Nintendo Switch 2版『FF7リメイク』の「キャラの髪グラフィック問題」についてディレクターに真正面から「なぜなるのか、回避できないのか」訊いてみた
本稿では『FFVII リメイク インターグレード』のNintendo Switch 2版で話題になった髪の毛の描写について、その仕組みと原因を訊いてきた。

スクウェア・エニックスは1月22日、『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Microsoft Store on Windows版を発売した。
『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』は、『ファイナルファンタジーVII』(以下、FFVII)のリメイク版である『FFVII リメイク』に、ユフィを主人公とした追加エピソードを収録したバージョン。全3部作となる『FFVII リメイク』シリーズのストーリーを追いやすくする機能となっている。
弊誌は、スクウェア・エニックスにて本作のディレクターを務める浜口直樹氏にインタビューを実施。本稿では『FFVII リメイク インターグレード』のNintendo Switch 2版で話題になった髪の毛の描写について、その仕組みと原因を訊いてきた。
――本作は各プラットフォームへの最適化をかなり頑張っていた印象でした。本作をNintendo Switch 2とXbox Series X|Sに移植するのに頑張ったというのは、ご自身でも感じますか。
浜口直樹(以下、浜口):
そうですね。『FF VII リメイク』はPS4版の移植だから簡単だろうというといった声をたまに見かけますが……実はPS4版の移植じゃないんですね。元々PS4版があって、それからPS5向けに「インターグレード」にする時にアセットを少しリッチにしたんです。その「インターグレード」を今回Nintendo Switch 2、Xbox Series X|S向けに移植したんです。なので、その最適化で移植を頑張った面はあります。
Xbox Series Sでいえば、メモリとの戦いがありました。Nintendo Switch 2なら携帯モードでだいぶ性能を抑えてくるという特徴があるので、最後の最後まで弊社のグラフィックエンジニアがチューニングしてくれて、30fpsを安定してキープできるところまでいったので、現時点での他者を含めた移植タイトルの中でもひと際目立っている感じにはできたのかなと思っています。Xboxファンも任天堂ファンにも非常に喜んでもらえている印象、やって良かったなと思いました。
――そんな本作のNintendo Switch 2版では、主人公のクラウドの髪の毛が時々パサついて見えるという指摘がありました。こういった意見や指摘について浜口さんはどうお考えですか。

浜口氏:
当然、各プラットフォームに多くのファンがいるので、反応が出ること自体は理解しています。その上で、プラットフォームごとに“できること・できないこと”がどうしても存在します。そこは丁寧に説明していく必要があると考えています。
私自身は、プラットフォームでゲーム体験の差がつくことはできるだけ避けたい。どのお客様も安心して買ってほしい。ただし、ハードごとに目指している体験や強みの違いから、性能や特性に違いがある以上、その中で最大のパフォーマンスを発揮するよう全力を尽くしています。
――なるほど。もう少し踏み込んでお聞きしたいです。クラウドの髪の毛のパサつきはなぜ起きるのでしょうか。
浜口氏:
他社さんの移植作品でもよく話題になりますが、技術的な理由が明確にあります。できるだけ簡単に話しますね。
『ファイナルファンタジーVII リメイク』では、キャラクターの輪郭がギザギザして見えないように、TAA(テンポラル・アンチエイリアシング)という処理を使っています。TAA は、いま描いているフレームだけでなく、過去のフレームの情報も参照して重ね合わせることで、より高解像度に近い滑らかな映像を作り出す仕組みです。
髪の毛って、とても細いパーツなので、そのまま描くとドット単位で“見えたり見えなかったり”しやすいんですね。そこで本作では、髪の毛を フレームごとにドット単位で「描画する/しない」を切り替える特殊な処理を行っています。この処理をTAAと組み合わせることで、細かい髪のラインがフレームをまたいで滑らかに繋がって見えるようにしています。
一方で、Nintendo Switch 2 には携帯モードがあり、この状態では制約が増えます。そのため、ゲーム側としても処理負荷を抑えるために内部解像度を下げざるを得ない場面が出てきます。解像度が下がると TAA が安定して働きにくくなり、髪の毛のザラつきやギザギザが目立ちやすくなってしまいます。ただし、携帯モードで常に低解像度というわけではありません。 今作では DRS(ダイナミックレゾリューション/動的解像度) を利用しており、その場面にかかる負荷に応じて内部解像度が HD からフル HD の範囲で自動的に変動します。
・負荷が高い場面 内部解像度が下がる→→髪がジャギりやすい
・負荷が落ち着く場面 内部解像度が上がる→→髪が綺麗に見える
Nintendo Switch 2 では、フレームレートを安定させるために内部解像度を下げて、そこを DLSS で補うというのが基本的な仕組みになっています。この DLSS について簡単に説明すると、低い解像度になってしまったときに、AI が「本来こう見えるはず」という形を予測して補い、高解像度に近い映像へ作り直してくれる技術です。
TAA より賢く補正してくれるので、内部解像度が落ちても画面全体はかなり綺麗に見えるようになります。ただ、先ほどお話しした通り、今作の毛の描画はフレーム毎にドット単位で描画を切り替えているため、DLSS とは相性が悪く、ジャギジャギが出やすいんです。携帯機ならではの制約はありますが、少しでも改善できるように最適化は今後も全力で続けていきます。

TVモードだったり引きの場合は質感はよく

携帯モードの場合は時折見られる現象
――そういう意味では、3Dモデルでも髪の毛自体がそこまで細かく描写されなかったり、かぶりものを被っていたり、そういうものだったらジャギジャギにならないと。
浜口氏:
まさにそうです。セル調のキャラクターだったら、正直そんなに目立ちませんね。フォトリアルになるほどアンチエイリアシングの処理で高いクオリティを見せるために、解像度が重要な要素になっています。そうなるとジャギジャギが目立ちます。
――ということは、今後のシリーズにおいてもある程度付きまとう課題になりそうですね。『FFVII リバース』以降の移植では、この問題にどう対応していくお考えですか。
浜口氏:
そうですね、Nintendo Switch 2 では、フレームレートを安定させるために、負荷が高い場面では内部解像度を下げて、そこをDLSSで補うというのが基本的な仕組みになっています。ここが、今の髪の毛の描画技術とはどうしても相性がよくなく、ジャギジャギが出やすくなるのは、先ほどお話しした通りです。
携帯機ならではの制約はありますが、“安定したフレームレートで、いつでもどこでも自分の好きなスタイルで遊べる”という体験自体は、とても素晴らしいものだと思っています。 フレームレートをしっかり維持しながら、少しでもグラフィックが良くなるように、最適化は今後も全力で続けていきます。
――『FFVII リメイク インターグレード』はそれぞれのプラットフォームの適した解像度と、30fpsをターゲットに作られていて、しっかりと表現できていると思いますが、今後のシリーズもその辺りのパフォーマンスが目標になるのでしょうか。
浜口氏:
そうですね。可能な限り30fpsを目指したいなと常々思っています。今後の『FFVII リバース』、さらに3部作目も含めて、そこで安定できるように一生懸命エンジニアがチューニングをおこなっているので、楽しみにお待ちください。
リメイクシリーズ第1作目に追加エピソードを収録した『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)およびPS5/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S向けに発売中。また第2作目である『ファイナルファンタジーVII リバース』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5向けに発売中だ。6月3日にはNintendo Switch 2/Xbox Series X|S向けにも発売予定。
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