Steam新作ローグライト工場TD『ShapeHero Factory』は、「工場ゲームの最初のおいしいところ」を何度も楽しめるように開発中。開発者インタビュー

 

今年5月発表されたアソビズムの新作『ShapeHero Factory』。2023年発売予定で、東京ゲームショウ2023にも出展予定のタイトルだ。アソビズムは過去『城とドラゴン』や『ドラゴンポーカー』といった基本プレイ無料タイトルを手がけてきたが、『ビビッドナイト』を皮切りに買い切りゲームにも展開中。Steamでの新作となる『ShapeHero Factory』も国内外から注目が集まっている。同作は9月21日に開催される東京ゲームショウ2023(以下、TGS)にも出展される予定だという。

弊誌では今回そんな『ShapeHero Factory』のディレクターを務めるmamiya氏に直接インタビューする機会をいただいた。過去作に負けず劣らず独創的なゲームプレイを感じさせる本作の、開発経緯からゲームプレイまで訊いたインタビューの全文を以下にお届けする。

――まずは自己紹介をお願いします。

mamiya氏:
『ShapeHero Factory』のディレクターを務めているmamiyaと申します。弊社タイトルだと『ドラゴンリーグ』や『トロッコウォーズ』に関わらせていただいて、直近だと『ビビッドナイト』の開発に参加しています。


――新作『ShapeHero Factory』について、概要を教えてもらえますか。

mamiya氏:
『ShapeHero Factory』は工場ゲームにローグライト要素と、タワーディフェンスのエッセンスを加えたようなゲームとなっています。工場ゲームといえば、たとえば銅鉱石を銅に精製して、何かに混ぜて中間素材を作って、それをコンベアで運んで、自動化して……というようなものを想像されるかと思います。

このゲームはリアルな鉱石や工業製品を扱うような工場ではなく、どちらかというとファンタジー色強めの工場ゲームになっていて、◯や△、□と言った図形が素材になっています。たとえば◯や△をキャンバスまで運び、合成することで「ヒト」が生まれます。そしてそこに□を加えることで「盾兵」が出来る。そうして生まれた彼らは仲間として戦ってくれるようになります。彼らを効率よく工場で作ることで敵を倒す、そういったゲームになっています。

これだけだとただのファンタジーな工場ゲームなのですが、当然そうではなく、ここにさらにローグライトの要素が入っていることにより独自性が強いゲームとなっています。このゲームでは手に入る工場の設備や、生産するヒーローのレシピにはある程度のランダム性があります。また、工場ゲームによくあるような研究ツリーも存在しますが、これもプレイごとに違う内容になったりします。このため、プレイヤーは毎プレイごとに、与えられたものでどうやって効率の良い工場を設計していくべきなのか、それを考えてラインを作っていくことになります。本作はあなたなりの「最適な、そして効率の良い工場」を作る、工場ビルドゲームです。


――本作の開発にはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

mamiya氏:
いろいろな経緯はあるのですが、一番大きいものとして、工場ゲームと呼ばれるジャンルのゲームを自分もよくプレイするということがあります。『Factorio』はもちろん、『shapez』や『Mindustry』、『Little Big Workshop』などもプレイしていて、あと微妙にジャンルは違いますが『RimWorld』や『Timberborn』ようなコロニーシムもよく遊んでいます。とても好きなジャンルで楽しくプレイしているのですが、工場ゲーム特有の欠点というのも感じていて、まずひとつが何度もプレイしていると、大きく条件を変えたりしない限りは毎回同じようなプレイ体験になりがちだというところです。個人的には1回クリアまでいったら満足してしまうことが多いです。

もうひとつが、こういった拡大再生産のゲームは終盤につれて、どうしても作業感が増していくというところです。これは工場ゲームに限った話だとは思いませんが、この手のゲームは「一口目が一番美味しい」ところは否めないですよね。『Civilization』シリーズなどもそうなのですが、最初の軌道に乗せるところまでが一番楽しい、よくそう思っていました。そこで工場ゲームにローグライト要素を入れれば、リプレイ性に難があるジャンルをさらに良く出来るんじゃないかと、一番面白い最初の一口を何度も味わえるんじゃないかと思いました。それが本作開発のきっかけとなったアイデアですね。

自分は結構雑食ゲーマーで、それこそ工場ゲームからFPSやターン制ストラテジー、ローグライトからアクションゲームまで幅広くプレイしてます。そのいろいろなジャンルをプレイした知識や経験を組み合わせて、『ShapeHero Factory』を面白くしていければなと思っています。

――ShapeHero Factoryの開発規模はどれくらいなのでしょうか?

