『ディアブロ II リザレクテッド』開発者インタビュー。ARPGの歴史に輝く金字塔を、原作比率「7:3」でリマスターする

「BlizzConline」にて『Diablo II』のリマスター版である『Diablo II Resurrected(ディアブロ II リザレクテッド)』が発表された。同作の内容について訊くメディア合同インタビューをお届けする。

Blizzard Entertainmentが完全オンラインにて開催した2021年のイベント「BlizzConline」にて、ARPGを代表する作品『Diablo II』のリマスター版である『Diablo II Resurrected(ディアブロ II リザレクテッド)』が発表された。本稿では今回の発表にともなって行われた、本作のゲーム・デザイナーAndre Abrahamian氏とリード・アーティストChris Amaral氏への合同オンラインインタビューの内容をお届けする。

――PS5などの次世代機への対応はネイティブと互換性のどちらでしょうか?また、デュアルセンスはサポートするのでしょうか?

Andre氏:
次世代機も対応していますが、実際の実装についてどうなるか詳細はまだ決定していません。

――2021年内発売予定とのことですが、発売時期についてもう少し詳しく教えていただけないでしょうか?

Andre氏:
発売時期に関して、現在発表されている情報以上のことを残念ながら言えません。ただ、最初のテクニカルアルファテストの受付募集は始まっていますので、ファンの皆さんには是非プレイしてフィードバックをいただけたらなと思っています。

――リマスターに『Diablo』ではなく『Diablo II』が選ばれた理由はありますか?また、開発を担当しているのはどのチームなのでしょうか?

Andre氏:
まず、初代『Diablo』は現在GOG.comにて配信中なので、そちらで遊ぶことが可能です。そしてなぜ『Diablo II』をリマスターすることにしたのかというと、このゲームがBlizzardにとっても非常に特別なゲームであるからです。『Diablo II』が20周年、Blizzardが30周年というこのタイミングは、ARPGというジャンルを確立させたこの名作にまた人を呼び戻すのに最適ではないかと考えています。新作となる『Diablo IV』や『Diablo Immortal』との繋がりもある作品ですから、シリーズファンにとっても嬉しい報せなのではないでしょうか。

Chris氏:
『Diablo II』はゲーム史においても強い存在感を示し続けている金字塔であり、その後発売された多くのARPGに少なくない影響を与えています。このゲームが現代のプレイヤーにも十分魅力的なゲームであるという確信を持っています。

Andre氏:
開発チームについては、BlizzardとVicarious Visionsで共同開発しています。

Chris氏:
『Diablo』シリーズのゲームにはそれぞれ独立した開発チームが存在していますが、『Diablo』フランチャイズに属するチーム同士としてお互いにコミュニケーションは欠かさないようにしています。

――リマスターするにあたって、どこが変更されどこがそのままになっているのでしょうか?

Andre氏:
ゲームデザインに関してですが、『Diablo II』は先程も言ったように非常に特別なゲームであり、我々にとって一番の優先事項は「当時の面白さを忠実に再現する」ということです。『Diablo II』は20年も前のゲームではありますが、現代的に手を加えようとしすぎると皆が愛した『Diablo II』から離れていってしまうのではないかという危機感がありました。ですので、今回のリマスターでは原作の忠実な再現をなるべく心がけています。ただし、今回のリマスターはPCだけではなく家庭用でも発売し、セーブデータの引き継ぎ(クロスプログレッション)も対応する予定です。

また、当時の『Diablo II』に忠実な範囲でQoL改善系の変更はいくつか存在します。そのうちひとつが共有スタッシュの追加で、これは多くの人が望んでいたものだと認識しています。また、自動でゴールドを拾う機能なども追加されていますが、これはオプションでオフにすることも可能となっています。

Chris氏:
アートデザインに関しては、当時のプレイヤーたちの懐かしさを刺激するようなものであろうというコンセプトで取り組んでいます。結果として、「70%を当時のまま維持して、30%を新しくする」という方針がデザインチームでは共有されています。全体としての雰囲気、デザインは原作のそれを維持したまま、30%の部分で現代的に洗練させ、世界観を補強するようなちょっとした意匠を追加したりなどしています。

たとえばバーバリアンクラスには、当時のデザインにケルト文化やスラヴ文化の要素が追加されています。実際にモデルを作る段階でも、原作のスクリーンショットを撮ってそれに3D処理を施したものを新デザインと重ねて、シルエットがマッチするようにチェックしたりしています。なぜこんなことをするのかというと、『Diablo II』の当たり判定などは全部2Dで処理されていますから、それに新しく作った3Dモデルを重ねた時に見た目と実際の当たり判定がおかしくならないようにするためです。


――『Diablo II』はデスペナルティが非常に重いゲームだったと記憶していますが、そこもそのままなのでしょうか?

Andre氏:
今回のリマスターは原作に忠実に作るということで、ゲームバランスに関する調整などは一切ありません。当時のゲームは現代のゲームに比べてもなかなか無慈悲なところがあったりしますが、逆に当時の攻略情報などもそのまま使えるということでもあります。そういう意味でも皆が覚えている『Diablo II』体験そのままになると言えるでしょう。

――『Diablo II Resurrected』でも、『Diablo III』のように継続的なアップデートやイベントが予定されていますか?

Andre氏:
最初に、レガシーのBattle.netにて現在も運営中の旧『Diablo II』は『Diablo II Resurrected』がリリースされても終わったりはしません。『Diablo II Resurrected』については、現在の目標としては当時のバランスを保ったまま長期運営をするつもりであり、アップデートやイベントなどについては特に現在発表するようなものはありません。

――昔のアートワークやその資料が見られるギャラリーモードの実装予定などはありますか?

