『Pokémon LEGENDS Z-A』先行プレイ感想。「難しさ」が上がり「没入感」も上がった。ファンへの信頼も感じられる“リアルなポケモン世界を実現する”という挑戦
『Pokémon LEGENDS Z-A(ポケモンレジェンズ ゼットエー)』は非常に挑戦的な内容に仕上がっているように思える。過去のシリーズ内容と比較すると、「難しい」のだ。

『Pokémon LEGENDS アルセウス』(以下『ポケモン LA』と表記)が発売されたのが2022年。当時の私は、『アルセウス』に対して、以下のような印象を持っていた。シリーズにおける大きな一歩ではあるものの、「根本的な部分から変化し、新しい体験を提供する」ものではない、と。あくまで歴代『ポケットモンスター』シリーズにおけるシステムや遊び方をベースに、「アクションゲームの要素」をアレンジとして組み込んだ形であり、『ポケットモンスター』ファンでありながら、ほかのゲームジャンルに触れたことが少ないライトゲーマー層に強く配慮した……という筆者の印象であった。
時は流れて2025年。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』を経て登場した『Pokémon LEGENDS Z-A(ポケモンレジェンズ ゼットエー)』(以下『ポケモン L Z-A』と表記)は非常に挑戦的な内容に仕上がっているように思える。過去のシリーズ内容と比較すると、「難しい」のだ。この「難しさ」は長年続いたターン制コマンドバトルを通じ生まれる、体験のマンネリを打破する上で大いに役立っているだけでなく、ポケモンと人間の関係性を描写するうえでも効果的である。そして何より、新しい面白さを生んでいる。この度、作品内容の一部を試遊できる機会に恵まれたため、その内容をお届けしよう。なお、今回はNintendo Switch 2 Editionをプレイしている。
『Pokémon LEGENDS Z-A』は『ポケットモンスター』シリーズ最新作となるアクションRPG。対応プラットフォームはNintendo Switch 2/Nintendo Switch。発売日は2025年10月16日を予定している。価格はNintendo Switch 2 Editionはダウンロード版が8100円、パッケージ版が8128円。Nintendo Switch版はダウンロード版が7100円、パッケージ版が7128円(いずれも税込)。
プレイヤーは、2013年に発売された『ポケットモンスター X・Y』にも登場する再開発中の都市「ミアレシティ」を舞台に、街の自警団のような「МZ団(エムゼット団)」の一員として、さまざまな冒険を繰り広げることになる。リアルタイムで進行する戦闘や、「メガシンカ」の存在、そして伝説のポケモン「ジガルデ」の登場がすでに明らかとなっている。
「難しさ」と同時に増えた、ポケモンを見つめる時間

今回の試遊体験は4つのタームに分かれていた。最初に体験したのは、「ワイルドゾーン」の探索だ。「ワイルドゾーン」とは、ミアレシティにおいて、「ポケモンとの共存」を目的につくられた区画を指す。「ワイルドゾーン」の各地には野生のポケモンたちが生息しており、探索を行うなかで戦ったり、モンスターボールを投げて捕まえることもできる。筆者が実際に探索してみたところ、まず感じたのは『アルセウス』の頃から根本的な部分が変化しているということだ。
本作でもいわゆるTPS(サードパーソン・シューティングゲーム)要素を盛り込んだアクションを採用しており、3D空間を歩き回りながら、モンスターボールを直接その場にいるポケモンに当てることで捕獲を狙うことができる。同時に、プレイヤーを見かければ逃げ出すポケモンもいれば、直接攻撃を仕掛け、外敵であるプレイヤーを撃退しようとするポケモンもいる。中には「オヤブン」と呼ばれる、ゲットの難しい強大な野生のポケモンと出会うこともあるだろう。ゆえに、手持ちのポケモンと戦闘を行い、弱らせてからゲットを試みるのが定石である。
その上で、『Z-A』では「リアルタイム感」にこだわることにより、体験の根本的な変化を成し遂げている。では「リアルタイム感」とは何か。それは「今コマンド入力を行っている」とプレイヤーに認識させる時間を最小限にしていることである。「メニューをひらく→ウィンドウを見る→技一覧を見る」というように、ゲームらしいインターフェースを眺める時間が減り、画面上に存在するポケモン、ひいてはポケモンの世界を見る時間が、格段に増えたのだ。
具体的には探索中は常に、ポケモンを連れ歩くことができるのをはじめ、シューティングの要領で野生のポケモンや破壊可能なオブジェクトに狙いを定め、技を放つことができたり(対象が野生のポケモンの場合はシームレスに戦闘が開始する)、野生のポケモンとの戦闘中にメニューウィンドウを広げることなく、フィールド探索中と同じ要領で、ポケモンに狙いを定めてモンスターボールを投げることもできる。その場から遠ざかることで戦闘から離脱することも可能だ。これまでのシリーズに存在した、野生のポケモンとの戦闘/非戦闘時の区切りがほぼ存在しない。

