硬派戦略シム『大戦略SSB2』は、エロ・グロ一切なしなのに「表現規制版」がある。“Steamで発売できなかった”前作を越え、意地でも審査を通した老舗スタジオの工夫
Steamでの審査で認められず発売できなかった『大戦略SSB』に対して、新作『大戦略SSB2』は発売が確定しているという。その裏側を訊いた。

システムソフト・ベータは、現代兵器ウォー・シミュレーション『大戦略』シリーズの最新作『大戦略SSB2』を2026年2月26日に発売する。対応プラットフォームはPC(Steam/Windows)PS5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch。
『大戦略SSB2』は、陸海空の兵器を指揮するシミュレーションゲーム『大戦略』シリーズの最新作だ。プレイヤーは戦車や戦闘機といった兵器ユニットを生産し、移動や攻撃などの指示を与え、基地を占領しながら戦場を掌握していく。前作『大戦略SSB』からシリーズの新展開と位置づけられており、本作では多数の新要素が盛り込まれている。
このたび弊誌は本作を開発するシステムソフト・ベータの開発者にインタビューする機会に恵まれた。同社は前作『大戦略SSB』において、Steamでの審査で認められず発売できなかった経緯がある。なぜ審査を通らなかったのか、そして『大戦略SSB2』ではどのような工夫で乗り越えたのか。本稿ではシリーズにおける規制の変化など話を訊いた。なお弊誌は別のインタビュー記事で『大戦略』シリーズの歴史や新作でのこだわりを訊いているので、そちらもあわせてチェックしてほしい(該当インタビュー記事)。
時代の変化によって生々しさが薄れてきた
―― 自己紹介をお願いします。
黒木 孝行(以下、黒木)氏:
黒木と申します。本作のディレクターを担当しております。よろしくお願いいたします。
鶴田宗生(以下、鶴田)氏:
歴史担当者兼取締役の鶴田と申します。管理部の責任者も務めています。いわゆる古株で、システムソフト、システムソフト・アルファー、システムソフト・ベータと、長年にわたって『大戦略』などに関わってきました。実際はそれ以外の製品をメインで担当してましたが、現場にずっといましたので、『大戦略』の昔の話や、これまでの歩みについて、いろいろとお話しできればと思います。
平岡三知(以下、平岡)氏:
代表取締役社長の平岡と申します。立場上、優等生的なコメントをせざるをえない部分もありますが、遠慮なく突っ込んだ質問をしていただければと思います。
―― 『大戦略』シリーズは実在兵器を扱う作品ですが、今の時代では作りづらさはないですか。兵器に魅力を感じつつも戦争を肯定するわけではないというスタンスも出す必要がある。そのあたりも含めて時代の変化による難しさはあるのでしょうか。
鶴田氏:
現代の戦争は、たとえばドローンや長距離ミサイルによって、攻撃側が損害を抑えるように動きます。戦闘機同士が戦うような状況は今はほぼないんですね。
一方で『大戦略』は、架空世界のシミュレーションゲームです。ミサイル戦争とは全然違って、兵器を扱った面白いゲームとして遊んでいただくためのものです。だからこそ、現実の戦争とは違うということは示せていると思います。

――なるほど。兵器を扱っても生々しくないのは、時代の変化のおかげかもしれないですね。
鶴田氏:
そうですね。以前よりもそういう感覚になりましたね。
――そういう意味では、何年代くらいが表現として苦慮されましたか。リアルすぎるみたいな苦情はありませんでしたか。
鶴田氏:
苦労したのは、『大戦略III』や『大戦略IV』頃の1990年代前半ですね。当時は湾岸戦争が起きていた時期で、私も含めて戦争を知らなかった人たちが、実際の戦争を初めて目の当たりにしました。特定の地域を扱うのをやめてほしいといった指導を国から受けたこともありました。
当時のシステムソフトは上場しようとしている時期だったので、余計に表現は控えめになりました。でも控えめになったことで、ゲーム部門が独立してシステムソフト・アルファーになり、その後システムソフト・ベータになるんですが、開発としてはやりやすくなりました。時事性の高い兵器をすぐに入れようとサッと判断できるのは、今の会社になったからこそですね。
