『バイオハザード レクイエム』は『バイオ7』系「探索ホラー路線」なのに間口広め。怖さ全開でも新規を見据える“仕掛け”とは

『バイオハザード レクイエム』の中西晃史ディレクターと熊澤雅登プロデューサーに向けておこなわれた、合同インタビューの模様をお届けする。

来年シリーズ生誕30周年を迎える『バイオハザード』シリーズ。その最新作となる『バイオハザード レクイエム』が周年記念日となる2026年2月27日に発売される。このたび東京ゲームショウ2025にて、本作品のディレクターを務める中西晃史氏、並びにプロデューサーを務める熊澤雅登氏に対して、複数メディアによる合同インタビューが執り行われた。本稿ではその模様をお送りしよう。

『バイオハザード レクイエム』(以下、レクイエム)は『バイオハザード』シリーズ最新作。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch2/Xbox Series X|Sで、価格は未定。発売日は2026年2月27日となっている。プレイヤーはFBI職員グレース・アッシュクロフトとして、原因不明の病気に犠牲者について調査を進めるなか、8年前に母が死亡したレンウッドホテルを訪れ、過去と向きあうことになる。『バイオハザード2』『バイオハザード3』などの舞台となり、政府による“滅菌作戦”で爆破された合衆国中西部の都市「ラクーンシティ」も登場するようだ。

左:中西晃史氏、右:熊澤雅登氏


――今回のデモ版はホラー色が強かったですが(弊誌試遊プレイ記事)、ゲーム全体としてアクションとホラーの比率はどうなっていますか?

中西氏:
今回のデモは、主人公のグレースがまだ戦う手段を持たない序盤で、逃げ隠れするしかないホラーに特化しています。ただ、ゲーム全体としては、いつもの『バイオハザード』シリーズ同様、ゲームが進行するにつれて武器やアイテムを入手し、戦えるようにはなります。

本作のプレイスタイルに関して言及しておくと、シリーズには『バイオハザード4』や『バイオハザード5』『バイオハザードヴィレッジ』のようなガンシューティングアクションに重きをおいた作品群と、初代『バイオハザード』『バイオハザード RE:2』『バイオハザード7』のように探索体験に重きをおいた作品群があります。 『レクイエム』は後者、スローペースな探索型です。初代や『RE:2』のように、限られたリソースで感染者を「倒すか、避けるか、後に回すか」を考えながらプレイする、閉塞感のある探索型のゲームプレイを提供したいと考えています。

――となると、『ヴィレッジ』のような、巨大なモンスターと派手に戦うボスバトルは控えめなのでしょうか?

中西氏:

ボスバトルはもちろんあります。しかし、ガンシューティングアクションを重きを置いている作品群のように、どんどんゲームを進めながら派手に敵を倒すというよりかは、初代や『RE:2』のように閉鎖空間で探索範囲を広げながら、プレイヤーが工夫して乗り越えていくスタイルです。

――デモ版の時点では怖がって倒れたりするグレースですが、ゲームの進行に応じて動きが変わったりするのでしょうか?

中西氏:

操作感が若干変わります。ホラーが全面に演出されるステージは、「もどかしさ」や「思うように動けない」という感覚を意図的に出して、悪夢をさまようような雰囲気に寄せています。

――ユーザーの方々にはホラーゲームが苦手な人もいますよね。主人公のグレースを「怖がり」な設定にしたのは、プレイヤーが自己投影しやすくしている……つまり新規層の視点を意識したからでしょうか?

中西氏:

そうですね。グレースは、おぞましいものを見るのが初めてという設定です。そのため、「怖がって楽しめないんじゃないか?」「シリーズ未経験だ」という方でも、グレースと同じ視点で恐怖を体験し、乗り越えていく過程を楽しめるようにと考えました。

『バイオハザード』シリーズの大きな魅力は、最初はめちゃくちゃ怯えていたキャラクターが、極限状況下で経験を積むことで強くなり、敵を打倒していくところです。グレースも最初は怖がりますが、最終的には理不尽に対しブチギレて、敵を倒せるようになる。この成長過程をプレイヤーと一緒に経験できるのが、『レクイエム』の魅力の一つです。

――今回登場する武器のバリエーションについてはいかがでしょう。

中西氏:

トレイラーでもハンドガンやリボルバーが見られますね。華奢な女の子が無骨なリボルバーで戦うというロマンも込めています。もちろん、それ以外にも銃以外の戦闘手段や、ナイフなどの近接武器も定番として出てきます。新しい怪物の排除手段もありますよ。

――本作はシリーズ過去作の設定も受け継がれていますが、復習は必要になりますか?

