HAL×PLAYISMプロジェクト学生作品 vs GGeo UnFreeMan Round3~総評
Round2に引き続き、本稿ではHAL大阪で制作されたタイトルについて講評してゆきたい。
本稿を読む前に、弊誌安田による趣旨記事と、前々回の私の講評記事について、先にお読みいただけると幸いである。
0
■紹介
環境系ソフト。プレイヤーは風を模したカーソルを操り、フィールドに散らばる「光」を集める。集めた光を、ステージごとのオブジェクトに注ぎ込む事でオブジェクトが増殖、繁栄していく。
■講評
今回制作されたタイトルの中で、唯一ゲーム要素の薄いタイトル。いわゆる雰囲気ゲー。そのとおり雰囲気やセンスを味わうタイプのタイトルである。
なので正直なところコメントしづらいのだが、一通り遊んで気になったところをいくつか。カーソルの軌跡がわりに使用している風のエフェクトが、カーソル停止時や急に折り返した時に破綻するのが見えてしまって気になる。
雰囲気ゲーである以上、こうしたこまごましたエフェクトや演出はこだわってこだわりすぎるという事は無い。プレイヤーからのインタラクションが薄い分、こうした視覚効果の破綻はそのまま没入感を阻害してしまう。
また、プレイ中に効果音の類が無いのは寂しく感じる。意図して鳴らしていませんと言われればそれはそれで納得できるが、私個人としては何か鳴った方が画面に入り込んで行けるのではないかなと思う。それと余韻は大切にするべき。最後のアレはちょっといただけない。
全体的なセンスは正直嫌いでは無いのだが、雰囲気ゲーとしてはまだまだ磨けるはず。今の状態ではやや中途半端な作り込みに感じる。
CollectMe
■紹介
ローグタイプのアクションゲーム。プレイヤーは亡霊となって、ダンジョンと化した墓地を彷徨い歩き、骨を拾って体を作りながら先に進んでゆく。
体は拾った部位によって「障害物である墓石を破壊できる」「切り離して敵キャラの囮にできる」などの特殊能力を発動できる。体のパーツを一つも所持していない状態で、敵キャラである「死神」に攻撃されるとゲームオーバー。
■講評
遊び方の分からないゲーム。マップ生成がローグタイプで、しかも1マスごとに墓石が置かれているとプレイヤーに厳しい移動条件でありながら、死神は移動制限が無い。
死神の出現タイミング、出現箇所もランダムで、おまけにプレイヤーの移動速度と死神の移動速度が一緒なので、逃げることが非常に難しい。具体的に言うと曲がれない。体を囮にする要素はともかく、墓石を破壊できる機能は何度遊んでも存在する理由がわからない。このゲームの見所はどこだったのだろうか……
詰み状況。死神がこの位置に出現したので捕獲を回避できない。
墓石が邪魔でまっすぐ逃げることも出来ず、基本的に出現したら負けである。
ColorfulToyBox(参考)
■紹介
道に沿って進軍してくる敵を、おもちゃの武器を設置して撃退するディフェンスゲーム。
■講評
※本タイトルについては、マニュアルを提供されなかった関係で操作がわからず、ゲームの内容とは別の理由でプレイ続行が不可能だった。そのためスクリーンショットの紹介にとどめ、講評は差し控えさせて頂きたい。少なくともデザインに関しては可愛らしく出来上がっており、ぜひともきちんと遊んでみたかったのだが。
GhostRaceCarnival
■紹介
レトロな形状をしたマシンを操り、1位を目指すレースゲーム。敵と自機を繋ぐワイヤー、無敵ブースト、サイドアタックなどの特殊能力を駆使して1位を目指す。特徴として「敵車を追い抜くと一時的に性能アップ」というシステムを採用しており、無敵ダッシュで敵に重なりつつ追い抜くとさらにブーストする。ガンガン抜いていく爽快感が売りとのこと。
■講評
デバッグ用の数値が丸見えである事実から香る未完成臭。どうも車のモデリングを作りきったところで力尽きてしまったらしい。4つあるコースもそのうち3つはテクスチャの張られていない素ポリゴン状態で、唯一外見が多少完成しているコースも背景とコースの高さがまるであっておらず突貫工事感がすごい。
