『Risk of Rain』 腕前と運のシーソーゲーム

Risk of Rain』は、社員数2名のデベロッパ「Hopoo Games」が開発を、『Starbound』が現在β中の「Chucklefish Games」が販売を手掛ける横スクロールアクションゲームだ。プレイヤーは未知の惑星に不時着した貨物船クルーの生き残りとなり、惑星中に散乱してしまった貨物を利用しながらこの星からの脱出を目指すのが目的である。

 


難易度という時間制限

 

ゲーム中常時表示されるタイマーと難易度ゲージ。右側は最高難易度の「HAHAHAHA」。
ゲーム中常時表示されるタイマーと難易度ゲージ。右側は最高難易度の「HAHAHAHA」。

 

ゲーム内容は比較的シンプルといえる。プレイヤーは攻撃手段や特性が異なるクラスの中から1つ(初期状態では”Commando”のみ選択可能)を選び、ステージのどこかに設置されたテレポーターを目指す。途中で出くわす敵を倒すと経験値とお金が手に入るので、それを元手に道中でアイテム(もとは貨物船の積み荷)を購入してパワーアップ。テレポーターまでたどり着くとボス戦および敵の攻撃ラッシュが始まり、ボスを含めたすべての敵キャラを殲滅すると次のステージに転送される。そしてまたテレポーターを探す……というプレイを最終面まで繰り返して進行する。プレイ中に特定の条件を満たすと新たなクラスやドロップアイテムが解禁され、攻略が徐々に楽になっていく。

ステージ進行とは別に時間経過で難易度がどんどんインフレしていくシステムとなっているため、時間をかけすぎると敵の質・量ともに加速度的にアップしていき、プレイヤーキャラのレベルアップによる成長をあっという間に上回ってしまう。

 

それを補うのがステージ中で手に入るアイテムだ。本作のアイテムは大きく分けて「取得するだけで効果を発揮する装備アイテム」「使用することで効果を発揮するユーズドアイテム」「攻撃・回復などの補助をしてくれるドローン」の3種類が存在し、これらをできるだけステージ中でかき集め、レベルアップとは別にプレイヤーキャラを成長させることが肝要である。ユーズドアイテムこそ1つしか持ち歩けない(クールダウン制なので時間が経てば何度でも使用可能)ものの、装備アイテムとドローンには取得制限のようなものはなく、同じアイテムでも基本的に効果がスタックするためアイテムは集めれば集めるほど有利になる。

 

アイテムは基本的に有料。上のように3択(?が多いので実質ランダムだが)の場合もあれば、下のように箱に入っていることもある。箱の中身もランダム。
アイテムは基本的に有料。上のように3択(?が多いので実質ランダムだが)の場合もあれば、下のように箱に入っていることもある。箱の中身もランダム。

 

しかし、先述の通り本作においてアイテムは原則的に有料である。アイテムを入手するためには敵を倒してお金を稼がなければならないが、時間経過による難易度上昇があるのでモタモタしていられない。かといってアイテムをおざなりにし過ぎると、今度はステージ数の進行による難易度の上昇についていけずに結局死んでしまう。さらには入手アイテムも数や内容は完全ランダムであるため、運の要素の比重は決して少なくない。ゲームバランスも選択した難易度にかかわらず概してシビアめであり、相当極まったレベルに到達しないと、気を抜くと一瞬で死んでしまうことだろう。

時間経過、ステージ進行、そしてアイテム運。この3つの要素を常に天秤にかけながら、雑魚敵の処理における立ち回りや探索時間のバランスを考えるのはとても楽しく、上達を実感できるところである。本作はクラスごとにスタイルが強烈に個性付けされているので、それぞれで必要となるアイテムの傾向が異なる。例えば攻撃回数の多い「Commando」であれば確率発動系のアイテムが出るとグッと楽になるし、「Euclid」のような近接攻撃主体のクラスであれば、近距離の敵に常時ダメージを与えられる有刺鉄線と相性が良い。このようにクラス特性とアイテムの効果を見極め、選べるならどんなアイテムを選ぶべきか? ほしい系統のアイテムを引かなかった、引けなかったときはどのように凌ぐのか? このキャラはどういった戦い方をすると有利で、あの敵は段差を上がれる敵だっただろうか?

キャラとテクニックが、アイテム知識が、敵キャラに対する知識がギアリングして、徐々に先のステージが拝めるようになる、生存時間が伸びていくというように、目に見える形で成果があらわれる。ローグライクと呼ばれるゲームの魅力は、このゲームにも息づいている。

 


アンロック要素でぼやけるシビアさ

 

一方で、私が最後まで馴染めなかった点がある。アイテムそのものにもアンロックの要素があるというところだ。

先述したように、本作ではゲーム中に特定の条件(チャレンジと呼ばれる)を達成することで、ゲーム開始時に選べるクラスや、ドロップアイテムが追加されていく。この「ドロップアイテム追加」というのが曲者で、ゲーム開始直後は、ドロップアイテムの実に半分以上がロックされた状態なのだ。しかもゲーム開始時から出るアイテムは、どうにも性能が微妙な物が多い。

当然、ロックされたアイテムはゲーム中に出現することは無い。アンロックのためにはチャレンジを達成する必要があるが、プレイを重ねるうちに勝手に解除されていくような類のものはともかく「チャレンジ達成のためだけのゲームプレイ」をせざるを得なくなるものも少なくない。そして、チャレンジ達成条件が面倒くさいものであればあるほど、強力なアイテムがアンロックされる傾向にある。