今作はSteam版も発売決定
――前作『大戦略SSB』はSteamの審査が下りず、再提出しても返事がないといった経緯がSteamストアページにて公表されています。我々ユーザーから見ると、たとえばポルノコンテンツではよく聞く話ですが、シミュレーションゲームではあまり聞きません。可能な範囲で何があったのか教えていただけますか。
鶴田氏:
前作では日本近辺、特に日本列島の自治問題を題材にしたシナリオが多く含まれていました。周辺地域の具体的な名前は出してないんですが、Steam側からはセンシティブな題材のため慎重に審査しているという返答がありました。それ以降の進展はなく、現在に至るまでリリースできなかったという状況ですね。

――審査内容について、ある程度の具体的な返答はいただいたのでしょうか。
鶴田氏:
いや、本当に今お伝えしたレベルですね。どこがダメですかと聞いても返答内容は同じでした。
平岡氏:
たぶん特定の地域について、ここがダメなんですかと聞いてもはっきりした返事はもらえないと思います。我々としては東アジアの特定地域を扱ってるので、世界各国でそれを見た人がどう受け取るかという点を、Steam側が憂慮したのかなと推測してます。
鶴田氏:
当時からその周辺地域については、日本でも取り上げられる話題が多かったという背景があるので、デリケートな問題があったのかなとは思ってます。
――なるほど。言える範囲でいいですが、再提出の際にはその辺りの要素も含めて大きく変えたのでしょうか。
鶴田氏:
前作ではかなり変更を加えました。最終的には、周辺地域の要素をすべて削除してます。とはいえ、最初にそういう要素で審査になってしまったことや、既にWindows版やコンソール版がリリースされていたこともあり、削除した要素は分かってしまう。その影響もあって、審査が下りなかったのかなと思ってます。
――審査が下りなかったことを冷静に受け入れてらっしゃるんですね。やはりこういうことに慣れていますか。
鶴田氏:
昔のシステムソフト・アルファー時代も、周辺地域からクレームのメールが届いたことはありました。そういうときに過剰に反応すると良い方向には進まないと思ってます。そのため今回も冷静に対応してましたね。
――そういう意味では、今回『大戦略SSB2』のSteam版についてはリリースできそうですか。
平岡氏:
もう確定です。リリースできます。
――えっ、おめでとうございます。
一同:
ありがとうございます(笑)
――ストアページが公開されても発売前につまずくというパターンはよくあるんですが、今回は発売までの仕込みもしっかり終わっていたと。
平岡氏:
そうです。ストアページは昨年の時点で公開されてますし、マスターアップ版の審査も終わってるのでもう発売できますね。

一般向けゲームなのに無修正版がある
――本当におめでとうございます。とはいえ、今回Steam版とコンソール版に差異はあるのでしょうか。
平岡氏:
まず、兵器のモデルや性能については、すべてのプラットフォームで共通です。遊べるマップも、基本的には同じ内容になっています。Nintendo Switch 2版のみ専用マップが1枚ありますが、それ以外のマップは同じです。
違ってくるのは、ストーリー性を持たせたシナリオモードです。同じマップであっても、日本人の視点で描かれたストーリーを、相手国の立場で読む人がどう受け取るか、という問題があります。プラットフォームによってその影響範囲が変わってしまうため、Steam版については、そもそもそうしたストーリーを付けないという判断をしています。
一方で、兵器は実名で登場し、どの国に属しているかという点については、そのまま表現しています。たとえばFPSやTPSでも一般的におこなわれている表現という前提があるためです。また、コンソール版については、前作と同様に実在の国名や地域名を匿名処理しています。
