「Legendary Creatures 2」は「伝説の生き物2」、「Detained」は「不良少女」。Thermite Games がSteamの自社ゲームに独特な日本語タイトルをつけるのはなぜ?訊いた
なぜ同社は独特の日本語タイトルをつけるのか?メールインタビューでうかがった。

SteamでThermite Gamesが日に日に存在感を増している。パブリッシャーThermite Gamesは2025年『ローンスター』のほか『ハウス・オブ・レガシー』をリリース。立て続けにヒットさせている。また同作は自社タイトルの日本語展開においては、独自の日本語タイトルをつけることが特徴だ。たとえば「Legendary Creatures 2」は「伝説の生き物2」、「Detained」は「不良少女」。Thermite Gamesとはなんなのか?なぜ同社は独特の日本語タイトルをつけるのか?メールインタビューでうかがった。
──Thermite Gamesはどういうパブリッシャーですか。デベロッパーには、自分たちの特徴をどのように説明していますか。
Thermite Games:
Thermite Gamesは、中国・北京とシンガポールに拠点を構えるPC/コンソール向けゲームパブリッシャーです。システム面での遊びごたえがある作品や、個性が際立ったインディーゲームとのパートナーシップを特に重視しています。
Thermite Gamesゲームは、中国人スタッフが多くを占めていますが、アジアの他の国々や欧米など、世界各地域へのパブリッシングも得意としています。実際、当社が手がけているゲームは、中国本土以外の売上がどれも30%〜60%ほどを占めているんです。
私たちは、パートナー作品の魅力と販売ポテンシャルをしっかり引き出すため、チーム全員がそれぞれのタイトルの発売に関わり、そのゲームに合ったユニークなプロモーションプランを作っています。そのため、各タイトルのリリース時期はあえて分散させ、ある期間は一つのタイトルに集中して宣伝を行うようにしています。
そして、「一つひとつの作品を丁寧に育てていきたい」という思いから、年間で契約するゲームの数もあえて絞っているんです。

──会社としての成り立ちの歴史を教えて下さい。設立者はどういうキャリアの人物ですか?
Thermite Games:
Thermite Gamesは2020年に設立されました。コアメンバーは、長年ゲーム業界で活躍してきたベテランばかりで、ほとんどが海外留学の経験や複数の外国語スキルを持っています。そんな背景もあって、海外向けのパブリッシングも自信を持って行えるんです。
創業者の李譞(リ・シュアン)は、もともとアメリカに暮らすインディーゲーム開発者でした。帰国後、「中国の仲間たちが作るインディーゲームを世界に届けたい」という思いから、開発ではなくパブリッシングに軸足を移し、より多くのインディーゲーム開発チームが大きな成功をつかめるよう支援することを決意しました。
そして設立から5年、熱脈ゲームはアジアでもっとも知られるインディーゲームパブリッシャーのひとつにまで成長しました。その背景には、「短期的な利益のために妥協せず、常に最高を目指す」というコアチームの姿勢と、徹底したこだわりの社風があります。
──Thermite Gamesの代表作といえる作品はなんですか?
Thermite Games:
現在日本のプレイヤーの間で特に知名度が高い作品は『ミスト探偵 Tales of the Neon Sea』『不良少女 Detained: Too Good for School』『ローンスター』『伝説の生き物2』ですね。
──なるほど、それらのゲームはなぜ売れたとお考えですか。
Thermite Games:
共通する理由はいくつかあると思います。まずひとつは、ゲームのコンセプトがとてもユニークで、人の目を引く魅力があったこと。
もうひとつは、システム的にも奥深く作り込まれていて、長時間遊べる内容になっていたことです。
この2つの強みを踏まえて、私たちは世界中のプレイヤーに向けて、これらのゲームの魅力を途切れることなく発信し続けてきました。
──ちなみにThermiteといえば、ローカライズした作品もそうでない作品も日本語タイトルがついている印象です。たとえば……
Tales of the Neon Seaを「ミスト探偵」にしたり、
Legendary Creatures 2を「伝説の生き物2」にしたり、
Detainedを「不良少女」にしたり。
日本語タイトルを単なる翻訳にせず独自にしている理由を教えてください。
Thermite Games:
一番大きな理由は、以前から開発者の方々とやり取りをする中で、「タイトルを通してゲームのアイデアや世界観をプレイヤーに伝える」という目標を少しずつ固めてきたことです。
そのため翻訳の際には、開発者としっかりコミュニケーションを取り、ゲームやタイトルに込められた意味をきちんと理解したうえで、特別な意味を持たせた訳を行い、独自の日文タイトルを決めています。こうすることで、開発者とプレイヤーの距離を少しでも縮めたいと考えています。
もうひとつの理由は、ゲームのタイトルがその作品の雰囲気にしっかり合っていて、
見た瞬間に強い印象を与え、覚えてもらいやすくしたいという思いがあります。
──こうした判断は誰がしているのですか?
