初期『PAYDAY』開発者による新作協力強盗FPS『Den of Wolves』は、「ストーリーもきちんと届ける協力ゲーム」かつ「途中で“別ゲー化”する」。一体全体どんなゲームなのか開発者に訊いた
デベロッパーの10 Chambersは3月にかけて、『Den of Wolves』メディアツアーを開催した。開発者たちはどう本作に取り組んでいるのかなど、インタビューの様子をお届けする。

デベロッパーの10 Chambersは3月にかけて、『Den of Wolves』メディアツアーを開催した。同ツアーは、プレイセッションおよびインタビューを通じて、未だベールに包まれた本作の内容に深く触れられる内容となっていた。弊誌は今回、このツアーに参加する機会をいただいた。本稿では『Den of Wolves』開発者たちはどう本作に取り組んでいるのかなど、インタビューの様子をお届けする。なお、別記事では本作のプレイレポートをお伝えしている。
『Den of Wolves』は、最大4人でのオンライン協力プレイに対応する強盗FPSだ。舞台はAIハッキングツールが世界経済を崩壊させ、人間の脳を利用した非人道的手段による対抗手段が講じられる近未来。プレイヤーたちは「犯罪起業家」となり、破壊工作・強奪・暗殺などあらゆる仕事を遂行していく。
本作を手がける10 Chambersは、スウェーデンを拠点とするデベロッパーだ。ゲーム開発者のUlf Andersson氏らにより立ち上げられた。同氏は、『PAYDAY』および『PAYDAY 2』にゲームデザイナーとして携わった、いわば強盗FPSの名手である。10 Chambersとしては、ハードコア協力FPS『GTFO』をリリースし高い評価を獲得。そんな10 Chambersが手がける新たな強盗FPSである『Den of Wolves』には、ジャンルファンから熱視線が注がれているわけだ。
東京のUnity Japan Officeにて開催された今回のメディアツアーでは、プレアルファ版のプレイセッションの後に開発者インタビューを実施。ナラティブ&オーディオ・ディレクターのSimon Viklund氏と、コミュニケーション・ディレクターのRobin Björkell氏に、さまざまな話を訊けた。

──よろしくお願いいたします。まず、本作開発にあたってもっとも苦労している、または挑戦となる部分はどこでしょうか。
Viklund氏:
さまざまな挑戦的要素がありますが、ゲーム開発にテクニカルな難しさはつきまといます。たとえば本作では、4人による協力プレイをサポートしつつ、ストーリーも伝えなければなりません。当然ながらシングルプレイヤーゲームの方が物語を伝えるのは遥かに簡単であり、マルチプレイで同じことをするのは大きなチャレンジとなります。また、マッチングシステムやスムーズなマルチプレイなど、ネットワーク面も技術的挑戦になるでしょう。
そして個人的ではありますが、最大の挑戦は「インポスター症候群(*1)」ですね。「自分にもう一度同じことをできるのか?(*2)」「『PAYDAY』のような曲を作れたのは運がよかっただけで、自分の本当の実力ではなかったのでは」だとか考えてしまいます。個人的にも、10 Chambers全体としてもたくさんの挑戦がありますよ。
(*1) インポスター症候群とは、周囲から高い評価を受けたり実績を残したりしても、自分の実力を過小評価してしまう状態のこと。
(*2)Viklund氏は『PAYDAY』などで作曲を手がけ、高い評価を得ている
──ありがとうございます。『Den of Wolves』では攻略にさまざまなアプローチがあり、仲間のプレイヤーたちと事前に“強盗計画”を立てる必要もありそうです。今回のプレイセッションでは大きい紙のマップで開発者のみなさんと計画を立てましたが、マルチプレイでもこういった計画立てをサポートする仕組みはありますか(プレイセッション記事)。
Viklund氏:
今回のプレイセッションでは「紙で計画するのが面白いだろう」と考えてそのようにしましたが、当然ゲーム内ではそのデジタル版のようなかたちでプレイ計画を立てられます。その全体の流れについて説明するには……視覚的に説明した方がよさそうですね。

Viklund氏:
たとえば、『PAYDAY』ではプレイヤーは固定されたルートを進むだけでした。しかし、『Den of Wolves』ではプレイヤーはさまざまなミッション(Prep missions)を選び、最後のMain heistに挑むことができます。最後のheistで金庫に入らなければいけないならば、準備段階で爆薬を手に入れて、ハッキングにより建物の設計図を入手し爆破箇所を割り出すかもしれません。あるいは、まったく別の方法で金庫に入ることができるかもしれません。あなたがさまざまなミッションをこなすことで、そうした多彩なアプローチが実効可能になっていくわけです。
なので、最終的にどう攻めるかはプレイヤーのたくさんの選択にかかっていますし、キャンペーンのような流れになっています。ストーリーラインもさまざまに変化し、プレイするたびに変化する可能性があります。その中でどういった道を辿るか、「最後のheistを思ったとおりに進行させるには、どういったアプローチと準備が必要か?」という点は、ロードアウトメニューや準備フェーズでチームと相談できます。

