『Hotline Miami 2: Wrong Number』レビュー 長大になったマイアミ、遠くなったRボタン

怒りと暴力に満ち溢れた見下ろし型シューティングアクション『Hotline Miami』。前作から2年半、そして度重なる発売延期を経て、ついにMiamiは再びその姿を現した。けばけばしいネオン管のイメージ、常時グラつく背景、飛び散る血飛沫、暴力、ゴア描写、死、アッパーなBGM、暴力、死、暴力――そこにあるのは確かに「あの」Miamiだった。しかし何かが、このMiamiは何かが違うのである。

 

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Hotline Miami 2: Wrong Number
発売日: 2015年3月10日(国内版は2015年6月25日)
開発: Dennaton Games
プラットフォーム: PC(Windows、Mac、Linux)、PS4、PS Vita
価格: 1480円

 

前作『Hotline Miami』は暴力のゲームだった。タイミングを測って小部屋のドアを蹴飛ばして、手にした獲物で殺られる前に殺るゲームだった。ベースボールバットのクリックひとつでスキンヘッドのマフィアの頭を3つ並べて吹き飛ばし、ギトギトのフォントのスコア表示と小気味よい効果音、画面に残る鮮やかな血糊と無残な死体が演出する爽快感を堪能するゲームだった。

敵も自分も即死なので死ぬときも殺すときもあっさりしたもので、死んだ瞬間からRボタンを押してしまえば瞬時にフロアをやり直せるため、短時間にテンポよく殺したり殺されたりという暴力を楽しむことができた。テンポの良いゲーム内容が、画面演出が、キビキビした操作性が、BGMが、プレイヤーを気持ちよく暴力のグルーヴに浸らせてくれた。死んで殺してまた死んで。

翻って本作『Hotline Miami 2: Wrong Number』はどうだろう。まず演出は格段にレベルアップした。けばけばしく、バタ臭いドット絵とアニメーションはさらに冴え渡っており、サイケデリックでどことなく不安感を煽る色彩や画面演出もそのまま。ステージ攻略中のアッパーなものからステージクリア後の不安や後ろめたさを煽り立てる静かなものまでサウンドトラックにも魅了されるばかりで、これほどのクオリティはまず滅多に味わえるものではない。この点に関してまさに前作の正統進化であり、そして私が再び戻りたかったMiamiの姿だった。ステージ4開始時のBGMと演出などは本作の白眉と言えるだろう。

 

「広大」になったMiami

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大きく変わったのはマップデザインだ。前作に比べてマップが倍以上の面積になっており、開けた場所やそもそも屋外といったシチュエーションが非常に多く、戦闘する場所そのものが純粋に広くなっている。敵配置もマップ全域にわたるため配置数がかなり増加しており、銃持ちの敵の比率も前作より高め。ゲームプレイに関わる変更点は実はほとんどこれだけなのだが、この1点で本作のゲームプレイは前作とは別物と言えるレベルで変貌している。

マップが広くなった結果どうなったかというと、まず攻略にかかる時間が非常に長くなった。本作の1ステージは概ねマップ2つ~4つで構成されている。このことは前作と変わらないのだが、チェックポイントがマップ間のみというルールも前作から変わっていないため、マップが広くなって敵が多くなった分だけ1マップにかかる時間や、死亡時にリスタートで巻き戻される時間が大幅に上積みされてしまっている。

プレイフィールも大幅に変化した。具体的には銃持ちの敵が大変な脅威となった。本作の敵の視界は広く、マップにもよるが射線さえ通っていれば、基本的にプレイヤーの視界外からでも撃たれると思って間違いない。プレイヤーの「マップ全体を見渡すことができない」というハンデもあって、事故死率は非常に高い。撃たれればほぼ即死(厳密には数発は耐えるが、本作で単発銃を持つ敵はあまり多くないので意味が無い)で、死んだらそのマップの最初からやり直さなければならない。先述の通り前作よりもリスタートの負担がかなり重くなっているので、マップ攻略直前に画面外からショットガンで撃たれて理不尽に死亡した時のストレスはなかなか筆舌に尽くしがたい。このパターンで私は何度かプレイを中断してしまうことがあった。

