セガは11月に『龍が如く7外伝 名を消した男』を発売した。そして1月26日には『龍が如く8』を発売する。シリーズとしては異例の4か月以内の2作品発売。それにちなんで、龍が如くスタジオは現在さまざまなイベントおよび体験会を実施中。12月16日には、大阪・梅田のグランフロント大阪のうめきたSHIPホールにて体験・交流会が開催された。年末年始にかけて2作を発売するということで、かなり精力的に販促活動をしている印象だ。
実際のところ『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、7外伝)の調子はどうなのか。ユーザー反響をどう受け入れられているのか。また『龍が如く8』(以下、8)はボリュームがどのくらい長いのか。また同作はGame Passに入るのか。龍が如くスタジオ代表の横山昌義氏に話を訊いた。
とにかく売れている『7外伝』
──『7外伝』の売れ行きはいかがでしょうか。
横山昌義氏(以下、横山):
日本国内でビックリするくらい売れています。たいへん好評で……(笑)みなさんありがとうございます。それもあって体験会を追加で実施できています。
──最近では海外での『龍が如く』シリーズ人気が広がっているお話はたびたびされていますが、今回は国内での売上が良かったと。
横山:
今回は特に日本とアジアがすごいですね。国内のシリーズ人気の再燃を感じています。『7外伝』は最近のシリーズだと、本編含めても一番売れてるんじゃないかな。
──おめでとうございます。想定以上でしたか。
横山:
想定の倍くらい調子がいいです。でも発売する前は『7外伝』は、正直売上げに関しては自信なかったんですよね。
──自信がなかったんですか?
横山:
作品に自信がなかったのではなく、横で『龍8』を作ってて、それがどのくらいのもんなのか知っちゃってますからね。『龍8』のクオリティやボリュームと『7外伝』を比較しちゃうとどうしても絶対的な自信は持てなくて。
ですからリリースする前はお客さんからなんていわれるんだろう、と。「ボリューム的にこんなの龍じゃない!」とか「ストーリーが短い!」とか(笑)なので、ここまで好評になることはチーム内で誰も予想してなかったです。
──なるほど『龍8』を知っているが故に不安だったと。
横山:
『7外伝』にはふたつ意味合いがありました。たとえば海外では(春日一番が主人公の)『7』から入っている人が多く、桐生を深く知らない方が多いです。ですから桐生一馬をついて知ってもらうためのいわば名刺代わりとしての意味があります。
逆に日本のシリーズファンの人たちには、『龍8』に向けて強く感情移入できる話を味わってほしかった。ふたつの意味合いをもって作りました。その目的はかなり達成できています。
──たしかに、『7外伝』は発売前から「『8』から切り出した」「DLCとして計画していた」という話が出ており、プロダクトとして懸念する声もありましたね。クリア時間も『6』や『7』よりはずっと少なく、『7外伝』は“コンパクトな龍が如く”という基軸となりましたが、こういうありかたについてはユーザー反響はいかがでしょうか。
横山:
それが大好評で(笑)もっとこういうかたちで作品を作ってくれと言われています。『7外伝』ぐらいのボリュームの作品を合間でたくさん出してほしいという声を実際にプレイされたユーザーの方から多くいただき驚いています。ナンバリングの合間にこういうコンパクトな作品を出すのもアリなのかなと、今回は思わされました。
──自分もコンパクトなボリュームでありがたかった一人です(笑)そういえば、『7外伝』は、赤目の人気が印象的です。赤目役のファーストサマーウイカさんも赤目に関する投稿をガンガンされていて、楽しそうです。自然と好きになるキャラではあるのですが、横山さんがあえて赤目が人気な理由を言葉にするとすれば、どう言われますか。
横山:
『龍が如く』シリーズの鉄火肌キャラとして、ちょっと新鮮だったからじゃないですかね。狭山薫も含め、今まで出てきた女性キャラは鉄火肌というか勝ち気なキャラが多いじゃないですか。でもその一方で、特段桐生と恋愛関係を含め深い関係にならないポジションの(鉄火肌女性)キャラはあんまりいなかった。ようするに、サイの花屋の女バージョン。花屋の女バージョンだし、ちょっと伊達さんの要素もある。
そもそも『龍が如く』シリーズではガイド役が必ず存在していて、そのガイド役はやっぱり人気出るんですよね。
とにかく大ボリュームの『龍8』、だけど少しずつでもいいので無理せず遊んでほしい
──ちなみに『8』も予約が開始されていますが、そちらの調子はいかがでしょうか。
横山:
かなりいいです。予約段階では過去最大の数字になるかもしれません。
──『8』はすでに先んじて『7外伝』についてくる体験版で遊べるのも訴求としてありそうですよね。あの体験版も結構なボリュームでした。