そしてバグが多い。具体的に言うと地形判定がさっぱりなようで、壁を抜けて奈落に墜ちたり床のポリゴンの継ぎ目から奈落に墜ちたり、コースアウトを誘うバグが頻発する。プレイヤーだけでなく敵車もそれは同じようで、左上のコースレーダーから次々と敵車を示すアイコンが明後日の方向へ吹っ飛んで消えてゆく。
レースゲーム的にはどうかというと、どうも「敵車を追い抜いてブースト」のシステムを常時維持することを前提に作ってあるようで、デフォルトの最高速が非常に遅くて走る爽快感がない。敵車もバグのせいで次々とコースから減っていくものだからそもそも追い抜けないし。
常時敵車を抜き続けるというコンセプトは面白そうな気がするが、現状のこのゲームはその理想に達していないのは明らかだ。
MAN IN THE CRISIS
■紹介
マウスだけで遊べるミニゲーム集。棒人間に振りかかる10種類の災難をマウスひとつで振り払え。
■講評
単品ではミニゲームどころか『メイドインワリオ』のプチゲームのような内容だが、スコアが競えそうなゲームに関しては数字が残るようにしていたりとさりげない仕事が目立つタイトル。10種類のミニゲームもビジュアルに手抜きなのかそうでないのかよくわからないセンスが見え隠れし、これを狙ってやってるなら大したものだと思う。
シビアに見ると、1回あたり十数秒で終わってしまうミニゲームを10個作って「商品です」と出すのはやはり厳しいと思う。なにせこのゲームは賞味期限が最初の1回で切れてしまう。この方向性で行くなら数が足りないだろう。桁がひとつ増えるくらいは欲しい。そうなるとますますもって『メイドインワリオ』に近づいてしまうが……
本来「最初の1回」しかないようなミニゲームを、膨大な量と卓越したセンス、リズムゲームのように次々と遊ばせるというアイデアで商品としてまとめあげたのが『メイドインワリオ』だが、このゲームにも数をカバーするアイデアがないと厳しい。
MISSING-MOVE
■紹介
謎の施設からの脱出を目指すスニーキングアクション。プレイヤーは移動することしか出来ないので、明滅する敵の姿を確認しながら視界外に逃げ、クリアを目指す。
■講評
スタートからゴールまでやることが変わらず、プレイヤーから起こせるアクションが殆ど無いのでただのタイミングゲーになってしまっている。
せめてルート開拓を考える余地があれば良いのだが、敵の動きとマップ構成の引き出しが少なく、後半になると「長くてリトライが面倒だなあ」という気持ちしか湧いてこない。
方向キーしか使わないならそれでもいいので、マップにギミックを持たせるとか、パズル性を高めるなどのゲームとしての奥行きがほしい。
Robotics
■紹介
マウスクリックで味方部隊を操作し、フィールドの敵を排除していくアクションゲーム。
中央の主人公が敵に触れてしまうとゲームオーバーである他、的に攻撃できるのは緑色のキャラのみで、後のキャラは何もしない。
■講評
「操作は分かるが楽しみ方がわからない」というゲームの一つ。要は緑色のキャラを的にぶつけていくというだけのゲームで、それ以外に何もないというのは寂しい。ボスらしきキャラも、途中で画面外に去ったまま帰ってこなかったりとバグも多く、純粋に未完成であるようにしか見えない。
その中でも地味に「ゲームパッドがつながっていると起動できない」というバグが痛く、このせいで今日(10/27)まで起動不可能なゲームだと勘違いしていた。
アニマルセイバー
■紹介
オーソドックスな縦シューティング。ショットとボムを駆使して動物を守る。動物アイテムを取得するとボムが補充され、プレイヤーを手助けしてくれる。
■講評
何故このタイトルとタイトル画面から唐突に縦STGが始まるのかわからなかったという点でなかなかポイントが高い。STGとしては特にひねった要素もなく本当にオーソドックスな内容だが、それが過ぎて道中、ボス戦ともにメリハリがまったくないのが良くないところ。
道中は自機狙い弾を垂れ流し、ボス戦はモダンな弾幕展開と、そういう面での起伏はあるのだが、このゲームそのものに既知のSTGタイトルよりも優れた点というのがひとつも見いだせないので正直苦しい。このゲームのウリは何であろうか。それをわかるように提示すべきではないだろうか。
キャトるみゅ~ティれーしょん!