結果として「ノンストップでカチ込んでの撲殺ラッシュ」というスピーディーでテンションの高かった前作のゲームプレイは鳴りを潜め「姿チラ見せ、あるいは銃声で敵をおびき出してちょっとずつ殺害」「銃弾に射程距離の概念がないのをいいことに超遠距離から狙撃排除」というちびちびしたゲームプレイに変化している。率直に言って、前作の存在を抜きにしてもこのゲームプレイはイマイチだ。単純にあまり出来のよろしくないトップビューの全方位シューターを遊んでいる感じで、Miamiらしさをほとんど感じることができない。

前作の「ステージ開始時にかぶるマスクによって性能が変化する」というフィーチャーは大幅に縮小されていて、性能のバリエーションも大幅に減らされているほか、そもそも性能変更の機会すら与えられないステージが多い。なにせマスクすら被らないキャラまで居るのである。 それでも普通のプレイングをさせてくれるステージはまだましな方で「殺傷武器を(基本的に)使用できないキャラ」「武器が持ち替えられないキャラ」を操作しなければならないステージも多数存在し、広いマップデザインとやりたくもない縛りプレイの相乗効果でプレイヤーの意欲をガリガリ削り落としてくれる。突然ハワイに話が飛ぶのは構わないのだが、それが強制縛りプレイの合図ともなれば話は別である。

武器が持ち替えられないため、弾薬補給や攻略方法に大きなハンデを背負うハワイ編での一幕。ハワイ編にかぎらず、開けた場所や射線がやたら通る場面が非常に多いため、こうして狭い入り口などにおびき寄せて殺すというゲームプレイになりがち。
武器が持ち替えられないため、弾薬補給や攻略方法に大きなハンデを背負うハワイ編での一幕。ハワイ編にかぎらず、開けた場所や射線がやたら通る場面が非常に多いため、こうして狭い入り口などにおびき寄せて殺すというゲームプレイになりがち。

 

プレイヤーへの挑戦状としてのMiami

広いマップ、行動に制限のあるプレイヤーキャラの存在、理不尽レベルの難易度。これはすべて前作終盤の警察署ステージからBiker編のゲームプレイをさらに延長したものであり、本作をプレイするための前提条件として「前作のクリア」があるというのはわかる。本作には『Hotline Miami』をクリアした、ないし遊びつくしたというプレイヤーへの挑戦状という側面があるのだろう。そういう意味では、基本システムを変えず、ほぼマップデザインひとつでここまで印象を変えさせた開発陣の手腕は賞賛すべきなのかもしれない。

前作『Hotline Miami』より。こちらは概ね小分けされた部屋の単位で攻略していくようなマップデザインになっており、マップそのものも本作より小規模。画面外からの射撃に怯えるシチュエーションもごくわずかだ。
前作『Hotline Miami』より。こちらは概ね小分けされた部屋の単位で攻略していくようなマップデザインになっており、マップそのものも本作より小規模。画面外からの射撃に怯えるシチュエーションもごくわずかだ。

しかし――本作はどうにも「雑」なのだ。そしてその雑さのほとんどは、前作から引き継いだ雑さ、前作から変えるべきを変えなかった雑さである。マップが広くなり、敵が多くなり、その敵を倒すまでの時間や手順が長くなり、死んだ時に巻き戻される時間とそれによるプレイヤーへのダメージが大きくなった。しかし、その大きくなった分を埋め合わせる「飴」を本作は一切追加しなかった。それどころか前作の時点でどうかと思った「敵がスタックして無敵になったりするバグ」や「マップ上のオブジェクトが銃弾も視線も止める遮蔽物なのか単なる障害物なのかがひと目でわからない」といったゲーム的な欠点は全く改善されずに手付かずのまま出てきてしまっている。プレイ時間がいろいろな意味で伸びた分、前作では見過ごすことの出来た、あるいは気にならなかった完成度の低さがどうしても目につくようになってしまった。ゲームプレイをここまで変える以上、変えなければならなかったルールもあるはずだった。正直なところ、このマップの広さやデザインならマップ内でのチェックポイントは用意しなければならなかったと思うし、マップ間でのゲーム中断もできるようにすべきだったと思う。ただでさえ「次のマップに持ち込む武器によっては詰む」というステージが出てくるのだから。

