『ファイナルファンタジーVII』リメイク最終作は、マルチプラットフォーム化してもグラフィックは下がらないらしい。開発者に「巷の懸念」について訊いてみた

『FF7』リメイクシリーズが、相対的に性能差があるプラットフォームに対応することで、今後の作品のクオリティに影響するのでないかという声が見られる。本当にそうなのか?

スクウェア・エニックスは1月22日、『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Microsoft Store on Windows版を発売した。

『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』は、『ファイナルファンタジーVII』(以下、FFVII)のリメイク版である『FFVII リメイク』に、ユフィを主人公とした追加エピソードを収録したバージョンだ。

本作のNintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Microsoft Store版発売に伴い、全プラットフォーム向けに「ゲームブースト機能」が実装。本機能は、「常にHP最大」「常にMP最大」「常にリミットゲージ最大」といった設定のほか、「常にダメージ9999」「すべてのマテリアレベル最大」など、さまざまな要素を上限に固定するようなオプションをいつでも要素ごとにON/OFFを切り替えできるかたちで用意。全3部作となる『FFVII リメイク』シリーズのストーリーを追いやすくする機能となっている。

今回はXbox Series X|SおよびNintendo Switch 2版発売に際してさらなるファンを獲得している模様。一方で、相対的に性能差があるプラットフォームに対応することで、今後の作品のクオリティに影響するのでないかという声が見られる。本当にそうなのか?ならば、開発者に訊いてみよう。ということで、弊誌は、スクウェア・エニックスにて本作のディレクターを務める浜口直樹氏にインタビューを実施した。

浜口直樹氏(写真は2024年12月のもの)

――『FFVII リメイク』シリーズは、これまではPS5やPCといったハイエンド寄りのプラットフォームを軸に展開されてきました。そしてこのタイミングでXbox Series SやNintendo Switch 2といった、比較的ローエンドとされるプラットフォームにも対応しました。

非常にめでたい一方で、SNSでは性能差があるプラットフォーム対応を視野に入れることで、三部作目はローエンド寄りにあわせるためにグラフィックを妥協して開発が進められるのではないかという懸念があります。実際マルチプラットフォーム化したことで、そういった影響が出るのでしょうか。

浜口直樹(以下、浜口)氏:
Nintendo Switch 2版、Xbox版共におかげさまで非常に好評で、話題性もあったがゆえに、心配される方が多くいらっしゃるんだなというのは改めて思いましたね。ただ、基本的に我々が今回『FFVII リメイク』シリーズをマルチプラットフォーム化したことによって三部作目のクオリティが下がることはないですし、そもそもそういった開発体制ではないんです。……これは何度も言い続けるしかないと思っているんですが(笑)

――エンジニア出身の浜口さんが言うならば根拠があるかなとは思いつつも、開発者自身がリリース前の自分の作品をマイナスになるようなことは言わないだろうとも思っています。いわゆるマーケティングトークなのではないかなと。

浜口氏:
(笑)やっぱりそういう風に思われてしまいますよね。せっかくなので、インタビューでなぜその心配がないのか深く話したことがなかったので説明させてください。Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S版発売後に皆さんがそういった話で盛り上がっているという声が私の耳にも届いたので、少しでも皆さんの不安感を払拭できたら私としては非常に嬉しいです。

――ありがとうございます。では改めて聞くと、性能差のあるコンソールを対応プラットフォームに入れたことで、なぜハイエンドプラットフォームのグラフィック品質は落ちないと言えるのでしょうか。

浜口氏:
まず、ゲームを作る上で各プラットフォームで気をつけないといけない項目が4つあります。ひとつはCPUです。ゲームとしてキャラクターを動かしたり、ゲームのロジックを動かしたりという演算部分です。ふたつ目にGPUですね。グラフィックの描画関連にまつわる部分です。

Image Creidt : ドスパラプラス


3つ目はRAM、一般的にメモリと言われている、ゲームを起動しているときにどのくらいデータを読めるかというものです。よくXbox Series Sが移植難易度が高いと言われるのは、このメモリが他のハードと比べると少ないからです。足りないとゲームがハングアップすることもあります。逆に、Nintendo Switch 2はメモリが潤沢なので、そういう意味では非常にゲームが作りやすいプラットフォームです。