■紹介
宇宙からやってきたUFOとなって、地球のオブジェクトに対して光線での捕獲とリリースを繰り返してミッションをこなしていくアクションゲーム。
■講評
このユルい雰囲気嫌いではない。しかしユルいのは雰囲気だけで良くて、作りこみやバグ取りがユルくて良い道理はない。「人間をクリックするとどういう人物なのかわかる」という説明が出るのはいいが、クリックしても何も起こらない人物が半分くらいいるのはどういうことだろうか。
マップにもオブジェクトにも生活感を感じないので「平和な地球にどろぼうUFOが襲来してめちゃめちゃに!」というようなカタルシスが感じられない。ゲーム全体を通じてキャラやオブジェクトに血が通っていない。
とにかくメイン操作の「吸い込み光線」をもっと良くするべき。当たり判定がわかりづらく、どれが吸えてどれが吸えないオブジェクトなのかわからない。吸い込み途中で光線を解除した時の処理も雑。
率直に言って何を楽しめばよいのかわからないタイトル。このゲームの魅力をしっかり提示して欲しかった。
コントン☆ノーエン(参考)
■紹介
『Plants vs. Zombies』を彷彿とさせるディフェンスゲーム。特徴は「武器を育てて収穫する」というパートが襲撃の合間に入ること。次回襲撃までの時間を考え、効率よく武器を育てて襲撃に備えるのだ。
■講評
メニュー画面以降、クリックがまともに反応せずゲームをプレイすることができずにいる。よってこのタイトルも紹介に留めたい。
ただ、武器の栽培パートは思った以上に「ただめんどくさいだけ」という内容に見えた。如何せん「水をやる」「肥料をやる」といったメニューがマトモにクリックできないので、あくまで想像するしかないのだが。
ジイSUN
■紹介
落ち物パズルとプレイヤー誘導系アクションを一つにしたゲーム。内容的には『ぐっすんおよよ』が近いか。3つ揃うと消えてしまうブロックを時には消し、時には積み上げながら、主人公である「じいSUN」をゴールに導くのが目的。ブロックが上まで詰まるか、じいSUNをブロックで潰してしまうとゲームオーバー。
■講評
大阪で何かブームでもあったのか『ぐっすんおよよ』『テトリスPLUS』の流れをくむタイトルが2つ存在した。これはそのうちの片方。
他にない特徴は「じいSUNをプレイヤーが自由に操作できる」という点で、基本的に法則にしたがって左右を往復するだけだった先述の商用タイトルと差別化している。
その分じいSUNの動作自体は非常に鈍重で、少しでもブロックに引っかかると即死ということもあって、ブロックの積み方とじいSUNの操作を長いスパンで考えねばならないため忙しく、なかなか楽しい。
ルールはよくまとまっており、最終面のちょっとひねったアイデアも私好みで楽しかった。これでもう少しステージ数が多く、ゲーム外画面の見栄えが良ければ、私はこのゲームを推薦していただろう。
チャックサモナー
■紹介
プレイヤーを操作するタイプのRTS。「ぬいぐるみ」という世界観を重視しており、たとえば味方ユニットはぬいぐるみだし、召喚には「地面にチャックを作って開ける」「チャックの中にワタを詰め込む」「チャックをとじてしばらくするとユニット誕生」という手順を踏んで生成することになる。チャックは召喚以外にも敵ユニットを落としてダメージを与えることが出来る。
■講評
アイデアは非常に好きだし、デザインも可愛らしく出来ていてレベルが高い。一部セリフがSoftalkなのはご愛嬌か。
しかし唯一にして最大の問題がある。ゲームがおもしろくないのだ。
やたらチャックを作るための制限が多く、地面にチャックを作りたくても原因不明の不可能マークでやきもきさせられ、まずユニットを召喚できずに即死というゲームを10数回繰り返しユニットを召喚できるようになると、ワタの色とユニットの特性の因果関係が掴みづらくて死んでしまう。普通の人はここまでで投げてしまうだろう。いくらなんでもシビア過ぎる。