最後にSteamとは別のWindows版については、我々が独自にパッケージとして出せるので、ある意味“モザイクなし”の実名でシナリオモードが遊べます。とはいえ、マップ自体は全プラットフォーム共通なので、プラットフォームによってコンテンツが削られてるということは事実上ないです。
――なるほど。プラットフォームごとの比較表を見たときに、Steam版はシナリオモードがないので、コンテンツがないと思いがちですが、コンテンツ自体はあるんですね。そこに物語性がないものの、ステージとして遊べるという感じですね。
平岡氏:
シナリオモードの有無という表現は、事実として間違ってないんですが、たしかにコンテンツがないという解釈で伝わってしまうかもしれません。シナリオはマップを遊ぶための動機づけを強める役割なので、それがないと違和感が生まれる部分はありますがコンテンツとしてマップは入ってます。
ただコンソール版を遊ぶ方も、この黒塗りの国名はなんだと感じると思うので、そういう方も含めて、ストーリー自体は我々の公式サイトでお伝えしていくことになると思います。結果として、どのプラットフォームでも遜色ない遊び方をしていただけると考えてます。
――個人的に一般向けゲームで、初めてモザイクという表現を聞きました(笑)ただ、あくまで自主規制ではなく、規制しないと発売できない状況があるんですね。
平岡氏:
黒塗りなので、社内ではノリ弁って呼んでますね(笑)無修正と修正版と一般向けという分け方です。こうした問題は弊社だけの話ではなくて、他社さんでも政治的な部分で表現が問題になる事例が増えてます。とはいえ昔に比べると、お客様もある程度受け入れていただけるようになっている感覚はあります。
前作でも『大戦略SSB2』と同じように、コンソール版では黒塗りで発売したので、お客様からいろいろ言われるかなとは思ってたんですが、そこについてのクレームはありませんでした。黒塗りをどう読み取るかも含めて、しっかりと楽しんでもらってるような印象があったので、今回もそこについてはあまり心配していません。

――個人的には、むしろ真摯に国や地域のイメージを損なわない配慮をされていてちょっと驚きました。
鶴田氏:
昔は略称でやってたんですけどね。A国とか。
黒木氏:
プラットフォームホルダーからの要請もあって、そこからベースが変わり、A国のB地区でC軍みたいな表現が必要になりました。難しいのが、たとえばアメリカをA国と表現するのはNGだったんです。実際に省略できる表現ではダメなので、アメリカなのにB国になったり、もはやどこか分からなくなってました(笑)
鶴田氏:
逆に今の黒塗りの方が分かりやすくなりましたね。
――たしかに省略できるかたちだとほぼ言ってるみたいなもんですね。
鶴田氏:
当時の話ですが、名前は伏せつつも登場人物の画像を結構リアルに描いてたんですよ。それはNGになって、ヒゲを足したり、眼鏡をかけさせたり、修正したというのはありました。
平岡氏:
ある地域の指導者に似てますねとか。
鶴田氏:
日本の総理も本当にそっくりに描いてたんですが、それも連想できるということでNGになりましたね。
――そういう意味では、表現したいものがそのまま出せないという歯がゆさもはありつつも、いろんな工夫が身につきそうですね。
鶴田氏:
たしかに身についてるかもしれません。あとはWindows版がなかったら、すべてを隠した状態で作り上げないといけないんですが、無修正のWindows版があることが、我々にとってはいい方向になってると思います。
前例があったからこその開発
――Steam版については日本語のみですが、どうしても出したいという思いはやはりあったのでしょうか。Steamのみシナリオなしバージョンとはいえ、それを作る工数はゼロではないですよね。
平岡氏:
Steamは事実上のPCのリーディングプラットフォームなので、より多くのお客様に遊んでいただくという意味では、Steam版は非常に重要だと思っています。
――なるほど。前作『大戦略SSB』は言わばひどい目に遭ってますよね。それでももう一度同じ門を叩くのは、気が滅入ってしまいそうですが、どういう心境で臨んだのでしょう。
