ベテラン開発者が率いるゲームスタジオGPTRACK50の新作は、「ゲームデザイン主導」のアクションRPG。絵ではなくシステムから作る、ベテランたちの「長年やりたかった」開発手法


株式会社GPTRACK50は、NetEase Gamesの100%出資によるゲーム開発スタジオだ。同社は、プロデューサーとしてゲーム業界で活躍を続けてきた小林裕幸氏が代表を務め、スタジオとしての第1作となる開発を進めているという。ジャンルはアクションRPGでシングルプレイゲームとして制作中である。2025年には発表予定だという。

設立から2周年というタイミングで、小林氏と、GPTRACK50で開発中の第1作目にてリードエンジニアを務める重吉信哉氏にインタビューを実施。GPTRACK50がどんな会社なのか、一体どんなゲームを作っているのか、重吉氏の現場の声も交えて、深堀りしていく。

GPTRACK50が擁する“ゲームが作りたい”エンジニア

――自己紹介をお願いします。

小林裕幸(以下、小林)氏:
GPTRACK50代表の小林裕幸です。もともとカプコン出身でのちに退職し、GPTRACK50を立ち上げました。10月1日で2周年を迎えています。


重吉信哉(以下、重吉)氏:
GPTRACK50の現在開発中のタイトルでリードエンジニアを務めている重吉信哉です。2006年に新卒でカプコンにプログラマーとして入社して、新人として小林さんの担当する『デビルメイクライ4』のチームに配属されたことでキャリアがスタートしました。その後は、また小林さんの手がける『戦国BASARA3』に参加して、敵やプレイヤーキャラクターを担当。そのまま『戦国BASARA4』のときにプログラマーのリーダーに抜擢されて、『戦国BASARA4 皇』を作ったり、『ロックマン11』を作ったりしていました。

その後転職を考えているタイミングで、小林さんから声をかけていただきました。僕自身、そろそろ新しいアクションゲームや新しいキャラクター作りに関わりたいと考えていたところで、GPTRACK50に参加しました。


――小林さまから見て重吉さまはどんなエンジニア、プログラマーでしょうか。

小林裕幸(以下、小林)氏:
彼は優秀でずっとプログラマーを続けていて。エンジニアは、プログラムを組みたい人とゲームを作りたい人など、いろいろなエンジニアがいる中で、彼はゲームを作りたいエンジニアなんです。だから、ディレクターやゲームデザイナーの味方になってくれるタイプですね。

彼はなにか提案すると、まずは断るのではなく検討してくれます。「考えます。やります。ちょっとこんなのどうですか」と言ってくれるタイプなので、ゲームデザイナーに好かれるエンジニアですね。

――自分のこだわりよりも、あくまでゲームを完成させるためにどうすべきかを考えていると。

重吉氏:
そうですね。僕はどちらかというとプログラムよりもゲームが作りたいんです。そもそもキャリアとしてプログラマーを選んだのもゲームを作りたいというのがあって。でも絵は苦手だから、企画かプログラムのどちらにしようとなったとき、プログラムの方がゲームを作っている感じがあるな、とプログラマーを選択しました。

小林氏:
僕がプログラマーになった経緯も同じです。重吉と一緒で絵が描けなくて、企画もできない。でもプログラムはできたので、3DCGをやりたくて、プログラマーでカプコンに入ったわけです。プログラマーも直ぐに辞めてしまったんですけどね(笑)全体としての完成を優先しているという点は、同じだと思っています。


チームは主にベテランで構成

――開発チームにはどれくらいのキャリアの方が在籍されているのでしょうか。

重吉氏:
キャリアで言うと、業界歴15年以上の人が圧倒的に多いです。ベテランがほとんどですね。ベテランほどオリジナルIPが作りたいという熱意を持っています。僕自身もオリジナルIPを作る機会がどんどん少なくなってきていて。続編を作る場合は、挑戦できることが限られてきますし。

そういうこともあってチャレンジが難しくなっていて。ゲームを作りたいと言っても、ただ単に続編を作りたいわけじゃないというところもあって。近い気持ちを持った人たちが集まっているのかなと。

――モチベーションが高いと。

重吉氏:
モチベーションはみんな高いですね。

少し話はそれますが、チームメンバーには結構既婚者が多くて、社長が家庭第一、最優先と仰ってくれているので、家庭、特に子供の行事は最優先です。そういったこともモチベーションの高さに絡んでいるかもしれません。


小林氏:
もう入学式も卒業式も行ってください(笑)

重吉氏:
まさに今日授業参観に行ってきました。

――え!?