UIもビジュアル重視なのは良いのだが、とくに召喚ユニットへの指示アイコンが非常にわかりにくく不便。上に掲載したスクリーンショットで言うと、マップの左側に五つ配置されたアイコンがそれなのだが、パッと見て何を表しているか解るだろうか。
ゲーム内チュートリアルも、操作方法をひと通り教えてくれるのは良いものの、プレイヤーのレベルの概念や「ゲームへの勝ち方」は一切教えてくれないというスパルタ志向で、ゲームの持つ雰囲気とかみ合っていないように思った。
デザイン自体は完成の域にあると思うので、これを初見の人が遊べるゲームまでどう持っていくか、もう少し考えてみて欲しい。
バーゲンソルジャーおかん(参考)
■紹介
スーパー内を駆け巡り、レジを通した商品の総額を競うレースアクション。コース内に点在する商品を広い、レジを通ることでその商品の金額がポイントとなる。これを時間切れまで繰り返し、ポイントの最も高かったプレイヤーが勝利となる。
■講評
1コース終わるごとに必ず強制終了してしまうという問題が解決できなかったため参考枠。レース部分も「後からタックルで飛び込んだもの勝ち」なのであまりルールが練りこまれておらず、見所がわからなかった。
バグ取り物語
■紹介
ゴキブリとなって、自分以外の虫の全滅を目指すRPG。戦闘はターンベースで進み、最終的にすべての敵を倒せばクリア。
■講評
大阪の困ったちゃん筆頭。正直スクリーンショットから感じられる印象そのままの内容だと思って頂いて良い。ゲームオーバーになる要素が無く、ボスキャラの当たり判定も狂っていてゲームとしてどうかと思う点があまりにも多すぎ講評不能。
バトルイストリアウ
■紹介
「椅子取り」を題材としたバトルアクション。他のキャラクターを物理攻撃で吹き飛ばし、椅子にありつけば勝利。
■講評
大乱闘! 飛び散るアイテム! 何故か上半身裸! と視覚的にはなかなか面白い。肝心のゲーム内容が意外と淡白なのは狙ってやっているのだろうか。
ゲーム的には椅子が出現する前の準備時間と、出現後の椅子とり時間に分かれていて、敵を殴ると能力上昇アイテムが出現するので椅子の出現前はそれを取り合い、椅子の出現後は椅子を取り合うとい、常に何かを争うように仕向けられていてこの辺りは考えられている。
椅子取り時も「座りモーションが長い」「座り中に殴られると攻撃力に関係なく最大限吹き飛ばされる」というルールのおかげで「座るのを見られたら負け」という図式が成立しておりなかなか熱い。その分、キャラの数に対して椅子の数が極端に少ないステージだと決着がつかなかったりするが……
問題はステージが変わろうが進もうがやることが全く変わらず、飽きが来るのが早いところか。全部で24ステージあるうちの6ステージ当たり遊んだところで代わり映えのしなさに眠くなってしまった。せっかく「ワールド」という区分けがしてあることだし、マップギミック等にもっと力を入れてみるべきではなかったろうか。
ともあれ、ベースルール自体には悪くないものを感じた。パーティゲームとして盛り上げを作れるだけのポテンシャルはあるように思う。
モグル
■紹介
その場から動けないキャラを、ユニットを使って援護していく変則ディフェンスゲーム。常に真下に掘り進む自キャラを守るため、360度自由方向にユニットを差し向け、時に敵と戦い、時に宝箱を開け、自キャラの強化や新マップの獲得を目指す。
■講評
繰り返し遊ぶことを意識したディフェンスゲームとしてはなかなか良く出来ていて楽しい。「手詰まり」→「別ステージに行くor合成でメタアイテムを作る」という方式でのキャップも考えられており、ゲーム進行にも思った以上に歯ごたえを感じた。
