ローグライクゲーム『ビビッドワールド』開発者インタビュー。彗星のごとく現れた『ビビッドナイト』はどれほど売れ、なぜ新作はグラフィック一新されたのか


アソビズムは9月11日、『ビビッドワールド』を発表した。同作はパーティー構築型ローグライクゲーム『ビビッドナイト』、その流れを汲んだ新作となるタイトルである。リリースは2024年を予定しており、Steamストアページも公開されている。『ビビッドワールド』は、9月21日から開催される東京ゲームショウ2023にも出展予定で、こちらで試遊できるとのことである。

『ビビッドナイト』といえば、ゲリラ的にリリースされたのちジワジワと売上を拡大。PCのほかNintendo Switchでも展開し、そちらのプラットフォームでも好評を博した。その『ビビッドナイト』において続編が発表。さらにビジュアルも一新されているというのだから驚きだ。

弊誌ではこの発表に先んじて、『ビビッドナイト』から引き続き本作のディレクターを務めるトオルナカムラ氏に直接インタビューをする機会をいただいた。嬉しい誤算でもあった前作のヒット経緯から、続編の新たなゲームシステムと魅力まで、たっぷり語ってもらったインタビューの全文を以下にお届けする。


試験的作品ながらも、期待以上の成果を出した『ビビッドナイト』

――まずは自己紹介と、経歴をお願いします。

ナカムラ氏:
アソビズムのディレクター兼ゲームデザイナーのナカムラと申します。もともとアソビズムには14年前に入社いたしまして、当時はプログラマーとしてモバイル系ゲームアプリの開発をしていました。『ドラゴンリーグ』というタイトルでも、メインプログラマーとして参加させていただきました。それからも基本はプログラマーとして、『ドラゴンポーカー』や『戦国』シリーズなどいくつかのタイトルに関わらせていただいています。


当時からディレクターもやってみないかという話はいただいていたのですが、自分ではまだ実力不足だと感じていたのもありまして、社内の状況も含めてすぐには難しかった。そこでいったん一年ほど会社を離れ、友人の会社でディレクターとしてプロジェクトに参加させていただき、そこで経験を積んだ上でまたアソビズムでやってみないかという提案を受けました。その提案を受けて、アソビズムに戻ってきた後に『城とドラゴン』の運営ディレクターを3年間やらせていただきました。

同作のディレクターとしての働きが評価されて、新作のディレクターをやってみないかと会社からオファーされました。それで当時はソーシャルゲーム全盛期だったのですが、会社の今後の未来を考えた時に買い切りタイトルにも挑戦してみようということになりまして、私の方で『ビビッドナイト』という企画を立ち上げさせていただいたという次第です。当時はスマートフォンの買い切りアプリとして制作を進めていたんですけど、弊社の代表である大手が、どうせ作るのであればコンシューマとSteamにも挑戦してみようと。その時点でもうほとんど完成はしていたんですけど、急遽半年でSteam版に対応ということになり、紆余曲折こそありましたが無事にリリースできました。

――よろしければ『ビビッドナイト』が具体的にどれくらい売れたのか教えていただけますか?

ナカムラ氏:
全プラットフォームを合わせて約14万本になります。ただSteamは市場がやや特殊で日本語のユーザーは全体の2%しかいないのですが、『ビビッドナイト』の売上は約50%が日本語圏のユーザーです。日本のユーザーにここまで評価していただいたというのは個人的に一番嬉しく思っているところです。

――社内では『ビビッドナイト』の成功はどのように受け止められていましたか?

ナカムラ氏:
試験的なタイトルでしたので、少人数低予算が前提でスタートしたプロジェクトではありました。正直社内からそれほど期待されていたタイトルではなかったと思うのですが、実際はここまでユーザーのみなさまに評価していただき、売上もしっかり伸びました。今では今後もコンシューマにアソビズムとしてこれから挑戦していけるんじゃないかという、足がかり的なタイトルとして社内で評価されていると思います。


――開発規模はどれくらいだったのでしょうか?