mamiya氏:
今は6名で開発を進めています。『ビビッドナイト』は3人だったのでそれに比べると多いですが、それでも少数精鋭での開発ですね。

――『ShapeHero Factory』のゲームプレイの流れについて、もう少し具体的に教えてください。

mamiya氏:
基本はウェーブ制のタワーディフェンスで、このタワーディフェンスパートを工場で作った成果物で戦おうというコンセプトのゲームとなっています。各ウェーブが発生するまでの制限時間が決まっていて、その時間内でなるべく工場でたくさん戦うユニットを生産する。そしてタワーディフェンスパートが終わると報酬が手に入り、その報酬でまた次のウェーブを戦い抜くための工場を作る、というのがゲームプレイのループになっています。

ちなみにタワーディフェンスパートはプレイヤーの操作が介在する余地は基本的になく、基本的に見ているだけとなっています。これも自分のプレイ経験に基づくものなのですが、工場ゲームの成果は基本的に数字で語られることが多いです。たとえば『Factorio』は最終的に出来上がった工場の規模を表すのにSPM(Science per Minute、1分間に全色のサイエンスパックをいくつずつ生産できるか)という指標を使ったりします。でも自分はもうちょっと目に見える形で自分の作った工場の成果を感じたいと常々思っていて、それでバトルで成果物を見守るというゲームデザインを思いつきました。

――自分の工場が、敵の攻撃で破壊されることはあるのでしょうか?

mamiya氏:
工場を内包した拠点があって、タワーディフェンスパートではこの拠点そのものに向かって敵が進軍してくる形になります。なので、敵の攻撃によって工場が部分的に破壊されることはありませんが、拠点の方が破壊されたらそのままゲームオーバーになります。先ほども言ったように、本作はコンセプトとしては「工場ゲームの序盤を繰り返し遊べるゲーム」というのがあるので、逆に言えば工場ゲームの最終盤を遊ばせるつもりがあまりないです。ですから、「一生懸命作った工場もこのプレイでお別れ」というような、プレイ毎の喪失感というのもあんまりないはずだとは思います。


――ローグライト要素はどのような部分になるのでしょうか?

mamiya氏:
毎回工場の内容が変わるような、そういう要素になっています。たとえば報酬でヒーローのレシピが手に入るのですが、何を取るかによって作れるヒーローが違ったり、工場で使える設備自体が違ったりといった形になります。プレイごとに工場の「ビルド」が異なってくるというイメージですね。

――工場もローグライトもTDも難しめなジャンルというイメージがありますが、ゲームバランスはどうでしょうか?

mamiya氏:
ここは今非常に注意して調整している部分になります。どうしても作っているとすぐ難しくなってきてしまうのですが、ニッチでコアな人しかプレイしたいゲームを作りたいわけではないので。なるべく多くの人に楽しんでもらえて、かつ達成感も味わえるような難易度に仕上がるよう慎重に調整しています。


――なかなか新しいことに挑戦しているように思えます。あまり先例がないジャンルですが、開発に苦労しましたか。

mamiya氏:
弊社の方針として「新しいものを作りたい」「好きを作りたい」というものがあります。もちろん新しい試みには困難が伴いますが、こればっかりはもう体当たりで挑んで、問題にぶつかってもまた挑んで、というのをひたすら繰り返すしかないと思っていますね。

――開発中のタイトルに関して、社内からのフィードバックなどはありますか?

mamiya氏:
そのあたりのフローを最近はさらに確立させているところでして、社内でフィードバックをいただく機会がだんだん増えてきています。かなり助かっていて、実際にフィードバックに対応して変更を加えた部分がすでに結構あります。


――オープンベータやアーリーアクセスのようなものは予定していますか?

mamiya氏:
体験版の配布は予定しています。アーリーアクセスも現在検討中になりますが、詳細は未定です。

――TGSのアソビズムブースには出展されていますか?

mamiya氏:
開発中ではあるのですが、デモ版の出展は予定しています。ただ、もっと完成した状態で遊んでほしいなという気持ちもあります(笑)TGSに来られる方はどの方もなかなかのゲーマーだと思いますので、もし機会があれば触ってみて、感想をいただけるとすごく嬉しいです。

――最後にプレイヤーの方々にメッセージがあればお願いします。

mamiya氏:
自分は予定がないとご飯も食べず、寝ずにずっとゲームをし続けてしまうタイプの雑食ゲーマーです。寝不足にさせられたゲームはいくつもありますが、決まってその体験は最高のものでした。ということで、一人でも多くの人を寝不足にさせるのが目標です(笑)。ぜひ応援よろしくお願いします。

――本日はありがとうございました。

『ShapeHero Factory』は、PC(Steam)向けに2024年発売予定。東京ゲームショウ2023にも出展予定だ。