敵が強いので基本的にガンガン掘り進みたいが、ユニットを使って下に掘ってしまうと宝箱を開けられないままスクロールが進んでしまう……というジレンマも配してあって、高難易度であること以外はかなり楽しめる出来だった。
下に掘り進むだけで、それ以外のフィールドの列が宝箱以外基本死んでる等、首を傾げる部分が少なくないので、もう少しそこを活かすゲーム内容があれば入選していただろう。実に惜しい。
モンスターマネージメント
■紹介
経営SLGとタワーディフェンスを組み合わせたタイトル。主な要素は経営SLGであり、プレイヤーは武器商社の経営者となってモンスターを雇い、武器を研究・制作して売却することで利益と評判を獲得していく。
定期的に襲い来る勇者の軍勢相手に「プレゼン」と称してタワーディフェンス型の戦闘を行い、これに勝利すれば評判が上がる。こうして強く新しい武器の開発と、評判を高めていきイリュ企業の仲間入りをするのが目的。
■講評
デザインと世界観の取りまとめ方は随一。紹介文で書いた「プレゼン」の他にも、新規雇用するときは履歴書を参照したり、近隣の村を「訪問」して資金を調達したりと、現実世界の用語と作中で実際に行われていることのギャップのかぶせ方が上手くてクスリとさせられてしまう。
経営シミュレーションとしては、序盤の導線がゼロなのが大問題ではないだろうか。率直に言って「何をするゲームなのか」がほとんど見えてこない。社員の給料が払えなくなったら経営破綻でゲームオーバーというのはわかるが、それを回避するために経営を軌道に乗せる方法が何回やっても見えてこない。
そのあたりの導線というかチュートリアルさえあればこのタイトルへの評価はもっと高まったと思うのだが、今のところ「意図される遊び方の分からないゲーム」の一線を越えることができていなくて残念。
リペアデンジャー
■紹介
迫り来るブロックをショットで崩すシューティング。マウスで狙い、クリックで撃つ。ランダムに敵キャラが発生するのでそれも売って撃退する必要がある他、崩れた床をクリックで修復するというギミックもあり、それなりに忙しい。ゲームクリアはなく、ブロックが規定の高さまで下がりきるか、敵と接触するか、床の穴から墜ちてしまうまでゲームは続く。
■講評
提出タイトルを全部見渡してみても数少ない、純粋なスコアアタック系タイトル。あまり余計な要素がないので迫り来る壁と敵に集中することが出来る。
通常ショットの連射速度が遅めで基本的にパワーアップを取らないと押し負ける仕組みになっているのだが、2つあるパワーアップのうちマシンガンはともかくもう一方のロケットランチャーに相当の癖があり、最初はロケットランチャーアイテムを避けるゲームなのではないかと勘違いさせる内容になっていて、狙ってやったかどうかは分からないがちょっと感心した。
あまりテクニックの介入する余地はなく、いかにロスなくマウスのボタンを押しっぱなしに出来るかというゲームでしかないので、プレイに奥行きがあまりないのが残念。
ロールプレイングロード
■紹介
敵の足止めとブロックを押せる「戦士」、足止めトラップとはしごの設置ができる「盗賊」など、異なる能力を持つキャラクタをひとりずつ操作し、鍵をとって出口を目指すパズルアクション。
■講評
似た商用タイトルに『バイキングの大迷惑』というゲームがあって、あれは3人同時に動かす忙しいゲームだがこちらはひとりずつ。その分タイミングや手順というものを重視して作られており、ポテンシャルは非常に高い。ステージ構成の引き出しを多く作らないと大変そうだが。
だがこのゲーム、ルールはよく練られているがバグが多すぎる。どうやら想定した画面サイズと実際のステージデータがあっていないようで、画面端2ブロック分ほどのマップデータがゲームの領域外に追いやられてしまっている。そのため、そうした場所に鍵が配置してあったり、スタート地点が配置してあったりするようなステージはプレイが不可能で、酷いと開始直後にゲームオーバーになってしまう。