戦闘自体も大きく変わった。技一覧とにらめっこして読み合いを制する状態から、ポケモン同士の間合いを観察し、技の読み合いを制する、格闘ゲームのような状態に変わったのだ。『Z-A』では、ポケモンの技に射程距離が設定されており、射程内に相手のポケモンが入っていないと技が当たらない。そのため、技を選ぶとポケモンは自分で間合いを調整して、技を使ってくれる。「きりさく」であれば相手の直ぐそばに、「バブルこうせん」であれば、ある程度離れながら攻撃する。
技を選んでから行動に移すまでの速度もそれぞれ異なる。たとえば「きりさく」を使うと、相手に近づく時間が発生するが、事前に「たきのぼり」など、相手に突撃する技を使って距離を詰めておけば、すぐ攻撃が発生する。「まもる」は相手の技を見てからでも余裕で行動が間に合う。「アクアジェット」は高速で発生し、高速で終わるため、すぐに次の技へ繋げることができる。「ふきとばし」を使えば、文字通りふきとばすことで、相手の間合いをズラせる。近接技に合わせてカウンター気味につかえば、技をスカせるかもしれない。
なお、技を1度使うと、同じ技を使うまでにはいわゆるクールタイムが必要であり、連打することはできない。よって、その間を穴埋めするように、「つるぎのまい」といった補助技を使ったり、トレーナーがフィールドを動くことで間合いを調整する必要がある(基本的に何もしていないとき、ポケモンはトレーナーのそばへ近寄ってくる)。技ごとに違う射程、発生速度、それに合わせたポジショニングの調整など、戦闘を楽しみ尽くすにあたって、「リアルタイム」に処理が必要な情報が格段に増えており、難度が上昇。より「リアルな」ポケモンの世界に近しい描写と、新しい面白さをはらんだ戦闘体験を構築している。
「難しく」やりごたえのあるスニーキングプレイ、暴走メガシンカポケモンとの戦闘

そんな新しい戦闘体験の一方、今作における探索体験は「上下の階層」を強く意識したフィールドを通して、周囲の視線から隠れ忍ぶ「スニーキングプレイ」を押し出しているように思えた。本作の舞台となるミアレシティは都市であり、ビル群がある。よって、街路樹や花壇にはむしタイプのポケモンが群がり、道端にはデルビルといったポケモンが生きている。下水にはみずタイプのポケモンが、屋根に登ればひこうタイプのポケモンが生活している。彼らをゲットするにあたって、茂みや建物の影に隠れ潜みつつ、死角からボールを投げることが有効なのは、先述した通りだ。しかしそれ以上に、スニーキングプレイが有効な場面が存在する。夜のミアレシティにて行われる、最強を決めるための戦い「ZAロワイヤル」だ。
ミアレシティは夜になると、昼間の和やかさはどこへやら、闘争本能がギラつく戦いの街へ変貌する。「ワイルドゾーン」は「バトルゾーン」へ置き換わり、トレーナーとそのパートナーポケモンたちがプレイヤーを自らの獲物とするべく、うろついている。彼らをポケモンバトルで倒し、一定数チケットポイントを稼ぐと、「ZAロワイヤル」におけるランク昇格戦への参加資格「チャレンジチケット」が得られるのだ。今回の試遊で体験したのは、「チケットポイント稼ぎ」と「ランクアップ戦」である。