平岡氏:
絶対通そうという覚悟のようなものはありました。あとはゲームとしての面白さを損なわずにどうやって通すか、そのせめぎ合いですね。妥協とも違って、着地点を見つけ出すという感覚です。
また、2018年に『大戦略パーフェクト4.0』をSteamにてリリースしてますので、『大戦略』シリーズとしての実績はあるんです。そういう意味では、ゲームとして絶対ダメということはないという思いはありましたね。

鶴田氏:
『大戦略』シリーズはずっとPC向けにも展開してますが、PCゲームはSteamという感覚は今のお客様はかなり強いと思います。昔のようにPC版のパッケージを買って遊ぶのではなく、PlayStation 5やNintendo Switchと同じように、プラットフォームのストアから購入してダウンロードする。そういう意味でSteamの存在は大きくて、お客様が遊びやすい、買いやすいというのは我々も実感してます。
――たしかにシステムソフト・ベータさんからは、直近で『天下統一SSB』や『マスターオブモンスターズSSB』などもSteam向けにリリースされていますし、プラットフォームとして馴染みはありますもんね。
鶴田氏:
その『天下統一SSB』や『マスターオブモンスターズSSB』をSteam向けにリリースするときにも、『大戦略SSB』の状況をお伝えしてましたね。確認しますという返答をいただいて、それ以降の進展はないですね。
黒木氏:
逆に言えばこういう前例があったので、Steamでは一度審査が下りなかったらそれ以降は厳しいということも分かりました。前例を踏まえて、『大戦略SSB2』では最初からラインを見極めて開発できましたね。
――最後になりますが、40周年を迎えた『大戦略』シリーズは、今後どのような方向へ進んでいくのでしょうか。今回の新作発売にあたってのメッセージと、システムソフト・ベータとしての今後の展望をお聞かせください。
平岡氏:
まずシリーズ40周年という節目は、遊んでくださるお客様がいたからこそ達成できることなので非常にありがたいことだと思ってます。ただ、40周年だから特別頑張ったということはなく、我々としては毎回一作一作に全力を尽くしてます。もちろん今回はいつも以上に気を引き締めて、買ってよかったと思えるようなものを開発してます。
先ほど申し上げた通り発売日は確定してますし、発売後も何らかの形でアップデートを予定してます。たとえば2025年12月に発表された米国史上最大級の「トランプ級戦闘艦」などを実装予定ですので、長く遊べる作品になっています。実際、前作を2年くらい遊ばれてるお客様から追加要素の要望があり、そういった声に応えるかたちです。『大戦略SSB2』として発売日に完成形のものをお届けしますが、同時にスタート地点でもあるという感覚です。
また、会社として大切にしているのは、戦略ゲームを通して“考える楽しさ”を届けることです。『天下統一SSB』や『マスターオブモンスターズSSB』でも追求してきたので、できるだけ多くのお客様にその面白さを味わってもらいたいですね。将来的にストラテジーといえばシステムソフト・ベータと思える存在になれたら嬉しいです。
最後に半分冗談ですが、我々の親会社が日本一ソフトウェアなので、福岡・博多を拠点とする我々としては「九州一」くらいにはなりたいですね(笑)
――応援しております(笑)ありがとうございました。
『大戦略SSB2』はPC(Steam/Windows)PS5//Nintendo Switch 2/Nintendo Switch向けに2月26日に発売予定だ。弊誌の別のインタビュー記事では、『大戦略』シリーズの歴史や新作でのこだわりを訊いているので、そちらもあわせてチェックしてほしい(該当インタビュー記事)。
[聞き手: Ayuo Kawase]
[編集: Hideaki Fujiwara]
[執筆・編集: Haruki Maeda]
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