クリアする頃にはある種の悟りを開けるであろうハードモード。その中でも真の地獄の始まりである11面をピックアップ。ちなみに画面写真の状況は間違って近接武器を持ち込んでしまっているのでほぼ詰みの状況(少なくとも私には打開できなかった)。ハードモードにかぎらずこうした事実上詰みの場面は本作でしばしば登場するが、そうなったらステージ最初からやり直しだ。
クリアする頃にはある種の悟りを開けるであろうハードモード。その中でも真の地獄の始まりである11面をピックアップ。ちなみに画面写真の状況は間違って近接武器を持ち込んでしまっているのでほぼ詰みの状況(少なくとも私には打開できなかった)。ハードモードにかぎらずこうした事実上詰みの場面は本作でしばしば登場するが、そうなったらステージ最初からやり直しだ。

 

「プレイヤー」不在のMiami

前作にも登場した鳥頭の「Richard」。本作でも幾度と無く登場し、プレイヤーキャラに意味深な問い掛けと助言を投げかける。前作では主人公である「Jacket」を介してプレイヤーに直接語りかけるかのような存在だったが、本作ではあくまでストーリー内のキャラクターへの語りかけに終始しており、ストーリーラインに収まったキャラクターの一人という印象を受ける。
前作にも登場した鳥頭の「Richard」。本作でも幾度と無く登場し、プレイヤーキャラに意味深な問い掛けと助言を投げかける。前作では主人公である「Jacket」を介してプレイヤーに直接語りかけるかのような存在だったが、本作ではあくまでストーリー内のキャラクターへの語りかけに終始しており、ストーリーラインに収まったキャラクターの一人という印象を受ける。

シナリオについても少し触れておきたい。本作のシナリオは前作のそれよりもかなりわかりやすく作られている。時系列こそ頻繁に前後するものの各シーン冒頭で日付表示が出るため話の流れ自体は追いやすい。内容的にも完全に前作と地続きで描かれており、前作の不明瞭だった点の補完も積極的に行われている。……のだが、難解で謎めいた内容こそが魅力であった前作のストーリーに、後付でかなりきっちりと理屈付けをしてしまっているため、逆に前作の謎めいた神秘性を削いでいる面も否めない。蛇足、と言ってしまうにはよくできた内容であるし、先述の通り要所の演出はずば抜けたセンスで魅せてくれるためエンディングまではさほど気にならないのだが、プレイし終えた後に残る余韻は前作とは比べ物にならないくらいかすかなものだった。前作と違い「明かされない謎」がさほど残らないこと、そしてエンディングの内容から考えると、本作はそうした楽しみ方をあえて拒絶しているのではないだろうかとも思う。

また前作のメインプレイヤーキャラクター「Jacket」と違い、本作のプレイヤーキャラクターは独自の目的と人格を持ち、何よりよく喋る。終始無言で顔もよくわからなかったJacketは、それがゆえにプレイヤー自身との奇妙な一体感があったが、本作はそうした点をも、おそらくは意図的に排除しており、私はそれを非常に寂しく感じてしまった。前作はJacketが私であったからこそ、私は背徳感と興奮の間でバットを振り回したし、RichardのセリフはJacketとモニタを飛び越えて私の胸に刺さったのだ。そうした「プレイヤー自身」をゲーム内に投影する仕組みが本作には組み込まれておらず、プレイヤーは最初から最後まで観客であった。私にはそれが非常に寂しかった。

マイアミは変質した。マップが広大になり、物語が長大になり、そしてゲームプレイは冗長になった。物語的にも内容的にも確かに『Hotline Miami』の続編なのだが、どうしても前作と同じMiamiで過ごしている気がしないのだ。Dennaton Gamesが「前作と同じゲームプレイ」を嫌ったのか、それともこれが当初から作りたかった「本当にHotline Miami」の姿だったのか定かではないが、物語の結末を見届けハードモードまでクリアした今、私の中に残ったのは達成感でも余韻でもなく、胸を押しつぶさんばかりの疲労感である。

ステージクリア表記の後、冷たく静かなBGMの中「来た道」を戻る時の雰囲気などは広いマップならではのものがあり、まったく活かされていないというわけではない。しかし、ゲームプレイ上の犠牲は大きすぎた。
ステージクリア表記の後、冷たく静かなBGMの中「来た道」を戻る時の雰囲気などは広いマップならではのものがあり、まったく活かされていないというわけではない。しかし、ゲームプレイ上の犠牲は大きすぎた。

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