「チケットポイント稼ぎ」の時間はスニーキングをしながらトレーナーたちに不意打ちを仕掛けることで、戦闘を有利に運ぶことが重要だ。本作では臨戦態勢にあるトレーナーに近づくと「気配ゲージ」が表示され、彼らの視界内にいると上昇する。これがMAXになると戦闘が始まる。過去のシリーズ作品にあった「互いの目が合ったらポケモン勝負」という不文律を、インタラクティブなギミックに落とし込んだものだ。
この状況下において、プレイヤーはトレーナーに発見される前に、モンスターボールを投げる場合と似た要領で、連れ歩き中の相棒に指示を出し、相手のパートナーポケモンに不意打ちをしかけることが可能。不意打ちに成功すれば、いきなり先頭のポケモンに対して急所に当たる大ダメージを与えることができる。相性差などを考慮すれば、不意打ちでポケモンを倒せてしまうことも……。逆にこちらが見つかってしまうと、一定時間動けなくなり不利な状況から戦闘がスタートする。野生のポケモン時と同様に、その場から遠ざかることで戦闘から逃走できるため、格上に当たってしまったら大人しく逃げるのも立派な戦術である。
要するに、「ZAロワイヤル」ではスニーキングを駆使して不意打ちをしかけることで、サクサクと戦闘をこなしていくことが肝要である。「特定の技で不意打ちをする」といった、ミッションを達成できるとチケットポイントが更にもらえるため、なお良い。しかし、これが結構「難しい」。
意外とトレーナーたちの視野が広く、遮蔽物無しの状況はもちろん、屋根上から狙いをつけているような状況でも、しゃがんでいないと普通に見つかってしまう。地形把握をはじめ、慣れるまでそれなりの時間を必要とするだろう。だが、慣れてしまえば従来のシリーズとは異なった臨場感のある体験を得ることができる。トレーナーとそのパートナーを観察し、隙を見計らって技を当てる。本作は「画面上に存在するポケモン、ひいてはポケモンの世界を見る時間が、格段に増えた」ことで、表現が拡張されたことは先述したが、この「不意打ちを狙う」という体験は、アニメや漫画など、まるでメディアミックス作品における登場人物になれたようで、少し感動を覚えた。

チケットポイントを稼いだら、次は「ランクアップ戦」。これまでの経験を活かして、強敵と戦っていく。印象に残っているのは「まもる」という、一時的なガード技に対していかに立ち回るかという戦略構築である。「まもる」は強いが、次に使ってくるまでクールタイムが存在する。軽い技で「まもる」を使わせたところにタイプ相性有利な技を叩き込んでいくわけだ。おそらくこの「技を使わせる」という読み合いも、技のクールタイム消化時間を「体で覚える」という練習も、本作における戦闘の醍醐味であり、基本的な立ち回りの1つなのだろう。やりこみがいがありそうだ。なお、このリアルタイムな戦闘において「すばやさ」というステータスにどういった意味があるのか、については発売を楽しみにして欲しいとのことだ。