で、最後がカートリッジとかのROMですね。これまでもカートリッジやディスクに収めるためにデータサイズを小さくする必要などがありました。大きくはこれらの4つがゲーム制作で気をつけないといけないと私は考えています。

――はい、理解できます。

浜口氏:
これらをひとつずつ紐解いていくと、まずROM、ゲーム自体のサイズに関しては、Nintendo Switch 2においてもパッケージ版はキーカードでのダウンロード方式を採用しています。なので、「ゲームカートリッジに収めるためや読み込み速度を上げるために各データを小さくする」いったようなことをする必要はありません。なので、ほかのプラットフォームにゲームサイズとして影響を与えることはまずないです。

RAMに関してはNintendo Switch 2は潤沢なので影響することはないでしょう。たしかにXbox Series Sには苦労しますが、そこはもうプラットフォームごとにギリギリまでチューニングするかたちで対応しています。なので、RAMの問題でほかのプラットフォームが制約を受けることもありません。

で、CPUに関してですが、ここ4~5年で結構変わったなということがあるんですね。それまでのゲームでRPGだとコンソール向けで30fpsというのが基本的な文化だったと思います。でも、PS5やXbox Series Xが登場して、コンソールでも60fpsが求められる時代になった気がします。

――たしかに。今や60fpsは当たり前ともいえる時代です。

浜口氏:
今の我々のゲームの作り方は、それこそPS4やNintendo Switch 2やXbox Series Sでゲームが30fpsで動いていれば、ハイエンドのプラットフォームだったら60fpsを出せますよね、という考えでゲームを設計しているんです。つまり、ハイエンドのCPUで30fps前提してギリギリまで全部使い切りますという設計をしないんですね。
CPUに余力があるハードでは、街のNPCの人数など密度の部分だけをスケーリングさせる という手法を取っています。そのため、高スペックなハードでは街がにぎやかに感じられ、それ以外のハードでは NPC数が抑えめになるといった違いがあったりはします。なので、Nintendo Switch 2とかXbox Series Sに対応しても、CPUで困ることは起きにくいのです。

最後に、皆さんが一番気にするのがやっぱりグラフィックを担当するGPUだと思います。マルチプラットフォームでリリースすると、プラットフォームごとにどう違うのかを比べるのが好きな人って多いじゃないですか。こう、動画で横に画面を並べて(笑)

――(笑)実際、気になる部分ですからね。

浜口氏:
そこで皆さんが不安になるのが、開発の基準をどのハードに置くかによって、全部のプラットフォームがそのクオリティに引っ張られてしまうんじゃないかということですね。

まず前提にお伝えしたいのは最もハイエンドなのはPC環境だということです。日本でもPCでゲームをする文化が徐々に広がっていますが、実は国外だともっと加速的に活発になっており、コンソール、PCの垣根なくゲーム市場がものすごく広がっています。『FFVII リメイク』シリーズもSteamやEpic Gamesストアなどで非常にたくさんのお客さまに購入いただいているので、我々も開発にあたってよりレンジの広いPC市場向けのアセット制作を意識しています。なので、3DアセットはPCをベースに最高品質のアセットクオリティでデータを作っているのです。

『FFVII リバース』がリリースされたとき、PC版はPS5よりもきれいだという話が話題になりましたが、この考えは三部作目でも変わらないんです。基本的なデータ設計として、低い基準に合わせるのではなく、さらにハイエンド向けにアセットを作っています。それを我々はリダクションといって、それぞれのプラットフォームに適したところまでアセットレベルを調整してチューニングするという設計になっています。そういう意味で、ハイスペックなプラットフォームに対して影響を与えることは基本的にない設計思想です。これは我々だけではなくて近年のゲームの開発環境としては、比較的一般的な考え方なんですよね。

――まずできる限りきれいにグラフィックを作って、プラットフォームの性能にあわせてそのグラフィックを削ぎ落とし最適化させていくと。

浜口氏:
そうなんです。で、高いクオリティで作ったアセットをちゃんと一定の品質でユーザーにお届けするためのチューニングが必要となます。プラットフォームごとのスペックに合わせて最適化は必要になりますが、ハイスペックなプラットフォームに対して何か制約を与えることがないというのは、はっきり言えます。

