『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』Switch 2/Xbox版は新ブースト機能で“初見で10時間切り”さえ余裕。浜口Dが直々に入れた「時短機能」の真意とは

Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S版が発売となる『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』について、浜口直樹ディレクターに話を訊いた。

スクウェア・エニックスは2026年1月22日、『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Windows版を発売予定だ。本作はこれまでPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPlayStation 5向けに展開。来年発売予定のNintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Windows版では、各コンソール向けに最適化されつつ、「ゲームブースト機能」が搭載されるという。

本作に搭載されるゲームブースト機能は、物語を楽しむことを重視する人に向けた機能だ。「常にHP最大」「常にMP最大」「常にリミットゲージ最大」といった設定のほか、「常にダメージ9999」「すべてのマテリアレベル最大」など、さまざまな要素を上限に固定するようなオプションが用意されている。なお、これらはいつでも要素ごとにON/OFFの切り替えが可能となっている。

弊誌は、『ファイナルファンタジーVII』(以下、FFVII)リメイク三部作にてシリーズのディレクターを務める浜口直樹氏にインタビューを敢行した。『FFVII リメイク インターグレード』のマルチプラットフォーム移植について、そしてゲームブースト機能の実装について、浜口氏に話を伺った。


移植には協力会社と“社内一”のレンダラープログラマーが活躍

――浜口さまは今回、『FFVII リメイク インターグレード』のマルチプラットフォーム展開にはどのようなかたちで関わっているのでしょうか。

浜口直樹(以下、浜口)氏
『FFVII リメイク インターグレード』は弊社内のエンジニアのほか、協力会社にも加わってもらって開発しています。私はそれらをまとめて、作品に対しての最終的な意思決定とか方向性を定めるところの責任をもつという役割ですね。

――『FFVII リメイク インターグレード』がNintendo Switch 2やXbox Series X|Sで展開されるということで、今はどんなお気持ちですか。

浜口氏:
ひとりのクリエイターとしての率直な意見を言うと、ただ嬉しいですね。自分たちが作ったゲームがプラットフォームの垣根なく、いろいろな人に遊んでもらえることが一番うれしいことですので。

スクウェア・エニックスの社長が桐生(桐生隆司氏。スクウェア・エニックス代表取締役)になって、明確に今後スクウェア・エニックスのタイトルはマルチプラットフォームで展開していくと掲げて、その流れに乗っての今回の動きなんです。私自身もその動きは前向きに受け止めていて、それがこのようなかたちで繋がったのが非常に良かったなと思っています。

――PC版の『FFVII リバース』は、スピード感などを鑑みて内製で移植作業を進めたと伺いましたが(関連記事)、今回の『FFVII リメイク インターグレード』Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S版は、どういったチームや協力会社が関わっているのでしょうか。

浜口氏:

協力会社さんは、XboxやNintendo Switchのノウハウをもっている方々ですね。弊社のエンジニアと一緒に開発する体制で進めています。ただ、最終的なこの作品のコアの部分に関しては、社内のスタッフ、特にエンジニアがメインで稼働していました。

――元々PS5やPC向けにリリースしたものを、今回のマルチプラットフォーム向けに最適化されているそうですが、パフォーマンスはどういった風に仕上がっていますか。Xbox Series Sでの動作も気になります。

浜口氏:

Xbox Seriesに関しては、非常に高性能なマシンですので、グラフィックや処理負荷などに関してはほかのコンソールとほぼ同じに動いています。Xbox Series Sのメモリに関しては、最後の最後までメモリの調整をしていました。その結果、Xbox Series X|S共にまったく遜色のない状態で遊んでいただけるように仕上がったかなと思っています。

――なるほど。それではNintendo Switch 2のパフォーマンスはいかがでしょうか。

浜口氏:

Nintendo Switch 2もマシンスペックは非常に良いものをもっています。ただ、消費電力の兼ね合いで、携帯モード時に少しスペックを抑えるような設計になっているんです。なので、単純に移植しただけでは携帯モードで安定して動作させることは実現できなかったので、弊社の優秀なレンダラーのプログラマーにがっつりと取り組んでもらって最適化をおこないました。

その結果、Gamescom 2025やPAX West 2025に本作のNintendo Switch 2版を出展した際に、皆さんから非常にポジティブなコメントをいただけたので、我々としても自信をもっています。TGS2025のスクウェア・エニックスブースにも試遊出展をしますの、気になった方は是非触れてみてください。

――具体的に、どういった部分を工夫されたんでしょうか。

浜口氏:

今の時代、ライティングがグラフィックの質や表現にもっとも重要なポイントだと考えていて、今回の移植においても一番重要視した部分ですね。ライティングを最適化する際に近似値で計算するような感じでやってしまうと、どうしてもキャラクターの表情が変わって、ちょっとチープになったとユーザーに指摘されそうだったので、ライティングに関しては基本的に同じ処理で頑張ろうと。

