Steamデッキ構築オートバトル『コマンダークエスト』が想定以上に売れているらしい。売れてる理由や日本市場への思いなど、開発元にいろいろ訊いた

『コマンダークエスト』はデッキ構築型ローグライクと、リアルタイムストラテジーが組み合わさったゲームだ。

KRAFTON傘下のFlyway Gamesは『コマンダークエスト (Commander Quest)』を配信中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、ゲーム内は日本語表示に対応している。

『コマンダークエスト』はデッキ構築型ローグライクと、リアルタイムストラテジーが組み合わさったゲームだ。プレイヤーはリチャード一世や諸葛亮など、歴史上の英雄を指揮官として選んでファンタジー世界に出撃。さまざまなユニットや戦術カードをデッキに加えて強化しながら、ターン制のオートバトルを戦っていく。

約1年に渡って無料デモ版が運営されてきた本作は、今年の4月4日に正式リリースされた。すると好調な売れ行きを記録し、販売目標を早々に達成。開発元の想定以上の反響を得ているという。今回弊誌は、そんな開発元のFlyway Gamesへメールインタビューを実施。本作の魅力や好調の理由、「フィードバック重視」の開発方針などについて話を訊いた。

かなり好調

──Flyway Gamesについて紹介をお願いします。

開発チーム:
こんにちは。Flyway Gamesは、『PUBG』を開発したKRAFTON傘下の12番目のクリエイティブスタジオであり、プレイヤーからのフィードバックを中心に開発を進めることを、私たちの開発理念としています。

この理念を体現するために、1年以上にわたり無料デモを運営し、ユーザーのご意見を収集・改善に反映する「オープン開発」(長期デモ公開+意見反映型の開発スタイル)を実践してきました。その結果、正式リリースに至ったのが本作『コマンダークエスト』です。

同様の方式は、日本のユーザーの皆様からウィッシュリスト1位を獲得した『Ascend to ZERO』、
そして現在開発中のアクションアドベンチャー新作『Waltz & Jam』にも適用されています。いずれも無料デモを基盤とした開発を進めています。

私たちはプラットフォーム、ジャンル、スタイルといった枠にとらわれず、多様なクリエイティブを追求し、世界中のプレイヤーと出会い、共にゲームを創り上げていくことを目指しています。ゲームを心から愛してくださる日本の皆様にも、私たちの作品が楽しい体験となるよう、今後も全力で取り組んでまいります。

どうぞよろしくお願いいたします。

──本作は売り上げが好調と伺いました。実際どれくらい売れてるのでしょうか?

開発チーム:
現在、『コマンダークエスト』はウィッシュリストに対する販売率が約40%となっております。リリースから2か月が経過した現時点で、レビュー件数などを踏まえると、社内的にも十分に前向きな成果と捉えております。販売本数の正確な数字はお伝えできませんが、リリース直後から予想を超える反響をいただき、大きな励みとなるとともに、それを受けてすぐに追加アップデートの実施を決定しました。

また、開発チームの方針や進捗を透明性高く共有する《司令官通信》 を通じて、プレイヤーの皆さまと継続的にコミュニケーションを図っています。

▶ 司令官通信 I

今後も『コマンダークエスト』をさらに充実させるべく、全力で取り組んでまいります。

※ Steamレビューが2000件ほど集まっており、なんとなく売上数字はうかがいしれるだろう。

──特に売り上げが好調な地域はどこでしょうか?日本での売れ行きはいかがですか。

開発チーム:
販売の勢いがもっとも強かった国は中国です。リリース初日には、事前の予想を大きく上回るご注文をいただき、チーム内では「待て、慌てるな──これは孔明の罠だ」と冗談が飛び交うほどでした。

日本は現在、グローバル販売においてトップ5に入る規模となっています。中でも、毎日のようにプレイ動画をアップロードされ、すでに98本を公開された情熱的な司令官のように、積極的なコミュニティ参加が非常に印象的です。

プレイヤー一人ひとりの温かいご支援とご参加は、私たちにとって単なる数字以上の大きな意味を持っています。日本の司令官の皆様に心より感謝申し上げます。そして、より多くの方にご参戦いただけるよう、これからも全力を尽くしてまいります。

デモ公開から1年以上かけ改善

──売れてる理由としてなにがあるとお考えですか。本作の魅力は?

開発チーム:
何よりも、ユーザーの皆様からのフィードバックに耳を傾け、長期間にわたりデモを通じて共にゲームを磨き上げてきたことが、最も重要な要因だったと考えています。1年以上にわたるデモ公開を通じて多くのご意見を集め、バランス調整やコンテンツのアップデートを重ね、完成度を高めてきました。

ゲームシステムの面では、デッキ構築型ローグライク特有の、戦闘ごとに与えられるランダム報酬の選択による戦略的な緊張感が、ターン制オートバトラー形式のシミュレーション戦闘と噛み合い、独自の面白さを生み出していると考えています。

『コマンダークエスト』は、司令官の視点から戦況全体を俯瞰し、予測と計算をもとに戦略を実現していく楽しさを、デッキ構築ローグライクという要素と組み合わせた作品だと自負しています。