Viklund氏:
そして、マルチプレイではいわゆる野良のプレイヤーに入ってもらえますし、入れないようにも設定できます。我々はできるだけマルチプレイのハードルを下げて、言語の壁やスキル差に関係なくいろいろなプレイヤーが一緒に遊べるようにしたいと考えています。その一方で、上手いプレイヤーがひとりで全部進めてしまい、あなたからクリアの喜びを奪うようなことも防ぎたいと思っています。
なので、よそからの参加プレイヤーは「傭兵」のような立ち位置になります。あくまでも強盗計画を遂行するのはあなたで、参加プレイヤーはあなたを守るための助っ人といったかたちですね。協力プレイのハードルを下げつつ、どのように強盗計画を進めるか、プレイヤー自身が選択できるようにしています。そして具体的にいえば、そうした選択をするメニューが用意されています。とにかくストーリーをどう進めるかはあなたが主導権を握ることになります。
──つまり、プレイヤーが「傭兵側」として参加することもできると。
Viklund氏:
そうです、たとえば友達とプレイする約束まで1時間あるとしたら、その待ち時間の間にオンラインでよその強盗計画に助っ人として参加できます。つまり、あなたは自分のための強盗計画を進めつつ、ほかプレイヤーの強盗計画にも参加できるわけです。

Viklund氏:
そうしてストーリーを進めていくと、その結果を最後のheistで目の当たりにすることになります。そこまでプレイしてきた準備ミッションで起こした出来事や、まわりの噂として聞こえてくるんですね。プレイヤーの立場になると、嬉しい演出ではないかと思います。プレイヤーの選択が、実際に周りの世界に影響を与えているように感じられるのではないかと思います。
またこれは、開発側としてもよりストーリーを伝えやすい手法となります。たとえば『GTFO』では、ターミナルでストーリーに関する文章を読むことができました。しかし、あなたがチーム内で唯一そのストーリー要素に興味があるプレイヤーだった場合、ほかのプレイヤーたちはどんどん先に進んでいき足並みが揃わなくなります。なので、『Den of Wolves』ではFPSとしての流れを損なわず進行し、後からメニューにて詳しく情報を得られる形式になっています。
そしてPrep missionsを選ぶ自由度はありますが、ストーリーライン自体は、大きく枝分かれするわけではありません。Main heistの目的は一定しており、そこに向かって盛り上がっていくキャンペーンのような形式になっています。
──配信開始時点では、Main heistは何種類ほど実装予定ですか?
Viklund氏:
早期アクセス配信開始時点では、1種類になるでしょう。というのも、たくさんのPrep missionsを制作しロジカルに繋げ、Main heistでの結果に反映していくのは、とても複雑でチームにとっても大変な作業です。なので早期アクセス配信開始時点では、ひとつのストーリーラインのみを用意するかたちになります。
とはいえ、もちろん正式リリース時には複数のMain heistを用意しますよ。ただ、何個を用意できるか見通しを立てるのは難しいです。というのも、ストーリーラインはたとえば「12個のPrep missionsとMain heist」といった構成も「2個のPrep missionsとMain heist」といった構成もありえます。それは、開発チームが伝えたい物語などによって左右されますから。いずれにせよ、最初はひとつのMain heistを提供することになります。

──エイミングやFPS自体が苦手なプレイヤーでも、チームに貢献することはできますか。
Viklund氏:
そうですね……(苦笑)本当に正直にいえば、難しいかもしれません。『Den of Wolves』は『GTFO』ほどハードコアな高難易度ではありません。しかし、開発チームが想定しているのは、FPS経験をもっているプレイヤーです。『Den of Wolves』は初めてプレイするFPSとしてはおすすめしませんし、“激ムズ”ではないものの、チャレンジを提供する難しいゲームとして設計されています。ただ、本作にイージーモードや強烈なエイムアシストは存在しませんが、初心者でも挑戦すること自体は可能です。
──本作におけるファッションなどのデザイン・スタイルは出色です。マスクや衣装の変更など、コスメティック要素もありますか。
Viklund氏:
はい、自己表現もゲームの一部です。プレイヤーはさまざまな衣装やマスクを選んで組み合わせられます。また、将来的にはゲーム内課金での販売やゲームプレイのなかでのドロップのほか、ミッション完了報酬などでもコスメティックアイテムが得られるかもしれません。
本作の舞台となるミッドウェイ・シティでは、いくつかの異なるファッションスタイルが見られます。そうしたスタイルは都市のストリートカルチャーなどに根ざしており、背景をもったデザインとなっています。また、いつかゲーム内の衣服を実際に現実で買えるような展開も考えられます。ミッドウェイ・シティが現実の場所であるかのように感じられるようにしたいと思っています。
──本作に実装された要素のなかで、もっとも自信がある部分はどこですか。
Björkell氏:
すくなくとも「もっとも興味深い」要素はThe dive(*)だと思います。また個人的にですが、全体的に深刻なトーンで、かつシリアスに物語が語られる点ですね。そうした世界観のゲームも多いですが、どこか皮肉めいたトーンやコメディー調の要素が入りがちです。本作は一貫してシリアスでダークな点がクールだと思っています。
(*)対象の脳に潜入し、情報を盗み出すパート。ゲームプレイとしては、銃撃戦からパルクールアクションに移るなど、突然別ジャンルのゲームに突入するようなかたちになっている。プレイレポート記事で感触をお伝えしている。
Viklund氏:
私はThe diveですね、技術面というより着想として評価しています。プレイヤーをミッション中に、まったく別の場所にしばらく飛ばしてしまい、現実に戻ればミッションが継続するわけです。プレイヤーの目標としては、The diveを通じて情報を得たり現実の鍵を解除したりするわけですが、これはストーリーの伝達手段にもなります。多彩なロケーションにプレイヤーを連れていけるのです。

