近年力を伸ばすゲームパブリッシャー505 Games CEOインタビュー。『Bloodstained』や『百英雄伝』を発売する彼らが、日本を評価する理由とは?


近年は、海外のゲームが日本でも多数リリースされ、幅広い層に楽しまれるようになった。特に家庭用ゲーム機において、そうした変化を感じている方は多いのではないだろうか。そのきっかけのひとつとしては、海外ゲームを日本で発売するメーカーの増加が挙げられる。

日本で発売される海外ゲームは、かつては国内メーカーが持ち込むパターンが主流だったが、最近は海外メーカー自身が日本市場に直接参入するケースが増えてきた。たとえばイタリアに拠点を置く505 Gamesは、その代表格となる海外メーカーのひとつだ。『Bloodstained: Ritual of the Night』や『Ghostrunner』、あるいはPC版の『DEATH STRANDING』や『CONTROL』などの販売元、といえばピンとくる方もいるだろう。

505 Gamesは、今年の9月2日に設立15周年を迎えた。そこで弊誌は、同社CEOのラファエル・ガランテ(Raffaele Galante)氏へのインタビューを実施。505 Gamesの成り立ちから、日本での取り組みなどについてお話をうかがった。

505 Games CEO ラファエル・ガランテ氏


────まずは自己紹介と、505 Gamesの歴史について簡単にお教えいただけますか。「505 Games」という社名の由来も興味があります。

ラファエル・ガランテ氏(以下、ガランテ氏):
こんにちは。ラフィ・ガランテです。兄弟のラミと一緒に、Digital Bros(デジタル・ブロス)を設立しました。Digital Brosは、505 Gamesの親会社です。当初は日本のゲームをイタリアで販売していましたが、その後、2006年に505 Gamesを設立してパブリッシング事業に垂直統合し、現在は世界的なレーベルとなりました。これは、パブリッシングや販売よりも開発を優先しておこなう一般的なアプローチと比較すると、弊社独自の歩みといえるかもしれません。

社名についてですが、「505」は私たちイタリアの文化ではラッキーナンバーで、イタリア語では「la “fortuna aiuta gli audaci” (幸運は大胆な人に味方する!)」と言います。

────個人的には、ダウンロード販売が普及し、インディーゲームが続々と登場し始めたPS3/Xbox 360世代あたりから、それらの作品の販売を手がける505 Gamesの存在感も増してきたように感じています。

ガランテ氏:
お客様にコンテンツをお届けするためには、ハードウェア、そしてプラットフォームが必要不可欠です。弊社は、ゲームの開発とパブリッシングにおいて、プラットフォームに依存しないようにしていますが、ファーストパーティとの関係とサポートは弊社の成功に不可欠です。これは15年前の505 Games設立時から変わっていませんが、ゲームパブリッシャー各社が自社タイトルをデジタルチャネルで発見してもらうことに苦心していることもあり、この点はさらに重要になっていると感じます。

現在私たちは、質の高いコンテンツと革新的なアイデアを、可能性のある全プラットフォームを通じてプレイヤーに提供するために、インディー市場を注視しながら、より生産価値の高いゲームにシフトしようとしています。

『テラリア』は2013年にPS3/Xbox 360などに移植。海外では505 Gamesが販売を担当している


────505 Gamesというと、AAAタイトルからインディーゲームまで、さまざまな規模およびジャンルの作品を販売しています。手がけるタイトルは、どのような基準で選定しているのでしょうか。

ガランテ氏:
グローバルの事業開発チームがおり、北米から東欧、中国から日本、オーストラリアまで、世界各地のコンテンツを毎日検討しています。世界中のゲーマーにアピールでき、マルチプラットフォーム戦略に適していて、弊社の看板シリーズになりうる可能性の高いゲームを特に求めています。ジャンルやユーザー層に偏りのない、バランスのとれたラインナップを目指していますね。

────御社は、Kunos SimulazioniやInfinity Plus Twoなど、いくつかのデベロッパーを傘下に収めています。近年はデベロッパーの買収が話題になることが多いですが、505 Gamesとしては買収についてどのような方針をとっていますか。

ガランテ氏:
M&Aでは、技術・ノウハウ・IPの創造と所有に焦点を当てているため、組織にとってますます重要な成長要因となってきています。

────昨年初めから現在に至るまで、新型コロナウイルス感染拡大により、ゲーム会社もさまざまな面で難しい時間を過ごしていると聞きます。御社においてはいかがですか。

ガランテ氏:
ゲーム会社は、ほかの業界に比べて比較的スムーズに在宅勤務ができるという特権を持っています。ユーザー数の増加や、ビジネスのデジタル化の加速などの良い変化もありました。しかし、会社は人で成り立っており、今回のパンデミックでは個人個人がダメージを受けています。ふたたび無事に、安心して対面で皆さんひとりひとりと再会できる日が来るのを待っています。