中西氏:

過去作を一切知らなくても、『レクイエム』のストーリーと体験は100%楽しめます。その上で、過去作に出てきたものを「知っていたら、より深く楽しめる」という設計にしています。本作をプレイした後に過去作をプレイしても、気づきがたくさんあって面白いと思いますよ。

――主人公の母はアリッサ・アッシュクロフトは『バイオハザード アウトブレイク』シリーズに登場したキャラクターですが、そうした設定はゲーム内でわかるようになっていますか?

中西氏:

『アウトブレイク』シリーズのあらすじなどは入っていませんが、本作をプレイする上では知らなくても困らないです。ただ、アリッサについて知っていると、より深く物語に感情移入できると思います。いまソフトを入手するのは難しいので、ぜひ、バイオ好きの方に聞いてみてください!30年もシリーズを続けてますから古くからのファンもいらっしゃいますし、コミュニティの交流のきっかけになればと思います。

――主人公グレースの「分析力」設定は、ゲームのシステムに何か関与していますか?

中西氏:

キャラクターの設定を落とし込んだようなゲームシステムはありません。怖い状況、少ないアイテム、それをプレイヤー自身が頭を使って乗り越えていく、というデザインを重要視しています。

――『バイオハザード』といえばやりこみという印象があります。本作にもクリア後の周回プレイが楽しめる設計になっていますか?

中西氏:

周回プレイをしてもらうための要素は、もちろん『レクイエム』でも用意しています。中でも過去作と一つ違うのは、三人称視点と主観視点を切り替えられることです。視点ごとにプレイの感触がかなり違うので、トロフィーコンプリートのついでに「次は違う視点でやってみよう」という楽しみ方もできます。同じ物語の内容でも、見え方が全然異なってくると思いますよ。

――gamescom 2025でも出展されてましたが、日本と海外では一人称と三人称の使用率に関して違いは感じましたか?

中西氏:
日本は三人称視点を利用する方が多く、欧米だと一人称視点を利用される方が多い印象ですね。

――それは何故だと思います?

中西氏:

文化的背景が理由としては大きいでしょうね。たとえば、家庭用ゲーム機でRPGのプレイに親しんできた層が厚いか、PCで『DOOM』のようなFPSをプレイした層が多いかといった差が表れているのではないかと。ただ、日米問わず『Minecraft』や基本プレイ無料のシューターゲームに親しんでいる世代も本作のデモ版に触れているでしょうし、いま挙げた文化的な括りは意味を成さなくなっているのかもしれない……とも思っています。

――デモ版をプレイして、映像演出を中心に、恐怖表現にかなりこだわっていると感じました。前作から比較して、特にビジュアル面でどのような工夫をされていますか?

中西氏:

過去作からパワーアップしている部分で一番分かりやすいのは光と闇の表現ですね。ホラーにとって暗闇の階調や光の見え方は非常に重要なので、今回はレイトレーシングやパストレーシングといった技術を使って、より現実味のある表現を目指しています。先日行われたgamescom 2025においては、「くもりガラス」の描写がリアリティ抜群だ!というフィードバックを頂きました。オブジェクトの1つ1つ、細かいところにまでこだわっています。

熊澤氏:
恐怖表現で言うと、デモでも見られたグレースの汗の表現など、細かい部分にもこだわっています。怖がりなキャラクターであるグレースの感情の動きが、プレイヤーの皆さんの感情を煽るような表現になっているかと思います。

――本作はマルチプラットフォーム展開ですが、ハードごとの体験差が出ないような工夫はあるのでしょうか。

中西氏:

本作に限らず、昨今の弊社における開発の設計思想として、初めからスケーラブルに作っていく方針があります。ハードウェアごとにゲームの要素は一切変えることなく、各ハードのスペックに合わせて、解像度やフレームレート、レイトレーシングのON/OFFといったオプションで最適化しています。ゲーム体験は全て同じで、描画などをオプションで調整していくという作りです。使用するハードウェアによってプレイヤーの皆さんの体験が変わることはありませんので、ご安心ください。

――来年2月は『バイオハザード』の30周年という大きな節目ですが、開発者として、この30周年でやってみたいことは?

熊澤氏:

これからも『バイオハザード』シリーズを続けていきたい気持ちはあります。作品を通じて新しい体験をユーザーに届けたいという思いが強いです。今は『レクイエム』の開発に集中していますが、何か新しい体験を考えたいなと思っています。

中西氏:
僕も今はとりあえず『レクイエム』を送り出すことに集中しています(笑)

――ありがとうございました。

バイオハザード レクイエム』はPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch2/Xbox Series X|S向けに2026年2月27日に発売予定だ。

[聞き手・執筆・編集:Takayuki Sawahata]
[編集:Hideaki Fujiwara]

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