重吉氏:
朝リモートで働いて、授業参観に行って子供の恥ずかしそうな顔を見て、その後午後から出社しました。

小林氏:
開発は裁量労働制で、この会社を立ち上げたときから家族ファーストでいこうと決めていました。それはなぜかと言うと、家族を大事にしないとお父さんが責められるんですよ。だから、家族を大事にすると褒められて良いお父さんになって、家でも会社でも仕事がしやすくなるんです。そのための家族ファーストですね。そうしないと逆に仕事に影響が出るな、とGPTRACK50を立ち上げたときに思ったんですよ。

――「学校の行事を優先しますね」といった話は、同じ立ち位置の人がいないと言い出しにくいですよね。

重吉氏:
そうですね。そういう仲間が多いので、子供の学校行事とかにも行きやすいんですね。みんな行っているから行きやすい。やっぱりみんなゲームが作りたいので、ついつい作ることに没頭してしまうこともあるんです。が、そんなときに「あっ、学校行事ある」と気づいて、仕事だけにのめり込み過ぎなくなって。個人的にはバランスが上手くとれているのかなという感覚があります。

――焦りもありつつ、合理性のために家庭も優先させていると。

小林氏:
このメンバーで作っていると自信と、これは面白いものが作れるという感覚があります。そのために、良いパフォーマンスを出すために、メリハリは意識しています。


“アクションができる”アニメーターは意外といない

――チームは20名から30名くらい在籍していると伺いましたが、チームとして強みなどはありますでしょうか。

重吉氏:
特性ということで言うと、アクションを作ってきた人がとても多いです。特に僕も含め、アクションゲームのプレイヤーキャラやエネミーといった、ゲームの肝となる部分を作った人が多いのが強みかもしれません。アクションに対するこだわりが強い人が多いです。

小林氏:
アクションに強いスタジオだとは思っています。アクションゲーム制作経験が多いメンバーばかりなので。その中でバトルの部分が特に強い、といったイメージですね。

――逆に、こういうところが今足りない、補強したいというところはありますか。

小林氏:
ゲームを作る上で大きなところをひとつ言うと、社内にサウンド担当者がいないですね。あと、アニメーターが足りないです(笑)絶賛募集中です。

――アニメーターが足りないというのはちょっと意外です。今業界でも豊富にいらっしゃる印象です。

小林氏:
これには特有の事情がありまして。

重吉氏:
3Dアクションゲームのアニメーターに求める要望・要求が高いかもしれません。アクションを作り続けてきたことで目が肥えていることもあるかもしれません。

小林氏:
キャラクター同士が接触せずに、ただタイミングだけを合わせてといったような演舞系は作れる人が多いんですが、リアルタイムでぶつかり合うようなアクションが作れるというアニメーターは、本当に少ないですね。プレイヤーキャラクターががっつりと敵と接触するようなアクションのアニメーションはすごく難しいんです。

新しくて面白いゲームを届けたい

――現在制作されている作品は、ゲーム内のメカニクスのどの部分に注力されているのでしょうか。

重吉氏:
どこまでお答えしていいのか迷いますが、まず、出している情報としてはアクションRPGです。少なくとも3Dアクションのクオリティとしては、カプコンの作品に近いものになるだろうと思います。ゲーム内の駆け引きとか、ゲームのサイクルとか、そういった部分は安心できるレベルになると思います。

小林氏:
あと、これまでのインタビューでお話ししていることでいうと、オープンワールドではないということですね。プレイヤーキャラクターがいて敵がいて、戦って次のエリアに行くというサイクルはあるので、想像しやすい形にはなっていると思います。

重吉氏:
コンボ偏重型というわけでもないですね。

小林氏:
あと先ほど話したとおり『デビルメイクライ』でもないですね。スタイリッシュでもないです。

重吉氏:
「我々にしかできない、我々の新しいキャラクターで目指すアクションはこれだ」というのを打ち出して開発しているからこそ、モチベーション高くできています。


――売れ筋をなぞって作る手法もトレンドとしてありますが、そういうところを目指しているわけではないと。

重吉氏:
今開発しているゲームの体験に必要なアクションは何か、何がその体験を盛り上げるのか、を考えて取捨選択しています。

小林氏:
みんなアクションゲームが好きで、アクションゲーマー向けに新しいアクションゲームを提供したいという気持ちを一番に開発していますね。

――Unreal Engineを使って開発しているというお話でしたが、バージョンなどはどちらを使われているのでしょうか。

重吉氏:
Unreal Engine 5で、今は5.3を使っています。日々アップデートに合わせて調整していこうかなというところです。

あとは、使えるものであれば外部の販売されているプラグインの導入の検討もしています。ほかに特筆するとすれば、NetEase Gamesにもエンジニア集団と言いますか、技術センターがあります。技術センターにこういう技術ありませんかとか、便利なツールや開発が効率的になるような機能はありませんかとか、積極的に連携を取って技術提供してもらっています。

小林氏:
そこがグループの良いところですね。

重吉氏:
おかげで僕らはゲーム開発に集中できて、環境整備はNetEase Gamesの方に助けてもらってと、分担できているので、かなり良い環境だと思っていますね。