せっかくルールは整っているのに大変もったいない。こうしたバグが有る限り、ゲームを商品として世に出すことは出来なくなってしまうからだ。
ワンショットエリーちゃん
■紹介
攻撃方法にひねりのある横スクロールアクション。地面にたまに落ちている素材から「属性弾」を作り、拳銃のリボルバーに合計6発だけ装填することができ、これが唯一の攻撃方法となる。
ショットを撃つと反動で大きく後退するほか、素材そのものも有限なためショット一発撃つことにもリスクが生じるシビアなゲーム。ステージ最深部のボスを撃破すればゲームクリアとなる。
■講評
アイデアは分かるが惜しいタイトル。限られた属性弾を正確に敵に当てていくバトルアクションなのか、属性と反動を駆使してステージを踏破するパズルアクションなのか、そのどちらにもなりきれていない。
敵は撃つよりもジャンプで交わしていったほうが楽だし、「反動」という要素もただの足枷にしかなっていない。反動そのものも通常移動速度よりも速いベクトルは得られないので、これを移動手段として見出す箇所がない。
アクションゲームとしても着地時に謎のジャンプモーションを取ることがあり、連続ジャンプに妙に気を使うところがあって挙動がストレス。属性要素もほぼ空気。
せっかく盛り込んだのだから、それぞれの要素に意味をもたせるところから始めて欲しい。反動ジャンプでないと超えられない箇所があるとか、そのあたりはもう少し押し付けがましくて良いと思う。
異端少女
■紹介
能力の異なる4人のキャラを駆使して結界を守るディフェンスゲーム。通常攻撃の他、それぞれ異なるチャージ制の特殊攻撃を使用することができ、これらを駆使して結界を守ってゆく。敵の攻撃で結界が割られてしまうとゲームオーバー。
■講評
ある特殊攻撃が強すぎて「ゲージが貯まるのを待ってアイコンをクリック」するだけのゲームになってしまっている。それでボスまでなんとかなるのもなかなか問題だが、それをやらざるを得ないほどにゲームが退屈だというのも問題ではある。
それを埋め合わせるかのようにボスが異常に強く、一度ダウンさせられるとキャラに起き上がり無敵がないせいで永遠に寝たきりを強要される。ここで難易度の帳尻を合わせようとしたのではないかと思うのだが、雑魚戦で学習する機会のなかった要素をここで押し付けられてもきついだけだ。雑魚戦がもう少し面白くなる工夫を考えるべきではないだろうか。
守れ!フェアリーフォレスト
■講評
主人公の妖精を操り、星を投げて敵キャラの蜂を撃退するSTG。規定数の蜂を撃破するとボスが現れるので、ボスを撃退するとゲームクリア。
■講評
大阪の困ったちゃん2号。とりあえずゲームの進行を妨げる致命的なバグくらいは無くそう。せっかく虫を撃退するゲームなんだし。うん。
神さまシミュレーター
■紹介
地形が高さの概念を持つタワーディフェンスゲーム。プレイヤーは神となって、襲い来る敵兵から城を守り抜くのが目的。コストを支払ってユニットを召喚するのとは別に、天変地異を起こしてマップの高さをグリッドごとに変更できるのが特徴で、ユニット償還と地形変化を武器に敵兵の殲滅を目指す。
■講評
「高さ変更」という要素をカケラも活かせないゲームルールなのが残念至極。効果が不透明すぎて使う必要が無いのだ。「弓兵のいる地形を高くすれば攻撃がより遠くまで届くようになるのではないか?」という考えを実現できるのは良いが、ユニットをその場に固定する機能が無いので勝手に移動して降りてしまうし、ユニットの攻撃がどの敵ユニットに当たってどれほどのダメージを与えたかという情報は表示されないので、効果の程も不透明。それならば同じコストを支払ってユニットを垂れ流した方がはるかに楽である。