その代わり、ポストエフェクトやフォグなどの処理負荷を軽減する方向に調整して……といった判断をレンダラーのプログラマーがすごく頑張ってくれて、30fpsでも安定して動作しつつ、クオリティも遜色ない移植を実現できました。これは、Nintendo Switch 2向けにとってハイエンドなゲームのひとつのモデルケースというかサンプルになったんじゃないかなと、その点もすごく嬉しいですね。

――浜口さまから見て、移植に際してNintendo Switch 2に見たスペック上の強みや得意分野を教えてください。

浜口氏:

Nintendo Switch 2は、メモリに関しては非常に多く積んでいて、どのデベロッパーもそうだと思うんですが、単純にゲームを移植して動作させることは比較的簡単にできるんですよ。ただ、やっぱり携帯モードでの動作となると少し手強くなります。ある意味チャレンジングな部分もあるコンソール機だと思います。

ただ、スペック的には非常に高いので、上手く使ってあげればちゃんとしたクオリティでユーザーに作品を届けられると、我々は身をもって体験したので、本当に良いハードだなというのが私の素直な意見ですね。


幅広い遊び方実現から、ゲームブースト機能実装へ

――今作には、「常にHP最大」「常にMP最大」「常にリミットゲージ最大」といった設定のほか、「常にダメージ9999」「すべてのマテリアレベル最大」など、あらゆる要素について上限にしてサクサク進行できるゲームブースト機能が実装されています。かなりの時短要素です。今回、なぜゲームブースト機能を搭載することになったんでしょうか。

浜口氏:

このタイミングでFINAL FANTASY VII リメイクシリーズ(以下FFVIIリメイクシリーズ)の全三部作をマルチプラットフォームで展開すると発表できたことが、ゲームブースト機能を搭載することになった一番のきっかけだと思っています。

先ほどお話ししたとおり、コンテンツを多くの人に遊んでもらうことが、我々クリエイターとして一番うれしいことなんですよね。そこで、FFVIIリメイクシリーズを遊びたいと思った人が、Nintendo Switch 2やXbox Series X|Sでプレイしてくれるとして、もちろん普通にRPGとして自分で全部遊ぶ人はいるはずなんです。ただ、中にはストーリーとかを体験したいけど、1作目から全部やるとなると大変だよなと思う人も結構いると思うんですよ。

私自身、情報を得るためにいろいろなゲームに手を出したいですし、実際手は出すんですけど、時間がないからここまでしかできないみたいなことがすごく多くて。そんなときに「デバッグ機能でもあればもっとできるのにな」みたいなことを考えることがあって。

――忙しいゆえに、ですね。

浜口氏:

とはいえ、三部作目を発売したときに、最初からゲームブースト機能を搭載していると、いろいろ議論になると思うんです。ずっと新作を待っていてくれた、(先にネタバレする人が出てくるなど)一番楽しんでもらいたい人たちのノイズになるのも困ると思うので。

ただ、もう二部作目までリリースされていて、しかも三部作目を開発しているという中で、今改めて新規のユーザーさんに対して『FFVII リメイク インターグレード』を届けるにあたって、自分のプレイスタイルに合わせて自由にゲームのバランスをカスタマイズできることにマイナスの要素はないなと思ったんです。だから、このタイミングでゲームブースト機能を入れたいとチームに相談して実装に踏み切った、というのが経緯になります。

――では、ゲームブースト機能も、以前アプデで実装されたカットシーン倍速機能も、浜口さん主導で実装を決めたということですか。

浜口氏:

そうですね。実際、これらの機能を発表したときに、一部のユーザーさんから「こんなのは邪道だ」みたいな声も当然届くわけですよ。そういった考えは、当然開発内にもあると思うので、誰かが意思を持ってやらないといけません。今のデジタルエンターテイメントのコンテンツって、体験の仕方の主導権をユーザーの意思に委ねるべきだと私は思うんです。というわけで、私が主導権をもって提案したわけですね。

――ちなみに、実際にゲームブースト機能とカットシーン倍速を併用した場合、1周クリアするのにどれくらいの時間がかかるんでしょうか。

浜口氏:

たぶん最速で10時間を切れますね。きっと7~8時間ぐらいで回れます(笑)

――えっ、普通にプレイしていたら40~50時間くらいかかりますよね。ものすごい短縮になりますね。

浜口氏:

実は私は世の中のディレクターの中でも、開発中のゲームを周回プレイする回数が世界トップクラスだと自負していてですね(笑)

――(笑)人力での周回ですよね。

浜口氏:

もちろんです。ただ、やっぱり通すときに効率は考えるので、ゲーム全体の繋ぎとかバランスを確認したいとき、バトルをしっかり見たいときとか、通しプレイの中でも今回は注力してここを見る、というのを決めているんですよ。で、その時々でゲームブースト機能のようにダメージをカンストさせたりとかっていう機能を活用しながらゲームバランスを作っているんですね。一般ユーザーもそういう感覚でプレイできる環境を用意しておくことは、今の時代に沿ったゲームの作り方なんじゃないかなと思います。

――当然ですが、通常プレイでクリアした方が達成感はありますよね。

浜口氏:

それは当然で、そういった方にはぜひゲームブースト機能を使わずにじっくり遊んでほしいですね。でも、少し前からサブスクリプションの動画配信サービスで、再生速度を調整する機能が導入されたじゃないですか。

――YouTubeとか動画サイトにもありますよね。1.5倍にして動画を見るのを時短するみたいな使われ方をしているかと。

浜口氏:

それも同様ですね。動画の倍速視聴って、最初はクリエイターが意図して作ったタイミングと違うから邪道だとか言われていたと思います。でも、今はもう市民権を得て、機能としてあるのが当然みたいになっているじゃないですか。

今までコンソール向けのゲームって、リビングでしっかりと「楽しむんだ」っていう気持ちで本気で遊ぶものであるみたいな考え方があったと思うんです。その考え方を別に否定するわけではなく、それも正しい遊び方です。でも、Nintendo Switch 2とかポータブルデバイスを持ち歩いて、出先で少し遊んで、また後から続きをやろうみたいな遊び方もするじゃないですか。その一方で、時間的に少しずつしか遊べないけどストーリーを楽しみたいから、ボスとかをゲームブースト機能を使って一気に倒しちゃいたいという人もやっぱりいると思うんです。だから、ゲームブースト機能がないことで、そういった方々がエンターテイメントを楽しめる機会を失うくらいだったら、あくまでもユーザーが任意に設定するオプションとして導入することは、全然良いのではないかなと自分は思っています。


三部作目も“非常に好調”に開発進行中

――まだ言えることは少ないと思いますが……FFVIIリメイクシリーズ最終作となる三部作目の開発はいかがですか。

浜口氏:

開発は非常に順調に進んでいて、手応えのある状態です。もういろいろなコンテンツが触れて、ゲームの方向性や形もしっかり定まっていて、今はチーム一丸となって作り込みをしている段階です。ちなみに、二部作目にあたる『FFVII リバース』がPS5もPCも非常に手応えをしっかり感じられています。心配していただくユーザーもいらっしゃいますが、三部作目もしっかりとちゃんとしたものをお届けできますのでご安心ください。

あと個人的な話ですが、私自身FFVIIリメイクシリーズに関わってもう10年以上、クリエイターとして過ごしていますので、三部作目はすべてを出し切りたいと頑張っています。私は『FFVI』や『FFVII』を子供の頃にプレイして影響を与えられて、実際現在ゲームクリエイターとして、影響を受けたFFVIIリメイクシリーズのディレクターをしているんです。デジタルエンターテイメントって人生に影響を与えるような可能性をもっているんですね。なので、今『FFVII』というIPを新しいひとつの形として着地させたものが、また新しい世代の人たちが同じように影響を受けて、また10年、20年後に同じように作品を作って次に繋がっていくと良いなと。終わりが近づいてきて、そんなことを考えたりします。

――終わりが近づいていると聞くと、楽しみでもあり少し寂しくもあります。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

浜口氏:

Nintendo Switch 2、Xbox Series X|Sへの移植に対して、良い反応を皆さんからいただけていると感じています。特に予約も開始して、北米を中心に非常に手応えを感じています。とはいえ、『FFVII』を知っているけど、まだ手を出していないという方もやっぱりまだ世の中にたくさんいらっしゃると思うんですよね。

当然、『FFVII』を皆さんに知ってもらいたいというのがありつつ、Nintendo Switch 2やXbox Series X|Sの可能性ももっと多くの人々に体験してもらいたいので、年末ぐらいを目途に体験版の配信を考えています。なので、ぜひ購入を悩んでいるという方は、ぜひ一度体験版をプレイしていただいて、任天堂のハードにもこういうゲームがリリースされるんだというのを味わってください。

まだこのタイミングで、最終作となる三部作目を「いつお届けできます」とはお伝えできるフェーズではありませんが、本当にスケジュールどおり順調に進んでいますので、Nintendo Switch 2やXbox Series X|Sからプレイするという新しいユーザーの方はまずは『FFVII リメイク インターグレード』を楽しんでいただいて、そしていずれ二部作もリリースしますのでそちらもプレイしていただきながら、三部作目をお待ちいただけると嬉しいです。

――ありがとうございました。

ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Windows版は、2026年1月22日発売予定。

[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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