Andre氏:
今のところはギャラリーモードの実装予定はありませんが、私個人としては当時の資料を漁って発見したものについて話したいことは沢山あります。開発チームとしても当時のアートワークには非常に興味深い発見が多く、開発過程で行われた取捨選択などについても開発秘話としてお話できればとは思っています。ただ、出来れば良いなとは思っていますが、残念ながらギャラリーモードが実装される予定は現在ありません。

――ネットコードの改善はどのようになっていますのでしょうか。ラグなどは当時に比べて快適になっていますか?

Andre氏:
『Diablo II Resurrected』は最新のBattle.netプラットフォーム上で運営される作品になりますので、ネットワークやセキュリティに関しては高水準のものが用意されることになります。バックエンドの詳細についてここでお話することはできませんが、デュープ(アイテム複製)やBOT対策などには尽力していく予定です。

――Blizzardのゲームとしては珍しく公式でModをサポートすると発表していますが、これにはどういった背景があるのでしょうか?

Andre氏:
オリジナルの『Diablo II』を支えてきた情熱あるコミュニティに応えるためにも、Modには最大限対応していきたいと考えています。本作は最新のBattle.net上にて運営されますので、セキュリティ上の理由で旧『Diablo II』で利用できたModが機能しなくなるという可能性は十分にあります。しかし、ゲーム内ファイルの構造などはよりアクセスしやすいように変更して、Mod製作者が不便しないようにしています。また、本作はクロスプログレッションに対応ということでPC版とコンソール版で相互にセーブデータを引き継ぐことができますが、Modが絡んだ時にこれがどのようになるかについてはまだちょっと分かりません。

――PC版とコンソール版でセーブデータの相互引き継ぎに対応しているとのことですが、オプションや操作設定などもきちんと共有されるのでしょうか?

Andre氏:
キャラクターのデータは共有となりますが、アカウント設定やゲームプレイの設定などについて、どれがハード依存の設定でどれがサーバーに保存される設定になるかの詳細についてはまだ決定していません。操作に関しては、マウス/キーボードでの操作とコントローラーでの操作は非常に異なったものとなりますから、ホットキーやスキルバインドなどについても別々に保存される予定です。

――『Diablo III』のコンソール版ではドッジロールが追加されていたように、主に操作面を考慮したコンソール版での変更などはありますか?

Andre氏:
『Diablo II』の忠実な再現を目指していますし、クロスプログレッション対応でもありますので、コントローラーのみに対応する新要素のようなものを追加する予定は一切ありません。もちろん、PCにコントローラーを差し込んでプレイすることも可能ですし、それに対応したUIやアクセシビリティの設定なども用意してあります。


――PC版とコンソール版が一緒のPTでプレイする、いわゆるクロスプレイには対応していますか?

Andre氏:
本作が対応しているのはあくまでクロスプログレッションであり、クロスプレイは出来ません。ただし、ラダー(リーダーボード)はすべてのプラットフォームで共通のものが用意されています。

――『Diablo III』では、後から発売されたSwitch版には画面分割でのローカルPTプレイなどの新機能がありました。本作にはこのようなプラットフォーム間での違いはありますか?

Chris氏:
ハードの性能面での問題で、3Dモデルのディテールや植物の描画などでプラットフォーム間でのグラフィックの違いは多少出てしまうと思います。

Andre氏:
ゲームプレイに関してはプラットフォームによって仕様が異なるようなものは特にありません。画面分割でのローカルマルチプレイは開発チームで検討自体はされましたが、原作からかけ離れた要素であるように感じられましたので今回は実装を見送りました。

――旧グラフィックと新グラフィックで切り替えられるオプションがあるとのことですが、具体的にはどのような仕様なのですか?

Chris氏:
旧グラフィックのオプションは完全に元のスプライトやドットを利用したものとなっていて、変更された部分はありません。

――日本語のローカライズは、新しくBlizzardが用意したものですか?それとも当時のローカライズのままなのでしょうか?

Andre氏:
『Diablo II Resurrected』では、オリジナル版でサポートされていた言語に加えて、新たに対応する言語が追加されています。ローカライズも基本的には作り直されていますが、先程も話した旧グラフィックのオプションをオンにするとローカライズも当時のものに変更されます。日本語のローカライズが具体的にどうなるかについては、担当のローカライズチームに確認してみないと分かりません。

――サウンドも7.1chに対応するとのことですが、新しい効果音や音楽などが用意されているのでしょうか?

Chris氏:
音楽や効果音、ボイスなどは基本的にオリジナル版のものに手直しを加えたものになります。それに加えて洞窟を走る時の反響音や水滴の音、移動時の鎧の音などの環境音が新規に追加されています。

――お二人の気に入っているクラスとプレイスタイルを教えて下さい。

Andre氏:
難しいですが、ドルイドが気に入っています。ドルイドは主に装飾品の追加グラフィックが豊富なのですが、狼と熊のフォームでもそれがきちんと反映されているのが良いですね。ゲームプレイ的にも基本的には近接キャラクターをプレイするのが好きです。

Chris氏:
ドルイドと答えるつもりだったのが、先に言われてしまったのでネクロマンサーと答えておきます。大量の配下を連れて走り回り、破壊の限りを尽くすというプレイスタイルが好きです。

――本日はありがとうございました。

Mizuki Kashiwagi
Mizuki Kashiwagi

PCとPS4をメインで遊んでいます。自分で遊んでも、観戦していても面白いような対戦ゲームが好きで、最近は格闘ゲームとMOBAをよく遊んでいます。

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