そしてこのゲームは徹頭徹尾ユニットを垂れ流しているだけでもクリアできてしまう。
敵味方ともにユニットの動きが無軌道すぎて、あまり作戦を練るとか戦略性と言った要素が存在しないのも今一つ。
如何せん、ゲームのルールがまだまだ練り込まれていない。地形の高さ変更までは良いと思うので、それぞれ上下させたときの効果やメリット・デメリットをはっきりさせ「それを使いたくさせる、使わせる」という導線と、それに伴う作り込みがこのゲームには必須である。
成仏サムライ
■紹介
和風横スクロールアクションゲーム。刀で敵の体力を削ると霊魂となってその場にとどまるので、最後に「納刀」することで撃破扱いとなる。
■講評
アクションゲームとしてのルールの練り込み、作り込みがほとんどなされていないように思う。通常攻撃のほかに必殺技が4種類あるのは良いが、隙が大きすぎ当たり判定が怪しすぎでわざわざ繰り出す理由が存在しない。何よりダメージ効率は通常攻撃連打の方が良い。
納刀アクションも使い道、見せ方ともに今一つ。敵の体力がゼロになり霊魂となった時点でゲーム上は無害な存在になってしまうので、納刀というアクションを繰り出す理由がそもそも薄い。納刀をするメリット、納刀をサボるデメリットの設定は必須ではないだろうか。
「画面内の敵をズバズバ斬りつけて霊魂にし、シメに納刀でまとめて爆散!」というやりたかったイメージだけは遊んでいても伝わってくるのだが、そのイメージ通りのプレイにプレイヤーをどう導くか、そのためにどのような制限を加えるべきなのか、よく考えてみてほしい。
極端な話、要所でスクロールを止めてしまって、強制戦闘を起こしたって良いのだ。もちろん、バトル部分が楽しいという前提条件がつくが。
アクションゲームとしてこのゲームに足りないところ、そこをどうすればよいか。少なくとも足りないところはすぐに分かるはずだ。研鑽して欲しい。
貧弱勇者
■紹介
誘導系パズルアクション。画面下部を左右にウロウロするだけの勇者をゴールに導くのが目的。
誘導するためにブロックを落としていくわけだが、画面上部にあるブロックを「4個単位で好きな形に切り取り、好きなタイミングで真下に落とせる」というルールが特徴で、4個単位という縛りを念頭に勇者のルートを考えていくのが醍醐味。
■講評
ルールは非常に良く出来ていて、勇者の動きと判定もおそらく意図的にシビアに作りこんであって好感が持てる。制限時間を「勇者の体力」という形で表現しているのもなかなか効果的。
どういうことかというと、プレイヤーは勇者に任意で「方向転換」のみ指示することが出来るのだが、勇者の体力は時間ではなく「方向転換するごと」に減少していく。方向転換を繰り返し指示すれば、擬似的に立ち止まることが可能なのだが、代わりに体力の減少が非常に速くなる。そのため、指示や自動によらず、できるだけ方向転換をさせないようにプレイしつつ、それでもどうしても立ち止まりたい場合のみ、莫大な体力を支払って大急ぎで足場を組んでゆくという攻略が生まれる。このアイデアは面白い。
「ブロックは4個単位でなければ切り取れない」という重要ルールがゲーム中の説明にないのはびっくりしたが、まあ許容範囲だろう。ヘルプファイルには書いてある。
ステージ構成や特殊ブロックの内容も考えられていてルールはよく出来ているのだが、バグの多さもかなりのもの。油断すると強制終了してしまってデータが巻き戻る。どうもマウスクリックを連打されると弱いようなのだが、ステージ開始前の演出や画面切り替えが遅いのでついつい連打してしまう。そして落ちる。
こうしたバグは嫌でもゲームそのものへの評価を大幅に下げてしまう。商品まであと一歩なのだが。
墨火
■紹介