ナカムラ氏:
社内のメンバーでいうと3人になりますね。ただゲームはちゃんと面白くならないと世に出さないという弊社のルールがありまして、人数こそ少ないですが開発期間としてはかなり長めに取って、しっかりゲームとして仕上げてからリリースさせていただいています。

――初のコンソールタイトル開発の感触はいかがでしたか?ユーザーのフィードバック内容も含めて、良かった点や反省している点をお聞かせください。

ナカムラ氏:
まず成功したなと思っているのは、ユニットをアップグレードするとシンボルが残り続けるというシステムですね。このシステムによって、キーンというゲーム内通貨を使ってアップグレードを行い、パーティーをどれだけ強化していけるかという遊びが生まれています。宝石箱でのユニットの取捨選択も大事になって、ゲームを格段に面白くしてくれたシステムだなと思っています。

ユーザーのフィードバックで不評だったのは大きくふたつあって、ひとつはユニットのアンロック要素です。ゲームを繰り返し遊ぶと新たなユニットをアンロックしていくことができるシステムになっているのですが、抽選されるユニットのプールが大きくなるとアップグレードさせづらくなり、逆に不利になっていくように感じてしまうとユーザーからよく指摘されていました。

そしてもうひとつはランダム性の高さです。スキルの発動やジェムの入手など、『ビビッドナイト』はいたるところにランダム性が介入してきます。海外ではRNGなんて言われたりもしますが、とにかくこのRNGの影響が大きすぎるとユーザーに嫌われるというのは、実際にリリースしてから体感できた部分になります。

とはいえある程度のランダム性は作品の魅力のひとつだとは思っていますので、新作『ビビッドワールド』では前作の楽しかった部分のランダム性は残しつつ、理不尽に感じられたランダム性をなるべく感じづらくなるように調整していきたいと思っています。具体的にはジェムとスキルまわりですね。


――『ビビッドナイト』は魔女の迷宮が9まであり、しっかりエンドコンテンツまで作り込まれた印象を受けました。個人的にはできれば実績もついてくると嬉しかったりするのですが、どうでしょうか。


ナカムラ氏:
魔女の迷宮はリリース当時5までしかなく、アップデートで9まで追加されたのでまだ実績が存在しない状態になっています。追加できるかどうかは、ちょっと検討しておきます。そしてもちろん『ビビッドワールド』では、コアユーザーのみなさまが楽しめるようしっかりエンドコンテンツと、それに対応した実績を用意していきたいなと思っています。

――続編『ビビッドワールド』が発表されたということで、『ビビッドナイト』の方のアップデートなどはもうなさそうでしょうか?

ナカムラ氏:

そうですね、残念ながら開発チームのほうがもう解散してしまい、メインプログラマーの方が次の作品(新作である『ShapeHero Factory』)に行ってしまったので、大きなアップデートというのはちょっと難しいです。ただ、『ビビッドナイト』を通じてわかったことに、パッケージ販売と違ってSteamなどのダウンロード販売はリリース後も継続して長くユーザー様に購入していただけるということがあります。なので、『ビビッドワールド』はリリース後も長めに追加開発やアップデートを行っていくというのも、可能性としてはあると思っています。


アートスタイルも刷新し、より多くのユーザーへ

――『ビビッドワールド』の制作は、『ビビッドナイト』のチーム解散後に決まったのでしょうか?

ナカムラ氏:
そうなります。前作のメインプログラマーの方が次の作品ではディレクターをやりたいと『ビビッドナイト』の開発終盤から言ってまして、それもあって区切りが良いタイミングで解散ということになりました。ただチームが解散したあとも『ビビッドナイト』がSteamでじわじわと売上を伸ばしていって、「続編を作るのはどうだろう」という話になったと記憶しています。

自分は『ビビッドナイト』リリース直後は移植作業をしていまして、それが終わった後、かつ社内で残っていた作業もいくつか終わらせたタイミングというのが大体去年の9月頃でした。ちょうどそのくらいから、『ビビッドワールド』のプロジェクトが本格的にスタートしたという形になります。

――『ビビッドワールド』の開発規模はどれくらいですか?

ナカムラ氏:
前作はディレクター1人、プログラマー1人、デザイナー1人というチーム構成で開発をしていました。『ビビッドワールド』からは規模を拡大しまして、今は8人で開発をしています。内訳としてはディレクターが1人、企画が1人、プログラマーが2人、デザイナーが4人となっていまして、ほぼ2倍から3倍の人員構成になっています。特にグラフィックに関しては今回かなり力を入れていまして、ビジュアルに関しては前作よりかなりリッチになっていると思います。


――アートスタイルが大きく変わっていますね。

ナカムラ氏:
はい、今回は前作のような可愛い系ではなく、格好いいとか綺麗だとか、大人な宝石の魅力という方向性でビジュアルのディレクションを変更しています。

――基本的なシステムは前作を踏襲していると考えていいのでしょうか?

ナカムラ氏:
ダンジョンに潜って、宝石のユニットでパーティーを組んで戦うという基本的なシステムはそのままです。


――では『ビビッドワールド』で一番変化しているところ、注目の新要素はどこになるでしょうか?


