アソビズムはなぜSteam新作開発に熱心なのか?新作『Live Hard, Die Hard』の詳細を訊きつつ、会社のねらいを尋ねる

アソビズムは9月7日、新作タイトル『Live Hard, Die Hard』を発表した。『ビビッドナイト』から続いて独創的なタイトルで一気にSteam展開を狙うアソビズムだが、なぜSteamにそれほど熱心なのか。

アソビズムは9月7日、新作タイトル『Live Hard, Die Hard』を発表した。「バトルと医療」がテーマのストラテジーゲームで、対応プラットフォームはPC(Steam)。発売予定は2024年となっている。同作は東京ゲームショウ2023でも試遊できるという。

弊誌では本作の発表に合わせて、本作のディレクターである鮫兎郁弥氏に直接インタビューする機会をいただいた。『ビビッドナイト』から続いて独創的なタイトルで一気にSteam展開を狙うアソビズムだが、なぜSteamにそれほど熱心なのか。『Live Hard, Die Hard』は一体どのような作品なのか。アソビズムという会社動向をまじえ新作の内容に迫るインタビュー全文を以下にお届けする。

――まずは自己紹介をお願いします。

鮫兎郁弥氏:
『Live Hard, Die Hard』のディレクターを務めさせていただいています、鮫兎郁弥です。アソビズムでは『ドラゴンリーグ』から開発に関わっていて、GREE時代の『ドラゴンリーグ』では運営ディレクターをやらせていただいていました。『ドラゴンポーカー』開発後期にもプランナーとして参加して、リリースした後は初代ディレクターを1年半くらい務めていました。その後は一旦アソビズムを辞めて活動していたのですが、去年の春頃に戻りました。戻ってきてから最初に参加したプロジェクトは3か月くらいでクローズしてしまい、次はどうしようか考えていたところで機会に恵まれて今のチームを組み、『Live Hard, Die Hard』の開発を始めたという形になります。


――『Live Hard, Die Hard』はどういったゲームなのでしょうか。

鮫兎郁弥氏:
ジャンルとしてはストラテジーです。バトルに行き、エイリアンと戦って戻ってきて、基地で強化を行い、またバトルを……というのをストーリーに沿って続けるゲームとなっています。自分は『XCOM』シリーズが好きなので、参考にさせてもらった部分が多いです。ゲーム性は全然違うのですが、基本となるゲームプレイループは『XCOM』に近いものがあると思います。

本作がユニークなのは、登場する兵士が使い捨てのコマではなく、戦場で怪我をした兵士を治療してまた出撃させるという点になっています。これによって、兵士一人ひとりにちゃんと感情移入できて、「ずっと一緒に戦ってきた歴戦のエース」というような兵士が出てきます。そうすると、このエースがバトルで倒れてしまって戦場に取り残されてしまった、助けてあげたいけど助けるとさらに被害が広がってしまう、でもずっと一緒に戦ってきたからどうしても助けに行きたい……といった葛藤が生まれる。この感情の動きを、ゲームで表現したいなというのが本作の最初のコンセプトでした。結果、上が戦場、下が医務室というやや特殊な画面構成のゲームになりました。


――『Live Hard, Die Hard』がプロジェクトとして立ち上がった経緯を、もう少し具体的に教えてください。

鮫兎郁弥氏:
さきほども触れたように、自分が参加していたプロジェクトがクローズして、チーム全体が1回路頭に迷ってしまったタイミングがありました。でも会社は「他のチームに行ってもいいし、新規タイトルを作りたかったら作ってもいいですよ」と言ってくれて、これが自分にとっては千載一遇のチャンスだと感じました。そこで企画3人でコンペを行って、新規タイトルをやりたいというプログラマーとデザイナーに票を入れてもらいました。

そのコンペでは自分の企画が勝ち抜いて、開発が始まったのですが、実はこの時自分が考えていた企画というのは『Live Hard, Die Hard』とはまったくの別物だったりします。最初はバトロワものを作りたかったんです。当初は口八丁でなんとかなるよ!と主張していたんですが、結局さすがにリソースが足りなくて無理だということになりました。でもチームは出来ていたので、このチームメンバーで新しく作りたいものを考えようとなって考えた結果、全員ブラックユーモアが好きという共通点が出てきました。そのあたりから『Live Hard, Die Hard』のコンセプトが固まり始めました。

ユニットが怪我して治療して、直しきれないものは改造して、サイボーグみたいになって心を失って、というようなゲームをやってみたい。プレイヤーの感情を動かしたい。兵士を喪った時に感情に訴えかけるようなシステムにしたいけど、普通のバトルだけではちょっと実現は難しい。そこで医療のトリアージの要素を入れてみたらいいんじゃないかとなりまして、そのアイデアから一気に今の形まで持っていったという感じですね。

――運営型ではなく、買い切りのSteamタイトルの開発となった経緯はありますか?