――今の開発スタイルは、スタジオとしてはどういう個性が出ていますか。

小林氏:
ゲームの作り方でいうと、絵を先行して作られるスタジオやメーカーに対して、我々はシステムを考えてから作るという手法をとっています。ゲームデザイナーがシステムを考えて、それからエンジニアと話して、こういうものができるというベースからグラフィックを作って、という順番で進めています。そういった作り方が少し違うかもしれませんね。

重吉氏:
我々はまず作りたいゲーム体験を感じてもらうためのシステムやサイクルを考えます。そして、モデルやアニメーションは販売されているものを使ってまず遊べる形にして、ガンガンいじりまくって作っていきました。当然、キャラクターのデザインとかは並行で進めていきますが、絵は結構後回しにしているところはあります。

小林氏:
普通は、絵を先にやらないといけないんです。

重吉氏:
この作り方をやってみた結果、今作っているゲームの原型は半年くらいで出来上がりました。このスピード感は体験したことが無かったので、僕も正直驚いています。これなんでやっていなかったんだろうと(笑)なので、こういった開発の進め方は個性と言えるかもしれませんね。

――小林さまは絵の部分を先に作らないということに対して、困惑や葛藤はなかったんでしょうか。

小林氏:
いや、スタッフがいなかったので。


一同:
(笑)

小林氏:
アートが最初はいなかったので、ディレクターとエンジニアでゲーム部分を作って、新しいゲームの検証が先にできたのは良かったですね。そうじゃないと、結局グラフィックを作ってもやり直しになってしまうので。

――ゲームデザイナーがリードするプロジェクトでもあるんですね。

小林氏:
そうですね。ディレクターが元々ゲームデザイナーですし、エンジニアもゲームを作りたいという人なので、ゲームの中身を先に作る感じでしたね。何ならプログラムの環境を作る前にゲームを作っていましたから(笑)

重吉氏:
個人的には、こういう作り方をずっとやってみたかったんですよ。新しいタイトルを作るのにビジュアルを求められて、それをゲームに入れて、という流れで作っていると、どうしてもゲームの検証が遅くなってしまうんです。やりたいと思っていたことができたのは、個人的に楽しかったですね。

うちのメンバーで面白い話をしてくれた人がいまして、絵を詰めても気持ち良さは上がるけど、面白さは上がらないよねと。それは本当にそのとおりだなと。ぼくもその言葉を聞いてから胸に刻んでいますね。

モチベーションの高い、アクションゲーム好き揃いの開発チーム

――絵については、どういうグラフィックになっているのでしょうか。

小林氏:
Unreal Engineは、基本的にフォトリアルが得意じゃないですか。でも、今開発しているゲームはフォトリアルじゃないんですよ。フォトリアルはもう大手に任せようと。うちらは新しい画作りで、Unreal Engineが不得意なことをやっていますね。

――Unreal Engineといえば、フォトリアルでシェーダーとライティングがギラッとしたイメージがありますが、そういったものとはまた違うと。

小林氏:
違いますね。

重吉氏:
Unreal Engineの強みは使いつつ、違う方向で頑張っています。

――なるほど。チームもプロジェクトもコアの部分ができて、後は量産体制というところでしょうか。

小林氏:
そうですね。さっきお話ししたとおり、社内は20人程度ではありますが、外部の協力会社さんを入れると100名前後のスタッフがいるので、それなりの規模です。ここからまた増えて、いよいよ物量をこなすターンです。

2025年、新しいアクションRPG発表を目指して絶賛開発中

――最後にこのゲームを待っている方々に向けて、メッセージをお願いします。

重吉氏:
今作っているゲームは、僕のキャリアから考えてもユニークで、プレイヤーとしても楽しいと思ってもらえそうで、僕が作っていても楽しいです。ぜひ期待していただけたらなと思っています。

で、この場を借りてリクルートさせていただくと……(笑)エンジニアさん、新しいゲームを楽しく作れる環境で働きたい、自分の意見もガンガン出していきながら議論を重ねて作りたい!というモチベーションのある方、ぜひ弊社にご応募ください。それと、前述のとおり、「アクションゲームのアニメーション付け」に自信のある方もぜひきてほしいです。

小林氏:
ゲームがだいぶ形になってきて、一安心しています。まだまだ課題はいっぱいあるんですけど、良い意味で自分の今までのキャリアとは違う作品ができつつあります。まだ言葉でしかお伝えできずに大変申し訳ありませんが、新しいものを生み出すスタジオとして、2025年に発表できると思いますので、ぜひGPTRACK50を応援していただけると大変嬉しいです。新規IPのアクションRPGを求めている方は、ぜひGPTRACK50の情報を追いかけてください。

――ありがとうございました。何か付け加えておきたいということは?

重吉氏:
言い過ぎたぐらいなので、大丈夫です(笑)

一同:
(笑)


GPTRACK50は、現在アクションRPGを開発中である。スタッフも募集中とのことで、気になる方は会社HPを見てみるといいだろう。

[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]