大ヒット農業シム最新作『Farming Simulator 25』ではなぜ「アジア推し」なのか。日本の農機メーカーとの関わりなどを、開発元スタッフに訊いた

GIANTS Softwareが手がける農業シミュレーションシリーズの最新作、『Farming Simulator 25(ファーミングシミュレーター 25)』。本作にアジアの農場が登場した経緯など、さまざまな質問に対する回答を開発元スタッフから頂いた。

GIANTS Softwareが手がける農業シミュレーションシリーズの最新作、『Farming Simulator 25(ファーミングシミュレーター 25』が11月12日に発売された。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けとなっており、国内向けにはセガがパブリッシングを担当している。

本作は発売されてさっそく、わずか1週間で売り上げが200万本を突破するなど好調なスタートを切っている。また本作の新要素として、東アジアのマップがシリーズで初めて導入されたことに伴う水田での稲作が導入されている。日本の農機メーカーの機械も変わらず続投しており、最新作は日本のユーザーにも親しみやすい要素が盛りだくさんで登場していると言ってもよいかもしれない。

そんな本作について、弊誌ではメールインタビューを実施。開発元のGIANTS Software にてマーケティング・広報の責任者を務めるMartin Rabl氏より、最新作『Farming Simulator 25』ならではの要素や、本作にアジアの農場が登場した経緯、そしてシリーズが続く中で大切にしつづけていることなど、さまざまな質問に対する回答を頂いた。

Martin Rabl氏

『ファーミングシミュレーター 25』での“進化”

――本作は『ファーミングシミュレーター 22』と比べて、どういった点が大きく進化しているのでしょうか。

Martin Rabl氏(以下、Rabl氏)
本バージョン最大の特徴のひとつは、GIANTS Engine 10のアップグレードによる、グラフィックおよびパフォーマンスの大幅な向上です。さらにダイナミックや動きを実現した霧、多彩な表情を見せる雲や柔らかな影の表現によって、特に朝の時間帯には独特の雰囲気を味わうことができ、より深い没入感を楽しめるようになりました。農機や環境要因を基に、詳細な計算で反映される土壌変形機能も導入されました。新たな作物や家畜、生産ラインも加わり、前作よりも多様で現実感のある農業シミュレーションが体験できるようになっています。

――農業以外にも林業や畜産業など、さまざまな第一次産業が体験できるのもシリーズの魅力だと思います。本作ではどのような発展を遂げているのでしょうか。

Rabl氏:
このシリーズは、林業や動物飼育、さらなる生産チェーンを取り入れ、産業の範囲を着実に広げています。『ファーミングシミュレーター 25』では、東アジアのマップに建設できる寺院など、建設エリアも拡充されました。さらに新たな建築プロジェクトも加わり、プレイヤーは農家や小屋が自由に作れるようになりました。そしてセメント工場を新たな生産拠点として導入し、これによりオープンワールドのさらなる充実化を実現しました。伝統的な活動を超えた、広範なバーチャル農業エコシステムが形成されています。

――稲作やアジア地域マップの登場など、“アジアの農業体験”が本作の特徴の一つであるようにも思います。どのような経緯で今回、実装されたのでしょうか。

Rabl氏:
稲作、そして東アジアマップの導入は、本シリーズの新しい可能性を広げ、これまでにない農業シミュレーション体験を提供するための決断でした。米作りには、水を溜める境界線に囲まれた畑という特殊な仕組みを必要とするため、プレイヤーにとって新たな課題を生み出します。世界中のプレイヤーが、各地域に根付いた農業の新たな側面を体験できるようにするという目的の一環として、今回この新要素が加わりました。

日本ユーザー向けの“嗜好”への尊重と理解

――クボタ農機、井関農機といった日本国内の農機メーカーが作中に登場するのも特徴だと思います。日本の農機メーカーとは本作を通してどのような関係を築いているのでしょうか。

