへの見解を述べられた話も含めて、浜口さんや北瀬さんは国内外メディアにもオープンに開発のお話をされます。我々メディアとしては面白いのですが、その意図を教えてください。

浜口氏:
自分は自由に言う方なので、よく話し過ぎだと言われます……(笑)

北瀬氏:
浜口は元々プログラマーで、今現在も開発チームのど真ん中にいるので、気持ちがぐっと入るのかも(笑)

――(笑)


浜口氏:
真面目な話をすると、『FFVII』リメイクシリーズは三部作のタイトルなので、認知してもらわなきゃ始まらないと感じているところはありますね。昔はクリエイターが「俺の作るものについてこい」というような時代もあったと思うんですが、最近のトレンドだとより双方向的というか、コミュニケーションのなかで築かれていくソーシャルなネットワークがあるじゃないですか。そこでなるべくユーザーと同じ目線で情報発信をしていく、という点は意識していますね。

――なるほど。対話的であるというのは、とても感じます。お話を聞いていると、売り切り型の国産大作ゲームとしては、かなりユーザーの意見拾いが積極的だと感じます。これは浜口さんの方針なのでしょうか?

浜口氏:
『FFVII』のリメイクが三部作で、続きを作っていくにあたってゲームを改良する必要があるので、ユーザーのニーズを聞くために耳を傾けるのをすごく意識しています。

――とはいえ、 近年はSNSの普及もありユーザーとの距離が近いのもあって、寄せられる意見が多いです。どうフィードバックの取捨選択しているのでしょうか。

浜口氏:
今のチームはそれなりの人数がいるので、開発中にスタッフから声が上がってくる場合もあれば、ユーザーテストを定期的に行い意見を集めたりもします。ただし、集める意見は基本的に、もともと描いてたポリシーのもとに取捨選択していくしかありません。Aを目指しているのに「私はBが好きです」という意見が来ても、それは好みの話なのでどうしようもないですよね。

でも、「Bを足したらよりプラスアルファとなっていいのではないか」という意見であれば拾えそうなら拾っていくような感じです。自分が比較的、一度決めたコンセプトやビジョンをぶらさずに突っ走るタイプなので、そこは比較的安定して開発を進めるところに繋がってるのかなとは思います。

――ブレないタイプだと。浜口さんがコンセプトを貫けるのはなぜでしょうか?

浜口氏:
自分は理系の人間なので、何か答えを出すまでにロジックで固めるんです。ひとつの選択肢にたどり着くのは偶然ではなくて、何かしらの積み重なった理由がある。なので、少し違う意見がきても、自分の中にロジックが組み上がっているのでそれがバリアのようになってぶれずにいられるのかもしれません。

―― 北瀬さんはいかがでしょうか。プロデューサーとして世界中の意見を聞くときに取捨選択をするのは困難ではない?

北瀬氏:
『FFVIIリバース』に関しては浜口がすでに取捨選択をしてくれているので、それほど難しいことはしていないですね(笑)選び方についても、自分は彼とは逆にまったく理系ではないです。感覚で「これがいいんじゃないの」って言っちゃう(笑)

あまり新作の話はできないんですが、三作目のシナリオについては最初のプロット部分には関与しているのですが、三部作の締めくくりとしての本作の読後感を原作からこう調整したい、という部分を思いつきで出したりします。実際のゲームに落とし込むときの整合性やロジックは現場にお任せです!(笑)

―― え!物語ってロジックで作れるものなんですか!?

浜口氏:
(笑)ロジックは非常に重要だと思います。メリハリが大事なので。ゲームに限らず映像作品全般そうだと思うんですが、コアとなるコンセプトはクリエイティブなところなのでロジックではないアイデアの要素ももちろんありますが、それを成り立たせる論理立ては重要だと思います。

―― 僕が感動したあのシーンも、ロジックでしてやられてたってことですか!?

一同:
(笑)


浜口氏:
あの場面でユーザーの心を動かしたいと思うのはクリエイティブな部分だと思うんですよ。でも、そこにたどり着くまでにユーザーにどういう感情曲線を描かせたいかなど、ゲームの面白さというのはレベルデザインなども含めて、ロジックが重要だと思っています。ある程度理論的に考えて、そこからどうするのかが腕の見せどころですね。


――ありがとうございます。それでは締めとして、最終作にむけての意気込みをお願いします!

北瀬氏:
三作目では、『FFVIIリバース』で皆さんが気になった部分を回収していきます。そこに向けての盛り上がりを、PC版もプレイして、期待をどんどん高めていってもらえたらなと思います。

浜口氏:
『FFVII』リメイク版開発チームは、『FFVIIリバース』の開発が終わってからすぐに三作目の開発に取りかかっています。2024年の早い段階から本格的に開発を始めていますね。昨年のうちに方向性やゲームデザインを固める方向で動いていて、遊べるビルドを作るまでを非常に良いスピードで進めることができました。今年はそこから、ゲームのボリュームを作り込むところをやっていくつもりです。企画を立ち上げたときに描いたスケジュールどおりに進行できているので、なるべく早く皆さんにお届けできるよう頑張ります。ぜひぜひ期待してお待ちください。

――楽しみにしております。ありがとうございました。

FFVIIリバース』はPS5向けに発売中。1月23日にPC(Steam/Epic Gamesストア)版が発売される。前作『リメイク』とセットになったツインパックも発売中である。

[執筆・編集:Aki Nogishi]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]

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