最後にプレイしたのは暴走状態にある「メガウツボット」戦。製品版では、物語の中で戦うことになるそうだ。受けた印象としては、前作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』におけるテラレイドバトルから「ゲーム的な観点」を削いだ内容、という感覚である。
テラレイドバトルを「リアル」に描くとこうなる、という感覚であった。具体的な内容としては、連れ歩きの状態からパートナーに向けて技の指示を出し、攻撃を通じてフィールド中央で動き回るメガウツボットのHPを0にすれば勝利となる。巨大なメガウツボットは毒を撒き散らしたりと範囲攻撃を仕掛けてくるため、プレイヤー自身の回避行動はもちろん、パートナーポケモンに関しても、技を使っていない時間はプレイヤーを追随するという性質を活かして回避する。攻撃を繰り返したり、フィールドに発生するメガエネルギーを回収することで、一定時間のメガシンカが可能になるため、対応ポケモンが手持ちにいる場合は積極的に狙っていきたい。
今回の試遊ではメガサーナイト、メガアブソル、メガヘルガーにメガシンカ可能となっていた。メガヘルガーによる強力なほのおタイプの技で弱点を突くことができたゆえに、筆者は特に苦戦することもなく勝利した。ちなみに、本作には『アルセウス』から引き続き、技の皆伝があることが確認できた。皆伝している技はメガシンカエネルギーを消費することで、強化できるため、仮にメガシンカしないポケモンで手持ちを固めていても、システムを活用することは可能だ。
また、途中でゲームオーバーになってしまったとしても、その時点における暴走メガシンカポケモンの体力の削り具合を継承したまま、戦闘に再挑戦することができる。プレイヤー/ポケモンによる攻撃の回避や、的確なタイミングにおける技、メガシンカの指示など、暴走メガシンカポケモンとの戦闘はリアルタイムなアクション要素が普段以上に強い。アクションゲームが苦手なプレイヤー向けの仕様といったところである。
「難しさ」はユーザーに対する信頼の現れ ポケモンの再開発に向けて

以上が、試遊体験の内容となる。現時点における総合的なインプレッションとしては、過去のシリーズ作品から「難しくなった」=「ポケモンの世界をリアルタイムで見続ける必要がある」ようになったことで、『ポケットモンスター』の世界により没入し、その世界の住人として物語を体験できるようになった印象である。この内容は、人間とポケモンの関係性を描き、現実と仮想をつなぐことに邁進する、ポケモンの昨今の方針と合致している。また、表現の拡張に伴い、結果として過去のシリーズ作品よりも何度が上昇している。そのことを開発陣が許容している事実にも1ファンとして喜びを感じる。
というのも、『ポケットモンスター』の歴代シリーズ作品は「誰でも遊べる、低難易度な育成ゲーム」であるように迫られていたと筆者は感じていたのだ。あくまでターン制コマンド式の戦闘を提供し続け、悪の組織やジムバトルを制していくという、読みやすさを重視した物語の文法にこだわり続けていた。歴代シリーズ作品はポケモンというIPを世界に知らしめるうえで、最初に触れるメディアとして、「誰でも遊べる、難易度の低い育成ゲーム」である必要があったわけだ。
しかし、ポケモンは長い時間をかけてメディアミックスという、さまざまな「世界への入口」を提供することに成功した。歴代シリーズ作品をプレイしていなくとも、ポケモンは十分に楽しめるようになった。いろんな入口ができた。言い換えれば、現在、ポケモンを楽しんでもらうにあたり、入口が「誰でも遊べる難易度の低い育成ゲーム」である必要性は薄れた。「ポケモンについて、いろいろな体験を提供してほしい」というファンの声に開発者が応える形で、互いの協力のもと体験を作り上げていくことができるようになっている。
昨今ではモバイルで楽しめるアクションRPGやシューティングゲームの存在もあってか、アクションゲームに慣れている年齢層は拡大している。ポケモンによるマルチプレイヤーオンラインバトルアリーナとして『Pokémon UNITE』もある。そうした状況も含めて、過去のシリーズ作品と比較して難しめのゲームを提供しても、頑張って遊んでくれるであろうことを開発者は信じたのではないかと、筆者は想像している。
筆者はこの「『ポケットモンスター』シリーズの再開発」とも呼べる態度を、大きな一歩として支持したい。そして、楽しみである。ユーザーを信頼することで、ユーザーに与えるのではなく、共に表現を作り上げていく方針に力を入れたポケモン。本作はその象徴の1つになるであろう。『Pokémon LEGENDS Z-A』にはこれまでに感じ取ることが叶わなかった、ポケモン世界のフロンティアが広がっているはずだ。

仕様が異なる場合がある
『Pokémon LEGENDS Z-A』は2025年10月16日発売予定。作品に関連する各種グッズも同時発売されるため、詳しくは公式HPを参照してほしい。
©2022 Pokémon. ©1995-2022 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは
任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。
※ゲーム画面はNintendo Switch 2 Editionのものを使用しています。
※画面は開発中のものです。
※開発中のソフトを使用しているため、実際の製品とは一部仕様が異なります。