横山:
あれでも本編のごくごく一部ですよ。ステージも遊びも絞って入れてます。考え方としては、『7外伝』と『8』体験版のセットで1本の作品として考えてほしいなと思いリリースしました。『8』本編はとにかくボリューム満載です。
──『8』のボリュームが大きい話は何度かされていますが、具体的にはゲームどの部分でのボリュームが大きいのでしょうか。
横山:
まずメインストーリーが長いです。ダブル主人公ということもあって、登場するキャラクターもめちゃくちゃ多いので、自ずとそれに関連するサイドストーリーも増えてます。それに加えて「ドンドコ島」と「エンディングノート」という主人公別のサイドコンテンツのボリュームもすごい。やりようによってはゲーム1本として成立してしまうぐらいです。
でも、一方でドンドコ島もエンディングノートもやらなくてもいいんですよ。さわりの部分は進行上出てくると思いますが、『龍が如く』シリーズのサイドストーリーはこれまでの作品もやらなくていいじゃないですか。だから、メインだけやってもらってもいいし、サイドもやってボリュームを感じてもいい。そこは同じです。全部やろうとしたら終わらないかもしれません。
──とはいっても、『7』もコンプしようとするとかなり長かったですが……。
横山:
体感レベルでは、『7』の比ではないですね。デバッグをやっていても、終わりのみえなさが『7』の比じゃないです。
──心しておきます。ひとつ気になっていることがあります。『龍が如く』シリーズはGame Pass提供にも積極的です。『7外伝』ではDay One(発売日時点で提供)でした。『龍8』もGame Passで遊べるのかという質問をよく見かけますが、実際のところどうなのでしょうか。
横山:
『龍8』がGame Passに入る予定は、いまのところはないです。
──理由を教えていただけますか。
横山:
先ほども言いましたが、特に『7外伝』は、海外ユーザーに桐生一馬という男の名刺代わりとして届けたかったタイトルです。そういう意味でもGame Passは普段「龍が如く」に触れないユーザーの方にも届けられる非常に良い場所となりました。
──ちょうど最近、The Game Awards 2023でゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲得した『バルダーズ・ゲート3』も、開発元のLarian StudiosがXbox版リリースに際してのGame Pass提供は、「大ボリュームのゲームなので、まだ入れる気はない」といった旨のコメントを出していました(IGN)。ちょっとそれがよぎりました。
横山:
(『バルダーズ・ゲート3』にまつわる決断の)その意図もよくわかります。それぞれタイトルには狙いがありますし、適した届け方というのがあると思うので。
──なるほど、ありがとうございます。最後に『8』にむけて、ユーザーとしてボリュームやストーリー含めて心の準備をしておきたいんですが、そんなユーザーに向けてどういう心もちでいるべきかアドバイスしてください。
横山:
コンソールゲームとの付き合い方って大事だと思うんです。付き合い方に困った人たちがいたから、これだけモバイルゲームが流行したわけで。エンタメ業界は可処分時間の取りあいが激しいですよね。僕もセガに入ってずっとコンソールゲームを作ってきましたが、大人になればなるほど、仕事などもあってコンソールゲームで遊べる時間が少なくなってきます。自身の遊べる時間が少なくなってきているのに、ボリュームの多いゲームを作り続けるわけじゃないですか。その矛盾を自分の中でずっと抱えています。
一方で、コンソールゲームでしか味わえない感動があると信じています。ハイエンドなグラフィックで、ボリュームもあって、ユーザーの満足度が高いものを作りたい。だから、そこのギャップを埋めたいんです。『龍8』は、プレイ時間は長くなってしまいますが、そこで伝えられる感動が多い。そのために、忘れられないストーリーを作るように心がけてます。
目指したのは、事件は複雑なんだけど、状況を理解しやすくて、忘れにくいストーリー構成です。なので、ユーザーさんには、身体を壊さないように、毎日2~3時間連載ドラマを見るように、付き合っていってもらえるといいかなと思います。
──ぶっ続けてやりすぎて身体を壊さないようにします。
横山:
『龍8』をメインストーリーだけ追ってクリアするなら、寝ないで3~4日程度ですね。“寝ない。寄り道しない。サブストーリーをそんなにやらない。”という遊び方でそんな感じですので、ちゃんと寝て毎日少しずつ遊んでください。
──気をつけます。ありがとうございました。
『龍が如く8』は、PC(Steam)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに、2024年1月26日リリース予定だ。