Viklund氏:
今回のビルドでは、浮かんだプラットフォームのなかでパルクールアクションをするかたちでした。しかし、The diveはどんな状況でもプレイヤーを連れて行くことができ、そこが利点です。たとえば、ホラーゲームにしてしまうとか。プレイヤーたちは迷宮でモンスターに追われ、出口を見つけるのがクリア条件になるなどですね。また、一発で死亡するミリタリーシムのような、まったく別タイプのシューターをプレイさせることも可能でしょう。
また、The diveはリスクが低く、失敗しても「最初からやり直し」とはなりません。The diveから追い出されるだけで、現実世界で生き残っている限りは何度でも挑戦できます。感覚としては、ボス戦のようなものでしょうか。The diveはあなたの予想もつかない、ほとんど別ジャンルのゲームにでも連れて行ってくれますし、とにかく友達と協力して遊ぶのが楽しいなら何でもありです。パズルをしたり、現実とThe diveの中でステルスと銃撃戦を交互にやってもいい。
Viklund氏:
なので、The diveはいわば息抜きの時間のようにもなります。開発する側としても、スナック感覚の小さな世界を作れるThe diveは興味深い題材です。今回のプレイセッションでは崩壊した世界でしたが、森や山頂、お城、バンカーといったロケーションや、たとえば日本のお寺なども、その部分だけ作れば盛り込めるわけです。比較的小さい労力で、短く興味深い体験を作れるのです。これは開発者にとっても楽しく、とても触発されることです。
こうしたアイデアはもちろん映画の「マトリックス」からも影響を受けています。また、仮想現実に入るというコンセプト自体は90年代の映画「イグジステンズ」から描写されており、SF映画や小説・コミックなどでも描かれてきました。このアイデアはゲームに導入することで、開発者の創造性も開花させてくれました。
──好きな武器・装備やロードアウト(装備の組み合わせ)はなんですか。
Björkell氏:
私は『グランド・セフト・オートIV』では近接地雷が大好きでしたが、『Den of Wolves』ではこれというロードアウトはまだ見つけられていません。でもシールドは好きですね、だってかっこいいでしょう?ガジェットではシールドが好きで、長くテストプレイしていますが、まだお気に入りの武器は見つけられていません。
Viklund氏:
私のお決まりのロードアウトはサブマシンガンと、DMRといった連射速度が低めのプライマリー武器の組み合わせですね。また、リボルバーで一発で仕留めていくのも好きです。ちなみに、本作に登場する武器はゲーム内の架空の企業によって作られている設定です。なので、武器メーカー同士の抗争に絡むようなミッションも実装されるかもしれませんね。
また、そうしたミッションの結果、敵対した企業の広告が世界から消えるようなこともあるかもしれません。キャラクターは、そうしてゲーム内に存在する企業製の服を着て、企業製の武器を使い、企業が運営するビルに住んでいるわけです。そうして世界にリアリティを感じられるよう、熱心に取り組んでいます。

──日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Viklund氏:
『GTFO』がこんなに人気になるとは我々としても予想しておらず、特に日本のファンたちが同作を楽しんでいる様子で驚きました。日本の『GTFO』プレイヤーたちは、国内ですばらしいコミュニティを築いてくれました。
『GTFO』ファンなら、ぜひとも『Den of Wolves』をチェックしてみてください。また、過去作ファンでなくとも、FPSゲームファン、特に協力プレイ好きであれば、『Den of Wolves』に注目してほしいと思っています。きっと、そうしたプレイヤーにうってつけの作品になるでしょうから。だから、ぜひ一度はプレイしてみてください。
──ありがとうございました。

なお、このインタビューとあわせて、『Den of Wolves』プレアルファ版を体験プレイすることができた。開発陣が自信を見せるThe diveの様子や、全体的なゲームプレイの印象が気になる方は、プレイセッション記事を確認してほしい。
『Den of Wolves』は、PC(Steam)向けに発売予定だ。
[聞き手・執筆:Sayoko Narita]
[編集:Ayuo Kawase]
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