絵柄が特徴的な横スクロールアクション。時間経過で体力が減少してしまうので、敵を倒して体力を補充しながら先に進んでいき、ステージ最後に待ち構えるボスを撃破すればステージクリア。
■講評
何もしなくても体力減少というシステムが全く活きていない。ちまちま敵を相手するよりボスまで駆け抜けてしまったほうが速いし。
墨で描いたような……と形容してあげたい背景もこだわりきれておらずところどころ単なる緑線が出てくるし、ウリとなる要素が全てぼやけてしまっている。せめて墨という世界観だけでも統一できていれば。
枠々ワクチン
■紹介
パズルアクション。画面中央の自機から「ワクチン」を射出する。ワクチンはやがて失速し、完全に停止すると「一番近い壁に触れるor一番近い別のワクチンに触れる」まで膨張する。
ワクチンにワクチンをぶつけると、ぶつけられた側の耐久力が下がっていき、耐久力がゼロになると爆発する。円状に広がる爆発の中に他のワクチンが存在すると連鎖爆発して高得点。
ワクチンが中央の自機の円内に到達するか、無傷のワクチンを画面内に5個発生させてしまうとゲームオーバー。
■講評
ルールはわかる。ゲームオーバー条件も操作もわかる。わからないのは楽しみ方だけ。ワクチン射出時にどれほどのパワーで打ち出されるか、調整こそ出来るものの射出されるまでわからないのでどうにも運ゲーの枠を出ていないように思う。パワーゲージが見られればあるいは。
シンプルなゲームなのだが、シンプル故にゲームの奥行きのなさが露呈してしまっている。なかなか終わらないかと思えば、ワクチンのトゲトゲの部分にあたってイレギュラーな反射をしてあっさり死んだりもする。プレイヤースキルで押すゲームなのか運の比率を高めるのかどっちつかずになってしまっている。
ところでそのタイトル画像はあんまりではないだろうか。
以上である。これでHALより提供された全タイトルの紹介と講評を行ったことになる。
ここからは総評であるが、Round2、Round3で紹介したタイトルのうち、いくつが「商品」を目指して作られたかと言われると、おそらく両手の指には足りないだろう。
無論、すべてのゲームが「まず”ゲーム”を作ろう」という出発点から始まっているのは間違いない。事実、提出されたタイトルの中で、そもそもゲームとしての体裁が整っていなかったようなタイトルは極わずかであった。
しかし、今回は「優秀タイトルを商品として配信する」という前提で作成されていたはずで、ただゲームとして体裁が整ってさえいれば良いというものではなかった。そこからもう一歩進んで「お金のとれる商品」を目指すことが出来たタイトルがいくつあったかという話である。
今回販売されることに決まったのは『ラクガキ忍者』『NINJUSTICE』の2タイトルだが、ゲーム内容においてこの2タイトルに勝るとも劣らない、むしろアイデアの面では優っているというタイトルも少なくなかった。私個人としては『モグル』『貧弱勇者』の2タイトルはほんとうに惜しいところまで来ていたと思う。これがブラッシュアップされた姿を見てみたいというのも、私の本音である。
私からの講評は、極力「単なる1プレイヤーとしてどう思ったか、どう感じたか」を重点的に述べさせていただいた。少なくともゲーム中からスタッフの意図を汲み取る努力は最大限したつもりである。これまでの授業の中で受けたであろう講師の皆様の指摘やアドバイスなどには劣るだろうが、スタッフの皆様が今後ゲーム開発の道を歩まれるのであれば、その少しばかりでも礎になれれば幸いである。
最後に、本プロジェクトに関わられ、この企画にお誘いいただいたHALとPLAYISMスタッフの皆様に感謝を、そしてゲームを制作したHAL学生の今後の活躍を心よりお祈り申し上げ、GGeoにおける本企画の締めくくりとさせていただきたい。
本当にありがとうございました。