Thermite Games:
ほとんどの日本語タイトルは、Thermite Gamesの日本向けプロモーション担当が考えています。
たとえば『Tales of the Neon Sea』は、サイバーパンクの探偵物語であり、『ブレードランナー』からも影響を受けています。物語では、霧の中で真実を追い求める正義の探偵を描いているため、「ミスト探偵」という名前を思いつきました。
『Legendary Creatures 2』は、異世界での冒険と生物の収集・合成を組み合わせたゲームです。プレイヤーはファンタジー世界を冒険し、さまざまな生物を集めて仲間にし、進化させ、魔王に挑みます。ゲームの核となるのはまさに“伝説の生き物”たちであり、この点を踏まえ、開発者の了承を得た上で「伝説の生き物2」というタイトルにしました。
『Detained: Too Good for School』は、いわゆる“女子高生シミュレーター”です。プレイヤーは女子高生となって、街で喧嘩をしたり、アルバイトをしたり、日常を体験します。そのため「不良少女」という名前がしっくりくると感じました。さらに、このゲームは2005年発売の『喧嘩番長』からも強い影響を受けており、そこからも“不良少女”という言葉を連想しました。
──なるほど、面白いですね。そういう意味では御社は日本専用のXアカウントもあり、特に日本向けに力を入れていただいてるように思います。シェアも限られる中で、なぜ日本向けに頑張ってくれるのでしょうか?
Thermite Games:
この点に気づいていただけたこと、本当にうれしく思います。
日本はゲーム文化がとても発達していて、日本で人気を集めたゲームは、他の地域でもヒットする可能性が高いんです。ですから、私たちが手がけるタイトルについても、日本の皆さんに認めてもらえることをとても大事にしています。
そのため、私たちはさまざまな方法で積極的にゲームを宣伝し、日本の皆さんとコミュニケーションを取っています。近年では、日本のインディーゲームの存在感がますます高まっていて、BitSummitのようなインディーゲームイベントの規模もどんどん大きくなっています。
こうした背景から、日本のゲーム市場は大きなチャンスにあふれた場所だと考えており、この地域でのプロモーションにも特に力を入れています。
──日本人ユーザーに遊んでほしいゲームを1本選んでください。
Thermite Games:
今いちばん多くの方に遊んでほしいと思っているのは、『農場ローグライク: リバース』というタイトルです。このゲームは『ローンスター』に近い、戦略性のあるローグライク作品で、8月1日にSteam版が発売されました。
発売にあわせて、『幸運の大家様』や『Cat God Ranch』とのSteamバンドルセットも用意していて、セット購入では10%オフになります。
──『農場ローグライク: リバース』、これも強烈な邦題ですね。どんなゲームなんでしょうか。
Thermite Games:
『農場ローグライク: リバース』は、インディー開発者 Zabbo Games が手がける新作です。現在 Steam 上で配信中のデモ版はプレイヤーから高く評価されており、好評率はなんと93%。前作『Another Farm Roguelike(もうひとつのファームローグライク)』は、Steamで423件のレビューが寄せられ、そのうち82%が好評という実績を持っています。
『もうひとつのファームローグライク』は、ランダム生成マップを舞台にした戦略型ファーミングゲームで、多彩な遊び方を楽しめるのが魅力です。プレイヤーの目的は、どんどん上がっていく地代を払えるだけの資金を稼ぐこと。小さな農地からスタートし、スキル構築や能力アップを重ねていくうちに、やがては大規模な農場を経営できるようになります。多様な稼ぎ方が用意されているので、きっと自分なりの“成り上がりルート”が見つかるはずです。
本作は時間制限がなく、地代は7日ごとに支払う仕組み。そのためファーミングゲームとしてはテンポが非常に軽快です。何十時間もかけなければ大農場を築けない、なんて心配は無用。マップ間の移動に時間を取られることもなく、SNS要素もありません。クリック操作だけで建設・採集・収穫・アップグレードまで完結できるので、純粋に農場経営の醍醐味に集中できます。
――ありがとうございました。