そのため、本作はプレイすればするほど「ラク」になる。プレイヤースキルの上昇とは別に、出現アイテムの質が徐々に上昇していくため、デフォルト状態では「敵の能力インフレにアイテムをかき集めて追いすがる」ゲームだったのが、徐々に「解禁された強いアイテムで常に敵の能力に先んじる」ゲームにすり替わっていく。プレイヤースキルの介入度合いが薄まり、代わりにアイテムプールの充実度と、その中からの強力なアイテムの引きが重要という点が浮き上がってきてしまう。

 

ズラリ並んだチャレンジ項目。これがあと2ページ分あるわけで……
ズラリ並んだチャレンジ項目。これがあと2ページ分あるわけで……

 

私にはこの点が非常に残念だった。遊べば遊ぶほど、たしかにプレイスキルは上達していくのだが、それ以上に強力なアイテムの充実のおかげで、どんどん「甘え」の余地が広がってしまう。大味なゲームプレイが許容されていく。初期状態の難易度のシビアさと、それが故に強烈に感じることができた上達の喜びが急速に薄れていってしまう。

そうなると、このゲームの想定した「適正難易度」とはどこであったかという疑問が浮かぶ。デフォルトでのアイテムプールはかなり厳しく、この状態でクリアできるのはかなりの達人だ。してみると、アイテムのアンロックという要素もまた「成長要素」であり、同時に救済要素でもあるということなのだろうか。

もっとも、出現アイテムがいくら強力になったからといって、本当にいい加減なプレイングが許容されるところまではいかない。あくまで「攻略上、出現アイテムの引きに依存する部分が大きい」というのが顕著になっていくだけで、プレイヤーのスキルがまったく無意味になってしまうというわけではない。そこはローグライクを名乗るゲームだけはある。

 

それに、敵と自分の能力インフレ合戦で迎える6週目突入時のお祭り具合などは、これはこれで楽しいのは確か。なによりこのゲームは操作感や効果音、敵キャラの死亡モーションといったアクションゲームとしてのベースパーツがしっかり気持ちよくなるように作りこまれている。重なりまくって雲霞の如く押し寄せる敵に向かって必殺スキルをズドン、凝ったモーションで砕け散る敵キャラ、パーッと飛び散るコインアイテム、そしてものすごい処理落ち。基本的にシビアなゲームながら、時折体験できるこうした爽快感が、どんな理不尽な死に方をしてもこのゲームをリスタートさせる魅力の一翼を担っているのは間違いない。

 

たしか5週目。乱れ飛ぶ敵味方のミサイル! 複数同時に襲い来るボスキャラ! ダメージカウンターのインフレ! これはこれで間違いなく楽しいのだ。
たしか5週目。乱れ飛ぶ敵味方のミサイル! 複数同時に襲い来るボスキャラ! ダメージカウンターのインフレ! これはこれで間違いなく楽しいのだ。

 


オンラインはパーティゲーム

 

オンラインCOOPについてだが、プレイした限りではおそらくまともにゲームになるのは参加人数3人くらいまでだと思う。人数に対してアイテムの総数が増えないので、結果的に火力が散ってしまって敵の能力のインフレに追いつけなくなる。とくにプレイヤーが4人をこえると、かなり序盤からボスキャラクターが通常出現するようになり(これは本来高次難易度の挙動)、ジリ貧に追い込まれるのは間違いない。

クラスごとのアイテムの相性も激しいため、事前に誰がどういうアイテムの取り方をしていくかの打ち合わせは必須。ゲーム中に意思の疎通手段が基本的になく、サーバブラウザも未搭載、死んだらステージクリア以外に復活手段がなくて暇になる等、少なくとも野良で楽しむのはシステム的に難しい。もっとも、サーバブラウザがないので野良で集まることがまず難しいのだが……。COOPでなければ解除が難しいチャレンジの達成を協力して狙うか、そうでなければ事前に示し合わせてボイスチャット付きでワイワイ楽しむのがこのゲームのオンラインCOOPの楽しみ方ではないだろうか。

 


いぶし銀の輝きをたたえたゲーム

 

まとめて一つ「コレ!」といった要素はないが、特に初期状態における理不尽に片足突っ込んだシビアさと、ゲームプレイの丁寧な作りこみからしみじみと魅力がわかってくるタイトルである。アイテムの引きやテレポーターの配置運などのランダム要素と、攻略がそれに引きずられる不自由さを感じることは多いが、代わりにマップそのものは半固定になっている等、バランスを取ろうとした意思は感じられ、そこも含めてトータルではかなり高水準な作りこみがなされている良作である。初期状態こそ窮屈だが、難易度イージーで何度か遊べばこのゲームの遊び方や立ち回り方も理解できるのではないだろうか。

この冬を黙々とやりこんで過ごすゲームの一つとして、選択肢に入れるべきタイトルである。

 

30時間ほど遊んで達成率はこのくらい。正直、これ以上自力アンロックの余地がなさそう。
30時間ほど遊んで達成率はこのくらい。正直、これ以上自力アンロックの余地がなさそう。

 

Rokurou Eyama
Rokurou Eyama

ビデオゲームとアメコミとバイク(盗難被害遭遇済)をこよなく愛する30台前半。レトロゲームも最新ゲームも等しく同じ大切なプレイ対象である。

幼少期に出会った『マーブルマッドネス』の衝撃でビデオゲームに目覚め、なぜか実家に転がっていたMSX2+に親しみ、バーチャルボーイに立体視の未来感を植えつけられゲーム人格が形成されていった。STGからRTSまでどんなジャンルも遊んでみるが女の子がいっぱい出てくるゲームは苦手。

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