ナカムラ氏:
『ビビッドワールド』は基本的には前作をベースにしつつ、全体的に新しい遊びを追加してパワーアップしたシステムになっています。ダンジョンに関してはユニットやモンスター、シンボルといった要素はすべて新しいものが用意されていますので、前作とまったく違ったパーティー構築が楽しめるようになっています。


ダンジョン以外では、「リンバス」と呼ばれるプレイヤーの拠点が新たに用意されています。『ビビッドワールド』では前作にはほとんどなかったストーリー要素も追加されていまして、たとえばその拠点に住んでいる住民のお願いを聞いたりしてストーリーを進めていくことができます。また、ユニットの秘められた力を解放する、ユニットを強化していくというようなことも拠点で出来るようになっています。


――PVにあった「ジェム合成」も新しいシステムでしょうか?

ナカムラ氏:
前作で不評だったランダム要素でも特にジェムの錬金術を挙げられるユーザーが多かったので、ジェムまわりは大きく手を加えています。『ビビッドワールド』ではジェム生成に2つのシステム、「錬金」と「合成」が存在します。ジェム自体の入手手段は、基本的にはダンジョン中の宝箱から拾っていく形になります。「錬金」では好きなジェムを作ることができますが、あまり数として多く作ることはできません。

そしてジェムの「合成」は、2つのジェムを1つのジェムを合成することで新しいジェムを生み出せる新システムになります。この合成は基本的に合成に使用したジェムの効果がそのままくっついたジェムになるのですが、「鉄の剣」を2つ合成すると「七彩剣」になるというような、特殊な合成レシピも存在します。この2つのシステムをフルに活用して、狙った効果のジェムを入手してもらうという形になります。

また、さきほどもお話したのですが、スキルの発動についてもランダム性の評判があまりよくなかったので、少しシステムが変更されています。前回は基本的に30%くらいの確率でスキルが発動していたのですが、今回は代わりにTP制というのが導入されています。行動するたびにTPが溜まっていって、100%になるとスキルを発動するというものです。ある程度ランダム性が残ってはいるのですが、このシステムによって実力でカバー出来る範囲も多く広がったのではないのかと思います。

――開発の進捗はいかがでしょうか。

ナカムラ氏:

大体60%くらいかなと思っています。リソースがまだまだ足りていないという状況ですね。ついでにひとつちょっと検討中の仕様がありまして、これが実際に実装するとなるとどれくらいかかるのかが未知数ではあるのですが、とりあえず進捗自体は50~60%くらいと言ってもいいのではないでしょうか。

――プレイアブルキャラクターは何体になるのでしょうか?

ナカムラ氏:

前作のアメリとゼオラのように、リリース時では2体を予定しています。ジェムやユニットなども全く異なる2キャラになります。

――今回はSteam版もコントローラーがサポートされていますか?

ナカムラ氏:
今回はリリース時からフルコントローラーサポートを予定しています。Switch版『ビビッドナイト』のコントローラーサポートはすこし不完全だったので、今回はUIまわりもしっかり改善してコントローラーでも気持ちよくプレイできるようになる予定です。

――『ビビッドワールド』の開発におけるテーマのようなものはありますか?

ナカムラ氏:
続編を作るにあたって大きな目標のひとつに「ユーザーの拡大」というのがあります。ですので、前作を遊んでくれたユーザーに加えて、プラスアルファで新しいユーザー層にもしっかりアピールしていきたいというのは、企画当初から意識しているポイントですね。

グラフィックの方向性が変わったのもこれに少し関係していて、いわゆる可愛い系のグラフィックに惹かれて入ってきたユーザーが、比較的骨太なゲーム性にすこし戸惑ってしまったというパターンが多かったかもしれないと思っています。グラフィックと実際のゲーム性にすこし乖離があった。そこで今回は少し方向性を変えて、宝石にはやはりキラキラとした可愛らしさのほかにも格好良さというような、大人な宝石の魅力というのもあると思うので、今回はそちらにフォーカスしてデザインしていこうということになりました。


――最後に、プレイヤーの方に向かって何かメッセージがあればお願いします。

ナカムラ氏:
『ビビッドワールド』はビビッドナイトをベースに新たな要素を加え、さらに遊びの自由度が増した作品です。前作を遊んでくださった方にご満足いただける事はもちろん、前作を遊んでいない方にも遊びやすく感じて貰えるよう丁寧に作っています。

また本作は絶賛開発中ですので、ユーザーの声を聞きながら皆様と一緒に作品を作り上げていきたいと考えています。私トオルナカムラや『ビビッドワールド公式』はX(旧Twitter)でも積極的に活動をしておりますので、興味がある方はぜひフォローをお願いいたします。

――本日はありがとうございました。

『ビビッドワールド』は、PC(Steam)向けに、2024年発売予定だ。『ビビッドワールド』は、9月21日から開催される東京ゲームショウ2023にも出展予定で、こちらで試遊できるとのことである。