────505 Gamesの東京オフィス開設が発表されたのは2018年9月でした。日本進出にはどのような目的があったのでしょうか。

ガランテ氏:
東京オフィスが正式にオープンし稼働し始めたのは2020年になります。しかし、2018年9月から、日本への最適なアプローチ方法を理解しようと市場を調査してきました。505 Gamesの製品が、ライセンスパートナー経由で市場に入ってきた長年の経験がこの時点でありました。

日本はコンソールとモバイルの世界最大級の市場であり、ゲームとアニメーション産業の発祥地であり、オリジナルIPを創造してグローバルに展開する力があると思っています。505 Gamesがグローバル企業になるためには、日本での戦略が必要であり、優秀な人材を確保してリリースをサポートしたり、日本の素晴らしいゲームをスカウトしたりすることが必要です。

────日本市場特有の難しさや、日本人ゲーマーの嗜好など、ほかの国・地域の市場とは何か違いを感じていますか。

ガランテ氏:
ひとつ言えるのは、日本のデジタルエンタテインメント文化は独特です。しかし、ほかの文化と比較すると、より受け入れられやすく、影響力があります。たとえば、ほとんどのイタリア人は日本のアニメを見て、日本の漫画を読み、日本のゲームをプレイして育ちましたよ。

────日本で海外ゲームが受け入れられるには、多くの場合でローカライズ(日本語対応)が必須だと思います。505 Gamesとして、ローカライズにはどのような姿勢で取り組んでいるのでしょうか。

ガランテ氏:
ローカライズは広い意味で捉える必要があり、現地の文化や市場に精通した現地チームや、実際にそこに日本人を配置することが必要だと思っています(東京のチームメンバーは全員日本出身です)。また、ゲームのローカライズと文化の融合、さらには戦略やオペレーションのローカライズにも関係してきます。


────ちなみに、日本で一番売れている505 Gamesタイトルというと、どれになるのでしょうか。

ガランテ氏:
日本で長年にわたり好調な販売を続けているタイトルは、スパイク・チュンソフト社からパブリッシングされている『テラリア』です。ほかには、505 Gamesが直接パブリッシングした『DEATH STRANDING』や『Bloodstained: Ritual of the Night』などが人気ですね。

────その『DEATH STRANDING』と『Bloodstained: Ritual of the Night』については、それぞれどのように評価していますか。

ガランテ氏:
この2タイトルは、日本のゲームをパブリッシングするという私達の意志と、Digital Bros初期からの日本との強いつながりを裏付けるものです。

────今後発売予定の作品としては『百英雄伝』もありますが、日本のゲームあるいはデベロッパーについてはどのような印象をもっていますか。今後さらなる日本の作品を世界に紹介する考えはあるのでしょうか。

ガランテ氏:
『百英雄伝Rising』と『百英雄伝』が今後のラインナップの中心となります。日本のゲームについての印象ですが、基本的に日本の開発者は、デザイン・プログラミング・アートディレクションにおいて非常に革新的で、優れた実行力も兼ね備えていると感じています。弊社のプロダクションチームとの連携は非常にスムーズで、日本の開発者の創造性を最大限に発揮できる環境を整えるために、パブリッシングチームのあらゆるレベル、あらゆる部門でリソースを投入し、サポートしていきます。


────最後に、日本の505 Gamesファンにメッセージがあればお願いします。

ガランテ氏:
AUTOMATON読者の皆様、最後まで読んでいただきありがとうございます!これからも505 Gamesのゲーム品質改善・向上にご協力いただけると嬉しいです。ぜひソーシャルメディアを通じて皆様の声を聴かせてください。また、早期アクセスやベータ版など、早い段階でゲームを試せる機会を利用して505 Gamesのゲーム品質向上に貢献していただいているユーザーの皆様には大変感謝しております。ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします。




なお505 Gamesは、設立15周年を記念したパブリッシャーセールを、9月3日2時よりSteamにて実施中だ。また同社は、3Dローグライト・アクションゲーム『Rogue Spirit』のSteamでの早期アクセス配信を、9月1日から開始したばかりである。あわせてチェックしておこう。

さらに、『Bloodstained: Ritual of the Night』でディレクター/ゲームデザイナーを務めたShutaroこと飯田周太郎氏へのAMAが、9月3日9時から実施予定。同作についてのあらゆる質問をファンから受け付け、Shutaro氏が回答するイベントである。興味のある方は、505 Games Japanの公式Twitterアカウントをフォローして、詳細を確認しておくと良いだろう。