Rabl氏:
GIANTS Softwareは、クボタやイセキなど、日本を代表する農業機械メーカーをはじめ、世界中の農業機械メーカーと密接な関係を築いています。これらのパートナーシップは前作でもすでに確立されており、その延長として、本作でも再コラボレーションを実現できました。

開発チームは両社と密接に連携し、ファンや愛好者の期待に応えるため、機械のディテールまで忠実に再現することに力を注いでいます。開発にあたっては両社からの綿密な協力も頂いており、GIANTS Softwareがいかにリアリズムとブランドの信頼性を追求しているかが反映されているものだと思っております。アジア圏のファンの方々にも、国内大手企業の農業機械の登場を楽しんでいただきたいですね。

――本シリーズは日本でもマニアックなファンが多い印象を持っています。開発者さまからの目線で、日本での人気をどのようにとらえていますか。

Rabl氏:
現在世界的にシミュレーションゲームへの関心が高まっており、日本の市場にもそれが反映されていると感じています。献身的なファン層は開発陣にとっても重要な存在なため、アジア由来の農業要素や現地で名高い農機ブランドを取り入れるなど、文化的に関連性のある機能を提供することで、日本ユーザーの嗜好への尊重と理解を深めることを目指しています。また、GIANTS Softwareにとって、長い歴史と卓越した実績を持つセガとのパブリッシングの提携も、非常に喜ばしい機会である考えています。

――欧州市場では昔から”職業シミュレーター”というジャンルの人気が高い印象がありますが、日本のゲーマーからすると意外に思われる方が多いと思います。

Rabl氏:
欧州、特にドイツ語圏では確かに、技術的かつ細部の再現度が高いシミュレーションゲームは文化的に好まれる傾向にあります。バーチャル空間の中で体系的なタスクや、実在する職業を体験することを楽しむプレイヤーにとって、『ファーミングシミュレーター』のような“職業シミュレーション”系ゲームは非常に魅力的です。また、再現度の高さ、ルーティン、経営ベースのゲームプレイに対する大衆の人気も要因の一つかと思います。

農業に対するこだわりと、シリーズが大事にするもの

――農業部分のリアリティはどのように追及しているのでしょうか。

Rabl氏:
開発チームは、農業企業や実際の農業専門家と連携し、本物さながらのリアルさを作り込んでいます。例えば、『ファーミングシミュレーター 22』では、実際のスマート農業技術を取り入れた精密農業DLCを導入しました。専門的な知見を基盤とすることで、ゲーム内の農業メカニクスに実際の農業慣行を反映し、プレイヤーに学びの体験とエンターテインメントを提供しています。またチーム内には、家族や友人の農場で実際に働く仲間もいるので、時間が許す限りその実際の経験を活かすようにしています。

――昨今においてシミュレーター系ジャンルがブームになりつつあるなか、『ファーミングシミュレーター』はその先駆けともいえるシリーズだと思います。シリーズを展開し続ける中で、ずっと大切にしつづけている要素などはありますでしょうか。

Rabl氏:
ゲームプレイにおけるリアリティ、プレイしやすさ、そして自由さを優先するよう心がけています。本物さながらの機械や、実際に世界で使われている農業技術、理解しやすい包括的なチュートリアルシステムに焦点を当てることで、新しくプレイする人でも、ベテランプレイヤーでも楽しめるゲームの実現に取り組んでいます。

さらに、ゲーム機能の大半がオプション要素なので、ユーザーは異なる難易度に合わせて各々のゲームプレイをカスタマイズすることができます。この絶妙なバランスにより自由なサンドボックス体験を提供できるため、プレイヤーは厳しいガイドラインなしで農業に挑戦し、様々な成功への道を模索できるというのも大切にしている点です。

――ありがとうございました。

Farming Simulator 25(ファーミングシミュレーター 25)』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。国内ではセガからPS5向けパッケージ版も発売されている。

Jun Namba
Jun Namba

埼玉生まれBioWare育ちです。悪そうなやつはだいたいおま国でした。RPG全般が好きですが、下手の横好きでいろいろなジャンルに手を出しています。

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