鮫兎郁弥氏:
今のチームメンバーがそもそも「最近何をプレイしているのか」と聞かれると、やっぱりSteam作品、コンシューマー作品が多いです。なので、自分たちで何が作りたいかとなると、やっぱり買い切りのゲームになるんじゃないかとなりまして。その方がスタッフの熱量も高いですし、会社の方針として「得意を活かしていきたい」というのもありますので、それでSteamタイトルになりました。

――みんなSteamが好きだから、Steamで作ろうという流れになり、いっぱい新作が作られている、と。

鮫兎郁弥氏:
そうなります(笑)


――(笑)基本的にアソビズムはモバイル展開のタイトルが多かったと思うのですが、Steam展開を初めて何か変わったことや、得られたフィードバックなどはありますか?

鮫兎郁弥氏:
『ビビッドナイト』を出して一番個人的に面白かったのは、『ビビッドナイト』経由で入社された方が現れたことですね。実際今の『ビビッドワールド』のプログラマーはその『ビビッドナイト』が好きで入ってきた方だったりします。我々はやはり自分たちの作りたいものを作っているので、それが好きで一緒に作りたいと言ってくれる方が入ってくるのは、すごく良い流れだなと感じます。

――アソビズムで2Dストラテジーといえば『城とドラゴン』を思い出しますが、同じスタッフが関わっていたりしますか?

鮫兎郁弥氏:
実は『城とドラゴン』のスタッフは開発チームには一人もいないですね。逆に『ドラゴンポーカー』のスタッフが結構多かったりします。

――アソビズムタイトルはどれも尖っていて、未開拓のジャンルに積極的に飛び込んでいくイメージがあります。もうちょっと売れ線に寄せようみたいな話が出たりはしないのでしょうか?

鮫兎郁弥氏:
一応会社としてやはり世の中の流れに寄せる動きがないわけではないのですが、もはや我々にはそういう(売れ線を狙う)アプローチの方が難しいんじゃないかという気すらします(笑)。うちは『ドラゴンリーグ』からずっととある前任者が指揮を取ってきて、その頃から自分も関わっていたので、やはり彼は師匠のような意識があります。なので、やはりその前任者の哲学は受け継いでいて、ユニークなものを出して驚かせたい、自分が遊びたいけど世の中にはないゲームを作りたいという気持ちが大きいのだと思います。とはいえ別に売れ線のゲームを作れないというわけではないと思うので、会社の判断としてそういう方向になったらそれはそれでみんな頑張るのではないでしょうか。

――開発の進捗はいかがしょうか?

鮫兎郁弥氏:
メインとなるゲームプレイ部分は出来上がっていて、全体で見たら進捗は30%くらいでしょうか。これからアウトゲーム(コアとなるゲームプレイ以外の要素)を仕上げて、合わせて全体のボリュームアップしていく感じですね。

――開発早期段階での発表は、アソビズムとしては珍しい気がします。何か理由はあるのでしょうか?

鮫兎郁弥氏:
最近は社内の開発環境も少し変わってきて、少人数のチームがいくつか同時で動いています。結果として社内レビューがすごく大事にされるようになって、作ったものを社内で何人か集めてプレイしてもらって、フィードバックを頻繁にもらっています。これのおかげでクオリティを保ちやすくなっているというか、ディレクターのワンマン開発というふうにはならなくて安心できると思っています。そういう自信もあって、まだ開発がそこまで進んでいなくても発表しても良いだろうという判断になったのではないでしょうか。

――『Live Hard, Die Hard』のコンセプトやゲームデザインのポイントについて、今一度教えていただけますか?

鮫兎郁弥氏:
やはり最初に挙げたコンセプトでもある、「プレイヤーの感情を動かしたい」というところだけはぶれないように進めてきています。ゲームプレイがどうあれ、ゲーム内出てくる登場人物やキャラクターに対してしっかり感情移入できるようなデザインにしていきたいと思います。最終的にはプレイヤー一人ひとりにとってドラマがあるゲーム体験に仕上げていきたいですね。

実は自分はもともと映画を撮りたかった人間なので、もちろんゲームならではのインタラクティブさを保ちつつも、キャラクターにしっかりと物語が生まれるようなものにしたい。ゲームの概要や画面を見る限りではシステマチックなゲームなのかと思われるかもしれないですが、それだけではなく感情を動かしてくれる、気持ちを揺さぶられるようなゲーム体験を目指しています。


――今年のTGSには本作は出展されるのでしょうか?

鮫兎郁弥氏:
TGSでは試遊版を出す予定です。バトル部分だけにはなっちゃうのですが、戦闘1回分をまるまる遊べる内容を用意するつもりですので、TGSにお立ち寄りの際はぜひ遊んでいってください。

――本日はありがとうございました。

『Live Hard, Die Hard』は、PC(Steam)向けに2024年発売予定だ。東京ゲームショウ2023にも出展予定である。

Mizuki Kashiwagi
Mizuki Kashiwagi

PCとPS4をメインで遊んでいます。自分で遊んでも、観戦していても面白いような対戦ゲームが好きで、最近は格闘ゲームとMOBAをよく遊んでいます。

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