Valveは11月12日、携帯型ゲーミングPC「Steam Deck OLED」の限定版ホワイトモデルを発表した。日本でも11月19日に発売予定で、価格は10万9800円(税込)。Steam Deck OLEDの数量限定カラーバリエーションモデルであり、性能については既存のブラックモデルと同じだ(関連記事)。
この発表に先立って弊誌では、ValveにてSteam Deckの開発を担当しているデザイナーのLawrence Yang氏と、プログラマーのPierre-Loup Griffais氏へのインタビューを実施。限定版ホワイトモデル発売の経緯や、Steam Deckの現状への受け止めなどについて話を訊いた。
── Steam Deck OLEDの限定版ホワイトモデルが発表されました。前回の限定モデル(半透明ブラック)は欧米のみで販売されましたが、今回は日本を含む全地域で同時発売されるとのこと。この判断にはどういった背景があったのでしょうか。また、今後さらなるカラーバリエーションの発売はあり得ますか。
Lawrence Yang(以下、Yang)氏:
前回の半透明ブラックモデルは、Steam Deckのカラー違いモデルについて、消費者がどれくらい関心があるのかを調べるために試験的に発売しました。その結果が「YES」だったことから、今度は対象を全世界へと拡大し、あらゆる販売地域において同様に関心が示されるのか確認したいと考えたわけです。もし良い反応を得られれば、将来のカラーバリエーションについて間違いなく検討するでしょう。
── Steam Deckのローンチから2年半ほどが経ちました。Valveとしては、当初Steam Deckについてどういった目標を掲げ、現在それをどれくらい達成できたと考えていますか。
Yang氏:
Steam Deckにおける我々の主な目標は、Steamのライブラリをプレイできるさらなる方法や場所を提供し、ユーザーを幸せにすることです。現在Steam Deckは広く成功しており、この目標は達成できたと考えています。他社からも似たスタイルのデバイスが発売されるようになったことは、成功の証だといえるでしょう。Steam Deckによって、ハンドヘルドPCという新しいデバイスのカテゴリを作り出すことを望み、そのとおり実現できました。ただ、我々の仕事はこれで終わりではありません。開発チームは、ソフトウェアアップデートを通じたSteam Deckの改善を続けており、まだ発表していない将来のハードウェアの計画についても取り組んでいます。
Pierre-Loup Griffais(以下、Griffais)氏:
また我々は、ゲーム開発者がこのデバイスのカテゴリに注目し、発売前の新作あるいは既存の作品におけるゲーム体験の調整に時間を費やしてきた様子を見てきました。最小限の作業でパフォーマンスやユーザーエクスペリエンス、アクセシビリティの調整が可能となっており、それはSteam Deckでのゲーム体験だけでなく、ほかのさまざまなPCゲーム環境に対しても利益をもたらしています。
── Steam Deckが、所有する唯一のPCゲームデバイスだというユーザーは増えてきているのでしょうか。日本では、若い世代ではPCを所有していない人も少なくないですが、Steam Deckがそうした人の受け皿になっている実感はありますか。
Yang氏:
ユーザーからは、Steam Deckがその人にとって最初で唯一のPCゲームデバイスであるという声をいくつか聞いています。Steam Deckでは、コンソールのようなユーザーエクスペリエンスと、ハードウェア+OS+ソフトウェアのオールインワンパッケージによって、PCゲーム環境におけるややこしい作業をなくすことができたと考えています。ユーザーは、ドライバのアップデートを気にしたり、PCの作成・改造方法を学んだりといったことをしなくても良いのです。
── 幅広いゲームがSteam Deckでプレイ可能ですが、特定のゲームの発売を受けて、Steam Deckの売れ行きが加速するようなことはあったのでしょうか。
Yang氏:
Steam Deckの売れ行きに影響を与えた作品は把握していないですが、Steam Deckでプレイされている割合が非常に大きいゲームについては確認しています。一部の例を挙げると、『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』『UFO 50』『The Plucky Squire ~ジョットと不思議なカラクリ絵本~』『キングダムハーツHD1.5+2.5リミックス』『Deep Rock Galactic: Survivor』といった作品では、Steamにおける過去1か月間の総プレイ時間の10〜20%をSteam Deckユーザーが占めています。
── Steam Deckへの対応に積極的な開発者が増えてきたように思います。Steam Deckのローンチ以降に発売されたタイトルでは、互換性プログラムにおいて「確認済み」「プレイ可能」を取得している作品は何割くらいになりますか。
Yang氏:
全体の数字は手元にないのですが、先週のレポートでは、互換性テストがおこなわれたタイトルの95%以上が「確認済み」や「プレイ可能」という結果を得ています。
── 一部のオンラインマルチプレイ対応ゲームでは、アンチチート技術が原因でSteam Deckに対応していないものがあります。これにはSteamでトップクラスの人気タイトルも含まれ、Steam Deckのローンチ当初からの懸案だと思いますが、対応に向けた取り組みはいかがでしょうか。
Yang氏:
我々は、Easy Anti-CheatやBattlEyeといったアンチチート技術の開発元と協力し、ゲーム開発者がSteam Deckをサポートしやすくするよう取り組んできました。たとえば、『エルデンリング』はEasy Anti-Cheatを採用しており、Steam Deckにおいてもっとも人気のある作品のひとつになっています。
Griffais氏:
特にカーネルレベルへのアクセスを必要とするアンチチート技術が、Steam Deckをサポートしない傾向にあると理解しています。オンラインゲームにおけるチート対策は極めて重要であることは重々承知していますが、現在業界内でポピュラーなアプローチのいくつかでは、長期的にはエンドユーザーにとって問題のあるトレードオフとなり得るものもあるため、我々としては選択肢について慎重に検討しているところです。
── 先日、Steamにゲームレコーディング機能が正式実装されました。これはSteam Deckにとっても大きな機能追加だといえます。こうしたアップデートを通じた機能の追加について、ユーザーからはどういった要望が多く寄せられていますか。またValveとしての今後の展望はいかがでしょうか。
Griffais氏:
我々は、すべてのSteamユーザーからのフィードバックを常に求めており、結果としてゲームレコーディングのような大きな機能が実装された際には、あらゆるPCゲームデバイスのユーザーにその恩恵がもたらされることになります。ユーザーからの要望について具体的に話せるものはありませんが、我々は今後もこうした体制を通じて、Steamに新たな機能を追加していきます。
── ありがとうございました。
Steam Deckは現在販売中。そしてSteam Deck OLEDの限定版ホワイトモデルは11月19日午前8時に発売予定だ。詳細はSteam Deckの国内公式サイトを確認してほしい。