──現在Steamユーザーレビューでは約2000件中76%が好評とする「やや好評」ステータスとなっています。この評価についてはどう感じていらっしゃいますか。

開発チーム:
評価の等級にかかわらず、ユーザーの皆様から寄せられたレビューやフィードバックには、心より感謝しております。

リリース初期には、最適化の問題や予期せぬ不具合により、一時的に「賛否両論(Mixed)」評価まで下がった時期もあり、社内でも多くの議論がありました。しかし、開発チームはブレることなく問題解決に集中し、パッチノートを通じて改善内容を一つひとつ透明に共有しながら、ユーザーの皆様との信頼関係を守っていくことを大切にしてきました。

その結果、直近30日間のレビューでは83%の高評価を獲得し、Steamでも再び「非常に好評(Very Positive)」の評価を取り戻すことができました。こうした変化は、私たちの努力だけではなく、ゲームの可能性を信じて待っていてくださった司令官お一人おひとりの応援のおかげだと感じております。今後も皆様のご期待にお応えできるよう、全力で取り組んでまいります!

──具体的に、フィードバックを受けて本作をどのように改善しましたか?

開発チーム:
最初に挙げられる改善項目は、やはりバランス調整です。1年間のデモ公開と、1,500人の司令官の皆様と共に実施したクローズドプレイテストを経たにもかかわらず、それでも開発チームが気づけなかった点がいくつか存在しました。そのため、”歯ごたえのある挑戦”ではなく、”理不尽で不快な体験”として伝わってしまった部分についてのフィードバックを中心にレビューを収集し、可能な限り迅速にホットフィックスを行ってきました。

たとえば、無駄に迂回させられるルートや、必要以上に急勾配に感じられる箇所は、達成感の演出には重要かもしれませんが、それが「もうこの道は進みたくない」と感じさせてしまうレベルのストレスになってしまうなら、それは避けるべきであるということを、プレイヤーの皆様から教えていただきました。『コマンダークエスト』が、ユーザーの皆様の時間と体験が染み込んだ “共創型のゲーム” であり続けられるよう、これからもプレイヤー目線での改善を継続してまいります。

サマセにあわせてアプデ準備中

──今後のアップデートの予定を教えてください。

開発チーム:
現在は、新たな司令官や兵科を中心に、戦略的な選択肢の幅を広げられるコンテンツの開発に注力しています。早ければ6月初旬にも、アップデート予定のコンテンツの一部を先行公開できる見込みです。
それを皮切りに、プレイ体験をさらに深めるための多様なコンテンツをお届けできるよう準備を進めています。

特に、Steamのサマーセールは多くのユーザーの皆様が新たなゲームを試したくなる時期であることを、私たちもよく理解しています。だからこそ、そのタイミングで『コマンダークエスト』を新たに始めてみたいと思っていただけるような、“参戦する価値のあるコンテンツ”を現在鋭意制作中です。

──本作には歴史上の英雄たちが司令官として登場しています。特に諸葛亮やジャンヌ・ダルクなどは日本でも人気の高い偉人ですが、まだ日本人はいないようです。今後日本の英雄の登場予定はありますか?

開発チーム:
諸葛亮やジャンヌ・ダルクが日本のユーザーの皆様にも親しまれている人物であることを、私たちもとても嬉しく感じています。先ほどのジャンヌ・ダルクとは綴りこそ異なりますが、個人的にもJanne Da Arcの「月光花」を今でもよく聴いており、日本のユーザーの皆様と少しだけ感性が通じ合っているのかな、と楽しい妄想をしてしまいます(笑)。

さて本題に戻りますと、現在私たちは新たな司令官の制作を進めています。以前、新規司令官の方向性として「Badass」な英雄をテーマに、コミュニティの皆様からご意見を募集したことがありました。その際には、織田信長を推薦してくださった司令官の方もいらっしゃいました。私たちも、「第六天魔王」の指揮のもとで火縄銃を持った歩兵と騎馬隊の編成などを想像しながら、ユーザーの皆様と楽しく意見交換をさせていただきました。

現在制作中の新規司令官は、コミュニティ投票で最終候補に残ったチンギス・ハンまたはアッティラ王のいずれかに決定する予定ですが、これとは別に今後も新たな司令官の追加を予定しています。そして、今後の企画段階で日本の歴史的な英雄がコンセプトに合致する場合には、積極的に検討していくつもりです。

── 日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。

開発チーム:
司令官の皆さん、こんにちは。『コマンダークエスト』に温かいご支援をお寄せくださっている日本の司令官の皆様に、心より御礼申し上げます。

日本は、世界的にも有数のゲームカルチャーの中心地であり、X(旧Twitter)などのソーシャルメディアが非常に活発な市場でもあります。ユーザーフィードバックを通じてゲームを進化させていくという開発理念を持つ私たちにとって、いつか日本のユーザーの皆様にも関心を持っていただけるようなゲームをつくりたいという願いが、長い間ありました。

『コマンダークエスト』を通じて、その願いをほんの少しでも形にできたことを、とても嬉しく思っています。そしてこの出会いが始まりとなり、今後さらに多くの日本の皆様と交流し、共に歩んでいけたらと心から願っております。

──ありがとうございました。

『コマンダークエスト (Commander Quest)』はPC(Steam)向けに配信中だ。価格は税込1400円で、ゲーム内は日本語表示に対応している。

Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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