『バルダーズ・ゲート3』開発者ミニインタビュー。いまもっとも熱いRPGのスタッフが、日本人プレイヤーに注目してほしいポイントなどを語る

『バルダーズ・ゲート3』開発者ミニインタビュー。開発者たちへの合同ミニインタビューの内容をお届けする。

今年もっとも注目を集めたゲームタイトルのひとつであるファンタジーRPG『バルダーズ・ゲート3』(以下、BG3)の日本語対応PS5版が12月21日、スパイク・チュンソフトより発売される。PC版(英語版)は8月4日に発売され世界的に高い評価を受けており、今回が待望の日本語対応となる。弊誌は今回メディア向けに開催されたハンズオンイベントに参加し、発売に先駆けて3時間ほど先行プレイする機会をいただいた。本稿ではハンズオンイベントと同時に実施された、開発者たちへの合同ミニインタビューの内容をお届けする。

――本作で特にこだわった箇所、またはプレイヤーに注目してほしい箇所を教えていただけますか?

Larian Studios:
ライター・チームでは、プレイヤーに(自分のキャラクターの)アイデンティティを形成し、何者であるかを創り上げるためのツールを提供することに多くの時間を費やしました。なので、プレイヤーにもっとも注目してほしい箇所となれば「いちプレイヤーとしてどのようにロールプレイするか」ですね。ゲームを通じて、自分のキャラクターが置かれた状況を感じ取り、「自分のキャラクターならばこの状況でどう振る舞うか」を考えながら遊ぶ。『BG3』はそういった高度なロールプレイを実現させることが出来るゲームになっていると思います。

また、システム・デザイン・チームが重要視していたのは、『D&D』第5版のルールをいかにして違和感なく、ゲーマーにとって魅力的な形で電子ゲームの形に落とし込めるかです。『D&D』の象徴的なクラスや呪文といったファンタジー要素を維持しつつも、数値の計算や呪文の回数の管理といった面倒な部分は機械に任せ、「自分の選択で物語を紡ぐ」というTRPGの一番楽しい部分だけに集中できるような環境を生み出すことを目指しました。

そしてシネマティック部門では、ストーリーの分岐をどのように進んでも満足できる体験ができるように、アートとナラティブをしっかりと組み上げていくことが第一命題でした。そしてこれを実現する上で重要だったのが、プレイヤーキャラクターの見た目を忠実に再現した上でスムーズに動くキャラクターのメッシュやリグを組み上げることでした。

『BG3』には身長や体型の異なる多くの種族が存在しますし、プレイヤーが自分のキャラクターのビジュアルとして選択したものをなるべく尊重したいと考えていました。NPCが会話でメインキャラクターの種族を認識して、それに応じてセリフが微妙に変化する。こういったディテールは、それ自体はたった数秒の出来事であっても、ゲームの没入感やロールプレイのリアリティを演出する上で非常に大切なものなのです。こういった細かい工夫を戦闘などといったゲームシステムとも密接に組み合わせることで、『BG3』は美しく、ユニークで、それでいて自由なゲームプレイを生み出すことに成功しているのです。


――特に日本のプレイヤーに注目してほしいポイントはありますか?

Larian Studios:
日本では『D&D』はそれほどメジャーではないと思いますから、『BG3』の根幹を成す世界観や概念に馴染みが薄いプレイヤーも多いと思います。ですが『BG3』は『D&D』の知識がなくてもしっかり楽しめるように最初から設計して作っていますし、先に発売されている海外からのフィードバックでもそれは十分に証明されていると考えています。ですので、『D&D』をよく知らないという日本のプレイヤーであってもなにも心配することなく『BG3』の世界に飛び込んでいただけたらと思います。

――そういったプレイヤーの『BG3』の遊び方について、なにかオススメはありますか?

Larian Studios:
基本的には特に何も考えず、ゲームの流れに身を任せる形で、自分が思うようにプレイして大丈夫です。必ずあなただけの物語が生まれると思います。あえて言うならば、最初は難易度を「探検家」(エクスプローラー)にした方がストレスなくストーリーを楽しめると思います。キャラクタークリエイトでは、クラスに応じて「オススメ」のステータス振りや呪文などが提示されますので、こだわりがなければその通りに選べば大丈夫です。クラスに関しては、個人的には迷ったらバーバリアンを選べば良いと思います。とてもシンプルで扱いやすいクラスですので。基本的に初見プレイはカスタムキャラクターを強くオススメしますが、オリジンキャラクターで遊びたい場合は個人的にはゲイルが良いと思います。わかりやすいキャラクターですし、「異世界転生」っぽさのあるバックボーンなので日本人にとっても馴染みやすいかもしれません。


――PC版も同時に日本語に対応するようですが、テキストは同一のものなのでしょうか?

Larian Studios:
はい、そのはずです。

――コンシューマ版では過激なシーンなどはカットされているようなのですが、それがストーリーに影響を及ぼすことはありますか?

Larian Studios:
こういう風に考えてみてください。『BG3』におけるロマンスは単に性的なワンシーンが挟まっているというものではなく、時間をかけてお互いを理解し関係を発展させていくような、リアリティと深みのあるものです。あなたとあなたの愛する人がそばにいて、手を握り、お互いの鼓動を感じて、顔を近付けて……この先の結果を、ここに至るまでの道のりを、二人の感情を理解するにあたって、実際にキスするシーンの有無は必要でしょうか?つまりそういうことだと思います。

――『BG3』は古典的ながらも先鋭的で、RPGというゲームジャンルに大きな変革と衝撃をもたらした作品です。一体どのようにしてこれは成し遂げられたのでしょうか?

Larian Studios:
個人的に今のゲーム業界において、「変革」と言えるようなイノベーションは基本的にインディーシーンで生まれるものだと思っています。インディーシーンが生み出した変革やアイデアを、AAAタイトルを扱うような大きなスタジオや会社がスケールアップさせて、より大きなオーディエンスに届けるというようなエコサイクルが存在していると思います。なので、インディーシーンでTRPGベースのゲームデザインをしている作品には常に注目しています。規模の小さめの開発では、逆に個人開発者や小さなスタジオが「自分のやりたいこと、自分の思いついたこと」を実現できています。そういった作品に触れることはいつも非常に刺激的で、我々にとってもアイデアの源泉となっていると思います。


――具体的に、最近チェックしたインディータイトルで興味を惹かれたものがあれば教えてください。

Larian Studios:
Steamでは「Steam Next Fest」と呼ばれる新しいゲームの体験版を遊んだり、それらの開発者と交流したりできるイベントが定期的に開催されていて、私は毎回20作品近く遊んでいます。最近のものでタイトルを挙げるならば、『D&D』ベース作品である『Solasta: Crown of the Magister』、最近個人的にプレイを続けている『Wartales』あたりでしょうか。11月に出たばかりのSFデッキビルダーである『Cobalt Core』も気になっていて、これも機会があればプレイしてみたいですね。

――本日はありがとうございました。

バルダーズ・ゲート3』PS5版は12月21日発売予定。価格は8580円(税込)で、日本語に対応。SteamやGOG.comにて販売されているPC版にも、同時に日本語ローカライズが追加される予定となっている。

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Mizuki Kashiwagi
Mizuki Kashiwagi

PCとPS4をメインで遊んでいます。自分で遊んでも、観戦していても面白いような対戦ゲームが好きで、最近は格闘ゲームとMOBAをよく遊んでいます。

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