――ハイスペックなプラットフォームであれば、最初に作ったアセットを加工せず使えばいいわけですからね。

浜口氏:
完全に技術的な話になってしまいますが、PS5とかPS5 Proって、我々の扱いとしてはミドルレンジのプラットフォームに設定されているんですよ。なので、ハイエンドPCと比べると、テクスチャのサイズも1.5~2.0倍くらい違ったり、メッシュの読み込みも1.5~2.0倍ぐらい違って、ポリゴンの描画数で言えば3倍以上違ったりして、これぐらい差があるんです。

逆に、今我々がローンチしている中でロースペック向けに調整されているものが何かというと、Steam Deckなんですね。PS5と比べると半分以下の基準に落ちる感じです。なので、マルチプラットフォームに対応したからといって、クオリティが変化することはないとお伝えさせてください。

――なるほど。PCがリードプラットフォームとしてあって、PS5 Proだろうと最適化をしていて、同じことをさらにほかのプラットフォームにしているというわけですね。

浜口氏:
そういうことです。ちなみに、プラットフォームごとに対応させるとき、ただ単純にクオリティを下げるだけでは、意図した表現ができない場合があります。なので、ちゃんと人の目で確認して、イメージ通りになるように調整しています。

――せっかくなので同様に見かけるという点で、意地悪な質問をさせてください。性能差のあるハードの最適化にリソースを使うならば、そのリソースをアセットの向上や新規コンテンツ作成に回した方が、既存の熱心なユーザーへの還元が大きいという意見もあります。そういう指摘については、どのように答えられますか。

浜口氏:
なるほど(笑)……こう考えてみましょうか。『FFVII リメイク』シリーズを、マルチプラットフォームにしていくことによって、その作品をプレイできる環境のユーザー数が増えていっています。そうすると、我々が作る作品をより多くの人の手元に届けられるんですね。

ということは、当然全体的な売り上げがアップするわけじゃないですか。そうして得た利益を予測して開発費に還元できるわけですよ。なので、このプラットフォームに対応することでこのくらい売り上げが上がるはずだからという考え方で、開発予算やリソースを上乗せできるわけですね。

……ただ本音を言えば、自分たちの作ったゲームをより多くの方に遊んでいただけることが一人のクリエイターとして嬉しいからという単純な理由が一番なんですけど。

――まわりまわって、ハイエンドで遊んでいるユーザーも恩恵を受けられるわけですね。意地悪な質問をひとつしてしまったので、もうひとつ、ついでに。マルチプラットフォーム化によって、開発チームが三作目……つまり新作の開発に全力を注げないのではないかという懸念を見る時もあります。そういった指摘にはどうアンサーされますか。

浜口氏:
移植作業に関しては、私のチームの中でも移植用の部隊が存在していて、三部作目の開発部隊とは別で立ち上げています。移植を担当している彼らが本当に情熱を注いで、ギリギリまでチューニングに取り組んでいてくれているので、私は彼らを信じて眺めている状態です。なので、私は三部作目の方に注力できているわけですね。

三作目の開発は非常に順調に進んでいます。開発当初に設定したスケジュールやマイルストーンに、ほぼほぼオンタイムの状況で開発が進んでいて、ゲームとしてはもう遊べる状態までもっていけています。チームとしては最後の追い込みとして、どんどん作り込みを継続しているフェーズなので、日々どんどんクオリティがアップしていって、繰り返しプレイする側としては毎日景色が変わってワクワクできる段階です。なので、そんなに遠くないタイミングで、皆さんに何かしら情報発信できる場が来るだろうなと思います。

――楽しみにしています。いろいろとオープンにお話いただき、ありがとうございました。

リメイクシリーズ第1作目に追加エピソードを収録した『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)およびPS5/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S向けに発売中。また第2作目である『ファイナルファンタジーVII リバース』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5向けに発売中。Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S版は6月3日発売予定だ。

[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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